京太郎「ここは……どこだ?」

京太郎「俺はいつもどおり仕事を終えて……そこから、そこから」

京太郎「(思い出せねぇ!つーかどうして俺がこんな目に!?)

京太郎「ここはかび臭いし暗いし……早く出なくちゃな」ジャラッ

京太郎「ぐえっ」

京太郎(どうして、首輪が!?)

京太郎(おいおいおい!洒落になんねーぞ!!!)

小蒔「あ、気づきましたかっ」

京太郎「小蒔……さん?」

小蒔「はい!」

京太郎「えっと、この首輪を外して欲しいんですけど」

小蒔「それはダメですよぉ。そうしたら京太郎さん、他の女の子とお話しちゃうじゃないですか」

京太郎「え、えっ……」

小蒔「ダメですよ、京太郎さん!他の子に、う、浮気しちゃったら」

京太郎(そもそも、小蒔さんと付き合った覚えはないんだけどな……)

小蒔「めっ、ですよ!えへへ」

京太郎「いや、そんなはにかんだ笑顔を見せられても」

小蒔「そんな褒めないで下さいよっ」

京太郎「いや、褒めたつもりはないんですけど。それよりもこの首輪を外して下さい。
なんなら、霞さんとか」

小蒔「京太郎さん、何を言ってるんですか」

京太郎「えっ」

小蒔「霞ちゃんは関係ないですよね、ここにいませんよね?京太郎さんの前にいるのは私ですよね?」

京太郎(な、なんだ……今の小蒔さん、怖い)

小蒔「そもそも京太郎さんに最初に出会ったのは私です。京太郎さん、覚えていますか、あの日のこと」

小蒔「あの日、今の立場が嫌で逃げたした所を京太郎さんは助けてくれたんですよ?
もらった服も洗わずに大事に保管しているんですよ、えへっ。だって京太郎さんの匂いが染み付いてるから……」

小蒔「毎晩毎晩京太郎さんのことを思っていたんです。京太郎さんのことだけを考えていたんです。
だから、この家で働くって聞いた時、私嬉しかったんです。京太郎さんとずっと一緒にいれるって」

京太郎「は、はい……俺も嬉しいですよ?」

小蒔「よかったぁ!京太郎さんと私、同じ気持ちですね!」

小蒔「でも――それを霞ちゃん達は邪魔をして」ギリッ

小蒔「私が最初に好きになったのに私が彼の手を初めて取ったのに全くもう。
おかしいですよ、京太郎さん!どうして皆京太郎さんを好きになるんですか!
男の人は他にもいっぱいいるのにどうして!ああイライラします、すっごく嫌な気分ですっ。
でも京太郎さんのそばにいるだけで嫌な気分をなくなってくので京太郎さんは気にしなくていいんですよ。
えへへ、ちょっとしゃべりすぎちゃいました。京太郎さんきょうたろうさん
きょうたろうさんきょうたろうさんきょうたろうさんきょうたろうさん
きょうたろうさんきょうたろうさんきょうたろうさんきょうたろうさん」

京太郎「あ、ああっ」

京太郎(狂ったように俺の名前を連呼し続ける小蒔さんが、怖い。怖いっ!怖いっっ!!!)

京太郎「たす、けて」

小蒔「??」

京太郎「は、外してくれ!首輪を、外してくれないか!」

小蒔「だから言ったじゃないですか、外したら京太郎さん、逃げてしまいます」

小蒔「ずっと、ずーーーーっと、私が京太郎さんのそばにいます」

小蒔「なんでもしますよ、京太郎さんの望むこと、なんだって」

小蒔「考えたんです。京太郎さんを皆から護る方法を」

小蒔「この誰も知らない、私だけが入れる神の社に閉じ込めてしまえば。誰も京太郎さんを見つけずに済む」

小蒔「大好きな京太郎さんを独り占めできる」

小蒔「永遠に、京太郎さんが私のものになってくれる」

小網「京太郎さんも私を見てくれる。他の娘に目が行かない。
私のこと、無視しない。一緒にお話してくれる」

小蒔「京太郎さん京太郎さん。ぁぁ、名前を呼ぶだけで幸せになれますっ。
やっぱりすごいですっ!幸せが溢れでてきます」

京太郎(く、狂ってる……!)

小蒔「京太郎さんが好きです。京太郎さんの指が好きです、京太郎さんの目が好きです。
京太郎さんの髪が好きです。京太郎さんの鼻が好きです。京太郎さんの耳が好きです。
京太郎さんのお腹が好きです。好き、大好き。愛してます。京太郎さん」

小蒔「誰にも見せたくない、私だけが京太郎さんを見ていたい。
私だけが貴方を――愛していたい」

小蒔「どうすればいいんでしょうか?ここも絶対みつからないとは限りませんし……」

小蒔「うーん……どうしましょうか」

小蒔「思いつきましたっ!京太郎さん名案ですよっ。。
京太郎さんを――」















「食べてしまえば、誰の目にも映らない。私の中でずっと生き続けてくれますよね?」

「じゃじゃーん。道具を持って来ました~」

止めろ。

「まずは包丁で手の皮を削ぎますね」

やめろやめてくぐしゅり。
あがががげげげげががげがぐしゅり痛い痛い痛い痛いイイいいいいいいいいいっ。
剥がれる中身が出るやめれやめろやめてくれあががうぇぐぁああああああ!!

「えへへ、パサパサしてて美味しいです。次は指を切り落としますねっ」

ざくりざくりざくり。
がががえがああああげらうぇわえわっあかすみさんがわえええたてえたすけてえらえわあうぇえわ
はるががががあえっわあとも、えらああさんえわふぇわえああがががえががが!!
だす、た、が、あぁ!たすけ、ぐしゅりぐしゅり。
あがえあああああああああああああああああ!!

「こりこりしてて歯ごたえがありますね~。京太郎さんの味がしますっ。
見てますか、京太郎さんっ!京太郎さんの指が私と一つになっていきますよ?」

あ、ああ……。
なんで。なんで、わらってるんだ?
こんなのがしあわせなのか。たのしいのか。
おれはちっともたのしくないししあわせじゃないぞ。
血がどばどばでてんのに。
目からなみだがとまらねーのに。

「京太郎さんの目、ドロリとしてて濃い……幸せ……」

あえ、おかしいな。めがみえない。
しかいがくろい。なんでだろう。
さっきまでみえてたのに。なみだがでてたのに。
くろい。まっくらだ。こわい。

「ああ、もうっ!早く食べないとっ!誰かが来たら分けなくちゃいけませんっ」

みえない、きこえない。
かんじない。いたまない。
なにも、かんがえられなくなる。
さいごの、思考。

「京太郎さん、死ぬまで一緒ですよ。いや、死んでもずっと永遠に一緒です」

――どこで、間違えちゃったんだろうな。

「おいしい、おいしいっ!」

きっと、誰にでも優しくしてたから。
八方美人でいたから。

「京太郎さんと永遠に――二人きり」

彼女の涙を拭う手はもう切り落とされた。
俺はもう、救えない。

「幸せですっ、私すっごく!」

ホント、どうしてこうなったんだろうな。
わかんねーや、なんだかすっげー眠いし。

「愛してます、京太郎さん」

幸せって何だったんだ。
愛って何だったんだ。
俺は……皆と一緒に幸せになりたかっただけなのに。



ぐしゅり。



【HAPPYEND!】



【After】

そこに広がっていたのは血の海だった。

「ひっ」

その光景は声を出さずにはいられないぐらい濃密で気持ちが悪かった。

血塗れの小蒔ちゃんが笑顔で何かを貪っている姿は同じ人間なのかと疑ったくらいだ。

「あげませんよ、京太郎さんは私のです」

何を言ってるのかがさっぱりわからない。

京君はどこにもいないのに。それをどうあって奪えばいいというのだ。

「……ァ、げぇ」

後ろでははっちゃんとはるるが口から胃液を吐き出している。

無理もない、こんな光景を見てしまってはまともに立っていられるはずがない。

「霞ちゃん達がいけないんです、京太郎さんを誘惑したりするから

「私だけの京太郎さんなのに。ねっ、京太郎さん」

そう言って彼女は手に持った【何か】に笑みを向ける。

それは赤に染まりきって元の色がわからないくらいに崩れていた。

一目見ても赤いボールだと錯覚してしまうぐらいに。

「京太郎さん、あの人達のこと見たらダメですよー。ずっと私だけを見ていればいいんですからねー」

「う、あっ」

ボールじゃない。わかってる、もう理性は理解しているのだ。

あれが――須賀京太郎の成れの果てだということに。

「ああああああああああああああああああああああああああっっ!!」

「うるさいですよ、霞ちゃん。悪いことをすると食べちゃいますよー」

ただ、認めたくなくて。

これ以上、彼の死を視界に入れたくなくて。

私は――意識を手放して。

「京太郎さん、えへ、へへ」

変わり果てた姫様を見て涙を一滴、赤に落とす。



【BADEND?】