京太郎「さてと、衣さん達を見送ったことだし、どうしましょうか」

初美「そうですねー。とりあえず、教育ですよ、教育ー!」

京太郎「教育って言っても何をですか?」

初美「ふっふっふっ、聞いて驚くなですよ~!それは!」

京太郎「それは?」

初美「今日の午後は私に尽くすことなのですよー!」ドバーン

初美「ということで、歩くの疲れましたーおんぶー!」ダキッ

京太郎「うわっ、いきなり何するんですかもう!」

初美「だって疲れたから仕方ないじゃないですかー。慣れない料理なんて作るもんだからはっちゃんパワー大減少ですよー」

京太郎「だからって無理矢理背中に乗ることないでしょうに」

初美「まあまあ。とりあえず、霞が逃げたから代わりに仕事を教えますよー」

京太郎「それはありがたいですけど、いいんですか?勝手に決めちゃって」

初美「大丈夫、大丈夫。どうにかなりますよー。じゃあ出発進行なのですよー」



【はっちゃんルーム】


初美「ということで、私の部屋に着いたんですよー。まったりしますよー」

京太郎「いやいやいや!おかしいですよ薄墨さん!」

初美「どこがですか!?こんなにも完璧なルートはありませんよー!」

京太郎「というか仕事を教えるのに、何で薄墨さんの部屋でまったりする必要があるんですか」

初美「それは私が疲れたから適当な話し相手になってもらうためですよー」

京太郎「隠す気すら無いよ!?」

京太郎(それ以前に服装ももっと忍べよ!ノーパンノーブラミニ巫女服で胸元丸出しとかどこの龍門渕家のメイドだよ!)

京太郎(まあ、勢いで来たはいいけどどうすればいいんだ……)


京太郎(とりあえず、抱きしめてみよう)ダキッ

初美「ふふ~ん!何をするかと思えばそんなことですか!そのぐらいで私がどうにかなるとでも?」

京太郎「……」ダキッ

初美「これはちょっとばかし恥ずかしいなーって気持ちはないんですよー?」

京太郎「……」ダキッ

初美「そもそも、男の人に抱きしめられたのが初めてだから緊張してるんじゃないんですよー?」

京太郎「……」ダキッ

初美「……案外力強くて気持ちいいなんて思っていないんですよー?」


京太郎「……」ダキッ

初美「お、おねーさんだから私は全然平気なんですよーっ……」

初美「こ、これぐらいで私は陥落しませんよーっ!」

京太郎「……」ガシッ

初美「はうっ!」

京太郎(あ、薄墨さんチョロい)
京太郎(抱きしめ心地が良くてずっと抱きしめてしまった……)

初美「……ううっ。お嫁にもういけませんよー」

京太郎「そんな大げさな」

初美「何言ってるんですかー!初めては好きな人とするって相場が決まってるんですー」

京太郎「まあまあ。そんな固定概念は打ち捨てましょうよ」

初美「むむむーっ!こうなったら京太郎には責任をとってもらいますよー」



初美「だからっ!私と付き合ってもらうんですよー!」



――――それから。俺は薄墨さんと本格的にお付き合いをすることになった。
その過程で心は明鏡止水の如き静かさを保つことができて、力なんてどうでも良くなった。
だって、俺には薄墨さん、いや……初美がいるんだから!
清澄なんてなかったんだ!麻雀なんてなかった!



初美「京太郎は私のものですよー」
京太郎「初美は俺のものだ」


【咲SS】京太郎「鹿児島で巫女さん!」【安価】


カン!





京太郎「ちょっと待てええええええええええええええええいいいいいいい!」

初美「な、何なんですかも~!せっかくいいモノローグも出たじゃないですかー!」

京太郎「何でだよ!何で抱きしめただけで俺結婚しちゃうの!?運命決まっちゃうの!?」

初美「えー。それぐらいの甲斐性は持っていて欲しかったんですよー」

京太郎「ったく……本当に人騒がせだっての」

初美「いつの間にかに敬語も取れてる!?私への態度が馴れ馴れしくなっているんですよー!」

京太郎「だってなぁ……」

初美「むーっ!もう怒りましたよ!はっちゃんマジギレですよーっ」

京太郎「はいはい、可愛いなあはっちゃんはー」

初美「そんな言葉では騙されませんよー、誠意を見せてください、誠意をー!」

京太郎「その理屈はおかしい」

初美「私の純粋な心を弄んどいてその態度は駄目ですよー」

京太郎「純粋(笑)」

初美「バカにしないでくださいー!」ポカポカッ

京太郎「純粋な心を持つ女の子は脅しで付き合えなんて言いません」

初美「元はといえば京太郎が私を抱きしめたのが原因じゃないですかー」

京太郎「だって、何したらいいかわかんなかったですし。とりあえず、抱きしめておこうかなあって」

初美「それが駄目なんですよー!めっなんですよー!」

京太郎「でも、元はといえば薄墨さんが可愛いのがいけないと思うんですけど」

初美「また、言葉ではぐらかそうとしていますねーっ」

京太郎「いえ、これは事実ですよ。でなきゃ、抱きしめもしませんって」

京太郎「薄墨さんといると……なんていうか、落ち着くんですよね」

初美「またまたー。そんな事言っても何もでませんよー」

京太郎「冗談なんかじゃありませんって。俺が幾分か、薄墨さんに救われているのは事実ですし」

初美「むぅ……そういう素直さを時折出すからほっとけないんですよー」ボソッ

初美(それに、今にも壊れそうな儚い笑顔が私にはどうも気になるんですよー。
このままだと、本当に取り返しの付かない事態になってしまうような……)

初美(できることなら、私が京太郎の鞘になればいいのですがー)

京太郎「ん?どうした?」

初美「いえいえ。なんでもないんですよー」

初美(きっと貴方は救いを拒むでしょうねー。その果てが地獄につながっていても)

初美「……そんなの認めませんよー」ボソッ

初美(このまま行くと京太郎は間違いなく死ぬでしょうねー。命を対価にして何かを成すでしょう)

初美(最も、彼の目的が何なのかまでは私にはわかりません。聞くって手段もありますが、下手に地雷を踏んで悪化させたくありませんし)

初美(この鹿児島にいる間に彼がいい方向に行ってくれるといいんですけどねー)

初美(私個人としても、なんだかんだで優しくて私の我儘に付き合ってくれる京太郎には好感を持ちますしねー)



京太郎「あ、そういえば薄墨さん」

初美「はい、何でしょうかー」

京太郎「さっきの料理でですね、汗を結構かいちゃって。軽くシャワーを浴びたいんですけど」

初美「そうですかー?そこまで臭いとは思えませんが?」スンスン

京太郎「ちょっ!嗅がないでくださいよー!といいますか、なるべくここで働くにあたって清潔にしときたいなーって考えがありまして」

初美「そんなの誰も気にしませんよー」

京太郎「そうはいきませんって。こういうのは清潔さも大事ですって」

初美「そこまで言うのなら大浴場まで案内しますよー。ぱぱーっと入っちゃってくださいー」

京太郎「じゃあ、お言葉に甘えて……」

初美「遠慮することはないですよー。今なら誰も居ないでしょうしー……たぶん」

京太郎「最後の語尾がすっごく不安ですけどまあ入ってきます。とりあえず、見張り番とか頼んでいいですか?」

初美「なんでそんな面倒な事を私がしなくちゃいけないんですかーっ!
男ならドカーンと腰を下ろしていればいいんですー。誰が入ってきたとしてもー!」

京太郎「薄墨さんならともかく、霞さんとか神代さんが入ってきたらヤバいですって!
色々と弾道が上がりますって!白いものがホームランですよ!」

初美「……その中に私が入っていないのがすごく腹立ちますー。というか女の子の前で堂々と下ネタってないですよー」

京太郎「だって、薄墨さんですし」

初美「だっての意味がおかしいですよーーーっ!もういいです、さっさと入って教育の続きをしますよーっ!」




【大浴場】



霞「ふぅ。色々あったし、汗もかいたからお風呂に入ったはいいけど……一人じゃ寂しいわね」

霞(それもこれも京くんが悪いのよ。私よりもはっちゃんを選ぶなんて……!)

霞(何よ何よ!私の方が魅力がないっていうの!?確かに私は小さくないけど!)

霞(その、何というか……別に京くんのことなんてなんとも思っていないのよ?)

霞(寝ている姫様に手を出さないなんて真面目で信頼がもてるなーとか、笑顔が素敵だなーとか)

霞(恥ずかしがりながらも霞さんって呼んでくれるのが嬉しいなーとか抱きしめた感触ががっちりしていてずっと抱きしめていたいなーとか)

霞(ほら、京くんのことなんてどうとも思ってないわ!これしか思い浮かばないもの!)

霞(私に限ってそんな……一目惚れなんてないわ!)

霞(そうよ、一時の気の迷いにすぎないのよ。だから、間違いよ!)イヤンイヤン

霞(だから、もし京くんがここに裸でやってきたとしても私は平常心よ。おねーさんの余裕を見せつけておしまいよ)

霞(はっちゃんよりも私の方が大きいもん。きっと京くんはあたふたして真っ赤になるわ)

霞(そこを優しくフォローする私。あら、何興奮しちゃったの?ふふっ、可愛いわねってね!)

霞(京くんの私への印象上昇待ったなし!うふふ……これは完璧ね。その後はのぼせた京くんを膝枕したりなんてねなんてね!)キャッー

霞(まあ、そんな出来事は絶対にないでしょうけど……)

京太郎「うっはーーーーー!露天風呂超広いーーーーーっ!」

霞「」


霞(か、隠れないと……と言うより出なくちゃ。そっと裏から……!)

霞(よし!京くんがよそ見している間に出口へと――――っ!)

霞「ほぇ?」スッテンコロリーン

霞(何で私はお尻を地面につけて転んでいるの?)

霞(と言うより……)

京太郎「」

霞「」

霞(みられた)

京太郎「外に出ると、そこは理想郷でした」

霞「きょ、京くん?」

京太郎「外に出ると、そこは理想郷でした」

霞(あ、完全に壊れてるって……そいうことじゃなくて!)

霞(ど、どうしましょう!?お、おおおおおおおちちちちちつくのよ!)

霞(そうよね。全部、見られちゃったから責任とってもらわなくちゃ……じゃなくて!)

霞(もうこれ以上見せるものもないからもっと見せても……じゃなくて!)

霞(け、結婚式はどうしましょう、和洋どっちが京くん好みかな。私は京くんが好きな方でいいなって)

霞(お、落ち着いているわ。クールよ、私っ!超クールっ!だから……)

京太郎「外に出ると、そこは理想郷でした」ダンドウピーン

霞「」

京太郎「外に出ると、そこは理想郷……って霞さん何でここにィっ!?」

霞「えっ、今更!?」


京太郎(どどどどどどどうすればいいんだあああああ!)


霞(と、とりあえず……ここから出て落ち着きましょう!」スタッ

京太郎「ちょ、そんないきなり立つと!」

霞「ひゃあっ!」スッテンコロリーン

京太郎「って俺の方に何で倒れ……!」

京霞「「あっ」」チュッ

ドッシャーン


京太郎(あれ、これってもしかして……)

霞(キス、してる?)



――――ドクン。



鼓動が、響く。



――――ドクン。



世界が、回る。



――――ドクン。



狂気が、律動する。



――――ドクン。



憎しみが、流れ出す。



「……ああ」

その声は女だったのか、それとも男だったのか。
今この場にいる二人には理解も出来ないだろう。

「……そうか、そうなのかよ」

男はからからの喉を振り絞り、声を出す。
それは、普段の彼を知っているものからすれば絶対にありえないと判断するだろう。

「全く、嫌になっちゃうよな」

はははっと軽い笑い声が浴場に響く。
思わず喉から出た声は思っているよりも低く、掠れている。
それに驚いたのか、女は顔をこわばらせて男の顔をじっと見つめた。

――――何が、あった。

女が考えることはそれだけだった。
さっきまで顔を真赤にしていた彼は何処へと消えたのか。

「アンタも恵まれていたのか、石戸霞」

自分が恵まれている。それは、どういう意味なのか。
いくら考えても女にはわからない。
一秒、十秒、一分。時間ばかりが経過して確固とした構想は生まれない。

「それは、どういう意味なのかしら」

ならば、聞くしかない。例え、彼の地雷を踏む可能性があったとしても後戻りはできる状況ではなかった。
自分の“”が恵まれているのか。
それを知る為に、女は前に出る。

「だからさ、そんな“神様”的な存在を宿してさ。調子乗ってるってことさ」
「……!?」

その言葉は女の見せかけの余裕すら奪っていく。
なぜ、彼は知っている。なぜだ。
問いかけても彼はニヤニヤと笑うだけで答えない。

「アンタとキスした瞬間な。どこからか声が、聞こえたんだよ。こいつはお前が一番嫌う――――才ある者だって」

彼の瞳に浮かぶ感情は知っている。諦念と、緩やかな絶望。
諦念と絶望。悲観と恐怖。
視線は虚ろで諦念とあらゆる感情を沈ませて。隠して。

「声が聞こえるんだ。壊せ、憎悪を糧に目の前の神を殺せってなぁ」
「……!?」

その強烈な殺意が。指一本動かすことが出来ない圧力が。
女を押し潰す。

「妬ましい、憎い。才能があって何かを成せる力がある奴が!気持ちいいよなあ!
勝つことができて!人より何倍も優れていて!本気で相手と戦えて!手加減なんてされなくて!」

男の足が動く。足捌きが地を滑るように流れ、踏み込みを感知させない神速の前進となる。
身体が前のめりに沈むのと同時に。腕が大きく後ろに引き伸ばされ――――。



「試してみようぜ――――俺の憎しみとアンタの才能。どっちが強いか」



命が消える音が、生まれる。






「やっぱり、ですかー。こうなるかと思いましたよー」




「こういう場面でヒーローが登場するのはお約束ですよー。
ということで、はっちゃん参上!」

現れた少女は、女目掛けて放たれた掌底を捌き、受け流すことで勢いを殺し反撃の蹴りを同時に叩き込む。
その顔は溌剌として見る者に希望をもたらす女神のように見えた。

「正面場ですよー。はっちゃん、頑張っちゃいますよー」

闘いが、始まる。


初美「貴方を、止めます。京太郎――――っ!」

京太郎「薄墨ィ、お前に俺が止められるかよ!」

初美「止めますよー、その為に私がここにいます。貴方のその闇を祓わせて頂きますー」

京太郎「ああ、そうかよ。どいつもこいつも……気に入らねえ。才能があるから、戦える」

京太郎「何もない、凡才は……ただ地べたに這いつくばるしかねえ。だったら……」

京太郎「どんな汚いことをやってでも上の奴らを引きずり下ろすしかねえよなぁ?」

初美「そんなことはさせませんよー。貴方は本来の自分を見失っています。だから――」

京太郎「俺の願いを叶える邪魔をするのなら……容赦はしねえ。だから――」

「必ず――殺す!」「必ず――助けてみせる!」


初美(さあ、どうします……!まずはっ!)

初美「先手、必勝!一気に攻める!」

初美「掌底、一閃!」ギュイッ

京太郎「……チッ。なかなか重い一撃だな」

初美「これでも姫様の護衛を務めていますしねー、それなりの護身術は使えるんですよー」

京太郎「ああそうかよ。なら……遠慮無くぶっとばせるなぁ!」ダッ

初美「――っ!?乱打……!捌き切れない!?」

京太郎「ハッハーッ!逝っとけやコラアアアアアアアアアアアアアアア!」

初美「むっ!」

初美「隙ありですよー!」シュンッ

京太郎「ざっけんなよ、この程度!」


初美「あっ」

京太郎「遅いっての。そのまま――ぶっ倒れてな」ブンッ

初美「が……ハッ!」

初美(このまま、私は――死ぬ?)

初美(友達を置いて、好きになるかもしれない人を救えずに……)

初美(そんなの、嫌ですよー。もっと、もっと!京太郎や姫様達と!)

初美(私は――っ!)

初美「生きていたい!」

衣「死なせはせんさ。この、天江衣がいる限り」ダキッ

初美「あ、貴方は……」

衣「あそこにいる奴の――主……そう言えればいいのだがな」

衣「闇の匂いを感じ、来てみればやはりか……きょーたろー」

衣「ハギヨシの監視から抜けだして一人この地へ舞い戻ったのは早計だった。
奴がいればきょーたろーを止めることも容易かったのだが……」

京太郎「こ、ろも……さん?」

衣「そうだ、お前の主である天江衣だっ!援軍、と言えば頼りがないかもしれないが」

衣「衣も戦線へと加わろう。とは言っても口でしか衣は役に立てそうではないが」

京太郎「何で、ここに来たんですか?」

衣「何度も言わせるな。お前を助けに来た。感謝しろよ、衣は部下を決して見捨てない」

京太郎「だからっ……!何で来たんですか!?俺は今、貴方さえ憎いと思いかけているっ!」

衣「……」

京太郎「俺は、貴方を殺したくない。殺したくない……っ!」

衣「大丈夫だ、まだ衣は生きている。お前はまだ戻れるんだ。あの日の“約束”をお前が覚えている限り」

京太郎「あの約束が、俺を一時的にでも救ってくれた。それには感謝しています」

京太郎「だけど」

京太郎「俺はそれでも欲しい。力が、勝利の栄光を勝ち取れる力が。俺をバカにしていた奴等を打ち砕く力が!」

衣「きょーたろーっ!衣は認めているぞ!お前の努力を!お前の優しさを!」

京太郎「それだけじゃ、駄目なんです。俺は強くなりたい。強くなって、取り戻したいものがあったんです」

衣「前に話してくれたな。絆、だったか」

京太郎「でも!俺はそれすら忘れようとしている!アイツらとの絆よりも!」

衣「其れは修羅の道だぞ。お前自身が報われない!」

京太郎「憎いんだ!アイツらが!影で嗤っていたアイツらが!」

衣「そんな姑息なことをアイツらがするはずないだろう……!」

京太郎「――アイツらは笑ってる。嗤ってる。嘲笑ってる。哂ってる」

京太郎「才能がある奴等は嘲笑ってる。俺みたいな屑を。力があるだけで」

京太郎「そこにいる奴等もきっと内心では嘲笑ってる。最初は善意で近づいて。最後は……裏切るんだ。
なら、裏切る前にこっちから裏切った方が気持ちいいよなぁ!」

初美「そんなこと……」

京太郎「あるわけない、そう言い切れるのか?」

霞「言い切れるわ。私の宿す神様に誓って」

京太郎「信じられない、ああ信じられねえ。何もかもが」ガリッ

京太郎「一度信じて信じ抜いたら落とされたんだ。もう、信じられねえ」ガリガリッ

衣「きょーたろー……」

京太郎「信じたさ。最後まで。信じた結果が……」ガリッ

京太郎「別にいなくても大丈夫だよ、いない方がいい。
あっはっは、まさか俺のやっていたことが全部無駄だって思われてたなんてさ」

京太郎「いらないならさっさと追い出せばいいのによ」

京太郎「頭に響いた声が言うんだよ。憎め、殺せって。俺じゃない俺がいるみたいなんだ……」

京太郎「ココに来てから何かが俺に乗り移ったようで。それから目の前の世界が全部ムカついて」

京太郎「俺自身も訳がわからない。俺自身が俺を信用出来ない」

京太郎「だから……ころ、すしか、ないのか……?違う、違う」

初美「やはり、悪霊が乗り移っていますー。京太郎の身体を使って」

霞「私の神力を奪って表に出てきたのね」

初美「ですねー。彼自身の闇も合わさって非常に強力ですよー」

霞「でも、京くんも抗ってる」

京太郎「俺が……俺が本当に欲しかったのは……やりたかったのは……!こんな、ことじゃない?」

京太郎「あれ、俺何やってんだ?こんな八つ当たりみたいなことをして。俺、は……」

霞「正気に戻った……!?」

初美「チャンスですよー!今ならまだ間に合います!」

京太郎「あ、ああっ……!あああぁぁああアアアっ!やめ、止めろヤメロロロロロロロロロロロロ!」

京太郎「俺は殺したく、ない。ころしたくないよ……!」

衣「きょーたろーっ!気をしっかり持つんだ!」

初美「京太郎、頑張るんですよー!」

京太郎「衣さ、ん…薄、ずみさん……!」

京太郎「かす、みさん……」

霞「京くん、ファイトよ!」

京太郎「今なら、間に合います。まだ、俺が俺でいる内に早くっ!」

京太郎「俺を……おれをっ」

京太郎「――殺してください」

霞「そんなことできる訳ないじゃない!」

京太郎「駄目なんです、もう俺が消えそうなんですよ」

京太郎「この俺の中にいる悪霊が……俺を壊そうと貴方達を殺そうと」

京太郎「祓うなんて、無理ですよ。こいつ、俺とかなり一体化してるみたいで。
このままほうっておくと、きっと戻れなくなる」

京太郎「だから、早く」


霞「嫌よ。絶対に嫌」

初美「絶対にノゥ!なのですよー」

衣「まあ、当然だな」

京太郎「どうして……ですか?」

霞「そんなの簡単よ。だって、私――――」



霞「貴方のこと、好きだから」



霞「うん、すっきりしたっ。やっぱりこうしてはっきり言うのが一番ねっ」

初美「ちょ、霞……こんな時に何言ってるんですかー!?」

衣「状況を考えろ、状況を!」

霞「うん、すっきりしたっ。やっぱりこうしてはっきり言うのが一番ねっ」

初美「ちょ、霞……こんな時に何言ってるんですかー!?」

衣「状況を考えろ、状況を!」

京太郎「は、ははっ……何言ってるんですか」

霞「ああ、もう!一目惚れよっ!文句ある!?」

霞「私は京くんのさりげない優しいとこが好き。時々見せる儚げな顔が好き。抱きしめた感触が好き」

霞「だから、戻って来い!」

霞「そして、返事を聞かせろ……須賀京太郎ーーーーーっ!」

――右手を伸ばす。
霞さんへ。その背後へ佇む彼女の背負う神様へ。
あるいはこの先に訪れるかもしれない未来へ。

――暗闇を裂く――

京太郎「俺は、戻りたい」

京太郎「俺は……俺は――っ!」

霞「最後、いいとこもらうわよ?」ダッ

霞「去りなさい、悪霊。この人はお前なんかが乗り移っていい人ではない」トンッ

悪霊「お、オオオ、オオオオオオオオオオオッッッッッッ!?」

衣「これで!」

初美「終わりなのですよー!」

ドカーン

京太郎「俺は……元に戻った?」

霞「そうよ、貴方はもう大丈夫。大丈夫だから……」ダキッ

京太郎「ちょ、か、霞さん!?」

霞「心配したんだから……!京くんがいなくなるかもしれないって心配したんだからー!」グスグス

京太郎「あ、あのですね……その色々と当たっていますって!」

霞「だーかーらー!当ててるのよ、京くん。好きな人になら全部見られても構わないもの」

初美「うーわー……恋する乙女はここまで行くものなんですかー」

初美(何でか、霞と京太郎が抱き合っているのを見て。胸の奥がチクチクしますけど気のせいでしょうねー)

初美(私が京太郎に恋してるなんて、ないない!そんなの!)

衣「むーっっ!きょーたろーは衣のだ!衣の下でずっと執事をやるんだーっ!」ガーッ

衣「でも、今この時だけは……許してやらんでもない。ひじょ~~~~~~~に不愉快だが!」

衣「衣は自重ができる女を目指しているからな!抱きしめることぐらい……許す!」

京太郎「ああ、すいません。霞さん。それに薄墨さんに、衣さん」

霞「ん?どうしたの?」

京太郎「言い忘れていたことがありました。謝罪やら借りを返さなくちゃいけないやら話すことは色々ありますけど」
これだけは言っとかなくちゃって」






京太郎「――ただいま」






【第一章五人の巫女と一緒に暮らそう!End】