「くー……身体、結構疲れ溜まってるなあ」
道を歩きながら少年――須賀京太郎はぼやいた。
全国大会を戦う清澄麻雀部女子の、雑用その他係として働く彼は、概ねの仕事を終え気分転換として散歩に来たというわけだ。
「ま、俺にできることはこれくらいしかないしな。皆に頑張ってもらえるなら――――」
とつぶやきながら階段に差し掛かった時。
「――ごふっ!?」
正面上方向より、何かが京太郎にぶつかってきた。
自分よりやや小さいそれに、勢い余って押し倒される。
「いてて…………」
京太郎がぶつかってきた何かの正体を掴む前に、
ふにょんっ。
何か柔らかいものを掴んでいた。
「きゃっ…………きゃあああっ!」
「うええええええええ!? み、巫女さん!?」

              ☆

京太郎を押し倒した巫女は、神代小蒔と名乗った。
「――――危ないところを助けていただき、ありがとうございました」
「いえ、大したことじゃないですよ」
実際のところ京太郎にしてみれば、まったくの偶然の産物であった。
たまたま彼女が階段から落ちるところに京太郎が歩いていたため、正面から彼女を受け止める形になっただけである。
確かに多少身体を打ちはしたが、押し倒された拍子の役得の方が京太郎に取ってははるかに重要だった。
彼女を正面から受け止め、手のひらで掴んだ大きさ・柔らかさは、和に匹敵するほどのモノ。
……二年生の神代小蒔さんか。
この人に出会うという貴重な機会に立ち会えたことに比べれば、多少の怪我がどうだというのだ。
思わず至福の笑を浮かべてしまう京太郎。

              ☆

…………なんて優しいお方なのでしょう。
小蒔は須賀京太郎という恩人の態度に、心中で思わずつぶやいた。
麻雀をしている最中に思わず寝てしまい、気がつくと局が進み場合によっては終わってしまっている……。このようなことは小蒔にとって珍しいことではない。
しかし、今日のように練習でしていた(はずの)麻雀が終わっても意識が戻らないまま別の所を歩いていた、などというケースはあまりない。
階段を降りようとしているところでいきなり意識が戻ったため、思わずバランスを崩してしまったのだが。
…………見ず知らずの私を受け止めて。怪我を気にしないように笑顔を見せる気遣いまで。
「あの、京太郎さん」
思わず、口が動いていた。
「京太郎さんは、どうしてそんなに笑っていてくれるんですか?」
「ん? なんでそんなこと聞くんです?」
「なんでって……あの高さだと、かなり危なかったでしょう?」
清澄高校の麻雀部だという話だから、彼もきっと選手なのだろう。
階段はかなり高く、受け止めるときに一歩間違えばとんでもない怪我になっていた可能性は十分考えられる。
もしも指でも折ろうものなら大変なことになるというのに、何故。
「んー……そうだな。貴女に会えて、貴女が怪我してなかった。それだけで俺は何もかも嬉しくなったんですよ、小蒔さん」
「…………っ!」
特別に扱われることは、決して小蒔にとって珍しいことではない。
幼少の頃から「姫様」として大事に扱われてきた自覚はある。
しかし…………これだけ純粋な笑みで、「姫様」ではなく「小蒔」を大切にする人間は、数えるほどしかいなかった。
知らず、頬が熱くなる。
先程彼に掴まれた胸が苦しい。
「あ、…………ありがとう、ございます」
小蒔には、そう返すのが精一杯だった。



二回戦先鋒戦 休憩時間

小蒔「あの……それ、何を食べてるんでしょうか?」
優希「タコスだ!」
小蒔「タコス?」
優希「うむ、タコスはあらゆる食べ物の中で頂点に立つものだじぇ。うまうま」
小蒔「知りませんでした……。そんなに美味しいんでしょうか?」
優希「一つ食うか? 特別だじぇ」

小蒔「美味しい…………」
優希「当然だじぇ。うちの京太郎が厳しい修行を積んで作った特製だからな」
小蒔「京太郎さん?」
優希「使える犬だじぇ」
小蒔「京太郎さんの手料理…………美味しい。
    本当に、ありがとうございます」
優希「うむうむ」
小蒔(でも、この娘のために修行を積むなんて…………
    ……………………なんなんだろう、この気持ち)

オーラス
実況「永水女子がオーラスでトップの清澄高校に三倍満を直撃――!」


とか軽く妄想した

名前:
コメント: