ブチッ バタン!

咏「ふぎゃ!」

咏「いつつ……こんなところで転ぶとかマジッすか」

咏「あ~鼻緒切れてるよ。縁起悪いな~」

京太郎「あの~」

咏「ん?」

京太郎「大丈夫ですか? こんな道端で蹲って……」

咏「あ~大丈夫大丈夫」

京太郎「そ、そうですか? ならいいんですけど……」

咏「……あ、ちょっと待って。紐持ってね?」

京太郎「紐、ですか? 流石にないですね」

咏「そりゃ持ってないよなー、普通。少年、悪いけどこれで紐買ってきてくれね? お駄賃あげるからさ」

京太郎「別にいいですけど……なんで紐なんか?」

咏「いや~鼻緒切れちゃってさ。紐がないと応急処置もできないんだよね」

京太郎「そうだったんですか。あ、そういや昔、鼻緒切れたらハンカチで応急処置できるみたいなこと聞いたことありますよ」

咏「う~ん、できるっちゃできるけど……破かないといけねーからあんまりやりたくないんだよなー」

京太郎「俺のでよかったら使って下さい」スッ

咏「え、そりゃ流石に悪いよ。さっきも言ったけど破かないといけないんだよ?」

京太郎「いいっすよ別に。安物ですし、もうそろそろ買い替えよっかなって思ってたんで」

咏「そう? なら遠慮なく使わせてもらうねぃ」ビリビリ

京太郎「あ、余った部分貸して下さい」

咏「ん? まだ使うの? 使わないんなら私が処分しておくけど」

京太郎「いえ、これはこう使うんです」ファサ

咏「……地面に広げてどうすんの?」

京太郎「立ったまんまじゃやりにくいでしょうし、近くにベンチもありませんから。ここに座って作業して下さい」

咏「おお、気が利くね~少年! じゃあ早速、こうしてこうして~っと」

咏「よし、完成! いや~助かったよ少年。ありがとな!」

京太郎「いえ、どういたしまして。それじゃ俺はこれで」

咏「あ、私は三尋木 咏っていうんだけど、少年の名前は?」

京太郎「俺は須賀京太郎です。清澄高校の一年です」

咏「清澄……って言うとあのリンシャンちゃんのいるところか?」

京太郎「咲のことですね。それならそうです」

咏「なるほど~君はその付き添いかな?」

京太郎「ええ、まぁ俺も一応麻雀部なんで」

咏「それじゃあもうしばらくこっちにいるって訳だねぃ。その間にお礼はするよ」

京太郎「え、そんないいですよ別に」

咏「まぁまぁこういう時はありがたく受け取っておく物だよ須賀君」

京太郎「……じゃあ期待しておきますね」

咏「それでいいんだよ。んじゃね~」



~都内某ブランドショップ~
咏「う~ん、これか。いや案外こっちの色の方が似合うかもしれんね」

咏(男の子の流行とか好みとかわっかんねー、全くわかんねー……でもお礼に適当な物送るわけにもいかないし)

店員「あの、お悩みのようでしたらご相談に乗りますが」

咏「ん、いいの? じゃあ聞きたいんだけど今時の男子学生ってどんなハンカチ持つのかな?」

店員「男子学生ですか、それならこちらの渋い感じのものか、あちらの明るい感じのものがいいかと。どちらが似合うかはその人の持つ雰囲気次第ですが」

咏「ん~」

咏(あの子はどう見ても渋いって感じじゃないしな~)

咏「じゃああっちの明るい色にしよっかな」

店員「彼氏にプレゼントですか?」

咏「か、彼氏? いや、違う違う。ちょっと世話になったお礼でね」

店員「そうですか、失礼しました。あ、こちらのものは今年の流行色になっていまして……」



咏「彼氏、か……」

咏(そう言えば私小さいころから麻雀ばっかで男っ気なかったなぁ……)

咏「う~ん」

咏(ああいった子も人気あるのかもしれんね。知らんけど)

咏「……」

咏(「京ちゃん、今度の休み暇?」「暇ですけど、それが何か?」「なら今度遊園地にデート行かね? 新しくできたらしくてさー」「いいですね、行きましょうよ咏さん」)

咏「……」

咏(ありえねー)

咏「………京ちゃん」ボソ

咏(いやいや! やっぱありえねー!)

咏「……けど連絡先くらい交換しとくかー、これも何かの縁かもしれんし。別に他意はないけど」



~清澄高校宿泊ホテル一室~
久「それで明日の先鋒は(コンコン)ん? 誰かしら? 須賀君、ちょっと見てきてくれる?」

京太郎「分かりました」


京太郎「はいはいどちら様ですか~」ガチャ

咏「ども~咏さんだよ~」

京太郎「あ、三尋木さん」

咏「昨日はありがとね。ほい、これ。昨日のお礼」

京太郎「あ、わざわざすいません。でも別にここまでしてもらわなくてもよかったのに……」

咏「気にせんでいいよ、私がお礼したかっただけだし」

京太郎「じゃ、じゃあありがたくもらっておきます。開けてもいいですか?」

咏「いいよ~」

京太郎「では…………これは、ハンカチ?」

咏「昨日君のハンカチ駄目にしちゃったしね~。アレの代わりだよ」

京太郎「うわ、すっげぇいい肌触り……これ高いんじゃないですか?」

咏「いや知らんし。そこらの店で似合いそうなの買っただけだから」

京太郎「そ、そうなんですか……(この人の金銭感覚どうなってんだろ)」

咏「……そうだ、折角だから連絡先交換しとく? これも何かの縁だし(チラッチラッ」

京太郎「は、はい! 是非!」



久「須賀君、誰だったの?」

京太郎「三尋木咏さんって人です。俺に用事があったみたいで」

久「三尋木咏って……もしかしてあの三尋木プロ?」

京太郎「え、有名な人なんですか?」

久「有名も有名よ。現役プロじゃ最強クラスじゃない!」

咲「……京ちゃん、そんな人とどうやって知り合ったの?」ゴゴゴ

京太郎「い、いや、昨日あの人が道端っつうか廊下で蹲ってるの見てさ。それで声かけたら鼻緒が切れたって言うから使い古しのハンカチあげたんだよ」

まこ「いい機転じゃのう。ハンカチは応急処置に使えるけぇ。しかしお前さん、どうしてそんなこと知っとったんじゃ? 普通知らんじゃろ」

京太郎「昔咲と一緒に夏祭り行った時にそういうの聞いたんですよ。いやまさかこんなところで役に立つとは」

咲「え、あ、それって中三の時の?」

和「ム……詳しく聞かせて下さい」

京太郎「いや、大したことじゃないって。中三の時の夏祭り一緒に行こうって咲が誘ってきたからさ、折角だから浴衣でいこうって話になって。それを母親に話したら、『浴衣の女の子はこうやってエスコートするのよ』ってレクチャーされたんだよ。で、浴衣の咲があまり動かなくていいように俺が屋台に食い物買いに走ったり、慣れない下駄で足が痛いって言うから帰り道でおんぶしたりしたなぁ」

咲「覚えててくれたんだ……えへへ」

京太郎「今思い返してみると結構覚えてるもんだな……(ピリリ)っとメールか。何々……」

【差出人:三尋木 咏
  件名:食事行かね?
  内容:今度暇があったらご飯でも食べに行かね? 奢るからさ。色々聞いてみたいことあるんだよねー。そういうわけで返信よろしく!】

京太郎「おぉ! 早速三尋木さんから食事のお誘いが……もしかしてもしかするとこれはキテるんじゃね!」デレデレ

咲「………………えいっ」ガス

京太郎「いたっ! 何すんだよ咲!?」

咲「知らない! 京ちゃんの馬鹿!」

京太郎「ってぇ~何なんだよまったく……って痛ぁ!」

優希「咲ちゃんのいう通りだじぇ! 犬のくせにデレデレしてんじゃないじぇ!」

京太郎「お前もかタコス! この……アウチ!」

久「そうね、ちょ~~っと頬が緩みすぎじゃないかしら? 鼻の下も伸び過ぎてるし」

京太郎「ぶ、部長まで!? お、俺がなんかしましたか?」

ギャーギャー

和「……ふふ、もしも須賀君と三尋木プロがいい関係になっていけば咲さんは」

まこ「…………明日も試合じゃっていうのにのんきじゃのう」


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