和(改めて考えると須賀くんってかなりの優良物件ですよね)

和(昔は咲さんしか見てなかったので気にしてませんでしたがなかなかのイケメンですし優しいですし)

和(興味なかったからって男性からの告白を断り続けて気がついたらアラサー、婚期ギリギリです)

和(いつもは咲さんが須賀くんにべったりなのでなかなか積極的に行けませんでしたが今日咲さんは遠征中!)

和(このチャンスは逃せません)

和「す、須賀きゅん!」

京太郎「は?」

和(しまったあああああ!緊張のあまり噛んでしまいました、どうしましょう須賀くんに変な目で見られてないでしょうか)

和「い、いえなんでもありましぇん」

京太郎「お、おうそうか」

和(ああああああああああ!!またやってしまいました!しかもせっかく食事に誘おうと話かけたのに会話きれちゃったじゃないですか)

京太郎「あ、そうだ和。今暇か?」

和「ふぇ!?」

京太郎「本当に今日のお前大丈夫か!?」

和「大丈夫です!暇かですね?いやー普段は忙しいんですが、今日だけ!本当に今日だけなら空いてますよ!」

京太郎「そうか、なら飯でもいかねーか?」

和「ふぁ!?」

和(千載一遇のチャンスキター!須賀くんからなんてそんなオカルトありえたんですね!)



~ファミレス~

京太郎「いやー今日お前に会えてよかったわ」

和(ハァ、つい五分ほど前ならこの言葉でまた我を忘れるほど喜んだんでしょうが)

和(もうその言葉の意味が分かっちゃってるんですよね。いや、それでも嬉しいですよ?)

和(録音しとけば良かったと思うくらいには、でもまさか)

店員「レディースセットお待たせしました」

和(私にレディースセットを頼ませるためだったとは)

京太郎「今日CMやってうまそうだったからぜひ来たいと思ってたんだけど、今日から咲遠征行っちゃってさ」

和「ええ、咲さんから聞いてます」

京太郎「おう、そうか。相変わらず仲いいもんなお前ら」

和「そうですね、今でも頻繁に連絡を取り合ってます」

和(大体は咲さんの須賀くんとの距離が近い自慢ですけどね。威嚇の意味も込めてあるんでしょうが)

京太郎「でも、今日はこれでいいとして明日からどうしようかな。やっぱりコンビニ飯生活になるのかなー」

和「何がですか?」

京太郎「いや、普段は飯を咲が作りに来てくれるんだけどいまあいついな

和「今なんて言いました!?」

京太郎「いま咲いないなーって」

和「その前です!」

京太郎「おいおいあんまでかい声出すと店に迷惑だろ」

和「あ、すいません。私としたことが」

和「で、さっきなんて言いましたっけ?」

京太郎「えーと、確かいつもは咲が作りに来てくれるんだけど」

和「そ、そんなオカルト……」

京太郎「ん?咲が料理ってそんな意外か?」

京太郎「あいつ家庭の事情であいつが作らざるを得なかったから大分慣れてるぞ。ってこれ言ってよかったのか?」

和「それは咲さんから聞いているので問題ありませんがそういうことじゃなくて」

和(まさか咲さんがここまで和了に近づいていたとは、希望的観測でイーシャン悪く見てテンパイ)

和(これは手段を選んでられませんね。甘いですよ咲さん。三シャンテン程度の状況、普段の私なら降りるところですが)

和(人は予想を超えてくる)

和「須賀くん、コンビニ弁当ばかりだと体に悪いですよ」

京太郎「だよなぁ。まあでも咲がいない間は仕方ないしせいぜい一週間だしなんとかなんだろ」

和「一週間もです。不摂生すぎます。お金も馬鹿になりませんし。」

京太郎「お、おう」

和「で・す・の・で、咲さんがいない間は、私が須賀くんのご飯をつくってあげます」

京太郎「え?」



~スーパー~

京太郎(で、和がまずは食材を買いに行きましょうと言ったから流れで来ちゃったけど)

和「やはりここは定番の肉じゃがでしょうかいやスッポン鍋なんかもありですね」ブツブツ

京太郎(高校時代の俺なら、和が料理を作りに来てくれるなんて飛び上がって喜ぶレベルだったけどなぁ)

京太郎(なんか最近の和ちょっと怖いんだよな)

和「須賀くんは何がいいですか?」

京太郎「ん?ああ、なんでもいいよ。作ってもらえるだけで十分だし」

和「そうですか。なら店内を回りつつ良さげなものを見つけたらそれを基にメニューを考える感じでいいですかね」

京太郎「おうそれで頼む」

和「とりあえずこんなもんでいいですかね。結構買ってしまいました」

京太郎「そうだな。おっともうこんな時間だしそろそろ帰った方がいいんじゃないか?送ってくぞ」

和「待ってください。明日の朝食はどうするつもりですか?」

京太郎「別に一食くらい抜いても大丈夫だって」

和「何を言ってるんですか。朝食は一日で最も大切な食事なんですよ?」

和「明日は平日ですから仕事もありますよね?しっかりとエネルギー補給しないで働くなんて体に悪いです」

和「ということでお邪魔でなければ今から須賀くんの家に行ってレンジで温めれば済むような準備をしたいのですが」



~京太郎のアパート~

京太郎(和が俺の家で料理作るこの光景、昔何回妄想したかな)

京太郎(色々考えることはあるけどとりあえずは素直に感謝しておこう)

和「お味噌汁の出汁はこんなもんでいいですね、あとは鮭に焼き目をつけて、炊飯器のスイッチをいれて」

京太郎(でもやっぱりこいつかわいいよなぁ」

和「」ガタッ

京太郎「どうした!?大丈夫か?」

和(危うくフライパンをひっくり返すところでした。その様子だと声にだしちゃったのに気づいてないみたいですね)

和(全く、不意打ちなんてズルいですよ)

和「ふぅ、とりあえずはこんなもんですかね。後は温めて食べてください」

京太郎「分かった。ありがとな、こんな時間まで」

和「いえ、構いませんよ。って、あれ?」

京太郎「どうした?」

和「あ、あはは。終電なくなっちゃいましたね////」チラッチラッ

京太郎(落ち着け、落ち着くんだ俺!和は今風呂に入ってる、ただそれだけだ。他には何もない)

京太郎(もう遅い時間だからしょうがなく泊まるだけ。他意はない。)

京太郎(女子が泊まるくらい咲がしょっちゅう来てるだろ。その度なにも怒らせるようなことしてないはずなのに朝不機嫌そうだったが)

和「須賀くん」

京太郎「ひゃい!」

和「クス、どうしたんですかそんな素っ頓狂な声出して」

京太郎「い、いや……ってちょっと待て」

京太郎(バスタオル一枚の和……だと?)

京太郎(俺は夢でも見ているのだろうか?脱衣所の扉を少し開けた隙間から、バスタオル姿の和が俺を見ている)

和「ああ、この格好ですか?いえ、よく考えたら着替えがなかったのでどうしたものかと」

京太郎「さ、咲が忘れてったのがあるから持ってくる」

和「すいません。お願いします」

和(咲さんのだとサイズがあいませんが逆に好都合かもしれませんね)

京太郎(で、咲のをとりあえず着てもらったのはいいものの。これはこれでなんか)

和「さすがに胸元がキツイですね」

京太郎(むしろけしからんことになってる)

京太郎(しかもさすがに厳しいのと寝るだけだからいいとブラをしてないから、さらにヤバい)

和「おっと携帯を落としてしまいました」

京太郎(ヤバい。見えそう。谷間だけでなく色々と)

和「須賀くん?どうしました?お風呂入らないんですか?座りっぱなしですが」

京太郎「い、今テレビから目が放せないんだよ」

和「そうですか。なら一緒に見てもいいですか?」

京太郎「あ、ああ」

和「では失礼して」チョコン

京太郎(ちょっ、肩が触れる距離まで来たんだが)

和「なんの番組ですか?」

京太郎「ホラーだよ」

京太郎(正直風呂に入ってる和が気になってあんま内容が入ってこなかったが)

和「須賀くんはホラー得意なんですか?」

京太郎「普通かな。怖いとは思うけど過剰に反応はしない程度」

和「そうですか」

和(ホラーですか、これはもらいましたね)

京太郎「和はホラー強いだろ?ほら、なんだっけ?そんなオカモチだっけ?」

和「現象は信じてませんが映画やドラマなんかでは演出がすごいものもありますからそういうのは怖さを感じますね」

京太郎「そんなもんなのか」

和「そんなもんなんです」

和(ま、本当は全く怖くないんですけど。こう言っておけば)


ワハハーマタハイガカッテニウゴキダシタナー
ワラッテルバアイカ
サトミチャンコワイヨー
ウム


和「キャー(棒)」(京太郎に抱きつく)

和(これが可能ですからね)

京太郎「おい、和?」

和「あ、すいません。つい」

京太郎「い、いや構わないんだけどさ、その」

京太郎(おもちが、腕に咲に抱きつかれたときには感じられなかった豊かなおもちの感触が)

和「その?」

京太郎「な、なんでもない」

京太郎(しかも今和はノーブラなんだよな)ゴクリ

京太郎(っていかんいかんなにを考えてるんだ俺は!)

京太郎「風呂入ってくる!」

和「あ、はい」

和(チッ、後一押しだったのに)

和(行ってしまいましたね。須賀くんがいないんじゃホラー見る意味なんてありませんしチャンネル変えましょうか)ポチッ


えり「福与アナ熱愛疑惑について続報がきました」

えり「週刊誌に一般男性と一緒に街を歩いているところを撮られた福与アナに直接伺ったところ」

えり「二人は結婚を前提にお付き合いをしているとのことです」

えり「なかなかそういった話題に疎かっただけに反響を呼びましたが、親交の深い小鍛冶プロとしてはどう思いますか?」

健夜「こーこちゃんも私をおいてくんだね裏切るんだね許さないよなにも私に話さずに婚約にこぎつけるなんて」ブツブツ

えり「あ、あの小鍛冶プロ?」

健夜「ああ、うん。めでたいと思うよ?私みたいにアラフォー独身にならずにすんで」

えり「し、CM入ります!」


和(小鍛冶プロ……。昔はアラサー独身なんてと少し笑っていましたが、いざ自分がなるとキツイですね)

和(来年で三十路。なんとしても今週中に決めなければ)

和(次はどうしましょうか)

和(さっきの反応を見る限り須賀くんはあまり女性に慣れていない様子ですね)

和(つまり咲さんともそういった行為はなかったとみていいでしょう)

和(須賀くんのことですから自分がやったことの責任はきちんと取るはずです)

和(つまり次に切る牌は既成事実ですね)

京太郎「ふう、やっぱ風呂入るとさっぱりするな」

和「あ、早かったですね」

京太郎「男の風呂なんてこんなもんだろ」

和「で、ですよね」

和(さすがに経験ないから分からないとは言えませんね)

和「そうだ須賀くん、少しお酒飲みませんか?」

京太郎「いいぜ」

和(勝った)



京太郎「おい和、そんな飲みまくって大丈夫かよ」

和「平気ですよ~。これでも結構お酒には強いんですよ?」

京太郎「全然平気じゃねえだろ。麻雀してる時みてえに顔赤いぞ」

和「なんだか暑くなってきましたね」プチプチ

京太郎「落ち着け和!」

京太郎(元から見えそうだったけど今度は完全に見えちゃう!見ちゃだめなのに目が放せない)

和「あれ~?須賀くんなんでそんな慌ててるんですか?」

京太郎「なんでってそりゃお前が脱ごうとしてるからだろ!」

和「いいじゃないですか別に。私は暑いから脱ぐ須賀くんは私の裸が見れる、win-winの関係じゃないですか。」

和「それともこんなアラサーのだらしない体なんて見たくないですか?そうですよね?」

和「やっぱり男性は若い人がいいんですよね?内木さんも若い子大好きって言ってましたし」グスッグスッ

京太郎「いや全然そんなことないし」

京太郎「なによりお前まだ若いし綺麗で変な意味じゃなくてスタイルいいと思うし見たいとも思うけどそうじゃなくて」

和「じゃあどういうことなんですかー!?」

京太郎「お前やっぱ大分酔ってるだろ!?」

和「酔ってませんよ!」

京太郎「分かった分かった。分かったからとりあえず今日はもう寝ろ」

京太郎「俺の普段使ってるのでよければベッドあるけど、流石に嫌だろうから客用のベッド敷くよ」

和「むー。しょうがないですね」

京太郎「ちょっと待ってろ。持ってくるから」

京太郎「よっと、ちょくちょく干してるからダニとかは心配しなくていいぞ」

京太郎「あと飲み終わったやつ片付けるから渡してくれ」

和「は~い」ポイッ

京太郎「うわ待て投げるな!しかもそれまだ少し入ってるやつじゃ」


ドサッビチャア

京太郎「……」

和「わーお布団濡れちゃいましたね」

京太郎「はぁ、もういいや。和は嫌かもしれんが俺のベッド使ってくれ。俺は適当にそこらへんで寝るから」

和「え~?そんなの駄目ですよ。春先とはいえまだ夜は冷えますし。なにより泊めてもらう立場なのに悪いです」

京太郎「毛布は濡れてないから大丈夫だよ。俺のことなら気にすんな。飯つくってもらうんだから。さて、この布団どうしたものか?」

和「あ、そうだ!いいこと思いつきました!」


和「一緒に寝ればいいんですよ!」



京太郎(結局、あの後和に「須賀くんがベッドで寝ないなら私は外で寝ます」とまで言われたので一緒に寝ることになったのだが)

和「」スースー

京太郎(持つかな俺の理性)

京太郎(いや、最初は和を寝付かせたらこっそり出て床で寝ようと思ったんだけどさ)

和「」ギュー

京太郎(和がいまだかつてないほどの握力を込めて俺の手を放さなくて出れない)

京太郎(もちろん力は俺の方があるから出られるけどそしたら起きちゃうだろうし)

京太郎(しかしこのままではただでさえチラチラ見えてたものが寝相で器用にはだけて)

京太郎(モロ見えになった状態の和と同じ布団で一晩すごすことに)

京太郎(しかし和のおもちは相変わらずすげえな。だらしない体とかいってたがとんでもない)

京太郎(大人になってさらに色気が増してるよ。高校の時よりさらに大きくなってるし。咲は照さんともども……。やはり遺伝子か)

京太郎(ヤバい見てると理性が。しかしおもちの引力から目がのがれられない)

京太郎(……寝てるし、ちょっとくらいならばれないかな)

京太郎「」ソー

和「んん、ふふ~。咲さんがいない間は任せてくださいね」スースー

京太郎「」ビク

京太郎「いや、やっぱこういうのはよくないよな。和の信頼を失いたくないし」

京太郎「はぁ俺もがんばって寝よう」

京太郎(政治が悪いが一匹政治が悪いが二匹政治が悪いが三匹おもちが四つ)

京太郎「」スースー

和(あれ?既成事実を作るはずがいつの間にか少しですが寝てしまったようですね)

和(須賀くんも寝てしまいましたか。残念ですね)

和(しかしここまでお膳立てしてなにもしないとはチキンってレベルじゃないですよ。修行僧かなにかですか)

和(まぁ実際にここでなんのためらいもなくおそってくるような人なら私も考えましたが、いくらなんでも本当になにもしないって)

和(はぁ、なんか毒気抜かれちゃいましたし今日のところは諦めて寝ましょうか。明日からまた策を練る必要がありますね)

和「須賀くん、起きて下さい」

京太郎「ん?あれ?なんで和が?」

和「もう忘れたんですか?あんなことまでしたのに」

京太郎「あんなこと!?本当にごめん!記憶がないんだ!悪い!なんでもするから許してくれ!」

和「なんでも?ふーん……なら、責任とってもらいましょうか」

京太郎「ああ、もちろん!って、それはもしかして?」

和「ええ」

京太郎「で、でもその俺たちまだそんな関係じゃ、いやでもそんな関係じゃないのに手を出したのは俺だし」

和「ぷっ、あははは」

京太郎「ど、どうした和?やっぱり俺が」

和「い、いえはは、こんな、簡単なはは、嘘にひっかかるなんて」

和「須賀くん、機嫌を直して下さいよ」

京太郎「俺さっき本気で焦ったんだからな!」

和「まぁまぁ。だから謝ってるじゃないですか。どうぞ、朝食できましたよ」

京太郎「お、サンキュ」

京太郎「いただきます」モグモグ

和「ど、どうですか?お口に合えばいいんですが」

京太郎「」モグモグゴクン

和「あの?」ドキドキ

京太郎「うめえ!すっげえうめえよ!」

京太郎「この味噌汁とか出汁のアクとか雑味とか全くなくて出汁の旨味と味噌の香りだけが感じられるっていうか」

和「そ、そうですか。なら良かったです」

京太郎「いやホント、毎日飲みたいくらいだよ」

和「」

和「しょ、しょうがないですね。まぁそこまで言われたら、私も悪い気はしませんし?毎日つくってあげるのもやぶさかではありませんよ?」

京太郎「お!マジ?」

和「その代わり、さっきの許して下さいね」

京太郎「許す許す!ていうかもう許してる」

和「ふふ、しょうがないですね。じゃあまず二人で住める家を探さないと行けませんね」

和「いえ将来的に子どもができることも考えるといっそマイホームを建てるのも悪くはありませんね。」ブツブツ

京太郎「の、和?」

和「京太郎君は子どもが欲しいですか?団体戦出れるくらい?手牌の数くらい?」

和「ああ、お金は心配しないで下さい。仕事がら結構いいお給料もらってますし」ブツブツ

京太郎「おいどうした和?」

和「ハッ、い、いえなんでもありません」

和(またこんな、どんだけ焦ってるんですか私は。でも今回は須賀くんがあんなこと言ったせいですからね)

京太郎「えっと、なんかよくわからないけどごめんな?」

和「全く、須賀くん、いいですか?さっきみたいなことは誤解を招きますから下手に使わないでください」

和「私だからなんとかなりましたが他の人に言ったら大変なことになりますよ?」

京太郎「お、おう分かった」

京太郎「ごちそうさまでした。さて洗い物して仕事行かないとな」

和「洗い物なら私やりますよ」

京太郎「そこまでは悪いって。お前も仕事あるだろ?」

和「いえ今日は休みなので問題ありません」

和「なんだったら部屋の掃除と、昨日汚してしまったお布団のクリーニング依頼もやっておきますよ?」

京太郎「いやいやホントいいって」

和「では言い換えましょう。昨日泊めてもらったお礼に私が掃除したいんです。お布団を汚して大分迷惑をかけましたし」

京太郎「んー、まあそこまで言うなら」

京太郎「合鍵預けて置くから今日のとこは自由に使ってくれ」

和「ありがとうございます」ニヤリ

和「さて、須賀くんは行ってしまいましたか」

和「とりあえずはお布団をクリーニングに持って行って、帰りにホームセンター行って鍵を複製しましょうか」

和「後は食材を買って……って須賀くんはお昼はどうするんでしょうか?」

和「ふんふむ」ニヤリ



~須賀の仕事場~

嫁田「須賀、食堂行こうぜ」

京太郎「おう、ちょっと待ってろ今終わらせる」

同僚「おい須賀!お前に電話だ」

京太郎「俺に?なんだろ。はい今変わりました須賀です」

受付「あ、須賀さん、受付で奥さんがお弁当を届けに来てくださいましたよ。あんなキレイな人がなんて角におけませんね」

京太郎「え?俺どくし──」プツ


受付「あ、来たみたいですね」

和「ええ」

京太郎「おかしいと思ったらやっぱり和か」

受付「もう、女性を待たせちゃいけませんよ」

京太郎「すいません。ってその前に奥さんちゃいます。和がそう言ったんですか?」

和「そんなこと言ってませんよ?ねえ?」

受付「え、ええでも指輪をしてたから」

和「これはファッションです」

京太郎「やっぱりお前のせいじゃねーか!」

嫁田「なんだったんだ京太郎……ってもしかして原村さん?」

和「えっと」

京太郎「ああ和、こいつは元清澄時代の俺の友達で現俺の同僚の嫁田」

嫁田「あ、嫁田と言います」

和「あ、すいません覚えてなくて。多分お会いしたことあるんですよね?私を知ってるってことは」

嫁田「あ、いえこれといった面識もなかったんで知らなくて当然です気にしないでください」

和「じゃあなんで……?」

京太郎「そりゃお前は校内では知らないものがいないレベルの有名人だったからな」

和「そうだったんですか?」

京太郎「当然だろ麻雀部が初出場でいきなり全国優勝したんだぞ。校内で大分話題になったろ」

和「ああそういえば」

京太郎「しかも学年トップクラスの美人だったからな。男子人気もすごかったんだぞ」

和「へえ……その中には須賀くんも含まれてたんですか?」

須賀「……ノーコメントで」

和「ではお弁当も渡しましたし帰りますね。お夕飯もつくっておきますからできるだけ残業とか寄り道とかしないでかえって来てくださいね」

京太郎「おお、弁当ありがとな」

和「それでは失礼しました」

嫁田「あ、はい」

嫁田「おい!須賀なんだよ今の会話!まさか同棲してんのか?あの美人と!咲ちゃんというものがありながら!」

京太郎「ちげーよ。まず咲とはそんなんじゃないし、和は咲がいない間飯をつくってくれてるだけだって」

嫁田「本当になにもないのか?」

京太郎「だからないって。安心しろよ」

嫁田「それはそれであの二人に同情するわ」

京太郎「なんの話だよ?」



~京太郎のアパート~

京太郎「ただいま」

和「おかえりなさい。お夕飯もうすぐできますよ」

京太郎「そっか。ん?その大量の荷物は?」

和「ああ、私の着替えです。昨日は着替えなくて困りましたからね」

京太郎「ああなるほど。って今日も泊まる気なのか!?」

和「そのつもりでしたが、いけませんか?」

京太郎「いやいや駄目だろ流石に。親御さんは何も言ってこないのか?」

和「最近あまり家に帰りたくないんです。父がしつこくお見合いを勧めてきて」

京太郎「そんな嫌なやつばっかなのか?」

和「いえ、職業柄大企業にもツテがあるのでそういったところの素晴らしい方なんだと思います」

和「でも、やはり会ったこともない人との結婚はあまり想像がつかなくて」

京太郎「まぁなあ」

和「なんて、こんなこと言ってるから独身のままアラサーなんですよね」

京太郎「俺はそんな悪いこととは思わないけどな。お見合いも悪くはないと思うけど、和が望む形で生きるのが一番だって」

和「須賀くん……」

和「須賀くんは、こんな私でも結婚できると思いますか?」

京太郎「あたりまえだって。和くらい美人で家事もできて優しいやつなら男は黙って無いって」

京太郎「和が結婚できないならそれは見る目のない男が悪いんだよ」

和「それじゃ、あなたも同罪じゃないですか」ボソ

京太郎「ん?なんて?」

和「なんでもありません!それより、もう少しだけここにいさせてもらってもいいですか?」

京太郎「しょうがねえな。ただし、親御さんにしっかり連絡しろよ?」

和「はい、ありがとうございます」

和(なんで、私がお見合いを断り続けたか、自分でも異常と分かるほどに拒否反応を示したのか)

和(今やっと分かりました。私はきっと、自分でもわからないうちに、この人に)

和「あの、須賀くん。図々しいですがもう一つだけいいですか?」

京太郎「なんだ?」

和「京太郎くんって呼んでもいいですか?」


和(それから私と京太郎くんの生活が始まりました)

和(なんていうと新婚さんみたいですが、そんなことはなく、彼は相変わらずわのアプローチにも関わらず手を出し続けることはなく)

和(ただ一緒に時間をすごすだけでしたが)

和(お父さんとも話あってしばらくお見合いはなくしてもらいました)

和(これで駄目ならお父さんに従ってお見合いを受けるという約束つきですが)

和(そして時は流れ、咲さんが遠征から帰ってくる日がきました)

和(しかし私は、彼といる幸せばかりに気を取られ、咲さんがドアをノックする瞬間まで、そのことを忘れていたのでした)


京太郎「相変わらず和の作る飯はうまいな」

和「京太郎くんにそう言ってもらえると作った甲斐があります」

京太郎「でも、この味も今日で終わりと思うと寂しいな」

和「え?それってどういう」

コンコンキョーチャンタダイマー

和「っ!咲さん!?」

京太郎「まだ午前なのに。案外帰ってくるの早いのな。ちょっと悪い。ドア開けてくる」

和「待ってください!」(京太郎に抱きつく)

京太郎「和?」

和「開けないでください。もう少し、もう少しだけ、このままでいさせてください」

京太郎「それってどういう……?」

和「ごめんなさい。京太郎くん。でも少しだけこのまま私の言葉を聞いてください」

京太郎(和、震えてるのか?それに眼がいつもの俺をからかうときとは全然違う)

和「ごめんなさい。私、京太郎くんにウソをついてました。」

京太郎「え?」

和「お見合いを断った理由。初対面の人と結婚できないっていいましたが、あれは違うんです。」

京太郎「じゃあなんで」

和「もう時間もありませんし、後悔したくないので言いますね」

和「私は、ずっと、京太郎くんが!


ガチャ

咲「もー京ちゃん。まだあんなところに鍵隠してるの?駄目だよ危ないじゃ、な……え?」ドサッ

京太郎「……」

和「……」

咲「のどか、ちゃん?」

和「……ごめんなさい咲さん」

咲「私、帰るね?」

京太郎「え?」

咲「ごめんなさい」ダッ

京太郎「おい!咲!?」

和「ごめんなさい」(京太郎から体を放す)

京太郎「いきなりどうしたんだ?」

和「忘れてください。なんでもありませんから。それより、追いかけてあげなくていいんですか?」

京太郎「……さっきなんて言おうとしたんだ?もしかして?」

和「もしかして、なんですか?告白とでも思いましたか?勘違いも甚だしいですよ。そんなオカルトありえるわけないじゃないですか」

和「さ、早く行ってあげてください」

和(きょ、いえ須賀くんはもう行きましたよね)

和(攻め切れませんでしたね)

和「仕方ないですよね。私は本来ここにいてはいけない存在ですもの。咲さんの大切な人を横取りしようとした卑怯者ですもの」

和「須賀くんには咲さんがお似合いですよ。私なんかよりずっと長い付き合いですもの」

和「あれ?何故でしょう?涙が。グスっ、ヒック、わあああああああああああん」



~とある公園~

京太郎「咲!」

咲「……京ちゃん」

京太郎「やっと見つけたぜ」

咲「いつもそうだよね。私が悲しいことがあって飛び出したとき、いつも最初に見つけてくれる」

京太郎「……咲、お前もしかして泣いて」

咲「いつからだろう。私、京ちゃんがずっとそばにいて、ずっと私を守ってくれて……」

咲「ずっとこうして見つけ出してくれると思ってた。それがあたりまえだと思ってた。」

京太郎「咲、お前……」

咲「でも違うんだね。京ちゃんには京ちゃんの人生があるんだよ」

咲「そして私にも私の人生がある」

咲「京ちゃん私たちはもうあんまり関わらない方がいいのかもね」

京太郎(そんなこと……)

京太郎「そんな寂しいこと言うなよ!」(咲を抱きしめる)

咲「……京ちゃん」

京太郎「関わらない方がいいなんてそんなさみしいこと言うなよ!」

京太郎「俺だってお前が飯作りにきて、一緒に食べて、相変わらず嫁田にちゃかされて、そんな人生が当たりまえだと思ってたよ!」

京太郎「お前がいない人生なんて考えられない!だから、そんなさみしいこと言わないでくれよ」ポロツ

咲「……京ちゃん、男のくせに泣いてるの?」

京太郎「そ、そんなわけねえだろ」

咲「クス、そういうことにしといてあげますかね」

京太郎「なんだよその言い方」

咲「京ちゃん、帰ろっか」



~原村家~

恵「本当にいいのか、和?お見合いをしろとは言ったが、なにもすぐさま結婚しろとは」

和「いいんです。私が決めたことですから」

和「それに、こうでもしないと諦められませんからね」

恵「まあ、相手さんもお前を気にいってくれてるし、お前がそういうならいいんだが」


和(今私は、式場の手配に教会にきています。お相手は、お見合いで知りあった人)

和(とても優しい方ですし、大企業の重要ポストですし、かっこいいですし、申し分のない方なのに、どうして心が惹かれないのでしょうか)

和(須賀くんよりも、全然すごい方のはずなのに)

和(どうして私は、いまだに須賀くんを忘れられないのでしょうか)

???「あれ?のどちゃん?」

和「?」

???「やっぱりのどちゃんか!久しぶりだじぇ!」

和「!優希……」

優希「いやーまさかこんなとこでのどちゃんに会うなんて思わなかったじぇ」

和「私もです。優希も結婚式の予定が?」

優希「だじぇ!近いうちに式をあげたいと思ってな」

和「そうなんですか。私も近いうちに」

優希「の、割りに浮かない顔だな?」

和「いろいろあるんですよ私にも」

優希「そんな顔ののどちゃん初めて見たじぇ。でその顔はいつかの私に似てる」

優希「話すだけで楽になるじぇ。辛いのは分かる。私もあいつにふられたときそうだった」

和「それって……」

優希「のどちゃんならさすがに分かるか、でも今はとっくに忘れて新しい恋と幸せにいきてるじょ」

和(もうすぐ式もあげるしな、と付け加えて言った彼女の表情は、確かに陰りがなく、昔見た無邪気な明るい笑顔のままでした)

和「ありがとうございます優希。こんな言い方はおかしいかもしれませんが、失恋の先輩として、相談にのってもらえますか?」

優希「おやすい御用だじぇ!」

和「これが、私のいきさつです」

優希「それで?」

和「それでもなにもこれで終わりですが」

優希「はああああああ?なにが終わりだじぇ!なにも終わってないじょ!」

優希「要するにのどちゃんは終わらせるのが怖いから逃げただけなんだじょ」

和「逃げたなんて、私は咲さんを裏切れなくて」

優希「それが逃げだと言ってんだじぇ!」

和「なにも知らないあなたに」


パァン!

和「……え?」

和(初めて優希に叩かれました。ふざけて須賀くんを軽く叩くことはしょっちゅうでしたが)

和(心優しい優希が本気で人を叩くところなんて、中学時代から今までで初めてです)

優希「甘えてんじゃねーじょ!」

和(ええ、わかってましたよ。そんなこと。優しい咲さんのことです)

和(私が成功しようと失敗しようときっと私よりも泣いてくれるであろうこと。私はただ恐れてただけだということ。)

和「そうですね、優希。確かに私は逃げてました。きっと私もフラれると思います」

和「でもあなたのおかげで、それも悪くないと思えてきました」

優希「のどちゃん。良い目になったな。さっきまでとは違う。みんなとインハイに出たときのようなイキイキとした目」

和「ありがとうございました。優希。これでやっと前に進めます」

優希「健闘を祈るじぇ」

和「ええ。そちらも。式には呼んでくださいね」



~京太郎のアパート~

咲「はい、京ちゃん。お夕飯」

京太郎「おう」モグモグ

京太郎「なあ咲、味噌変えた?」

咲「ううん。いつも通りだよ。なんで?」

京太郎「いや、なんか味変わったような気がして」

咲「変な京ちゃん」

咲(あれから私たちは同棲を始めました)

咲(幸せなはずなのに、京ちゃんは時々ドアの方を何するでもなくずっと見ています)

咲(とても悲しそうな目で。誰かが来るのを待ってるかのように)

咲(いえ、誰かなんて曖昧な言い方をしましたが、私にはわかってます。京ちゃんは和ちゃんをずっと待ってるんだと思います)

咲(そして私も、幸せかと言われるとそうでもありません。あの日から和ちゃんへの罪悪感に押しつぶされてしまいそうで)

咲(和ちゃんとほいまだに連絡がとれていません)

咲(どんなことを言われてもいい。許してもらえなくてもいい)

咲(だからもう一度だけ、もう一度だけでいいの、和ちゃんに会って謝りたい)

咲(和ちゃん。今なにしてるの?)

咲(まさかはやまったことをしてなんかないよね?)


モーイッポフーミダセル

咲「着信!まさか和ちゃん!?」ピッ

咲「もしもし!和ちゃん?」

???「久しぶりだな、咲ちゃん。残念ながらのどちゃんではないじぇ」

咲「その声はもしかして」

優希「元気にしてたか?」

咲「久しぶり優希ちゃん。突然どうしたの?」

優希「いや、まあなんというか」

咲「歯切れ悪いね、言いにくいことなの?」

優希「……その、最近のどちゃんから連絡はあったか?」

咲「いや、ないけど。こっちからもちょくちょくかけてみてはいるんだけど繋がんなくて」

優希「そっか」

咲「どうかしたの?」

優希「ごめん咲ちゃん。先に謝っておくじょ。私、咲ちゃんに悪いことしちゃった」

咲「え?」

優希「実はこの前式場で……」

咲「そんなことが」

優希「本当にごめん咲ちゃん。私は咲き咲ちゃんのライバルに塩をおくってしまったじぇ」

咲「謝らないで。優希ちゃん。むしろ感謝したいぐらいもん」

咲「私このままじゃいけないと思ってたの」

咲「このままじゃきっと私も和ちゃんも京ちゃんも、みんなが不幸になってた。だから、そうならないようにきっかけを作ってくれてありがとう」

優希「咲ちゃん……」

咲「私なら大丈夫。どうなろうと、京ちゃんが選んだ結果なら悔いはないから」

優希「ありがとう咲ちゃん」

優希「それでのどちゃんのことなんだけど。この前式場に行った時に聞いたんだが、のどちゃんのお見合い相手との式は明日らしいんだ」

咲「明日?」

優希「うん。だから今まで連絡なかったのならもうすぐのどちゃんがなんらかのアクションを起こすはずだじょ」

咲「うん、分かった」

優希「こんなこと咲ちゃんに言っていいかわからないけどもしあいつがそれを受けてなにかしようと思っても、止めないで欲しい」

咲「大丈夫。分かってる。それが私のできる唯一の罪滅ぼしだもん」

優希「咲ちゃん、ありがとう」

咲「優希ちゃん、連絡ありがとね。ダメだった後は二人で飲みに行こ?」

優希「全くこいつらはなんで二人ともフラれると決めつけてるんだか」

優希「まっ咲ちゃんには私がフラれた時世話になったからな。お安い御用だじぇ!」

~翌日、結婚式場~

恵「ついに当日だが、大丈夫か和?」

和「はい」

恵「和、いい表情をしてるな。少し前までは沈んだ表情だったから心配していたが」

和「ええ。素晴らしい友人のおかげでもう迷いはありません」

恵「そうか。じゃあ私は相手さんの方に顔を出して来るから」

和「では私はドレスに着替えに行きます」

恵「和のドレス姿、楽しみにしてるぞ」

和「期待してて下さい」


和(お父さんはもう行きましたよね)

和(ごめんなさいお父さん、咲さん、未来の旦那さん、今日祝福にいらしてくれたみなさん)

和(私はもう後悔をしないと決めたんです)



~京太郎のアパート~

ワタシーマッテタヨー

咲「!きた!和ちゃんからのメール!」

~京太郎の仕事場~

ゼッタイユーズレーナイコノトキヲマーテタヨー

京太郎「ん?取引先からか?……和!?」

嫁田「おい!どこいくんだよ!」

京太郎「すまん腹が超痛いから早退する」

嫁田「はぁ、その必死な様子、なんかあったんだな?てめえの分も請け負っといてやるからしっかりケリつけとこいよ?」

京太郎「おう!」



~結婚式場~

神父「それでは近いのキスを」

和「あのすいません。その前に少し、この場を借りてお話したいことがあるんですが」

神父「今ですか」

和「今じゃないとダメなんです。神父さん、懺悔したいことがあるんです」

神父「……しかし」

恵「私からも頼む」

和「お父さん!」

神父「よろしいのですか?」

恵「娘は今、私が見てきた中でもっとも決意に満ちた表情をしている」

恵「思えば私はいつも娘に迷惑をかけてきた。自分のエゴを押し付けてきた。場にそぐわないことはわかってる。恥知らずも承知だ」

恵「だからみなさん!少しだけ、この馬鹿で恥知らずな私の娘の頼みを聞いてやってください」

和「お父さん、ありがとうございます」

和「お父さんに反発してばかりの馬鹿娘でしたが、お父さんの娘に生まれてきて本当に良かったと思います」

神父「新郎側の了解も得られましたから、少しだけなら構いませんよ」

和「ありがとうございます」

和「まずは祝福に来てくださったみなさんに多大なるご迷惑をかけたことについてお詫びしたいと思います」



~街~

マケタクーナイアキラメナイホンーネデショウブー
ピッ

京太郎「もしもし!咲か?」

咲『うん、そうだよ』

京太郎「このタイミングでってことは」

咲『そう、和ちゃんのこと』

京太郎「そっちにも連絡行ってたのか」

咲『うん、それでお願いがあるの』

京太郎「お願い?」

咲『うん。時間もないから手短に言うね。私は何があろうと二人のことを恨んだりしないから』

咲『だから!余計なことを考えずに京ちゃんの選択をして欲しいの』

京太郎「なんだ、そんなことか」

咲『そんなことって言い方酷くない?』

京太郎「ああ悪い悪い。でもほんと、そんなあたり前のことを頼んできたから」

咲『……そっか。なら大丈夫だね」

京太郎「任せとけ」



~結婚式場~

和「私は危うく親友も大切な人も、自分自身も失くしてしまうところでした」

和「幸い、もう一人の親友との偶然の再会のおかげで、自分をとりもどすことができました」

和「でも、今の私は欲張りなので、他の二つも諦めてません」

和「こんなことをこの場でやるべきではないというのは重々承知ですが、お互いの退路を塞がなければまた逃げてしまいそうで」

和「分の悪い賭けですが、私の尊敬する先輩にならって、たまには悪待ちというものをしてみようと思います」

和「……なるほど、普段は絶対にしませんがたまにはいいかもしれませんね、悪待ちも」


京太郎「和!」
咲「和ちゃん!」


和「お久しぶりです。京太郎くん、咲さん」

咲「うえええんのどかちゃん会いたかったよおお」

和「連絡ができずにすいませんでした咲さん」

京太郎「……久しぶりだな和。元気だったか?」

和「ええ。優希のおかげで」

咲「ごめんね和ちゃん、あの時、京ちゃんとの仲を邪魔して。京ちゃんを和ちゃんから奪おうとして」

和「咲さんが謝る必要なんてありません。悪いのは、咲さんと京太郎くんとの間に割って入ろうとした私ですから」

咲「ううん私が悪いの」

和「いえ、私です」

咲「和ちゃんは悪くないよ」

和「咲さんこそ悪くありません」

咲和「「……クス」」

咲「ごめんなさい。そしてこれからもよろしくお願いします和ちゃん」

和「こちらこそすいません。そして末長くよろしくお願いします咲さん」

???「なんとかなったみたいだじぇ」

???「ええ。二人とも心優しいすばらな子ですから。それはあなたの方がよく知ってるでしょう?」

???「まーな。あと先輩、昨日迷ってる時に相談にのってもらってありがとな」

???「いいってことですよ」

和「さて、京太郎くん。言わなくてもわかるとは思いますが」

京太郎「ああ大丈夫だ。元はといえば俺のせいだからな。けじめはつけるよ」

和「その前に、あの日言えなかった言葉を言わせてください。これを言わないと、私は踏み出せない気がするんです」

京太郎「……スー……ハァー……よしこい」


和「……私はあなたのことが、須賀京太郎くんのことが大好きです。結婚を前提にお付き合いしてください」



~居酒屋~

咲「ハァー全く失礼しちゃうよねー。京ちゃんったら。こーんな可愛い二人の告白をどっちも袖にしちゃうんだから」

優希「全くだじぇ。あの犬なんかに咲ちゃんはもったいないというのに!」

咲「しっかし、ビックリしちゃったよね!あのスタッフの対応の早さ」

優希「新郎身内がブーイングを出す前に犬にタキシードを着せて式をやり直そうとしてたからな」

咲「あの勢いに呑まれて終始ポカーンとしてたよね」

優希「あそこまでされたらさすがになんも言えなかったんだろうな」

咲「でも新郎さんがいい人で良かったね」

優希「『僕がなにをしても一度も見れなかった笑顔を和さんの方からださせるなんて芸当されたら、諦めざるを得ないじゃないですか』」

優希「とか言ってクールに去ってったからな」

咲「あ、今のちょっと似てた!」

優希「そうか?『諦めざるを得ないじゃないですか』」

咲「ちょ、笑っちゃうからやめて」

咲「あと意外だったのが!」

優希「そう!」

咲優希「「のど(か)ちゃんのお父さんの対応!」

咲「私結構怖そうなイメージ持ってたからビックリしちゃった」

優希「まさかあんな笑顔で協力してくれるとはな」

咲「最後のほうなんて泣いてたもんね」

優希「もう声をあげて泣いてたな」

咲「仕事仲間の人たちすごい表情してたよね」

咲「いやー、今日は面白いものをいっぱい見せてもらったよね」

優希「そうだな」

咲「このおかげでしばらくは笑いに困ることはなさそうだよ」

優希「咲ちゃん……」

咲「もうなにその顔?ほんとだよ?悔しくなんか…ない、し」

優希「咲ちゃん、私の前でくらい強がらなくていいんだじぇ?」

咲「ゆうきちゃあん。うえええええん。」



~そして時は流れ~

咲(あれからかなりの月日が流れました。私はプロ雀士の現役を退いて、専業主婦として生活してます)

咲(今でも麻雀教室なんかにおよばれして打つことはありますけどね)

咲(え?結婚したのかって?ええまあ。危うく独身アラフォーになるとこでしたけど)

咲(色々ありましたけどなんだかんだ幸せに暮らしてます。和ちゃんとも相変わらず仲良くさせてもらってます)

咲(あ、郵便着てる。あ、和ちゃんからだ。ね?)

咲(えーと、なになに)

和『お久しぶりです咲さん。この度はめでたく無事に第二子を出産できました』

和『今度は男の子ですよ。目があの人にそっくりなんですよ、ほら』

咲「あ、写真が入ってる」

咲「ふふ、確かにそっくりだね。これは将来女を泣かせる逸材になるのかな?」



カン!



おまけifルート


咲「なんでのどかちゃんがいるのかな?」

京太郎「い、いやこれはだな」

咲「わたしはのどかちゃんにきいてるの。ねえ、なんで?」

咲「なんでのどかちゃんがわたしと京ちゃんのあいのすにもぐりこんで京ちゃんにだきついてるの?」

和「さ、咲さんこれは違うんです」

咲「なにがちがうのかな?のどかちゃんはどろぼうしようとしたんだよね?わたしから京ちゃんをうばおうとしたんだよね?」

咲「京ちゃんはなにもわるくないよ。ぜんぶそこのめすぶたのせいだよ」

咲「かわいそうな京ちゃん。めすぶたにたぶらかされてつみまでかぶらさせられて」

京太郎「おい、咲!話を聞けって!」


京太郎の必死の説得も虚しくついに咲は持っている巨大な凶器を振りかざし、
一歩ずつゆっくりと恐怖を与えるように和へと近づいていく。


和「ひっ」


生まれてこのかた味わったことのないほどの恐怖に和は全身の筋肉が麻痺し、逃げることもできずにいた。


咲「まっててね京ちゃん。いまたすけてあげるから」


また一歩また一歩と距離を詰める咲。


和「い、いやぁ」


恐怖のあまりに失禁までしてしまった和だが、咲は歩みを止めない。


咲「だらしないなあのどかちゃん。だれがそうじするとおもってるの?」

咲「わたしと京ちゃんのあいのすにへんなにおいつけないでよめすいぬさん」


ついに和の真ん前についた咲は張り付いた笑顔のまま鉈を振り下ろした


京太郎「あぶない!」


京太郎が急いで間に割ってはいる。
しかし一旦振り下ろした鉈の勢いが止まることはなく。
頭蓋骨が割れる音が部屋に鳴り響いた。


咲「ふふ、のどかちゃんも少しはいい顔になったね」

咲「差ろその顔じゃあ人の男をたぶらかすことなんてできないよね。そもそも普通の人には顔と認識できないだろうけど」


咲は眼前の原村和だったものに話かけたが応答はない。それも当然である。
目の前にあるのは人かどうかすらさだかでない肉片なのだから。


咲「でももうこれだけ汚れちゃったらここには住めないかな。引越ししないとだね。京ちゃん」


咲はそう言うと頭蓋骨が陥没したもののまだ人の形をなす想い人を持ち上げると部屋を後にした


咲「京ちゃんが浮気する心配もなくなったしこれはこれでいいかな」



も一個カン