京太郎(高三の秋の頃…俺は宮永 咲に告白をした……)

京太郎(最初は…いや、告白する直前までは…ただの女友達だと思っていた)

京太郎(そして卒業後にプロ入りが決まったと聞いた瞬間、彼女が手の届かない遠くに往ってしまうと思った瞬間――――)

京太郎(俺は彼女の事が好きなんだ……と、初めて自覚した――――)

京太郎(インターハイ個人戦優勝。そして東京のプロチームに既に入団が決まっていると言う、華やかなプロフィール)

京太郎(そんな彼女が本当は物静かで読書好きの、優しく大人しい文学少女である事を俺は知っていた)

京太郎(そしてそんな彼女を俺は、何時からだろう…好きになっていた――――)

京太郎(告白した時、彼女は少し照れ臭そうに、そして少し寂しそうな顔をして―――)

京太郎(『今はそう言う事は考えられないから、もう少し待ってほしい』と返事をした)

京太郎(完全…ではないが、俺は振られたと思った)

京太郎(そりゃそうだプロ入りが決まっての大事な時期に、俺になんて構ってなんかいられない事なんて、考えなくても分かる事だ)

京太郎(それからの俺と咲は高校卒業まで普段通りに過ごした)

京太郎(そして卒業後。咲は予定通り東京のプロチームに入団)

京太郎(そして俺も彼女を追う様にいや…彼女を追って東京の大学に進学した)

京太郎(それから直接逢う事は無かったけど、それでも電話で話したり、メールのやり取りも結構交わしていた)

京太郎(だが、梅雨に入った頃の雨降りの日…に届いたメール)


――――今のままじゃ何もかも中途半端になっちゃう

だから来年の四月に答えを出すから

それまで考えさせて下さい

だからそれまでの間、お互いに連絡しないで

見詰め直したいと思うんだ

ゴメンね京ちゃん、本当にごめんなさい

だからもしその間に京ちゃんに彼女さんが出来たとしても

私はそれでも構わないから              ――――


京太郎(今度こそ完全に振られたと思った。登り掛けた崖から、突き落とされる様な絶望感にも打ちのめされた)

京太郎(でも、その時の俺にはそれでも四月まで待つという選択肢しか考えられなかった)


――――それでも…それでも俺は彼女の事が……咲の事が好きだったから……。



九月。

大学の休憩広場。


京太郎(今日のマスコミ論の課題は真面目にやらんとな――――)

?「あのー済みません。もしかして清澄高校麻雀部だった須賀さんじゃないですか?原村和と同じチームだった?」

京太郎「え!?」びくっ

?「ああ済みません。驚かせちゃいました?」

京太郎「ん?いや…大丈夫だけど…確かに俺は須賀だけど、君は――――」

?「やっぱり!私、和の友達で阿知賀女子の麻雀部だった新子 憧です。流石に覚えてないですよね……?」

京太郎「いや…覚えてると言うか、新子さんウチの麻雀部だろ?俺も一応そうなんだけど」

憧「えっ!?そうなんですか?全然気付かなかった……」

京太郎「まぁそうだろうな……俺は新聞部も掛け持ちしてて、そっちがメインだから麻雀部は殆んど幽霊だし……」

京太郎「それに…新子さんの事を知ったのも、俺は編集しただけの新聞部の女子麻雀部特集からだったし……」

憧「そうだったんですか……」

京太郎「でもよく俺だって分かったな…というか俺の事覚えてたな……清澄じゃモブみたいな感じだったんだけど」はは…

憧「そっ…そんなことないですよ!?それに女子の麻雀部で男の子って珍しかったですし……」

憧(それに…ちょっとカッコいいと思って…和にそれとなく聞いてたし……/////)

京太郎「それで俺に何か用なの?」

憧「え…!?////いや…あの…その……あっそうだ!ちょっと待ってて下さいね」たた…

京太郎「え?ああ…」


三分後。

憧「はいこれコーヒー。久し振りの再会ですし…私の奢りです」すっ…

京太郎「ああ…いいの?ありがとう……」すっ

憧「そうだっ…須賀さん。これから講義とかあります?」

京太郎「ああ…今日はもうないけど……」

憧「良かった。じゃあちょっと話しませんか?」にこ

―――――。

憧「――――こんな事があったんです」

京太郎「へぇそうなんだ。そんな事が有ったんだ……はは。新子さんの話してると時間忘れちゃうな」

憧「…………えへへ…そうですか?あっ!そうだ須賀さん。あの…それでちょっと、お願いがあるんですけど?」

京太郎「お願い?」ずず…

憧「あの須賀さん。いきなりなんですけど…今度の土・日どっちか空いてますか?」

京太郎「えっ?ああ…日曜の午後なら何とか……」

京太郎(あっ反射的に答えちまった……)はっ

憧「それでしたら…再会の記念に二人でちょっと出掛けちゃいませんか?」

京太郎「えっ!?いや……」

憧「ダメですか?」じ…

京太郎(うっ!?上目使いに見上げる仕草がかわいい……)

京太郎「ああ……いいよ」にこ

憧「ホントですか!?よかったぁ。じゃあ13時に新宿駅の西口で良いですか?」

京太郎「ああ。わかった」

憧「決まりですね。じゃあ私これから講義がありますからこれで……」すくっ

すたすた…くる。

憧「あっそうだ!くれぐれもドタキャンはダメですからねー!!」たたっ…ふりふり

京太郎「はは…」ふりふり

京太郎(何か勢いに押された感じだけど。久し振りに女の子と話せて楽しかったな……)

京太郎(咲…言っとくけど、これは決して浮気なんかじゃないからな……って…別に彼女でも何でも無いか……)はぁ…



日曜日。

新宿駅西口。


京太郎(待たすのも何だから、15分前に来たけれど……ってもういる!?)

京太郎「あれ?もう来てたんだ…悪いちょっと待たせちゃったか?」

憧「今日は須賀君とデートだと思ったら…妙にそわそわしちゃって、30分も前に来ちゃった////」てへ

京太郎「えっ!?デ…デートって……」

憧「もう!」ぎゅう

京太郎(俺の腕に絡める様に抱きついて来た!?///////)

憧「男の子と女の子が、二人っきりでお出掛けするのをデートと言わずして、何をデートって言うの?/////」

京太郎「それは…確かに……」

憧「それに女の子同士でだって、デートって言うんだからね!!」

京太郎「そ…そうなのか……?」うーむ

憧「そうだよ。宥姉…って分かるよね?同じ大学の先輩だし…その宥姉も今頃は弘世さんとデートしてるんだから」

京太郎「松実先輩の事だろ?あのおもち姉妹のお姉さんの……」

京太郎「あの世代から、急に女子は強くなったからな。そりゃ知ってるよ」

憧「そうだよ。私も入ったし…これからウチの女子は黄金期に突入するからね!」

京太郎「そうだな……ま、男子は相変わらず弱いけどな……へーでもそうなのか…あの人が弘世さんとねぇ……」ふむ

憧「あっ。だからって記事にしちゃ駄目だかんね?」

京太郎「いやいや…プロって訳じゃないだろうし、流石に記事にする様な事でもないだろ」

憧「それもそうね…って、こんな事でダラダラ話しててもしょうがないから、早く行こっ!時間が勿体無いよっ!!」ぐいっ

京太郎「わわっ。分かったからそんなに引っ張んなって――――」

京太郎(案外マイペースな子だな……って、そういや咲もマイペースちゃあマイペースかな?ベクトルは違うけど……)

―――。

京太郎「で…取り敢えずどこに行くんだ?」

憧「えっ!?もしかして、女の子とデートだって言うのにノープランなの?」

京太郎「いや…だって……」

憧「そんなだから、京太郎君…そこそこイケメンなのに、女の子にモテないんだよ?」はぁ

京太郎「うるへい。じゃあ新子はもう決めてあるのかよ?」

憧「もっ勿論よっ!この新子の憧さんにおまかせあれ!!」ふんす



映画館前。

憧「初デートって言ったらやっぱり映画館だよねっ!ねっ!」

京太郎「……あれだけ大見栄切って、結局…映画って……流石にベタ過ぎないか?」

憧「そ…その辺はお互い様でしょっ!!」

京太郎「お互い様って……」

憧「しょ…しょうがないじゃない……私だって男の子とデートなんて…その…初めてなんだから……」ごにょごにょ

京太郎「ん?何か言ったか?」ふりふり

憧「何でもなーい。何でもなーい////////」

京太郎「?」

憧「とっ…取り敢えず何か観ようよ!!」

京太郎「ん…この『遠くの恋人(ヒト)より、近くの彼女(コ)!』って恋愛ものか?」

憧「ま…取り敢えず、これで良いんじゃない?そうと決まったら早く観るわよ!!」

京太郎「あ…ああ……分かった……」

―――――。


再び映画館前。

京太郎(うーん…思ったより面白かったけど、何かもやもやするな……)

憧「その場で決めたのにしては、面白かったね」にこ

京太郎「う…ん。まーな……」

憧「ん?あんまり面白くなかった?」

京太郎「いや…そんな事は無いけど……何か引っかかるんだよ。よく分からんけど……」

憧「ふーん。私は特にそんな事は無かったけど……」

憧「遠距離恋愛に限界を感じた主人公が、近くに居る自分を慕ってくれる女の子の良さに気付くとことか……」

憧「その子の色んな処を知っていく内に、段々その子に惹かれていく過程が、特にリアルな感じで良かったと思う……」

京太郎「…………」

憧「最後に、主人公がその女の子と結ばれるシーンで、ちょっとうるってきちゃったし……」

京太郎「そうか…まぁとにかく新子が喜んでくれたのなら、俺も嬉しいよ」にこ

憧「――――!?//////」かぁぁ

京太郎「ん?どうしたんだ?顔が真っ赤だぞ。急な熱でも出たか?」

憧「なっ///何でもないわよっ!/////」あせあせ



京太郎「あっそれに。俺としては、ちょっとエッチな所があったのもよかったよな」

憧「――――//////!!」かぁぁ

京太郎「?」きょとん

憧「な…何よ?/////」どきどき

京太郎「もしかして新子って案外と純情可憐な乙女って感じなのか?」

憧「!?――――そ――――そんな事!!な――――/////」かぁ

京太郎「はは…意外だな…寧ろ何か援交とかでもしてそうなイメージ――――」はっ!

憧「!!?……………」ぷるぷる
京太郎「……あっ…い…今のは冗談だから!その…言葉のあやっていうか……」あせっ

憧「……ふーん。そーんなんだ…私って京太郎君に、そー思われてたんだ……」じとー

京太郎「あーごめん!つい冗談で適当な事を口走っただけだから!」

憧「……………知らないっ」ぷいっ

京太郎「うー……分かった。何でも言う事聞くから赦してくれ!」ぱんっ

憧「…………今…何でも言う事聞くって言ったよね?」ニヤリ

京太郎「うっ……い…言ったよ。俺に出来る事なら何だってしてやるよ!」

憧「ホントに?」

京太郎「おっ男に二言は無い!!」

京太郎(とは言ったものの…頼むから無茶な事は言わんでくれよ……)どきどき

憧「そっかぁ…どーしようっかなぁ……」

京太郎「い…今じゃなくてもいいからな、いつか思い付いたらd―――――」

憧「うんっ決めた」こく

京太郎「えっ?」

憧「まず…今から私の事を名前で呼ぶ事」

京太郎「名前ってあたらs――――」

憧「あ・こ」じっ…

京太郎「あこ……で良いのか?」

憧「うん」にこ

憧「後…もう一つ――――」

京太郎「一つじゃないのかよ!」

憧「とーぜんでしょ?あんな…デリカシーの欠片もない事を言ったんだから?」きっ

京太郎「……分かったよ…で、憧。あと一つって何だよ?」

憧「うん…じゃあ言うね」にこ

京太郎「…………」ごくり


憧「これから…私を飲みに連れてって――――――」にこ


とある居酒屋。

憧「では。二人の再会を祝しまして」

憧・京太郎「「かんぱーい」」カチャン

京太郎「まぁインターハイの時にお互い見知った程度だし、再会って言う程、会ってはいない気もするけどな」はは…

憧「そうだね。でも私は一目見た時から、京太郎君の事が気になっていたんだけどな……」

京太郎「そうなのか?」

憧「うん////」にこ

京太郎「そっか…そう言われると悪い感じはしないな」へへ…

憧「ふふ…」

京太郎「まぁそれはいいとして、さっきはどんな無茶を言われるかと思ったけど、こんなんで本当に良かったのか?」

憧「もうっ。京太郎君は、私をどんな女の子だと思ってるのよ?」むぅ

憧「まぁ一度、男の子と…ううん…京太郎君とお酒を飲んでみたいって思っただけ」

憧「……『何でも』…てのは、ホントはただの理由付けでしかないよ」

京太郎「…………」ふむ…

憧「ん?どうしたの?」

京太郎「いや…何でもない!」どきっ

憧「あーその顔…またヘンな事考えてたんでしょ?もうっ私は君が思っている程、遊んでる訳じゃないんだからね?」ぷぅ

京太郎「いや…そんなんじゃないって。ただ…憧って俺の知ってる奴に、どことなく似てる様な気がしただけだよ」

憧「知り合いに、私に似てる人がいるの?」

京太郎「いや…何となくだけどな。でもソイツは、お前と違って結構…俺に無茶を言うような奴だったよ」はは…

憧「ふーん。そうなの……その子ってもしかして彼女とか?」じー

京太郎「えっ!?いやいや違うって。それはありえねーから」きっぱり

憧「ほんとーに?」

京太郎「ああ。胸張って言えるぜ……って…胸張る様な事でもないけどな……」はぁ

憧「そう……」ほっ

京太郎「でもソイツと比べてって訳じゃないけど、憧って俺が思ってたよりも、ずっと可愛い処があるんだな」にこ

憧「――――!!////私がその…か――カワイイって……な、ナニ当たり前の事を改めて言ってんのよっ!!//////」かぁぁ

京太郎「おいおい。当たり前って…やっぱちょっと似てんな」くい

憧「しょうがないでしょ?ホントの事なんだから」

京太郎「はいはい。そーですか」くい

憧「もうって……ん?京太郎君…日本酒なんて飲んでるの?」

京太郎「ん?ああ…それ程でもないんだけd――――」

店員「お待たせしましたー」コト

京太郎「おっきたきた」

憧「えっ?これって、もしかしていなり寿司?」

京太郎「そうだよ」

憧「へーこんなの居酒屋にあるんだ」

京太郎「まーはっきり言ってそんなには無いんだけどな。だからここにしたんだよ」

憧「そんなに好きなんだ?」

京太郎「まーそうだな……こうお猪口でくいってやって、一緒にいなり寿司を食べるのが好きなんだよ」

憧「へーそうなんだ。じゃあ――――」すっ

京太郎「あっ!?それ俺のお猪口……」

憧「…………/////」くい

憧「ふむ…あと――――」すっ

京太郎「あっ!?それは俺のおいなりさんだぞ!」

憧(こ…これが…京太郎君のおいなりさん……/////)ゴクリ…

憧「…………//////」ちゅっ…ぱく

憧「…………//////」はむはむころころ

京太郎(…………なんか…喰い方がいやらしーなオイっ///////)かぁ

憧「…………」ごっくん

憧「ン…オイシ……////」ニコ…

京太郎「――――――――///////」どきっ

憧「ん?どうしたの京太郎君?」

京太郎「なっなんでもねーよ!!」かぁ

京太郎(やべー…一瞬コイツのコトがちょっとエロ可愛く見えちまった……)どきどき

憧「ん?どうしたの?私の顔に何か付いてる?」

京太郎「いや…別に……そんな事より、憧はあんまり飲んだりはしないのか?」

憧「そんな事無いよ。大学の麻雀部の子とか、あと…しずとかかな?」

京太郎「しず?」

憧「高鴨 穏乃。私の同じ阿知賀出身の。覚えてるでしょ?和の友達だし」

京太郎「ああ。あのジャージの子だろ?」

憧「うん。あの子…私達と学校は違うけど、東京(こっち)に来てるから、よく女子会とかしてるよ」

憧「で、そう言う京太郎君はどうなの?」

京太郎「俺か?俺は専ら新聞部の奴等と男子会だよ。麻雀部じゃないのは申し訳ないけどな」

憧「ホントだよね」じとー

京太郎「はは……」あせっ

♪ピロピロリ――――

憧「ん?電話?しずからだ…ってごめんね。マナーモードにし忘れてた」

京太郎「いいってそんな事。俺は気にしないから早く出てやれよ」

憧「ありがと」ピッ

憧「もしもし……しず?どうしたの?」

憧「…………えっ!?今、優希と家飲みしてるから来ないかって?」

京太郎(優希!?)びくっ

憧「ゴメンねしず。私…今デート中なんだ」どやっ

憧「えっ!?どの娘って…女の子とじゃないよ、男の子とデートしてるの///////」てれてれっ

京太郎「……………」くいっ

憧「誰とって?ふふん。和の清澄高校の麻雀部の部員だった、須賀 京太郎君だよ」

憧「しずも覚えてるでしょ?あの学ランの。そうその…今、その彼と居酒屋デート中なんだ」ふふん

?『なにー!!京太郎だと!?ちょっとしずちゃん電話を替わってくれだじぇ』がぁ!

憧(電話越しからでも声が聞こえる……)

?『憧ちゃん、久し振りだじぇ』

憧「優希?お久だね。えっ何言って……?わ、判ったわよ。兎に角、替わればいいんでしょ?」

憧(……そう言えば、優希は元清澄で、今はしずと同じ大学だったかな……)

憧「はいはい。今替わるから……はい、京太郎君。あなたの飼い主さんとやらが電話替わってくれって……」

京太郎「はぁ…やっぱりそうなるのか……はい。もしもs――――」

優希『こらー犬!お前、咲ちゃんというものがありながら、憧ちゃんとデートたぁどういうこった!!』がぁ!!

京太郎「声がでかい!もっと小さい声で喋れよ。あとデートって…あk…新子さんとは、たまたま同じ大学だったんだ」

京太郎「それで、再会した記念って事で、飲んでるだけだよ。それ以上の事は断じてない」きっぱり

憧(えっ……!?)ズキッ

京太郎「……はぁ?どういう事だって?だからそー言う事だよ」

京太郎「咲?……残念ながらアイツとは付き合えてはないよ」はぁ

京太郎「告白したけど保留っつーか…殆んど振られた状態だから……」がっくり

京太郎「―――ってンな事なんか聞くなよ!言ってるこっちが哀しくなるだろうが?」はぁ

優希『…………私は…京太郎の気持ちも、咲ちゃんの気持ちも知ってたから……身を引いたのに……』ぼそ…

京太郎「ん?何か言ったか?」

優希「――――!!/////なっなんでもないじぇ!/////もういいじょ。シズちゃんと替わるじぇ!」

穏乃『もしもし須賀さん。お久し振り…って言うか、二人でこうやってお話するのって、もしかして初めてかな?』

京太郎「ああ…そう言えばそうかな?」


優希『――――…・・――――…・・…――』ぎゃーぎゃー

京太郎「ん?今、そっちのタコス娘が、後ろで何か言ってないか?」

穏乃『……その…全く躾のなってない犬だじぇ…って喚きボヤいてる……』はは…

京太郎「まぁそんなこったろうと思った。まったく自称飼い主さんが、そう言ってりゃ世話ないぜ……」はぁ

穏乃『あはは…そうだね』

京太郎「それじゃ。新子さんと替わるから」

穏乃『うん――――あっ…あのっちょっと待って!』

京太郎「えっ!?何?」

穏乃『あの…須賀さん……憧の事、宜しくお願いします。あぁ見えてとっても優しくて、純粋な子ですから』ぺこり

京太郎「……………………あ、ああ……じゃあ替わるから……」すっ

憧「………………もしもし、しず。今日はゴメンね、今度必ず埋め合わせするから』

穏乃『うん。その時は玄さんも宥さんも呼んで、久し振りに皆で集まろうよ』

憧「うん。いいねそれ。あと灼も呼んじゃおうか?」

穏乃『はは…灼さんは吉野(じもと)だから、流石に無理だよ』

憧「まー確かにね……」

穏乃『じゃあ…お邪魔になっちゃうから、そろそろ切るね』

憧「うん」

穏乃『じゃあ…あっ!あと一つ』

憧「ん?何よ?」

穏乃『憧…これから大変だと思うけど…私はどんな事になっても憧の事、応援してるからね』

憧「…………うん。しず…ありがと……」

穏乃『うん…じゃあまたね。憧』

憧「またね。しず」ピッ

憧(………………………そうだよね…よしっ!!)ぐっ

憧「京太郎君!!」

京太郎「はい!!」びくっ

憧「今日は、めいっぱい飲むわよっ!!」

憧「うふふ…おしゃけオイシーね……////」くいっ

京太郎「はは…憧さんは御機嫌だな……」

憧「えへへ…憧ちゃんはごきげんだよー。ねえ…きょーろーは、わたひと飲んでて楽しい?」じ…

京太郎「お…おう……」

憧「あーその顔!そっか…京太郎は私と飲んでても、楽しくないのか……」しゅん

京太郎「そっそんなことねーから。楽しいから。俺もゴキゲンだぜっ!!」

憧「えへへ…ありがと……わたひもたのひーよ」にこ

京太郎(うーん。でも…こりゃ正直言って、かなり飲み過ぎてるな……)

京太郎(って…いつの間にか、カクテルから日本酒にシフトチェンジしてるし……)ぐび…

憧「だっ…だったりゃ、きょーたろーも…もっと飲みなひゃい!」ずいっ

京太郎「飲んでるよ。それより、お前は飲み過ぎなんj――――!!」

京太郎(……って…いつの間にか、呼び捨てにされてるし……)

憧「もーきょーたろー飲まないんなら!!」ばっ

京太郎「あっ!?俺のジョッキ!!」

憧「えへへ…いただきまーす/////」ごくごくごく

憧「えへへ…きょーたろーのナマすっごくオイシー//////」ぷはー

京太郎(うっ……!まずいな…こりゃ何とかしないと……取り敢えず店を出るか……)

――――――。

近くの公園。

京太郎「ほい。これお茶」すっ

憧「ありがとー」こくこく

京太郎「少しは落ち着いたか?」

憧「うんっ京太郎く―…きょーたろーは優ひーね/////」にこっ

京太郎「そっそんな事はねーよ」

京太郎(しかっし、まいったな…まだかなり酔ってるみたいだし……)

京太郎(送ってくっていっても、コイツの家、知らないしな…当たり前だけど……)

京太郎(俺の家って訳にはいかないし…最悪…優希の所……ってのは避けたいな。何言われるか判らんし……)

京太郎(さて…どうしたものか……)うーん

憧「ねぇ…きょうたろ…京太郎君……」

京太郎「ん?何?」

憧「京太郎君と宮永さんって…どんな関係なの?」

京太郎「えっ!?」どきっ

憧「さっきの電話…優希と話している時に聞こえた『咲』って…宮永さんの事なんでしょ?」

京太郎「それは……咲は俺と同じ清澄高校の時の同級生だったやつで…同じ麻雀部で―――――」

憧「そんな事聞いてるんじゃないの!!ねぇ宮永さんはアナタにとってどんな女性(ひと)なの?」じ…

京太郎(うっ……なんて思い詰めた目で俺を見るんだ……)たじ…

京太郎(――――って急に酔いが醒めたのか?いや…もしかして最初からそんなに酔って無かったのか?)

京太郎(いや…そんな事より……流石にこの場面で、ヘンにはぐらかす訳にはいかんわな……)すぅ…

京太郎「そうだな……俺と咲は―――――――」

憧「ふーん。そーなんだ……」

京太郎「ああ…そう言う事だ。だかr――――」

憧「京太郎君が苦労してウチの大学に入ったのも、新聞部に所属しているのも、全て宮永さんの所為なんだ」

京太郎「所為って…俺が勝手に決めた事だよ」

京太郎其れなりの大学に入って、新聞部で取材や編集の勉強をしているのも、いつか麻雀関係の記者になれば」

京太郎「プロで活躍してるアイツに形はどうあれ、少しでも近くに居られるかも知れないって思っただけだ」

憧「でも…その彼女は京太郎君を振る訳でも、付き合うでもなく放置して、自分はやりたい事をやっていると」ふん

京太郎「そんな言い方すんなよ。プロの世界ってやっぱ厳しいだろうし、中途半端な覚悟じゃと務まらないんだろ」

憧「だから努力すれば、頑張ればそんな彼女に近づいた気分になれるって思ったんだ?」

京太郎「―――――そんな言い方はないだろ」カチン

憧「ねぇ京太郎君。どうしてあの時、私が君に声をかけ、デートに誘ったか分かる?」

京太郎「…………」

憧「初めて…三年前のインハイで君を見た時から、ずっと気になってた」

憧「インハイが終わってからも…密かに和から君の事を、それとなしに聞いてもしてた……」

憧「……でも冷静に考えて、住んでる所も離れてるし、逢える機会も殆んど無いからって諦めてた……」

憧「でも…和から京太郎が同じ大学だって聞いた時に、これは運命だって本気で思ったんだ」

憧「だから、男子麻雀部を覗いたりして探してたけど…何時もいなくて、ずっと見付けられなかった」

京太郎「そこに関しては申し訳無いとは思ってる」

憧「だから初めて見つけた時は、本当に嬉しかった。でも、どきどきしてなかなか声を掛けられなかったけど……」

憧「でもあの時…それでも緊張を抑えて、意を決して…やっと話し掛ける事が出来た時は嬉しかったな……/////」にこ

京太郎「憧……」

京太郎(正直…ナニを言ったらいいのか分からない…それにこの流れ…ヤバい――――)

憧「……ねぇ京太郎君。私あなたの事がその…好きみたいなの……だから……私とつきあっt―――――」

京太郎「あっ憧っ!ちょっとまて!!」

京太郎(あ…あぶねぇ……今の憧…すっげえ可愛いし、このまま告白されたら受けちまいそうだった……)どきどき

憧「……やっぱりダメか……なら友達だったらいいよね?今は…それで良いから……」

京太郎「…………ああ…それなら……」

京太郎(……流石に断れんって言うか…憧、やっぱ凄く可愛いよな。普段も酔ってる時も、そして今も……)

京太郎(でも俺は…咲の事が好きなんだ……)

京太郎(たとえ今…逢えなくても、殆んど振られた状態でも…それでも、あいつの事を忘れるなんてこと出来ない……)

憧「でもね…京太郎君……」もごもご

京太郎「何だよ?言いたい事があるなら言ってくれよ」

憧「分かった。言うね……京太郎君は…本当にそれでいいの?」

京太郎「えっ!?」どきっ

憧「告白しても…まともな返事も貰えなくて……」

憧「その上、仕事に集中する為に他の事を考えたくないから、一年の間、返事を待っててくれなんて、どれだけ身勝手な子なの」

京太郎「憧!」

憧「ねえ…京太郎君…………もう…いいんじゃないかな……」

京太郎「!?」

憧「京太郎君は充分に待ったし、たくさん努力もしてる。でも、そこまで想われてる宮永さんは、自分の事ばっかり……」

憧「挙句の果てには、その女に振られるのかもしれない。だったら…もういいんじゃないかな?」

京太郎「いいって…何がだよ……」

京太郎(くっ…何だ…?俺の心が、だんだん不穏になっていく様な感じがする……)

憧「はっきり言うよ。もう…宮永さんの事は諦めた方がいいと思う」

京太郎「!!?」

憧「宮永さんと京太郎君がどんな関係を築いて来たのかは分からない。私とは一緒に居る時間が違い過ぎるから……」

憧「でも…その彼女はもう君と同じ場所に居ないんだよ。ううん。もう同じ場所に立つ事なんて出来ない」

京太郎「そっそんな事は――――」

憧「ううん。京太郎君は…宮永 咲という人に……心を縛り付けられている」

京太郎「…………」

憧「ごめんね…凄く意地悪な事を言っているのは…自分でも判ってる」

憧「でも、京太郎君がいくら望んでも、手を伸ばしても、今の彼女には届かない伝わらない」

憧「……でも」すっ

ぎゅっ


京太郎「!?/////」

京太郎(俺の右掌を憧の両掌がぎゅっと包んで……)

憧「でも私なら…触れられる所に居る。温もりを感じられる……私は京太郎君のすぐ傍に居る……」

京太郎「憧……」

憧「今はまだ無理かもしれない。でもいつか…君を縛り付ける物を、私が取り払ってあげるからね」にこ

京太郎(あったかい…憧から伝わってくる温もりが心地いい……)

京太郎(本当に何かを解きほぐされていく様な…心地よく溶かされていく様な…そんな感じがする……)

京太郎「あ…憧……」どきどき

憧「京太郎君……」どきどき

京太郎「………………きょ……今日はもう遅いし、そろそろ帰ろう……」

憧「…………うん…そうだね」にこ




地下鉄駅前。


憧「うん。ここまでで良いよ。今日は付き合ってくれて本当にありがと。すっごく楽しかったよ」にこ

憧「また付きあってね。京太郎くn――――ううん。京太郎。じゃあまたね―――――」ふりふり

たたっ

京太郎「…………言いたい事言って、行っちまったな……」はぁ

京太郎(でも……助かった…………)ほっ

京太郎(あのまま押し切られていたら、本当に危なかった。それ位に可愛いくて、そして…真摯だった……)

京太郎(何より…俺が今一番欲しいものをくれた気がした……)

京太郎(くっそ…また逢いたくなっちまったじゃねーか)


京太郎「遠くのヒトより近くのカノジョ」


京太郎「……………か……」




その頃。

とあるホテル。

先輩プロ「宮永。今日の対局は中々よかったぞ」

咲「ありがとうございます。先輩」ぺこり

先輩プロ「春頃まではどこか中途半端な感じだったが、最近は集中して打てているみたいだし、この調子で明日も頼むぞ」

咲「はい。これも先輩のアドバイスのおかげです」

先輩プロ「そうか。じゃあ今夜はゆっくり休めよ。おやすみ」

咲「お休みなさい」ぺこり

ガチャ

ばふっ

咲「疲れた……」ふー

咲(デビュー当時…私はプラマイゼロどころか、勝つ事すら全くできなかった……)

咲(勿論。プロの人達のレベルが高いのは判っていたし、プロになった気負いもあったと思う)

咲(でも…一番はやっぱり……)

咲(京ちゃんの事―――――)

咲(あの時…京ちゃんに告白された時……嬉しかった…私も京ちゃんの事が好きだったから……)

咲(でも……それ以上に戸惑いがあった。京ちゃんがまさか私に告白してくれるなんて、思いも寄らなかった……)

咲(でも私は……その時既にプロ入りが決まっていたから)

咲(もし…先に京ちゃんが告白してくれていたら、私はプロにはならなかったのかもしれない)

咲(でも…プロになるって決めて、チームと契約した以上、今更辞めるわけにはいかなかった……)

咲(それに。この時の私自身、プロの世界で自分の力を試したい。と言う想いも芽生え始めていたから――――)

咲(だから…素直に告白を受け入れる事は、あの時の私には…どうしても出来なかった……)

咲(でも…プロ入りして京ちゃんと離れ離れになって、気持ちがぐらぐらして…どうしていいか分からなくなって……)

咲(そこを先輩に見透かされて、先輩にこう言われて、私はそれを受け入れた)

――――中途半端な気持ちじゃプロは務まらない。少なくても一年は麻雀だけに集中した方が良いって……。

咲(本当に…本当に勝手だと思う…でも私は一方的に京ちゃんと、距離を置く事を選択した……)

咲(それから私は麻雀だけに集中する事になって、少しずつだけど勝てる様になった……)

咲(チームの一員としてとしてチームに必要とされるようになった。でもやっぱり――――)

咲「…………寂しいよ…京ちゃん……」じわ…

咲(……いくら勝っても活躍しても…忘れた頃にこみ上げて来る…寂しさと恋しさ……)

咲(私はやっぱり……京ちゃんの事が好きなんだ……)

咲「早く逢いたいよ…京ちゃん……」ぐすぐす…

咲(京ちゃん…もう彼女さんとか出来ちゃてるのかな……もう私の事なんて忘れちゃっているのかな……)

咲(…………だとしても…私に文句を言う資格は無い……)

咲(ホントは今すぐにでも、京ちゃんの元へ飛んで行きたい……)

咲(でも私が決意し、其れを勝手に京ちゃんに押し付けたんだから、それを自分から破る事なんて絶対に出来ない)

咲(プロの雀士として…一人の女としてそれだけは絶対に許されない。それに京ちゃんにだって当然…選ぶ権利はある)

咲(いくら優しい京ちゃんだって…こんな自分勝手な子の事なんて、とっくに愛想尽かしているに決まってるよね……)


――――でもそれでも私は……一縷の望みを信じて…………


その時が来たら…きっと―――――。



京太郎(あれから俺は…憧と二人で遊びに行ったりする事が多くなった)

京太郎(どこに行くかとかは専ら憧が決めていたのだが、彼女はああ見えて、凄く気使いの出来る子なんだと思う)

京太郎(何だかんだで、どこに行くにも俺が愉しめて、尚且つ自分も愉しめる処を上手に選んでいた様に思うしな……)

京太郎(しっかりというか、ちゃっかりしているとでも言うのだろうか……?)

京太郎(でも。そんな所も可愛くて、健気で…そして俺の事を引っ張り上げてくれる様な感じで……)

京太郎(俺自身、そんな彼女に次第に惹かれて行くのを、否定する事が出来なくなっていた)

京太郎(そして…彼女によって俺の心の中の何かが、次第に解きほぐされていく心地よさと……)

京太郎(それと同時に何かを…少しづつ、忘れてしまっていく様な気持ちも感じていた……)

京太郎(そして。そんな日々を過ごしながら、桜の花咲く頃……俺は次第に現実問題になって突き詰められる事があった)

京太郎(言わずもがな…咲の事だ―――――)

京太郎(もうすぐ四月…咲との約束の月……)

京太郎(俺は……どうすりゃいいんだろうな……)

京太郎(憧は俺にちょっと不器用だけど…はっきりと分かる好意を俺に寄せてくれる……)

京太郎(容姿も言っては何だが、咲よりも良いと思うし、オシャレにも気を使っている)

京太郎(何よりも勝気なんだけど、時折見せる純情で照れ屋な処が堪らなく可愛い)

京太郎(頭も良くて、さり気なく俺に話も、行動も合わせてくれる……そんな女の子……)

京太郎(でも俺は……それでも…………)

京太郎(俺は悩みに悩んだ…こんなに悩み、二人を天秤に掛けている自分にこんなにも自己嫌悪もしたのも初めてだった)

京太郎(咲の返事が来るまでに、それまでに絶対に決めなければならない)

京太郎(返事待って決めるなんてのは、男として格好悪いし、何より二人に対して失礼極まりない話だろう)


――――そして俺は…考え悩み抜いた末。結論に達し覚悟を決める。


もう迷わない。どうなったとしても後悔しない。俺は――――――。





四月の初め頃。

学内のとある喫茶店。


京太郎「雨…か……」

京太郎(そう言えば咲からあのメールが送られてきたのも、こんな雨の日だったな……)

京太郎(しっかし…もう四月で桜も咲いてるってのに、未だ全然肌寒いな……)ぶる


京太郎「コーヒーを買ってと……ええっと…どこに……あそこか」たたっ

京太郎「お待たせ。自分から呼び出しておいて、俺の方が遅くなってしまってゴメンな」

憧「ううん…いいよそんな事」にこ

京太郎「はい。コーヒー…ってもう注文してたのか……しかも全然飲んでないみたいだし、要らなかったかな?」

憧「ううん。ありがとう。せっかく京太郎が、私の為に持って来てくれたんだもん。有り難く頂きます」こくこく…

京太郎「そんな大層なモノじゃないんだけどな」

憧「京太郎のくれたコーヒー……おいしい」にこ

京太郎「そっか…それならいいんだけどさ……」

憧「えへへ…でも京太郎から誘ってくれるなんて…珍しいね。でも…嬉しい」にこ…

京太郎(…………心なしか憧の表情が、何処か曇っている様な感じがする……)

京太郎「憧…いきなり呼び出して悪かったな。でも…どうしても今日言わなければならない事があるんだ……」

京太郎(そう…今日じゃないとダメなんだ『結果』が出てからじゃ遅いんだ)ぐっ

憧「……大事な…話なの?」

京太郎「ああ」こく

憧「…………そう。それだったら外に出ない?そこで話して……」

京太郎「外って…まだ雨が降ってるぞ。それにまだ肌寒いし……」

憧「どうしても…外で話したい気分なんだ。だめ…かな……?」

京太郎「……わかった…外に出よう」

憧「うん…ありがと」

京太郎「あっカップは俺が持ってくから……ん?」

――――片付ける為に手に持った三つのカップ。その中で一つのカップだけが空になっていた……。


学内の広場。


京太郎(雨が降ってるのと講義棟から離れている所為か、殆んど人が居ないな……)

憧「…………」ふるふる

京太郎(……俺はここで今から目の前の、微かに震えながら傘を差している女の子に言わないといけないのか……)すぅ…はー

憧「それで……話って何なの……?」

京太郎(……くっ…やっぱりいざとなると言い辛いな…駄目だ!逃げるな!男ならはっきり言え!!)ぐぐっ

京太郎「…………憧……ゴメン。俺はやっぱり咲からの返事を待つ事にする。だからお前とは付き合えない」

憧「………………」

京太郎「お前が俺なんかに好意を寄せてくれるのは、ホントに嬉しいし、振るなんて罰当たりな事だって百も承知してる……」

京太郎「でも俺は…やっぱり咲の事が好きなんだ。例え振られる事になったとしても、それでも俺は―――――」

憧「…………わかってた……京太郎が宮永さんを択ぶ事くらい……わかってたんだ……」

憧「ほんのたまにだけど…宮永さんの事を話す時の京太郎の顔……とってもいい顔をしていたから……」

憧「…………私に向けては…一度も見せてくれなかった顔……」

京太郎「……憧…俺は――――」

憧「でも――――私は……それでも私は…京太郎の事が好きなの……」ぐっ

憧「初めて京太郎を見た時…カッコよくて…優しいそうな人だって思った。一目見た瞬間から、ずっと気になってた」

憧「初めてデートした時に…私はやっぱりこの人の事が好きなんだって、はっきりと分かった」

憧「それからデートする度にどんどん好きになっていくのも……抑え切れない位に実感していた」

憧「だけど…もしかしたら私は…宮永さんの代わりでしか無いのかもしれない。そう思う事もあった……」

憧「でも!そうだったとしても、京太郎は私を大事に思ってくれているって事は判っていたから……」

京太郎「憧……」

憧「ねえ…京太郎……どうしても私じゃ駄目なの?宮永さんじゃないとダメなの?」

京太郎「…………」

憧「……こんな事言っても、困らせるだけだってのは分かってる……」

憧「……でもお願い!お願いだから宮永さんなんかじゃなくて私を選んでよ!!!お願い…だから……」ふるふる

京太郎「憧…俺は憧みたいな可愛くて素敵な子に好きって言われて、本当に嬉しい」

京太郎(声に出しては言えないけど…もし咲が居なかったら。俺は手放しで喜んで憧と付き合っていたと思う)

憧「それなら!――――――」

京太郎「でも俺は…俺には咲しかいないって決めたんだ……」

京太郎「たとえ俺が咲に振られる事になったとしても…それでも今の俺には、咲以外考えられないんだ」

京太郎(俺は馬鹿だ…大馬鹿だ……憧の優しさと好意に甘えて、ずるずるとしてしまった結果がこれだ)

京太郎(そうだ。俺は結局…憧の想いに応えられずに、傷付ける事しか出来なかった……)

憧「でも!!宮永さんはここにはいないんだよ…彼女がいるのは私達と違う世界……」

憧「でも私はここにいる!二人で一緒に触れ合える。寄り添えられる。感じ合える……」

憧「私は…何時も京太郎の見える処にいるから!!だから―――――」

憧「見えない人の事なんて見ようとしないで、もっともっと目の前で見える私の事を見てよっ!!」

京太郎「憧……」

憧「だから……お願い…………」ふりふり…


京太郎(憧が…あの勝気な女の子が……外聞も無くいやいやして……)

京太郎(まるで…玩具を欲しがってせがむ子どもの様に……それも俺が…この子をそうさせちまったんだな……)くっ…

京太郎「ごめんな憧……もう俺は中途半端にしたくは無いんだ。だから―――――」

憧「どうしても…駄目なの…………?」

京太郎「ああ……」こく…

憧「分かった!!いい…もういいよ……ごめんね京太郎…我儘言ってホントにゴメンね……」ぽろ…

憧「分かっていたのに……本当に…分かっていたのに……」ぽろぽろ

ばっ…

京太郎「!?」

京太郎(えっ!?傘を投げて…空を見上げてる……?)

京太郎「って!おいっそんな事してたら濡れちまうぞ!!」だっ

憧「来ないでっ!!いいから来ないでよ!!」

京太郎「憧…何を言っt―――――」

憧「…………う…うう…ああ…わぁぁん……うわぁぁぁぁぁ――――ん!」

京太郎「憧!!」

憧「泣いてなんてない!これは雨だから…泣いてなんてないんだからね!!」

憧「大丈夫だから。ただちょっと大声出したくなっただけだから!」

憧「だから…お願い…早く行って…早くどっか行ってよ!!」

京太郎(……憧…………そうか………)

憧(泪なんて見せたくない…心配なんかさせたくない。して貰いたくもない。コレは私のできる精一杯の矜持――――)

京太郎(……そうだな…情けないけど…俺がコイツにしてやれる事なんて、もう何一つも無いんだ)ふりふり

憧「うぁぁぁぁん……うわぁああああああ―――――ん!!」

京太郎「……分かったもう行くよ」ぺこり

京太郎(くそっ!俺に出来るのは……彼女の意を汲んで、とっとと立ち去る事しかねーのかよ!!)たたっ

京太郎(ごめんな…憧……)

憧「うわぁぁぁぁ―――――――あぁ…・・ぁ…・・……――――」


――――俺は…走りながら彼女から離れる程に、彼女の嗚咽が雨音で掻き消されていくのを感じていた……。


憧「……ひっく…ひっく……」ぐすぐす

憧(……雨にぬれて寒い…でも…こんなびしょびしょじゃウチに帰れないよ……)ぶるぶる

憧(……振られちゃった……そうなる事は分かってたのに…それでもこんなに胸が苦しいなんて……)ぐすぐす

憧(初恋は実らないってよく聞くけど…ホントだったんだ……)ぐす…

憧(このタイミングで振ったって事は…もし宮永さんに振られても、私とは付き合ってはくれないんだろうな……)

憧(そんな事したら私に失礼なんて…いらない気遣いなんてして……)

憧(京太郎のバカ!京太郎なんて役満直撃されて跳んじまえっ!!)

憧(でも…それでもやっぱり……大好きだよぉ…胸が切ないよぉ苦しいよぉ…………)ひっくひっく

♪ヴヴヴ…ヴヴヴヴヴ……

憧(でんわ?……しずからだ……)

憧(こんな時に電話なんて…………でも…しずの声が聞きたい……)

―――――こんな状態で話したくない…でもそんなプライド以上に、今の私は温もりが…より掛かれるものを欲しかった……。

ピッ

憧(………………もし…もし―――――)



その日の夜。

京太郎「ただいまーって誰に言ってんだか……」

ぼふっ

ごろん

京太郎「もういつ着てもおかしくは無いよな……」どきどき

京太郎(俺に出来る事は全てやった……と思う)

京太郎(……とは言っても、咲の返事とは何の関係も無い自己満足だけど……)

京太郎(それでも頑張った分だけ、アイツに少しでも近づける気がしたんだ……)

京太郎(何より…憧には悪い事したな……俺がこんなブレてなかったら、あんな思いはさせなかったのに……)

京太郎(もう…ああしてしまった以上、もし咲に振られたとしても、もう憧付き合うなんて事は出来ねーよな……)はぁ

京太郎(って…何女々し過ぎる事を考えてんだ!!全く恥ずかしくて申し訳なさ過ぎて、ンな事出来ねーに決まってるだろうが!!)

京太郎(…………くそっ!後は野となれ山となれってんだ。俺に出来る事なんてもうねーんだから!!)

♪ヴィヴィヴィヴィ……

京太郎「メール!!」がばっ

京太郎「さ…咲からだ……」ゴクリ…


――――――――。


京太郎「………………もう見るのが怖くて一時間も見れてない……」どきどき

京太郎「これじゃただのヘタレだよ!!ええい見るぞ!!見てやるぞ!!!もうどうにでもなりやがれ!!!」

ドキドキドキドキドキドキ―――――

ピッ…

京太郎「………………」じ………


京太郎「………………うお――――」



京太郎「――――――――――――うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ―――――」ばばっ!!



――――――――メールを見た瞬間。俺は無意識に高々と両手を突き上げていた。


おしまい。




おまけ。

四月中頃。

大学のキャンパス内。


咲「へぇ。コレが京ちゃんの通ってる学校のキャンパスなんだぁ」

京太郎「結構広いだろ?もう少し早かったら、桜もまだ咲いてたんだけどな」

京太郎「前の雨で殆んど散っちゃったんだけど。ここの桜、満開の時は結構キレイなんだぜ」

咲「そうなんだ。じゃあ来年はお花見デートしようね////」にこ

京太郎「ああ。そうだな」にこ

京太郎「でも…正直…OKしてくれるとは思わなかったよ、ずっと待たされっぱなしだったしな」はは

咲「ごめんね…京ちゃん。私が勝手ばっかり言ってた所為で…私…ずっと京ちゃんの優しさに甘えてた……」しゅん

京太郎「確かに随分待たされたけど…まぁプロの世界は厳しいって事位は判るし、お前も色々考えての事だろうしな」

咲「京ちゃんは…ホント優しいね……」

京太郎「んなことねーよ」へへ…

咲(……ううんそんな事ない。京ちゃんはホントに優しいよ…こんな私をずっと待っててくれたんだもん……)じ…

京太郎「ん?どうしたじっと人の顔見て。何か付いてるか?」

咲「ううん。何でも無い。何でも無いよ」にこ

京太郎「そうか……」

咲「ねえ京ちゃん……私…今まで京ちゃんに何にもして上げられなかった分、これからは出来る限り一緒に居るからね」

京太郎「ソレは嬉しいんだけど…いいのか?試合とかで大変なんじゃ?」

咲「……私…この一年で分かった事があるんだ……」

咲「確かに京ちゃんと離れてた一年の間。麻雀だけに打ち込んで、ある程度の結果を出す事を出来た」

咲「でも…それだけじゃ駄目。ずっとずっと寂しかった…胸に穴がぽっかり空いた様な喪失感があった」

咲「だからこれからの私は、欲しい物は我慢しないで手に入れるって決めたの。勿論…全力でね」にこ

京太郎「うおっここに来ての欲張り屋さん発言。お前…この一年で随分変わったな……」

咲「うん。これが一年…プロの雀士としてやってきて、辿り着いた結論」

咲「麻雀も恋愛も手を抜かず、全力で頑張るって決めたんだ。だから覚悟してね京ちゃん」にこ

京太郎「…………草食系文学少女とは思えない発言だな……」

咲「ううん。私は根っこの部分は何にも変わってないよ……」

咲「ただ…京ちゃんも麻雀も大好きだって事を我慢しなくなっただけ」にこ

京太郎「そうか…じゃあこれからお付き合いよろしくお願いします。お手柔らかにお願いします。咲さん」ぺこり

咲「こちらこそよろしくお願いします。京太郎君」ぺこり

京太郎「あはは」

咲「えへへ…」

京太郎・咲「「あははははは」」

咲「でも…ホントに良かった……京ちゃんもう他の女の子とくっ付いちゃってるって思ってたから……」

京太郎「そんな事ねーよ。俺はこんなチャラチャラした見た目だけど、中身は一途な純情ボーイ何だからな?」

咲「ふふ…そうだね」にこにこ

京太郎「だから安心s――――」

京太郎「――――――!!!」ドキィッ!!!

咲「……ん?どうしたの?京ちゃn――――」

京太郎「……い…いや何でも……そっそうだ咲。あっちのキャンパスに行こうぜ!!」どきどき

咲「う…うん」

京太郎(こっここはすぐにでも離れt――――――)

憧「――――――あれ須賀君?偶然だね……それに宮永さん?」

京太郎「!!!?」びくぅ!!

穏乃「お久し振り須賀さん。それに宮永さんも」ぺこり


咲「…………京ちゃんこの人達、阿知賀女子だった人達だよね?和ちゃんの友達の」

京太郎「ああ。あk…新子はここの学生なんだ。だけど…新子はいいとして、どうして高鴨もいるんだ?」

穏乃「はは…それはね。実は…憧とはたまに、お互いの学校を案内し合ったりしてるんだ」

憧「それより…宮永さん…ううん宮永プロはどうして学校に?」

咲「私も…京ちゃんに学校を案内して貰ってたの。私…この人とお付き合いしてるんだ」じっ

憧「!?」

憧(今…こっちを見て……流石インハイチャンプのプロ雀士…鋭いわね……でもそれなら――――)

穏乃「へーそんなんですか……これはお邪魔でしたね。じゃあ憧…行k――――」

憧「そうだったんですか。でも私も須賀…ううん京太郎君とは随分仲良くさせて貰ってるんですよ」にこっ

咲・京太郎・穏乃「「「!?」」」

憧(言ってやった!言ってやった!!でもこれだけじゃ―――――)

憧「……でも宮永さん…いいえ宮永プロ」

咲「何ですか?」

憧「いえ…プロリーグで新人賞を獲った有名人が、こんな処で堂々と彼氏とデートなんてしていて大丈夫なんですか?」

京太郎「いや…それは……」

咲「私は仮に有名人だとしても、それは麻雀のプロであって、アイドルとかじゃないから、全然問題ないよ」

京太郎(いや…そんな事は……もし当事者が俺じゃなかったら、新聞部としては、とんでもなく美味しいネタなんだけどな)

京太郎(……って、もしかしてもうアイツらに撮られてんじゃねーだろうな……)きょろきょろ

咲「それに…撮られたとしても、別に私は困りませんから」ぎゅっ

憧「!!」ムッ

京太郎「おっおい咲!…そんなくっ付くと……」

憧「それは大層な事で…でも将来を嘱望されているプロとただの大学生では、住んでる世界が随分違うと思いますけど?」

咲「どういう事?」

憧「お互いの目線が違い過ぎると、釣り合いが取れてくなって、ずっとすれ違って―――――」

憧「いつか破綻するんじゃないか……って事ですよ?」ニヤリ

穏乃「あっ憧!?」おろおろ

京太郎「おっおい憧!何言って―――――」

咲「大丈夫だよ。新子さんが望む(おもう)様な事には、決してならないですから」きっぱり

憧「そう…だといいですね?じゃあ。行こっか?しず」ファサ………

穏乃「う…うん!それじゃあまた。大変失礼しました!!」ぺこり

憧「あっそうだ―――――」ずいっ

京太郎(!?おっおい!顔が近い!!///////)どきっ

憧「またね。京太郎君……ううん京太郎――――」すっ…

ちゅっ

京太郎「!!!??」

咲・穏乃「「!!?」」


憧「えへへ…今まで色々シテくれたお礼に、私のファーストキスあげる!!じゃあまたねー!!////////」たたっ


穏乃「ちょっ憧!!すっ済みませんでしたー!!」ふかぶかとおじぎ

たたたっ――――


咲「…………京ちゃん…唇にチュウ(これ)って、一体どういう事なのカナ?カナ?」ゴゴゴゴゴゴ――――

京太郎「いっ…いや……これはその―――――///////」あたふた

咲「…………いいよ…今の私がとやかく言う資格なんて無いのは判ってるから……」ギリィ…

京太郎(言っている事と…お貌の表情(ようす)が全く違うのですけど……)おどおど

京太郎(いや…ここは男として、寧ろおどおどするんじゃなくて、こいつを安心させてやらないとな!!)ぐっ

京太郎「…………確かに、あれから色々あったけど。咲…これだけは、はっきりと言える」キリッ

京太郎「これまでも、これからも……たとえ、どんな事があったとしても、俺はお前だけだから」だきっ…

咲「……!!うん…私も京ちゃんだけだからね……」ぎゅっ…

咲「……でも。もしあの子…ううん…誰であろうと、私と京ちゃんの仲を邪魔する様な子がいたら…その時は―――――」

咲「全部纏めて私が――――――」


咲「ゴッ倒す!!!!」ゴッ!!


京太郎(…………誰もゴッ倒されない様に…誠心誠意、気を付けさせて頂きます……)


穏乃「もうっ憧ってば、彼女さんの前であんな事して、私、知らないよ?」

憧「こっ…これ位の事はさせて貰わないと。わ…私の気が済まないんだもん!!//////」まっかっか

穏乃「まったく…そんな真っ赤になってる癖に…良く言うよ」はぁ

憧「そっそんなことないわよっ//////!!それに…その内に、ホントに私が言ったみたいになるかもしれないじゃない?」

穏乃「まったく…立ち直りが早いと言うか…懲りないね、憧は……」はぁ

憧「あのねぇ…そうさせたのは、しず…アンタの所為なんだからね」

穏乃「私の所為?」きょとん

憧「そうだよ…あの時…私が京太郎に振られた時…あの時…直ぐに駆け付けてくれたじゃない」

穏乃「うん。あの時…何か胸騒ぎがして、憧に電話したら…あんな聞いた事もない声で出るんだもん。吃驚したよ」

憧「そしてら…ホントにすぐ来てくれて…それに着替えと、あったかい飲み物まで持って来てくれて……」

穏乃「いや…雨音はするのに、傘を差してる感じじゃなかったし……」

穏乃「それに…声も寒さに震えてる感じだったから、もしかしたら、ずぶ濡れ何じゃないかなって思って」

憧「あの時は本当に凄く嬉しかった。しずが…私の親友で居てくれて本当に良かったと思った」

穏乃「はは…そう面と向かって言われると照れちゃうな/////」てれっ

憧「それにあの時…私の話を聞いて、しずも一緒に泣いてくれて……」

穏乃「そっ…そうだったかな…はは……//////」

憧「あの時のしず…私にこう言ってくれたじゃない―――――」

憧「『悪い事があったとしても、その内いい事もあるから大丈夫』って……」

穏乃「確かに言ったけど……さっきみたいな事を言った訳じゃ―――――」

憧「ううんっ!京太郎の事だって、まだまだ勝負は下駄を履くまで分からないんだから!!」

穏乃「いや…もう履いてる様な……」

憧「前に京太郎と観た『遠くの恋人(ヒト)より、近くの彼女(コ)!』って映画みたいな結末にしてやるんだからね!!」

穏乃「人の話聞いてないし……」はぁ


憧「見ててよ…しず。いつか必ず捲土重来してやるんだから――――――」

憧「…………そう…まだまだ――――――」



憧「私の戦いは始まったばかり――――――」



憧「―――――なんだからね!!」にこっ


穏乃「…………うーん…正直に言って、憧にとっては不毛な戦いになると思うんだけどなー」はは…

穏乃(まっ…それでも私はいつでも憧の味方なんだけどね……)




おまけのおしまい。