【咲の場合】

二人して夕食の片付けをするのが日常だ。

最初の内は皿を割ったりしたが、今では互いの役割分担もできており、光の戦士が帰る頃には終わらせるようになっていた。

・・・言うべきならばここであろうか。

と、いうか今じゃないと言えない気がする。

食事前の時点でヘタレて言えなかったのだ、自然に明日の予定を言う感覚で口に出せばよいのだ。


「あー、咲。」


結婚したとはいえ、子供はまだ出来てない。

妻の方も長年連れ添っている関係上、呼び方を変える必要性は見当たらないものだ。


「んー?何、京ちゃん。」


こちらが洗った皿を拭いてる姿は、昔と比べると様になっている。

二周りも小さな妻の可愛さに少し見惚れてたが、本来の目的を思い出しその言葉を捻り出した。


「・・・愛してる。」


・・・言ってしまった。なにこれハズい。

何時も口に出さずに思っているとはいえ、これは恥ずかしい。

どの位恥ずかしいかといえば、告白の時と同等か?

ドヤ顔で知識を披露したつもりがその内容が間違えてた並み?

兎に角、恥ずかしい。顔が赤くなっていたら目も当てられない。

さておき、反応が気になり妻へ視線が泳ぐ。

これで無反応ならこちらとしては非常にショックなのだが・・・


「え・・・あ、う、うん・・・」


固まった状態で、曖昧な答えを出してくれた。

・・・蛇口から流れ出る水流の音が、やけに煩く感じる。

・・・これ、外しちまったか?

だとしたら、泣きたい。機会を間違えたのならやり直したい。でもやっぱ泣きたい。つーか泣いて良いよね?


「あ・・・あたしも・・・」

「へ?」


唐突に妻が喋りだし、変な声が出る。


「私も・・・愛してるから・・・」


・・・ヤバい。

こっちの方が・・・恥ずかしいってか・・・

超嬉しい・・・


「・・・そ、そうか。」

「う、うん。」


互いにそこから当たり障りの無い会話だったが、終始顔は真っ赤っかであったのは言うまでもない。

ただ妻が幸せそうに微笑む姿が見れたのだからこれで良しとしよう。

・・・俺もにやけが止まらなくて、変な笑い声が出ないようにするのに一杯一杯だった。

その晩は珍しく妻からお誘いがあった。

先のこともあってか何時もより燃えた。



【和の場合】

帰ってからというもの、タイミングを逃し続けている節がある。

・・・何時言うべきなんだろうか、と悩んでる時点でお察しなのだが。

いや、言おうと思うなら今からでも良いのだが。そう簡単にはいかないものなのだ。

これは旦那になった意地というか、吟味というか、甲斐性とも言うか。

やはりムードとかそういったものを考えてあげないと、無碍に扱われてしまってると誤解を生みかねない。

新婚ホヤホヤで三年もしてないのに、二人の間に亀裂や溝は勘弁して頂きたい。


(和もやっぱり少女漫画とか好きなとこあるからなぁ・・・)


出会った頃から可愛いもの好きだったが、思考とか嗜好も乙女まっしぐらであると知った時は思わずクラッときたものだ。

まぁそのクラッと「結婚しよ。」が現実になったのを喜ぶべきだろう。

閑話休題。


「・・・うーむ。」


ソファで首を傾げ、頭を捻るもなかなか妙案が出てこない。

やはりベッドの前に言うべきか?

いや、どうせならサプライズみたいにプレゼントと一緒とかも悪くは・・・


「・・・どうかしましたか?あなた。」

「和に愛してるって言うタイミングに悩んでいてな・・・」

「・・・え?」

「・・・あ。」


・・・思わず、我が家における女神の声につい反応してしまい、声が出てしまう。

はい、せーの。


(や、やっちまったぁぁぁぁっ!?)


いや、違うn違いません。ただ彼女にはつい正直でありたいとか思ってしまってる自分がいて、

それで寄りかかってきた柔らかさとか重みとかが幸せに感じちゃって、エトペンとカピーが互いの腕の中にいるけど・・・

混乱は続く。

というか、普通混乱してしまう。


(何で口に出すんだよ俺ぇぇぇっ!?ギャーッ!?逃げ出したい!ベッドでくるまっていたくなるーっ!顔見れねーっ!?)


最早考えてた頃の凛々しさは失われ、頭を抱えた京太郎は絶賛悶絶沸騰中である。

これもうどっちが言われた分からんな。


「はぁ・・・全く・・・」


こちらもこちらで混乱、というかびっくりしていたようである。

ただ顔が赤く、知る人は「対局中?」と聞いてしまうだろう。

要は無理やり抑えてるに過ぎない。デジタル思考を全開にしないと乙女のどっちが暴走するからである。

流石はデジタルの申し子である。


「それは私もですよ。京太郎君♪」


言うやいなや、腕に抱きついていく和。

腕が一部彼女の身体に埋まってるが、見なかったことにする。

・・・一つ訂正しよう。デジタルのどっち敗北。

愛には勝てなかったよ・・・


「あ・・・のど、か?」


きょうたろうの、こんらんが、とけた!

あれだけのものに包まれたら普通気づくものだ。あれがなにかは明言は伏せる。


「さっきから百面相してたことですし、ムードとか考えていたんですね?」

「うっ!?」


ドンピシャである。クリティカルは1・5倍なり。


「そして何時にしようかと思っていたら私につい言ってしまった、と。」

「・・・ははっ、和にゃお見通しってわけか。」


そう見事な推理をしているが、身体は彼にくっ付いている状態である。更に頭を胸板に擦り付けているときた。

まさしく甘えてる状態。余程嬉しかったのか、見えない尻尾が横にブンブン揺れてるようにも見える。

なんてこった、のどにゃん&のどワン販売決定!
※但し京太郎に限る。


「当然です。お嫁さんに夫の考えてることが分からないなんて。」


そんなオカルトありえませんから。

そう彼女は言って顔を近づけてきた。

・・・予定とかサプライズが無くなってしまったが、これで良いのだろう。

次の朝、お互いにぶっ倒れて昼過ぎまで寝ていたと言っておく。

カンッ