夜、最早日課となっている咲との電話


『京ちゃぁん…』ベソベソ

「ああもう泣き止めって」

『だってぇ…今日も一日誰とも喋れなくて…』

「だからちょっと思い切って話しかけてみれば何とかなる……って言ってもお前を追い詰めるだけだもんなぁ」ハァ

『うん…グス…それに、何より京ちゃんが居ないのが寂しくて寂しくて仕方ないし…』

「うぐっ…だ、だけどそれについては話し合って一応納得してくれただろ」

『納得するのと寂しいのは別だもん』チーン
『そもそも理由がお姉ちゃんなんて納得できる訳ないし』ボソ

「ん? 何か後半が聞こえなかったんだが」

『気にしないで、ちょっとした独り言だから。それより私ばかり話しちゃったけど京ちゃんの方は何かなかったの?』

「うーん? そうだなぁ、そういえば―――」


――と、何となく照の話題を避けつつ他愛ない会話を挟んで――

『あはは、そっちでも京ちゃんあんまり変わらないんだね』

「うっせ。…まぁ、そうやって笑える程度には元気出たみたいだな」

『えへへ、京ちゃんの声を聴いたおかげだよ』

「そんな大げさな。それにほぼ毎晩電話かけてきてるんだからありがたみも無いだろ」

『ありがたみとかそういう問題じゃないんだけど……ひょっとして、迷惑だった?』

「い、いや、別にそんな事は無いけどな」

『よかった。……ねぇ』

「何だ?」

『ところで、お姉ちゃんと何かあった?』

「ひょっ!? な、な、な、何で急に照さんの話が…」

『京ちゃん、最近全くお姉ちゃんの話を出さなくなったし』
『私に気を遣って話題を避けてた事は知ってるけど、ちょっと不自然だったかなって』
『勿論気のせいかも知れないから確認の為にちょっとかまをかけてみたんだけね』
『それに京ちゃんの声の調子もちょっと元気が無い事が多いし』
『併せて考えると多分京ちゃんにとってあまり良くない事が起きた、のかな?』

(なにそれこわい。何で電話越しの会話だけでそこまで分析されてるんだよ…)ブルッ

『京ちゃん?』

「…ああ、そうだよ。先の言うとおりだ」

『そっか、やっぱり』

「でも咲と照さんって仲良くないだろ。だから咲に相談するのもなんだかなって事で黙ってるつもりだったんだよ」
「結果的にそれでばれる事になったみたいだけどな」ハハッ

『確かに複雑な気分だけど、それは私の問題だし、京ちゃんとお姉ちゃんの関係はまた別の話でしょ?』
『私なんかに出来る事は無いかも知れないけど、京ちゃんが悩んでるなら力になってあげたいんだ』

「………俺、ちょっと前に麻雀部に入ったんだ」

『京ちゃんはお姉ちゃん追いかけていったんだし…それは、うん、当然の流れ、だよね』

「そこで照さんに会ったは良かったんだけど、初めて部室で会った日以来どうも態度が冷たくてさ…」

『ええっ! ホントっ!?』パァァ

「おい、何で嬉しそうなんだよ」

『そ、そんな事ないよぉ?』

「……」

『コホン、でも何でだろ。 お姉ちゃん、私の事はともかく京ちゃんの事は嫌ってなかったのに』
『もしかして忘れられてた?』

「いや、俺の事京ちゃんって呼んでくれたし、最初はちょっと嬉しそうにしてくれてたからそれは無いと思うんだが」

『…』ギリィ

「思うんだが…」

『…じゃあ京ちゃんが何かやっちゃったのかな』

「うーむ、何も思い当たる事は無いんだがなぁ。他の先輩に聞いても知らんとしか言ってくれないし」

『ならさ、京ちゃんとお姉ちゃんの間に有った事一度全部教えてよ』
『京ちゃんは分からなくても私から見ればわかる事があるかも知れないし』

「え゛っ、いや、全部って」

『いいから。京ちゃんは何が原因か分かってないんでしょ?』
『そんな京ちゃんが話す内容選り好みしてたら見つかる物も見つけてあげられないじゃない』

「そう、だな。確かにそうかもしれない。じゃあ、取り敢えず入部した時の事から順番に話してくぞ」