慣れ始めた帳簿付けの作業もひと段落し、時計を見るともう日付が変わっていた

んっ…と背を伸ばすと、滞りつつあった血流に勢いが戻り、背面がじぃんと温まった

パソコンの明かりが暗くなった部屋の一隅をほのかに灯している

「京太郎君、まだ起きていたの?」

振り向かなくても声の主は分かる、玄さんだ

「目が悪くなっちゃうよ…電気点けないと」

ぱちりと音がして、天井の蛍光灯に命が吹き込まれる

ちか、ちか、とくすぶるような音を立てて部屋が白い光につつまれる

「もう終わります、あとは日付をいれていくだけですし」

少し眩しくて目をすぼめながら俺は答えた

「ごめんね…」

後ろから抱きしめられる

「なんで玄さんが謝るんですか?

 松実館の手伝いをさせてほしいって頼んだのは俺ですし、

 パソコンを使ってるのも俺がしたいからしてるんですよ」

「そこが、ごめんなさい…なんだよ」

会話の出口が見えなくなって、俺は戸惑った


「京太郎くんがそうやって頑張りすぎちゃうような、そんな隙が私達にあったこと…

 もっと私が一生懸命だったらこんな遅くまでお仕事させちゃうようなこともなかったから…」

回されている腕がきゅっと締まった

頬に玄さんの頭があたる

梳かれている黒髪を撫で付けると神秘的なものに触れているような気分になった

「……玄さん」

「なぁに…?」

「眠くなってきちゃいました」

くすくすと小さく笑う玄さん

「じゃあ、お布団に入ろうね京太郎くん

 お姉ちゃんも待ってるし…」

「え、宥さんも起きてたんですか…?

 そりゃあ悪いことしたな…」

「あーひどい!私だけのときはそうは思ってなかったんだー」

「あはは」

「笑ってごまかさないでー」

立ち上がり、玄さんに向き直り、彼女を両腕で抱えた

すっぽりと俺の胸の中におさまると玄さんは機嫌を直したようで頬ずりを始めた

廊下に出ると少し空気が冷えていて、玄さんの暖かさがより感じられる

俺達の寝室は暖かいだろうが、それでも少し急ぐか

音を立てないように、それでも早足気味に歩いた


カンッ