「インタビューなんて受けるんじゃなかったよなー……」

「おいおい、なんだその発言?一躍、時の人になったリア充野郎の勝利宣言か……死ね」

「目立ちたくないなんて理由で三日間、引きこもってた男は言うことが違うねー……ハゲろ」

「残念だよ、須賀君。君は麻雀がヘボだったからこそ、可愛い女の子しかいない清澄麻雀部に所属していてもフラグは立たないだろうと見逃されていたのに……全裸不可能男って呼ぶぞ」


頬杖をついて、黄昏た様子で窓の外を見つめる京太郎を取り囲み、ゲシゲシとローキックをかましてくるクラスメイト。

痛くはないが、ウザいことこの上ない。


「いいよな、お前はよ。全国誌の宣伝効果で、美少女雀士に顔と名前を覚えてもらえたかもしれないとか…………ちょっと窓から跳んでこいよ」

「もうイジメだろ、これ」

「やだなー、友達だろ俺達?ジョーク、軽いジョークだよ」


馴れ馴れしく肩を抱いてくる男友達に顔をしかめる。

なんとなくだが、相手の魂胆が見えたからだ。


「で、なにが目的なんだよ、おめーら」

「お願いします、俺達に知り合いのレベルの高い女の子を紹介してください!」

「…………必死すぎて引くわー」

数人並んで足元に這いつくばるように土下座する光景に、京太郎がしみじみと感想を述べた。

「なんとでも言え!出会いのためなら、俺達は裏切り者の貴様の靴さえ舐められるぜ!?」

「裏切り者!?つーか、そこは誇んな!?」


ある意味、男らしい発言に椅子ごと体を引いてしまう。


「だいたい、レベルの高い子を紹介しろ、つってもなあ……」


面識のある少女達の顔を思い浮かべては却下していく。


「スマン、あまり力になれそうにない」

「なんでさァァァッ!?」

「さては貴様、独占するつもり……ハーレムか!?ハーレムを築くつもりなのか!?」

「ゆ、許されんぞ、そんな羨まけしからんことは!!」


非難轟々、紛糾する騒ぎの中、京太郎が心底悔しそうに答えた。


「だってさ、レベルって……オモチのことだろ?」


クラスメイトの言うレベル=オモチだと認識している彼には、少し酷な質問だったのかもしれない。

和や智紀、竜華、漫以外でオモチが大きいと言える知り合いの少なさに、言い知れぬ哀しみさえ覚える。


「どうして世界って、オモチで満たされてねえのかな?」


暗く沈んだ顔の京太郎に、周りの男子が「ああ……」と納得する。


「……ああ、そういや須賀って生粋のオモチ派だったな」

「正直、んな『どうして世界から戦争がなくならないのか……』みたいな顔で呟かれても、その、困るわ」

「前から言ってるけどさ、オモチに執着するとか不毛な行為だぜ?もっと世の中の色んな所に目を向けようよ。ふくらはぎとか、うなじとか鎖骨とか」

「そうそう、やっぱり女の子は尻だよ。オモチなんて二の次だね、二の次」

「おう、ちょっと待てよテメー……今、オモチを二の次って言ったか?」

「ふ……言ったが、それがどうした?」


嘲笑を浴びせかけるクラスメイトに、椅子を蹴倒す勢いで京太郎は立ち上がった。


「テメエは俺を怒らせた……!」

「来いよ須賀ァ!麻雀なんか捨ててかかってこい!」

「野郎、ぶっ倒してやるァッ……!!」


実に醜い争いが始まる。

ドタバタとやかましくどつき合い(殴り合いでない、ココ重要)を始めた、京太郎を始めとする男子を、教室入り口から白い目で眺める少女が一人。


「まるで成長しとらん……」


久からの伝言を携えて、わざわざ下級生の教室まで足を運んだまこが、頭痛を堪えながら呻く。


「オモチがない子でいいから紹介しろください!ほら、宮永さんとか片岡さんとかさぁー!?」

「お前らみたいなのを部の仲間に近付けられるかー!紹介してほしけりゃ、俺に麻雀で勝ってから頼めバーカ!」

「ひ、卑怯な!?県の個人戦チャンピオンだろ、お前!」

「バカって言う奴がバカなんだよ、バーカ、バーカ!!」

「んだと、この野郎……!?」


飛び交う言葉こそ険悪だが、その実、ドタバタとどつき合いに興じる京太郎達は楽しそうですらある。


「男子っちゅうんは、変なとこで盛り上がるもんじゃのう……」


とりあえず、あの馬鹿騒ぎが沈静化するのを待とうと入り口柱に体を預けていたまこだが、ふと思い出した事柄に眉根を寄せた。


「ほうじゃ、京太郎の奴、まだ右手の骨くっついとらんはず――――」


丁度、そのタイミングを見計らったように京太郎の悲鳴が響く。


「イッテーーーー!?手が、手がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「うぉぉぉぉい、大丈夫か須賀!なんで包帯巻いてる手でコークスクリュー打ってくるかなぁ!?」

「い、いつものノリで、つい……」

「ほれ、言わんこっちゃない」


懸念が的中し、やれやれとかぶりを振るまこ。


「わしは知らんぞ、自業自得じゃ」


とある少女の顔を思い浮かべ、苦笑する。

手洗いから戻ってきたのか、あるいは図書室に本でも借りに行っていたのか。程なくして顔を出した少女の悲鳴が教室に響き渡る。


「ちょっと京ちゃん、ど、どうしたの!?」

「や、咲さんが気にされるほどのことでは……」

「嘘だよ!そんなに汗浮かべて……保健室、それとも救急車!?ヤダよ、死なないで京ちゃん……!!」

「右手を握りしめないでぇぇぇぇっぇぇっ!?」

「やれやれ……そろそろ助け舟、出してやらんと駄目かの」


涙を浮かべて右手を取る――もとい、握り潰さんばかりに掴む咲に、京太郎の口から絶叫が迸る。

これで怪我の治りが遅くならなければいいが。

「ま、そん時は咲や他ん連中に世話焼かれるだけか」

口元をニヤリと歪め、のんびりとした足取りで、まこが京太郎達のところへ向かう。

時は県予選終了直後の平日。

全国大会までに残された、幾ばくかの時間のコマが動き始めた――――