京太郎「…………ん」


まどろみの中で寝返りをうつ。
ふにゃりと、なにか柔らかいものに触れた。
なんかいい匂いもする。クン、クンクン!


京太郎「んあ?」


その微かな違和感に、腑抜けた声を上げながら目蓋を開く。


玄「スー……スー…………」Zzz


なんだぁ、玄さんか。なぜか俺の布団に潜り込む、ピッタリと引っ付いて眠る玄さんがそこにいた。
ドラゴンが あらわれた ドラゴンのむれはこちらにきづいていない。
どうしますか?


京太郎「どうするって、あーた。そりゃもちろんこうげき……ぐへへ、フヒヒwww」


むにゅっと、こう……。






京太郎「ちげーよ!」ガバッ

京太郎「え、ちょ、なに?」


急激に意識が覚醒。
現状把握。場所はマイハウス(仮)、時間は……ケータイの液晶を確認すると、うわぁまだ3時半じゃん。
なにがどうなってんだってばよ。


玄「ん~……」

京太郎「なんでこの人ここいんの?」


考えられる可能性として一番高いのはトイレかなにかに起きて、そのまま部屋を間違えたとかだよな。


京太郎「いや、間違えねぇだろ」


俺の部屋と阿知賀の人達の部屋どんだけ離れてると思ってんねんな?
いや、でもなぁ~玄さんだしなぁ~。
そもそもつい最近こんなのことあったよな。夜中に誰か訪ねてきたことが。


京太郎「これもしかしてまた俺が都合の良い夢を見てるんじゃないだろうな」


もしそうだとさすがに恥ずかしいぞ。

検証実験に移ろうか。
俺は身を起こして胡座をかき、寝ている玄さんに向き直る。
右の人差し指を立てると、玄さんの頬に触れるか触れないか、産毛一本分くらいの間を開けて指先を添える。

ぷに。


玄「ふにゃ」


可愛い。
なるほど。


京太郎「ユメジャ、ナイヨー!」←すごくネイティブ


夢ではなく現だった。
ナンテコッタイ。

時間は遅く、部屋は密室。しかも狭い。
これってつまりそういうことだよな。
ちょっとこれからどう行動するか、オーディエンスを使ってアンケートを取りたい。


玄「ん~」ムニャムニャ

京太郎「……」ズリズリ


座ったままにじり寄る。
鼻梁、唇、顎、首筋、うなじ、浴衣の襟元ぉぉぉぉぉ!!
俺は伸びかけていた右手を左手で押さえる。
落ち着け俺。
誂えられたようなこの状況。
誰かに誘導されてるみたいでなんか嫌だろ。
再び人差し指で玄さんのほっぺをフニフニとつつく。


玄「ん、うにゃ」Zzz


気持ち良さそうに寝やがって。
なんかこいつと真剣に戦ってる俺がバカみたいじゃねぇか。
視線が自然と下へ。浴衣とシーツを押し上げる双丘。
これはこれは立派なものをおもちで。
憧とかがいたら「おい、どこ中心の視野よ。この変態」と謗られそうだ。

すんませんもうホント、こういう構造なんです男の子。
ちょ、ちょっとくらいなら触ってもいいかな?
そもそも男が1人の部屋に間違って入ってきて、あまつさえ一緒の布団に潜り込んでくるとか自己責任っしょ?

………………いや、みんなは俺を信頼してこの合宿に呼んでくれたんだ。その信頼を裏切ることは出来ない。
鎮まれ俺の右腕! 力は制御出来る、何故なら、そう! 俺の力だからだ。
ぜんぜん別の事を考えよう。そうだ、イメージしろ!
ふんどし一丁で大胸筋を躍動させながら、ビルドアップ状態で迫ってくる大沼プロの姿を。

………………………。
うっわ、なんだこれくっそ萎えた。死にてぇ……。
俺の苦悩など知らぬ存ぜぬで、玄さんは俺から見て向こう側に寝返りをうつ。
もう一人の僕が機能不全になるかと思った。
けどおかげで冷静になれた。


玄「スピー……」


なんだこうやって見ればただの可愛い残念な手のかかるおねーさんじゃないか。HAHAHA!
風邪を引いてもいけないので、俺はシーツを掛けなおそうと手を伸ばす。
だが俺は松実玄という人間を甘く見過ぎていた。阿知賀の竜の王手はまさにこの瞬間だったっ!!


玄「んゆ」ゴロン


再び寝返りをうって真上に向いた玄さんの浴衣の胸元が大きく肌蹴て
なんか白い柔らかそうなマシュマロみたいのが見えてるぅぅぅーーー!?


京太郎「」


なんかこれもう、いいんじゃないかな?
ここでゴールしても、いいんじゃないかな?
見ろこれ! この白磁器みたいな綺麗な肌、血色のいい薄いピンクの唇。
こういう経験からはじまる関係もあるだろ。
夜這いから始める……プログラミング言語。
俺は上を向いて眠る玄さん顔の両側に手をつき、覆いかぶさるように身を乗り出す。
そっと顔を近づける。


玄「……」


規則的な呼吸。徐々に迫る安らかな寝顔。いや迫ってるのは俺だけど。
後、目算で10cmくらい。

8cm。

6cm。


玄「ん」パチ


4……。

目が合った。


玄「う~ん……」


大きく伸びをし、上体を起こす。


玄「ここ、あれ? 私たちの部屋じゃない?」


目を擦りながら周りをキョロキョロ見回す玄さん。
その視線が俺を見付ける。


玄「京太郎くん?」

京太郎「はい」

玄「なんで壁際で、決定的瞬間にゴールを逃したサッカー選手みたいな佇まいをしていますのだ?」

京太郎「気にしないでください」




久「ふっふっふっ」

京太郎「なんですか部長。気持ち悪い」

久「あら、そんな口を利いていいのかしら?」

京太郎「な、なんですか?」

久「明日は海水浴よ!」

京太郎「な、なんだってーっ!?」

久「もちろん嘘よ」

京太郎「なんだ嘘か」

久「というのは嘘で本当は本当よん♪」

京太郎「イヤッッホォォォオオォオウ!」ガタッ

京太郎「ウィー、ウェ、ウェイー! ヒュー!」

           _, ,_  パーン
京太郎→ ( ‘д‘)
       ⊂彡☆))Д´) ←京太郎


久「はいはい。そう1人でハッスルしないの」

京太郎「あ、さーせん」

久「というわけで、明日の朝に荷物の積み込みやるから少し早めに起きてきてね」

京太郎「了解です」

京太郎「ところで、この近くに海なんてあったんですか?」

久「あったじゃない。来る時にあなたも見たでしょ?」

京太郎「え、どうだったかな? なんかその辺の描写カットされた気がするからな」

京太郎「なんか近くに山があったり海があったり、よくわからない地形ですね。瀬戸内?」

久「まぁ彼岸島みたいなのを想像してくれたらいいわ」

久「その内、砂漠とか雪山とかも出てくるかもね」

京太郎「やめてくれるそういうの? 往々にしてありえるから、この世界観だと」

久「とりあえず、伝えたから。それじゃあまた明日。おやすみなさい」

京太郎「はい、おやすみなさい」



その夜

京太郎「海水浴かぁ~」

京太郎「この走り出したくなる衝動をどうしようか」

京太郎「取り敢えず、電話するか」

prrrr

嫁田『はい、もしもし』

京太郎「おう、嫁田か? 俺だけど」

嫁田『おう、ちょっと振りだな。今、合宿って聞いてるけどどうした?』

京太郎「うちの麻雀部さ、インハイの決勝で戦ったじゃん?」

嫁田『おう! 学校でみんなで応援してたぜ』

京太郎「ありがとな。みんなを代表してお礼を言うぜ」

嫁田『そんなことの為にわざわざ電話してきたのか?』

京太郎「いや、ちょっとお前と話したくてた」

嫁田『なんだよ気持ち悪いな。まぁ俺でよかったら話くらい付き合ってやるよ』

京太郎「決勝でさ、うちが戦った3校のなかに白糸台と阿知賀っていたじゃん?」

嫁田「おお、いたな。麻雀強いだけじゃなくてみんなすげー可愛い娘ばっかのな」

京太郎「俺、明日その娘たちと海水浴に行くんだ」

嫁田『は? 死ね』

プツッ ツーツーツー


翌日

バタン

京太郎「ふう、こんなもんかな」

晴絵「悪いねー朝っぱらから」

京太郎「いやぁ、お互い様ですよ」

晴絵「あはは、まぁね」

京太郎「それに思ったほど荷物もなかったですし。パラソルとかは向こうで借りるんですよね?」

晴絵「そだよ。運ぶのはもっぱら人間だけ」

京太郎「なるほど。ところで17人も乗れるなんてこれもうちょっとしたバスですね」

晴絵「そうよぉ、この為にわざわざ借りてきたんだから」

京太郎「え、そうなんですか? そんな話聞いてないですけど、お金とか」

晴絵「♪」b グッ

京太郎「先生……」

晴絵「あの子たちには感謝してるんだ。まぁこれくらいは、ね?」

晴絵「それに宥や、他の3年の子たちも今年で卒業だし、進路のこととか考えたらホントに今しかないからさ思い出作りとか」

晴絵「ちょっとくらい、年上らしいことしてやりたいじゃん?」

晴絵「あ、これあの子らには内緒な」

京太郎「ふふ、はい。わかってますよ」クスッ


移動中

淡「東京♪」

優希「神田♪」

穏乃「秋葉原♪」

京太郎「御徒町♪」

玄「上野♪」

咲「う、鶯谷♪」

憧「日暮里♪」

淡「西日暮里♪」

優希「田端♪」

穏乃「駒込♪」

京太郎「巣鴨♪」

玄「大塚♪」

咲「池袋♪」

憧「目白♪」

淡「高田馬場♪」

優希「新大久保♪」

穏乃「新宿♪」

京太郎「代々木♪」

玄「原宿♪」

咲「渋谷♪」

尭深「!?」ピク

憧「恵比寿♪」

淡「目黒♪」

優希「五反田♪」

穏乃「大崎♪」

京太郎「品川♪」

玄「田町♪」

咲「浜松町♪」

憧「新橋♪」

淡「有楽町♪」

優希「東京♪」


晴絵「なにこの歌のチョイス」


晴絵「うえ、ちょっと込んできたな」

穏乃「えー! もうちょっとなのにー!」

優希「この車、マシンガンとかミサイルとかついてないのか!? 前の車蹴散らそうじぇ!」

憧「いや、そんなボンドカーじゃないんだから」

照「ダークジェイカーじゃないんだ」

京太郎「俺はそこで敢えてFAB-1を推すね」

まこ「お前さんなかなかやるな。ペネロープ号のが通りがいいはずじゃが」

京太郎「それほどでも」

淡「空とか飛べないの!? こう、ビューンッ! って」

菫「いやまだ車が空を飛ぶ時代ではないだろう」

京太郎「空飛ぶ車なら、龍門渕の技術班が開発したそうですよ」

全員「え?」

京太郎「なんでも今、特許と生産認可の承諾待ちだとか」

穏乃「龍門渕って龍門渕さんとか天江さんのいる龍門渕!?」

淡「空飛ぶ車とかすごーい! 私も乗ってみたい!、ね、ねキョータローそれホント!?」

京太郎「お、おう。こないだ透華さんがすげー自慢気に電話してきたからたぶん本当。あの人、見栄は張るけど嘘はつかないから」

和「本当に空を飛ぶんですか? オカルトとは言いませんがちょっと信じがたいですね」

京太郎「デジタルの和に説明するとだな」

京太郎「なんでも、酸化剤として過酸化水素、還元剤としてヒドラジンアミドとメタノールを混合液として」

京太郎「使用したロケットエンジンを内蔵してるらしい」

和「結構真面目に開発してるんですね」

京太郎「それで爆発的な加速力を生み出すらしいんだが、空気力学的形状上バランスを取るのが難しく」

京太郎「燃料が非常に発揮性が高くて飛行中に分解爆発する可能性があるらしい」

全員「うわぁ……」どん引き

京太郎「今度、地元の先輩が試運転させてもらうらしいんだが」

久「ねぇ、その先輩って……」ボソボソ

まこ「十中八九そうじゃろう」ヒソヒソ

京太郎「そん時は是非相乗りさせてもらいたいな」ウンウン

咲「ダメだよ! 京ちゃん、絶対行っちゃダメだからね!」グイグイ

京太郎「うおお!? 落ち着け咲、いきなりどうした!?」


ブゥオーン

晴絵「お、動いた」

灼「ん、外。見えてきた」

穏乃「おお、ホントだ!」

ガラ

淡「私も!」

ガラ

誠子「2人とも、ちゃんと座ってないと危ないぞ」

京太郎「まぁ気持ちはわかりますけどね」

優希「そうだ、これは叫ばずにいられないじぇ!」


「「「海だぁぁぁぁぁぁーーーーーーッ!!」」」


晴絵「じゃあ私は車止めてきちゃうからみんなは着替えてきてねー」

全員「はーい」

京太郎「……」

咲「あれ、京ちゃんはいかないの?」

京太郎「いや俺は荷物運ばないと。その後でも男の着替えなんてすぐだし」

優希「うむ、なかなか殊勝な心掛けだじぇ」ウンウン

和「ゆーき、そんな言い方はダメですよ。須賀君もすみません、いつもいつも」

京太郎「いいっていいって、これくらいしかやれることないからな」

京太郎「なんにしても、やることがあるってのはいいね」

和「そうですか? では、すみませんがまた後ほど」

咲「また後でね京ちゃん」

優希「おい犬。いくらこの優希様が恋しいからって着替えを覗きにくるなんて不埒なことはするなよ!」

京太郎「バカか貴様は?」

優希「は?」

京太郎「俺は別にみんなの裸が見たいとか、着替えが見たいとかじゃないんだよ」

京太郎「俺はみんなの水着姿が見たいんだよ」

京太郎「卵生む前の鶏絞めてどうすんだよ?」

優希「お、おう……」

優希(真剣すぎてちょっと気持ち悪いじぇ)

優希「ならこのゆーき様の水着姿をしかと見せてやろう。楽しみにしておけよ」

京太郎「おう! 待ってるぜ」


京太郎「と、大見得切ったものの」

京太郎「この流れだと絶対みんなから『どう? 須賀君、これ似合うかな?』みたいなことを聞かれると思うんですよ」

晴絵「はぁ……あ、クーラーボックスはそっち置いといてね」

京太郎「あ、はい」


ドン

京太郎「で、ですね俺の語彙力じゃあ全員を褒めちぎることなんて出来ないと思うんですよ」

晴絵「シートのそっち側持って」

京太郎「あ、はい」


バサッ

京太郎「そういえば先生は水着に着替えないんですか?」

晴絵「私はパス。帰りの運転もあるからあんまり疲れるようなことしたくないし」

京太郎「ブーブー!」

晴絵「ブーイングは受け付けません」ツーン

京太郎「話が逸れました。で、この危機を乗り越えるべく作戦を立てたんですよ」


ゴソゴソ、キュキュキュ

京太郎「ホワイトボードに書いて一括で処理するってのはどうでしょうか?」

『みんな違って、みんな可愛い』

晴絵「ナイス屁理屈」b グッ

京太郎「シーズン真っ只中にしては思ったより空いてますね」

晴絵「そうね。もっと混んでるかと思ったけど。まぁそっちの方がいいでしょ」

京太郎「そうですね。人が多くても鬱陶しいし、少な過ぎても寂しいし」

晴絵「それなりには賑わってるけど苦にはならない程度で」

京太郎「浜辺は綺麗だし」


ワイワイ、ガヤガヤ

<オイ、ミロヨアノグループ

<ウオ、ムネスゲェ

<オレ…コエカケテミヨウカナ


京太郎「なんか向こう騒がしいですね」

晴絵「あーそりゃ多分あれよ」

久「お待たせー」


バーンッ!!

晴絵「ほら、ビーチクイーン達のお出ましだ」

京太郎「先生なんか親父くさい」

晴絵「……」


スパーンッ!

京太郎「いってぇ!?」


目の前にはのは水着の天使たちだった。
正直、先生をバカにしたことを申し訳なく思う。
ビキニ、ワンピース、セパレート、スクール水着……。
スクール水着!?


優希「どうだ京太郎!? 私のスク水は」フンス


その自信はどこから来るのだろう。


京太郎「通過儀礼として一応聞くけどなんでそれをチョイスしたんだ?」

優希「部長が男はこれが好きだといっていたじぇ。部長のアドバイスは絶対だじぇ」フフン


視線を移すと、必死に笑いを噛み殺す部長の姿が。いや、最早なにも言うまい。


優希「どうだ? 似合ってるか?」


俺は無言で先程のホワイトボードを翳す、

スパーンッ!

途中で後から頭をどつかれた。
振り返ると厳しい視線の赤土先生。顎で示してくる。


京太郎「ああうん。似合ってるんじゃないかな、歳相応で」

憧「歳相応って……」←同い年

和「言わないであげてください」←同い年


周りからなにか聞こえるが黙殺。


優希「可愛いか?」

京太郎「可愛い可愛い」

優希「そうか!」パァァ


う、純真な笑顔が胸に突き刺さる。


淡「どうキョータロー? 淡ちゃんの水着姿は」

京太郎「セパレートか」


ツーピースであるがビキニよりも露出の低いセパレートタイプ。
淡い青の布地に花柄が映える。


淡「あんまり可愛過ぎて心奪われるなよー!?」

京太郎「うん。普通に可愛いな」

淡「ふぇ?」

京太郎「え?」

淡「あ、あわわわわわ///」カァァ

淡「あわー!」ダダダ


走っていってしまった。なんか知らんが勝った。


京太郎「さて……」クル

咲「///」モジモジ

和「///」ウツムキ

憧「……」プイ

玄「///」ソワソワ

宥「……」ガタガタガタガタガタガタ

照「……」テルーン


なんか順番待ちみたいになってるんですが?


京太郎「」

晴絵「……」ポン


先生は軽く俺の肩を叩くと、未だに手に握られていたホワイトボードをそっと取り上げた。


疲れた。
改めて俺のボキャ貧具合を確認させられた。
まぁ眼福なこともあったので差し引きしてもプラスだろうか。


誠子「……」ソワソワ、ワクワク


一団の後方に一人ひときわ異彩を放つ人が。


京太郎「あの亦野先輩」

誠子「ん、なにかな? 須賀君」ソワクソワク

京太郎「いやなんていうかその格好」

誠子「え、変かな? この水着」

京太郎「いえ、水着はよく似合ってますが」


丈の短めなタンキニにボーイレッグ。
活発な亦野先輩の肢体によく似合っていた。
けど三点だけ、三点だけ突っ込みたいところが。


京太郎「その背中に背負った釣竿と、肩に提げたクーラーボックスと、腰に巻いたヒップバッグは……」

誠子「せっかく海に来たんだから、もちろん釣りだよ」


ですよね~。


誠子「じゃあ私はあそこに見えてる岩場にいるからなにかあったらケータイで!」ドヒューン


行ってしまった。
後で少し様子を見に行くか。

そういえばさっきから気になることが。

京太郎「なぁ、穏乃はどこにいるんだ? さっきから姿が見えないけど」キョロキョロ

憧「シズならそこにいるけど」


指で示された方向に顔を向ける。


晴絵「……?」


腕組みをして事態を見守っていた先生と視線が衝突。
よく見ると、その背後からちらちらとこちらを伺っておる者ありける。


穏乃「//////」


メイドだった。いや、厳密には穏乃だった。
ハート型のエプロンを模したストラップレスのトップ。帆前掛を合わせたスカート型のボトム。
赤いスカーフと付け襟、カフス、黒のニーソックス、白い太ももに僅かに見える帯はガーターだろうか?
ネコミミにも見えるカチューシャの両端にはアクセントとしてスカーフと同じ色のリボン、ご丁寧にパンプスまで用意していやがる。


京太郎「」


今日、何度目かの絶句。
さすがにこれはやり過ぎだと思……。


穏乃「うううう//////」ウルウル


なにも言えないでいる立ち尽くしていると、穏乃の顔が羞恥に染まり瞳は徐々に水気を帯びてくる。


憧「なにやってんのよ! なにかいいなさいよ」ボソボソ


俺の小脇に肘打ちを突き立てながら憧が先を促してくる。


玄「京太郎くん。ファイトなのです!」グッ、タユン


あ、揺れた。


和「あ、ははは」


困った笑いを浮かべながら様子を伺っている和。
一応、指摘しとくとあなたの普段着も結構負けてないですからね?


京太郎「あー、どうしたんだその水着」

穏乃「これ、憧が……」


憧だと? 俺は件の少女に視線を水平移動。


憧「……」フイ


亜音速で目を逸らしやがった。
改めて穏乃の格好を見直す。
え、これヤバくない?


京太郎「あのさこれヤバくないこれ? これ犯罪じゃないのこれ?」


こんな小さな子にこんな格好。けしからんもっとやれ。


穏乃「私、学校の水着しかなくて、だからこういうのよくわからなくて……」モジモジ


胸元で合わせられた両手の先、人差し指の先を弄っている。穏乃の感情に感応してネコミミまでうな垂れて見える幻覚。


京太郎「え? それ学校指定の水着なの?」

京太郎「そんな学校、あって、たまるかってんだ!! どこだよその学校俺も通いてぇよ」

憧「単語だけ拾って頭の中で適当に再構成するのやめなさい。お年寄りじゃないんだから」

穏乃「やっぱり変、かな……似合ってない?」


不安げに俺を見上げてくる穏乃。俺はその細く震える薄い肩に優しく手を置く。


京太郎「いいかよく聞け穏乃」

穏乃「?」

京太郎「めちゃくちゃ可愛い。すげー似合ってるよ」


瞳の奥に感情の揺らぎ。そして光明。


穏乃「ホントッ!?」

京太郎「おう! 俺はバカだが嘘はつかない」

穏乃「そっか、可愛いか。…………可愛いかぁ、えへへへ///」


照れ隠しだろうか頭を掻く穏乃。それに合わせて結い上げたポニーテールが揺れ、ネコミミも機嫌良さ気に反応している。
え? ちょっと待って、どうなってんのこれ?


京太郎「それで前提としてよく似合ってるし可愛いけど、それを踏まえたうえで敢えて言うけど」

京太郎「やっぱヤバくないこれ? 犯罪臭が」

穏乃「えへへ、可愛いって褒めらちゃった///」テレテレ

和「よかったですね。穏乃」

憧「まぁ似合ってないとかいったら、八つ裂きにして海に撒いてたけどね」

玄「けどホントに可愛いね」


最早、誰も俺の意見など聞いていなかった。
なにがおかしいって男と女の感性の違いというか、あの格好を誰もおかしいと思わないということが一番おかしいと思う。
いや可愛いんだけどね。
あるいは、俺の前だけでとかにしてくれるとおにーさん嬉しいよ?


晴絵「まぁあんな格好出来るのも若いうちだけさね」ポン


先生がいうと説得力が違いいますね。



【おまけ】

玄「京太郎くん!」

京太郎「はいなんでしょう」


呼ばれて振り返る。
おうふ……。
視界に収まるホルターのトップ。薄い桜色のシンプルなビキニだ。
清楚で大胆というまさに玄さんの為のデザイン。
あの夜の過ちが脳裏をよぎる。
俺は熱い砂浜に額を叩きつける。


玄「い、いきなりどうしたの?」ビクビク


俺のいきなりの奇行にビビり気味の玄さん。


京太郎「いえ今、自分の中の自分という存在を徹底的にブチ滅ぼそうと」

玄「そ、そうなんだ……」

京太郎「それより玄さんこそどうしてんですか? てっきりみんなと泳ぎに行ったのかと」

玄「そう大変ですのだ! オペレーション・おもち発動ですのだ!」

京太郎「な!? オペレーション・おもちですって!?」


オペレーション・おもち
かつてはクロチャーの地球降下作戦のことをそう呼んだ。
クロチャーの回転速度を上昇させ、ラグランジュポイントでドラを爆発、均衡を破壊し地球に落とす。
その後、混乱に陥った地球を降下してきたクロチャーで制圧する。
これがオペレーション・おもちの全容である。
次回、キョウタロウ閃光に散る




ダイジェスト

菫「……」キュピーン

玄「ふぁ!?」

京太郎「ふぁ!?」

菫「ん? どうしたんだ2人とも」

玄「おもちが……」

京太郎「……ある?」

菫「ふ、これか」ポヨン

菫「レギュレーション変更だ」ドヤァァ

玄(なにがなんだかわけがわからない)

京太郎(いい加減な設定にしやがって)

玄「しかし!」

京太郎「我々で協議」

京玄「「した結果」」

京太郎「おもちがあれば細かいことなんてどうでもいいよね!」

玄「ですのだ!」

菫「まさか君たちはそれを締めのセリフにしようというのではないだろうな?」

穏乃「海だー!!」

優希「青いー!!」

淡「すごーいー!!」

3バカ「「「行くぞーっ!!」」」

京太郎「おーい。気を付けろよ!」

咲「あはは、みんな元気だね」

優希「咲ちゃんも京太郎も早く来るんだじぇ!」


ガシッ

咲「わわっ!?」

淡「テルーも行こう!」


ガシッ

照「えっ!? ちょ、待っ」


ダダダダダ

京太郎「海はにげねーから落ち着けってー」

憧「まったく子供なんだから」ヤレヤレ

和「そういう憧も、走り出したくてウズウズしてるように見えますけど」

憧「そ、そんなわけないでしょう!?」アセアセ

玄「じゃあ憧ちゃんが待ちきれないみたいだし私たちも行こっか?」

憧「もう、玄まで!」

京太郎「はははは」

憧「笑ってんじゃないわよ!」


ダッパーン

京太郎「ん?」

優希「おおおお、京太郎っ!!」

淡「たいへんたいへん! テルーとサキが波にのまれた!!」

京太郎「なにやっとんじゃあのアホ姉妹は!?」



ザザッ…

京太郎「はぁ……はぁ……ああ、くそ、マジ疲れた……」

咲「」

照「」

和「2人ともぐったりしてますが、ケガもないようですし呼吸も安定してますから、すぐに気が付くと思います」

玄「もう、優希ちゃんも淡ちゃんも無理矢理連れまわしちゃダメだよ?」

優希「反省してるじぇ」

淡「むしろ猛省」

憧「気のせいかな? あんまり反省してるように見えないけど」

穏乃「京太郎。大丈夫?」

京太郎「なんとか。ああ、ちょっと海水飲んじまった」

穏乃「はい、水」

京太郎「おお、すまん」

京太郎「あー生き返る」プハァ

和「これからどうしましょうか?」

京太郎「ああ、この2人なら俺が見とくからみんな泳いできてくれよ」

玄「そんな、悪いよ」

京太郎「いや、っていうか少し休ませてください」

京太郎「まさかものの数分で体力使い切るとは思わなかった」ハァ

玄「でも……」

京太郎「いいんですよ。せっかく海に来てるのにこんなとこで固まってても仕方ないですよ」

淡「よし! じゃあ行こうクロ!」ガシ

玄「え、あ……待って待って淡ちゃん!」


ダダダダ

憧「ぜんぜん反省してないわね」

京太郎「まぁあいつらしいっちゃあいつらしい」

憧「……」ウーン

憧「あたしも泳いでこよっと」


タッタッタッ

穏乃「あ、ちょっと憧!」


タタタタ

京太郎「憧は察しがよくて助かるね」

優希「のどちゃん、私たちも行くか?」

和「私は……私はそうですね、よろしければ須賀君の話し相手になりましょうか」

京太郎「え? いや、俺は別に」

優希「……」ジィイ

優希「わかったじぇ、じゃあまた後で」


タッタッタッ

咲「」ウーン

照「」ウーン

京太郎「よかったのか? 行かなくて」

和「身体を動かすのはあまり得意ではないので。隣、失礼しますね」


ポスッ

和「どちらかと言えば見ている方が好きなんです」

和「須賀君と一緒ですね?」ニコ

京太郎(リアクションに困るな……どう答えるべきなんだ?)

京太郎「へぇ。そうなんだ。和はもっと率先して動くタイプだと思ってたけど」

和「そんなことないですよ。割と内向的なので」

京太郎「そうか」

和「そうです」

京太郎「ははは」

和「ふふ」クスクス

京太郎「それで内向的な和さん。久し振りに旧友と遊べる感想は?」

和「懐かしい、と言うのが本音ですね」

和「海ではないのですが穏乃や憧、玄、赤土先生といろいろなところに行きましたから」

和「と言っても吉野の、小学生が行ける範囲でですけど」

京太郎「和は転校が多かったんだっけか」

和「はい。父も母も忙しい方なので。昔は、それが辛かったんですけど」

京太郎「……」

和「けど、悲しいことばかりでもないって最近になって気付けたんです」

京太郎「?」

和「清澄の皆さんに出会えましたから」

京太郎「……」クス

和「ゆーき、部長、染谷先輩」

和「そして咲さん」

京太郎(俺は?)

和「もちろん須賀君も」ニコ

京太郎「っ!?///」ドキ

和「覚えてますか? わたし達が始めて会ったときのこと」

京太郎「ん~、どうだったかな? あんま覚えてないな」

和「私、須賀君がいたから麻雀部に入ったんですよ?」

京太郎「え?」

咲「う、う~ん……」

京和「「!?」」


ムクリ

咲「あれ? 私……」

京太郎「お、おお。咲、目が覚めたか!?」

咲「確か、優希ちゃんに連れられて海に入って……」

京太郎「気分はどうだ? 水飲むか?」

咲「うん。ありがとう……」

咲「あ! おねーちゃんはっ!?」

照「」

咲「おねーちゃん、おねーちゃん!?」ユサユサ

京太郎「おいおい、そんな乱暴な」

照「う……ん~」

咲「よかった目が覚めて」

照「海怖い海怖い海怖い海怖い海怖い海怖い海怖い海怖い海怖い海怖い」ブツブツ

京太郎「すっかりトラウマになったな」

和「どうしましょうか」

京太郎「う~ん、」

京太郎「照さん? 照さ~ん!」

照「海怖い海怖い海怖い海こわ、あ、え? なに?」

京太郎「そんなに海が怖いなら浜辺で俺らと遊びませんか?」

照「あ、えっと……」

咲「……」ウンウン

和「……」コクコク

照「じゃあちょっとだけ」オズオズ

京太郎「はい」クス

京太郎「じゃあ砂上の楼閣でも作ろうか」

咲「す、すぐ壊れそうだね」

和「まぁまぁ」

京太郎「じゃあちょっと水汲んでくるからこっちはよろしく」

3人「「「はーい」」」

―――――
―――

和「~♪」シャッシャッ

咲「和ちゃんすごい!?」

和「ふふ、私の計算にかかればこのくらい造作もないですよ」

京太郎「いやしかしこれは凄いな。まさかこんな片田舎のビーチにサグラダ・ファミリア・カテドラルを創造する奴がいるとは」

京太郎「照さんそっちは、」

照「ぱーぱぱーん、ぱぱぱぱーん、ぱーぱぱぱぱーぱぱーん♪」

京太郎「」

京太郎「あの、照さん」

照「ん、なに? 京ちゃん」

京太郎「なんで反対側にマジ○ガーZの顔が付いてるんですかね?」

照「え? だってお城って」

京太郎「それは鉄の城です」

照「あれ?」

咲「ぷっ、あはははは。もう、やだおねーちゃん」

和「ふふ」クスクス

京太郎「まったく、照さんは。ははは」

照「………………ふふ、ははは」


―――――
―――


和「出来ましたね」

京太郎「反対側おかしいけどな」

照「むぅ、京ちゃんしつこい」

京太郎「いや、だってこれは」

咲「まぁまぁ。これはこれで面白いから」

京太郎「ん~、まぁそうだな」

4人「「「「完成! 聖家族贖罪教会Z!」」」」ワーイ


ダッパーン!

咲「あ、高波……」


グチャ~

4人「「「「…………」」」」


【おまけ】

宥「気持ちいいね~」ガタガタガタガタ

灼「気持ちい」

尭深「あの、お茶飲みますか?」

宥「あ、ありがとう~」ガタガタガタガタ

尭深「鷺森さんも、よかったら」

灼「どうも」ペコ

灼(熱い……)

宥「ずず~」

尭深「ずず~」

宥尭「「ほぉ……」

宥「あったか~い」ニコニコ

灼(熱いけど、お茶)

灼「美味し……」ズズ

尭深「……」ニコリ

灼「///」

宥「こんな日は、お鍋とか食べたね~」

灼尭「「うん」」

「「……………………え?」」



【次回予告】


京太郎「鍋やるべー!!」

穏乃「鍋やるべー!!」\>ワ</

次回 夏だ!海だ!水着で鍋パーティーだ!