和「こんにちは」

京太郎「失礼しまーっす」

久「あら原村さん、片岡さんは?」

和「学食へタコスを買いに行っています」

久「そう、それじゃあそこの男子は……彼氏?」

和「ちっ、違います!」

久「彼氏同伴で初部活なんて見せつけてくれるわね~」

和「違いますってば!」カァァ

久「それで、君は?」

京太郎「俺、須賀京太郎っていいます!」

久「須賀君、仮入部の子?」

京太郎「もう本入部で!」

久「はっは~ん、なるほど~」

久「原村さんやるじゃない、身体を武器にして部員を確保してくれるなんて」ヒソヒソ

和「してませんよ」ヒソヒソ

久「えー?放課後の体育館裏に彼を呼び出して原村さんのボディで魅惑して入部届にサイン―――」

久「こんな感じじゃないの?」ヒソヒソ

和「何故ゆーきと同じ発想に行き着くんですか」ヒソヒソ


 須賀君の軽い返事を受けた日の放課後、私は彼を連れて部室を訪れました

 彼は本気で入部するつもりのようで、部長も新しい部員の加入に喜んでいました

 部長が部の説明をしているうちに、染谷先輩とゆーきが部室へ、そのまま部員五人の自己紹介を行いました

 染谷先輩も須賀君を歓迎してくださり、その後は4人で須賀君に麻雀のルールを教えました

 簡単な役、大まかな流れを話した後、ゆーき、部長、染谷先輩、須賀君の四人で卓を囲み実践指導

 須賀君の手牌を見て、プレーに口添えをする私

 須賀君のおぼつかない打牌で容赦なく和了るゆーき

 そんなゆーきに呆れる染谷先輩

 昨日と同様に口を綻ばせながら打牌する部長

 そして、油断した部長から初めて点を奪った須賀君

 三倍満を浴びせられた後のタンヤオであったのにも関わらず、嬉しがっている須賀君

 その日の部活もとても楽しく、時間は早く過ぎていきました




                                            ,.ー-‐.、
                                            ヽ、   ヽ  __
                       / ̄\                 /,..-ニ‐- '"_,..)
           _,.‐-、        /     ヽ              ' ´/  , _ 、´
       _ _     ' 、 .ノ      /      _|          ,. ''" ,. -‐/ _  ̄\
    i'´ ` !    r   ヽ     /      <_       ,..-、 , ',. -一' ./..'/     .}
    i    ヾ、_  !    l    `ー-イ       \    /   / ,. '′  ,..,.  ,/    ./
    し  , iヽ、i !     !    _,/      ,.イ ̄`'´ // /    {  \ヽ      i'
    /  ヾ |  l      !  / ̄          //    / ー'´  ゙、    `´\ ヽヽ   !
    ヽ  r'´. .└! .i! .!┘ 〈          \|     | |   |   ,.'⌒   `,. l   !
    ヽ  !   .  l !l .!    ヽ   r/           ヽ/    |   ! ゝ-‐'´ /l  .!
     i ゙、     l .l ! l     ヽ__//  _    r、__,    ,、  __,ノ   \  /  }  .}ー"ヽ  ヽ
     | ト、゙、    l .! l .!        /  / |   |   ≧、__|  ̄       `ヽヽ  j  ノ`ー-、   }   .
___ ノ」__ン__ __r' 」 l、゙、__ / ./ /|   |__________  __゙、`'   /__ ヽ/_____
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ "'´ ̄ ̄ ゙、.   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ }   ./ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                          ヽ、ノ                    ヽノ

『第三話 ときめいた胸』



――多分二週間後


まこ「今日は京太郎と一緒じゃないんじゃな」

和「古典が少し長引いてしまって、染谷先輩こそどうなさったんですか?」

まこ「わしもちぃと職員室に用事があってのう」

まこ「京太郎のことじゃけえ、てっきり和を迎えに行くと思ったんじゃが」

和「……どういうことですか?」

まこ「京太郎は和が放課後の体育館裏に呼び出してあれこれして入部届を出させたんじゃろ?」

和「…………」ジトッ

まこ「冗談じゃ、冗談」

和「どうして三人の冗談がここまで被るんですかねぇ……」

まこ「もう一人女子が入ってくれれば久がもっと喜ぶんじゃろうが、さてさて」

和「あと一人……」


「須賀君、やめて!」

「部長、俺はもう我慢が出来ないんです!」

「そこはダメ……てぇ……あっ!」

「本当は、期待してるんでしょう?」

「この棒を……れることを、キモチイイですよ?」

「それは、わかってる……けどぉっ!」


和「」

まこ「」


「ダメ!ダメよ須賀君!」

「こんな……こんなこと……」


和「ふたりとも!部室で何をしているんですか!」ガチャッ

バタム パタッ

久「あ」

京太郎「あ」

和「え」

パタパタパタパタ……

久「私の点棒ドミノがぁー!」

和「点棒ドミノって……」

久「六限が休講で暇だから部室に来て点棒でドミノ作ってたのよぉ、ぐすっ」

京太郎「放課後になって俺が一番乗りだと思って来たらほとんど完成してて」

京太郎「二人で完成させて、喜んで、倒すタイミングを見失ってたのに、こんな……」

京太郎「こんなことってないよ!」

まこ「あるわ、あほんだら」

まこ「むしろ和が倒して正解じゃったろ」

まこ「はやく点棒を元に戻しんさい」

久「はーい」

京太郎「ういーっす」

和「染谷先輩が部長に相応しいと思うのは私の気のせいでしょうか」

京太郎「原村さん今日もお願いしまっす!」

優希「私も京太郎のこと教えたいじぇ」

久「優希は感覚派だから教えるのには向いてないのよ」

優希「やれやれ、天才はこれだから辛いじぇ」

まこ「褒めては無いじゃろうに……」

和「ゆーきは前向きなんですよ」

京太郎「バカとも言うな」

優希「それだー!じゃないじょこのバカ京太郎!」

京太郎「バカって言った方がバカなんだよー」

優希「それだと先に言った京太郎の方がバカになるじぇ」

京太郎「あ、そうだな」

和「馬鹿なこと言ってないで始めますよ」



和「カラテンリーチしてどうするんですか!河を見てください!河!」

和「うわぁぁあ!どうして伍萬を切るんですかぁ!一向聴なのに!」

和「フリテン!フリテンですよそれ!リーチかけてしまったら遅いですよ!ああああああっ!」

和「どうして親の部長のリーチがかかってるのに槓するんですか……」チラッ

和「ほらぁあぁぁあぁああああ!新ドラ全部部長が持ってますよぉおおおおおおおお!」


久「ちょっと和!?」



久「今日はここまでにしておきましょうかね」

まこ「お疲れさん」

京太郎「お疲れ様でした!」

優希「お疲れだじぇ」

和「……さま、でした」チーン

優希「のどちゃん疲れすぎだじぇ」

京太郎「俺が下手だから悪いんだよ、そりゃ原村さんも疲れるさ」

まこ「いや、和も和じゃろ」

優希「指導法がヒステリックだじょ」


優希「清澄は帰りに寄り道できないのが難点だじぇ」

和「小母さんが心配しますよ」

優希「何もしないで帰ると返って心配されるじぇ」

京太郎「寄り道か、それならこの間いい感じの店見つけたぜ」

京太郎「雑貨屋的な、駄菓子屋的な、コンビニ……的な?」

優希「うーん、よくわからないから行ってみたいが……」チラッ

和「……どうか……しましたか?」

優希「京太郎はのどちゃんを送っていくじぇ!」

京太郎「は?」

和「え?」

優希「こんな疲弊したのどちゃんを見たら暴漢に襲われるじぇ、だから京太郎、お前がのどちゃんを守れ!」

和「ちょっと、ゆーき!」

京太郎「だな、原因俺だし」

和「須賀君まで!?」


 まばらな街灯が照らす道

 ゆーきと別れて、私と須賀君との二人っきり

 当たり障りのない会話をしながら、二人で歩く

 私の歩調に合わせてゆっくり歩く須賀君を見上げてみたり

 目が合いそうになると慌てて顔を逸らしたり

 そんなことをしてやり過ごす帰り道

 あんなに激しい指導をしたのに、笑いかけてくれる須賀君に、疑問を投げかけました


和「本当に、良かったんですか?」

京太郎「原村さんを守れるならたかが30分くらいどうってことないぜ」

和「……そ、そうではなくっ!」カァァ

京太郎「あ、麻雀部?」

和「はい」

京太郎「別に入りたい部活があったわけでもないし、いっかなって」

和「運動部に興味はなかったんですか?」

京太郎「きつめの運動はできないから、小二だか小三の頃に足怪我しちゃってさ」

和「そうだったんですか」

京太郎「原村さんを抱っこして家まで送るくらいなら全然平気だぜ!やってみせるか?」

和「け、結構です!」

京太郎「そういや、原村さんって携帯持ってる?」

和「一応は……」

京太郎「あいぽん4……」

京太郎「羨ましい……いや、羨ましくは……」

和「何も言わないでください」

京太郎「ああ、5sまで出てるのでなんで今更?とか思ってないよ」

和「思いっきり思ってますよね!言ってますよね!?」

和「それにしても、何故携帯なんて」

京太郎「連絡先、登録してなかったなーと思って」

京太郎「電話ができれば、いつでも麻雀教えてもらえるだろ?」

和「真面目ですね」

京太郎「原村さんが全国行くんなら、俺も行きたいし!」

和「~~っ!」

和「ぜっ、全国の壁は高いでしゅからね!ビシバシ行きますよ!」

京太郎「よろしくお願いしましゅね!原村さん!」

和「か、からかわないでください!」カァァ

京太郎「ほら、ちょっと貸して」

和「自分で打てますよ」

京太郎「俺の方からメール送るからさ」

和「近い……です」

京太郎「おわ、ごめん」

京太郎「メール送っといたから、後で登録しといてくれよな」

和「わかり、ました」


 まばらな街灯が照らす道

 携帯を弄る須賀君はすぐ近くに

 制服が触れ合うほどに近くにいて

 私のほんの少しの胸騒ぎも関係無しに、歯を見せる彼がいて

 そんな状況で立ち止まる帰り道




「……原村さんのこと、和、って呼んでもいいか?」


――――え?


「さん付けだと壁感じて嫌なんだよな」

「先輩とか部長は仕方ないけど、これから三年間一緒なんだから」

「どう、かな?」


――――…………



 そう言って、彼はまた先回りをしてきました

 私の心を知ってか知らずかわかりませんが

 彼の一言が、また私の胸をほんのりと、少しだけ温かくさせるのです


「おっけ、これから頑張ろう、和」


「そうだ、俺のことも名前で呼んでいいぜ」


――――えっ、じゃ、あ……きょ……きょぅ……


 言われて五分ほど、私は日本語を発することはなく

 結局、須賀君の名前呼びは断念しました







  続く