智美「ううぅ~、う~……」

ゆみ「蒲原、そこ間違ってるぞ。ああ、そっちもだな」

智美「ゆみちん、もう少し休憩時間が欲しいぞー」

ゆみ「甘えるな。一時間おきに十分も作ってあるんだからもう少し頑張れ」

智美「あーうー……」

ゆみ「ハァ……卒業目前にして補習テスト受けなきゃいけないのは誰なんだ」

智美「ワハハ、私だなー」

ゆみ「わかってるじゃないか」

智美「頭では理解してるんだけどなー」

ゆみ「まったく、しょうのない奴だな。…………五分だけ息抜きの時間に使っていいぞ」

智美「わーい、ゆみちんは優しいなー」


智美「――――――――はぁ……」

ゆみ「珍しいな、蒲原がため息なんて」

智美「いやなー、もうすぐ……ほら、アレがあるじゃないか、二月のメインイベントの――」

ゆみ「ああ、大学入試の試験日か」

智美「違うぞー。受験生だから違わなくもないけど、そうじゃないなー」

ゆみ「じゃあなんだ、節分か」

智美「太巻き美味しいよなー……そっちでもないぞ」

ゆみ「ハァ……バレンタインデーか。それで?どうやってチョコを渡すかどうかで悩んでいるのか」

智美「…………ウン」

ゆみ「何か問題でもあるのか?」

智美「須賀君にチョコを渡すとして、その後どうするかだなー。結局、ずっと昔に会ったことあるって話せてないし……」

ゆみ「向こうは完全に忘れてるっぽいと話してたな、そういえば」

智美「何度か会ってるけど、いつも麻雀の話だけで終わっちゃうんだー」

ゆみ「…………彼の麻雀好きはもう麻雀狂いの域までいってしまったか」

智美「で、でも私は諦めないぞー。ちゃんとバレンタインにチョコ渡して、子供の時に会ってること思い出してもらうんだ!」

ゆみ「まあ、頑張れ。――――それじゃ、休憩時間は終わりだ。受験の最後の追い込み、気張っていくぞ」

智美「ワ、ワハハー……大学受験なんかに負けないぞ、私はー」





そしてバレンタイン当日――――


智美「大学受験には勝てなかったぞー……」(ズゥン

京太郎「ハ、ハハ……お疲れ様です」

智美「いや、まだ結果が出るまで勝負はわからないから、うん」

京太郎「まあ確かに、勝負は裏ドラをめくるまでわからないですからね」

智美「そう都合よく裏ドラが乗ることなんて、あまりないと思うけど……」

京太郎「気合があれば、オーラスで裏ドラ五枚ぐらい乗るもんですよ!」

智美「それは……なんていうか、麻雀の神様的なものが憑いてくれてるなー」

京太郎「もしそうなら嬉しいことこの上ないですけどね。あ、それで蒲原さん、今日はなんの用事ですか?」

智美「お、おぉ、うっかりしてたー、今日はコレ渡そうと思って会いにきたんだ」

京太郎「なんですか?」

智美「ワハハ、今日はバレンタインだからなー。須賀君にチョコをプレゼントだ!」

京太郎「おー、マジですかありがとうございます!」

智美「喜んでもらえてこっちも嬉しいぞー。そ、それでな須賀君、実は聞いてほしいことが――――」

京太郎「あ、そうだ蒲原さん、この後時間ありますか?」

智美「へ?」

京太郎「受験、お疲れさまでしたってことで、よければ今からどこか遊びにいきません?」

智美「え、い、いいのかー?」

京太郎「ええ!蒲原さんが嫌じゃなければ!」

智美「ワハハ、嫌なんてこと絶対にないぞ!いいぞ、どこに遊びにいこうかー!」

京太郎「そんなの決まってるじゃないですか――――!!」






――――後日


ゆみ「で、それからどうなったんだ?」

睦月「今の須賀さんの状態から考えると、雀荘に行くぐらいしか思いつかないですけど」

佳織「そうだよね~」

桃子「と見せかけて、まさかまさかのホテルなんていうのもありっすけどね。元部長さん、意外と好きな人に押されると何でも言うこと聞いちゃいそうですし」

睦月(それは東横さんも似たようなものなんじゃ……)

佳織「ね、ね、智美ちゃん、それで一緒にどこに遊びに行ったの?」

智美「――――す、須賀君のお友達って、すごく麻雀強い人ばかりなんだなー」(カタカタ

ゆみ「蒲原が笑ってない……だと……」

智美「すごくおっきな料亭に連れてってもらってなー?美味しいご飯食べさせてもらった後、みんなで打ったんだけどなー……」(ポロポロ…

佳織「わわわっ、智美ちゃん!?智美ちゃん、しっかりしてよ~!?」

桃子「一体どんな人外魔境に連れてかれたんすかねー……」

睦月「私、部長の心が折れるところ初めて見ました……」


<Prrrrrrr…


ゆみ「ん?蒲原、携帯が鳴ってるぞ」

智美「ホントだ……グスッ、ちょっとゴメンなー」(ピッ




ゆみ「……しかし、須賀君にも困ったものだな」

桃子「最初にどんな人か聞いた時は、おもち狂いの変態さんだったはずなんすけど」

佳織「清澄の人に聞いたけど、麻雀強くなる毎におもちって口にしなくなっていったみたいだよー」

睦月「余計なものが禊がれて、雀士としての純度を上げていってるんですね……。さすがゴッドハンドです、カードの引き当てだけじゃなくて麻雀まで極めようとするなんて!」

桃子「むっちゃん先輩の麻雀せんべいカード好きは筋金入りっすね……」




智美「ワ、ワハハッ、ホントかー?じゃあ次のお休みの日、ドライブに行こうな!」



佳織「智美ちゃん、すごく楽しそうにお話してるなー。あんな風に笑う智美ちゃん、私あんまり見たことないよ」

ゆみ「…………とりあえず蒲原は幸せそうにしてるし、しばらくは見守る方向でいいんじゃないかな」

桃子「そおっすねー。あ、でも私的に先輩にはもっとガツガツ来てほしいっすけど」

睦月「変わらないね、東横さんは……」

ゆみ「対応に困るよ……」



智美「ううん、気にしないでいいぞー。須賀君を乗せてドライブするの、私大好きだからなー!じゃ、じゃあ、今度の休み楽しみにしてるから!」




ゆみ「まあ、最後の手段として……私たちが蒲原の想いを成就する手伝いをすればいいさ」

桃子「そうっすね」

睦月「部長、とてもイイ人だから幸せになってほしいですしね」

佳織「そうだよねー」





蒲原智美編……カン!