●REC

後ろ手に縛られ、床に転がっているのは、ステルスモモこと東横桃子。
傍らに女性の足が映り込む。

『……何やってるかわかってるんすか。犯罪っすよこれ』

『バレなきゃ犯罪じゃない。アンダースタン?』

『そういうことはそのカメラを止めてから言って欲しいっす』

『貴女は不幸にも何者かに拉致されてしまった。何者とは一体誰?』

『白々しいにも程があるっす』

『全く。京太郎が最近妙に鍛錬をつけてほしいとせがむから何事かと思えば……』

写り込んだ女性に目線を遣るモモ。
それを全く意に介さないかのように女性――戒能良子は独白を続けた。

『姿が見えないオカルト持ちの女の子を助けてあげたい、なんて言い出すのだから呆れてしまいますよねぇ?』

『京太郎は私のことだけ見ていればいいのに、あろうことか他の女の方を向くなんて』

『ちょーっと、ほんのちょーっと許せないですよね?』

『ちょっとでこんなトコロに連れてきてほしくはなかったっすね』

『ああ!ちょっと許せないのはあくまで京太郎ですよ。お前は別。絶対に許さない』

『心優しい京太郎を誑かして』

『即刻デスペナルティと行きたいところですが、京太郎の思いを無碍にするわけには行きません』

『……出してくれるんすか?』

『Nokidding!からかわないでくださいよ!』

『ただ、貴女の姿を皆に見てもらおうってだけですよ』

『そのカメラで、すか』

『Exactly』

『念のため言っておきますが、貴女を辱めるようなことはしませんよ?』

『そんな悪趣味な女ではありませんし』

『じゅーぶん悪趣味っす』

『……まずはその態度を改めていただきましょう、かっ!』

瞬間、モモの腹に爪先が叩き込まれる。

『うっ……、げぇっ!』

びしゃびしゃ、と水音。
急な衝撃に耐え切れずモモは胃の中の物を吐き出した。

『そうそう、私元傭兵ですから、拷問っていうのも結構慣れているんですよ』

『手始めに、指を一本ずつ、というのはいかがですか?』

『な、何を……言ってるんですかッ、いぎぃ!?』

ぽきん。

『ほーら、簡単に折れちゃうでしょう?』

ぽきん。

『いだ、痛い……、どうして私がこんな……』

ぽきん。

『あら、そう思うんなら謝ってくれてもいいんじゃないですか?』

ぽきん。

『あぎっ、あ、謝るって、な、何をっ!?』


『何をって?』

『京太郎をたぶらかしたことに決まってるでしょう』

『ああ、一本ずつってなんだか面倒ですね。一気に済ませてしまいしょうか』

『え……?』

ぼきぼきぼきぼきぼき

『これで左右おそろいです』ニコ

『ぎゃあああああああああああああああああああっ!?』

『さて、私の話を聞いていればだいたい何を謝ればいいのか理解出来ましたよね?』

『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごべんなざいごべんなざい』

『京太郎くんを誘惑してごめんなさいっ!近づいてごべんなさいっ!』

『はいよく出来ました。エクセレントです』

『あ……』

『それでは次は腕ですね?』

ボキッ

『いいいいいいいいいいだあああああああああ!!!???』

『あっ、これはうっかり。爪を剥がすのをフォーゲットするとは。私もなまりましたね』

『指を折った以上あまり意味は無いでしょうし、このまま腕を続けましょう』

『あうう、ああ……』

『おや、気を失ってしまいましたか。これでは意味がナッシングですね。ちょっと休憩にしましょう』


―――

――


「京太郎、たしかに彼女のことは残念でしたが……」

「俺、もっと鍛錬積んでいつかアイツともう一回話します。それで犯人を……」

「わかった。そこまで言うならいくらでも鍛えてあげましょう」

「……うす!」


京太郎を抱きとめながら、良子は思う。

(流石に、死体はステルスというわけでもないみたいですね。当たり前ですが)

(京太郎、あくまであの女にこだわるというなら私にも考えがあります)

(ふふ、そうは言ってももう全て済んでいるのですが……)

彼女の目線の先には、存在感の希薄な少女が立っていた。


終わり。