某日・清澄

京太郎「う~ん……これは通るか?」コト

咲「残念。それロンだよ、京ちゃん」

京太郎「ぐおおおお!!」

優希「そこで筒子切りはないじぇ」

和「須賀君はもっと河を良く見た方がいいですね」

京太郎「……反省してます」

ガチャ

久「おっはー」

まこ「遅れてすまんのう」

咲「あ、部長に染谷先輩」

和「どうもこんにちは」

久「学生議会の仕事が長引いちゃってさ~」

まこ「わしもそれに付き合わされてのう」

優希「かけもちは大変だじぇ」

和「ほんとですね。お疲れ様です」

京太郎「先輩たちそこ座ってください。今お茶入れますんで」

久「あ、さんきゅ~」

まこ「お、ちょうど打ってたんか」

咲「もうすぐ終わりそうなところだったんで、よかったら部長たちも入りませんか?」

久「そうね」

まこ「それにしてもこりゃひどい点差じゃの」

優希「今さっきあの犬が咲ちゃんに跳満振り込んだところなんだじょ」

久「須賀君もぜんっぜん進歩しないわね~」

まこ「わしらばっかり打って練習に参加できないからっちゅうのもあると思うがの」

久「それでもネトマなり家で勉強するなりあるでしょ」

まこ「う~む」

咲「でも最近は部長や染谷先輩がいないときには、よくこのメンツで打ってますよ」

優希「そうだな。今日みたいに部長たちは文化祭の準備でよく遅くなるし」

まこ「ほう、それはええのう」

和「須賀君の打ち方は最初こそひどいものでしたが、前に比べたら比較的良くなったと思いますよ」

咲「だね」

まこ「じゃと。よかったな、京太郎」

京太郎「なんすか~? また俺の悪口っすか?」

優希「逆だじぇ逆。あののどちゃんが近頃の犬の上達っぷりを褒め称えてるんだじょ」

京太郎「おお、マジか! ……あ、お茶汲んできました」

まこ「おう、助かる」

和「別に褒め称えているってほどではありませんけど……」

優希「でも私も犬は練習すればもっと強くなれるとおもうじぇ」

京太郎「お前、変なもんでも食ったか?」

優希「失礼な! せっかく私も評価してやったのに!」

京太郎「お前が言うとなんか裏がありそうで怖いんだよ」

久「……」

咲「そうだ、部長と染谷先輩も交えて一回打ってみたら?」

まこ「そりゃええのう。最近こいつとは打っちょらんかったし」

久「……そうねぇ。須賀君がどの程度うまくなったのか、お手並み拝見といこうかしら」



30分後

京太郎「……えっと、これで」コト

久「フフ……ほんとにそれでいいの?」ニヤリ

京太郎「っ!」ギクッ

久「ロン……裏のってインパチ」

京太郎「うわ、飛んじまった……」ガクリ

久「おっつかれ~♪」

まこ「まったく敵わんのう……」

和「今のはその……仕方ありませんよ、須賀君」

まこ「あれはわしでも読めんかったけぇ」

優希「うん……部長、久々に本気だったじょ」

久「なにいってんの。私の力はまだまだこんなものじゃないわよ?」フフン

まこ「調子づくといつもこれじゃ」

咲「どんまい、京ちゃん」

京太郎「ああ……」

久「……んじゃ、罰として須賀君は買い出しに行ってちょうだいね」

京太郎「え、そんな罰あったんすか!?」

久「もちろん。インハイ優勝旗のあるこの部でトビなんて赤っ恥もいいとこよ?」

京太郎「うぐっ……」

優希「部長……ドSだじぇ」

久「このメモに書いてあるのぜーんぶお願いね? さ、ダッシュダッシュ!」

京太郎「……はい」

咲「き、京ちゃん。私も手伝うよ」

まこ「ほうじゃね。さすがにこのメモの品全部は一人じゃ無理じゃ」

和「私も行きますよ。最近運動不足気味ですし」

久「ダメダメ! 和たちまでいったらメンツがいなくなっちゃうじゃない」

咲「でもどっちにしても一人余りますよね……?」

久「ノンノン……これは罰ゲームよ、咲。一人で行かないと意味がないじゃない」

咲「はぁ……」

久「それに須賀君は男の子よ? これくらい持てなくっちゃ清澄のマネージャーの名が廃るわ」

まこ「いや、京太郎はれっきとした部員なんじゃが」

久「今の実力じゃそういわれても仕方ないでしょう? 悔しかったらもっと練習して強くなることよ。ね、須賀君?」

京太郎「……そ、そうっすね! はは!」

咲「……ぶ、部長……それは言いすぎじゃ」

京太郎「咲」

咲「き、京ちゃ……」

京太郎「俺なら平気だ。こんくらいどうってことないぜ!」

優希「まぁ、元気出すじょ! 人手が足りなかったら私のケータイに救援要請を送れ!」

和「そうですね。私たちでよければ手伝いに駆けつけますから」

京太郎「……おう! ありがとな、みんな」

久「……」

京太郎「そんじゃさっそく行ってきます」

まこ「おう、気ぃつけてな」

久「いってらっしゃ~い。早いとこお願いね~♪」

バタン

咲「……」

久「じゃ、私たちは練習しましょ練習」

優希「そうだな。今度は咲ちゃんも入るじょ!」

咲「あ、うん……」

久「そうそう。咲たちは秋大会もあるんだから、今のうちからビシバシいくわよ」

咲「そう……ですね」

咲(京ちゃん大丈夫かな……)



一方その頃

京太郎「はぁ……これぜってぇ2往復はかかるな」

京太郎「……」

京太郎(正直、部長の言葉にはちょっぴりイラッときたが……的を射てる部分もあるしな)

京太郎(ここは我慢のときだ須賀京太郎……ちゃちゃっと買い出し済ませて早く練習に加わろうぜ!)

―――――――――――――――――――

モンブチマート

京太郎「よし、とりあえず半分は片づいた……」

京太郎「しっかし重いな……これわざと重量のあるものばっか頼んでるんじゃ……」

京太郎「いやいや、そういう考えはよそう……」

京太郎「……」スタスタ

??「おや、あなたは」

京太郎「あ……」

京太郎「ハギヨシさん!」

ハギヨシ「どうも、こんにちは」

京太郎「ご無沙汰してます。どうしたんすか、こんなところに」

ハギヨシ「フフ、あなたと同じく買い物ですよ」

京太郎「いや、でも龍門渕ってここからけっこう距離あるじゃないですか? わざわざこんな辺鄙なとこまで来なくても……」

ハギヨシ「このスーパーにしか置いていないお菓子がありまして。衣様の大好物なんです」

京太郎「なるほど。さすが龍門渕のスーパー執事ですね」

ハギヨシ「フフ、お褒めに預かり光栄です……それにしても須賀君、おひとりですか?」

京太郎「ええ、まぁ」

ハギヨシ「ずいぶんと重そうな荷物ですが……」

京太郎「あ、わかります? これ罰ゲームなんすよ、はは」

ハギヨシ「罰ゲーム……ですか?」

京太郎「さっき麻雀でラスとっちゃったんですよ。その罰ってことで買い出しを」

ハギヨシ「おやおや、感心しませんね。仮にもインハイ優勝校である清澄が部員にそんなことを強いているなど」

京太郎「はは、あくまで名目ですよ、名目」

京太郎「他の奴らは秋の大会もありますし、練習で忙しいんです。なので普段からこういう仕事は俺が引き受けてるんですよ」

ハギヨシ「あなたも秋大会に出るのではないんですか?」

京太郎「……俺はいいんです。どうせ予選突破も無理ですから」

ハギヨシ「……最初から諦めてしまうのはよくないことですよ」

京太郎「でも、事実そうですから」

ハギヨシ「……」

京太郎「はは、すんません。なんかしんみりさせちゃって」

ハギヨシ「いいえ……ですが、そういうことなら学校までお送りしますよ」

京太郎「え……いやいや、悪いっすよ!」

ハギヨシ「友人としてそれくらいのことはさせてください」

京太郎「ハギヨシさん……」


―――――――――――――――――――


京太郎「すみませんね、残りの買い物にまで付き合わせちゃって」

ハギヨシ「いいえ、私も久々にプライベートな話をする機会に恵まれて嬉しいですよ」

京太郎「ハギヨシさんも普段テレビとか観るんすね。すげー意外でした」

ハギヨシ「そうですか? バラエティなどはけっこう好んでよく観ますよ」

ハギヨシ「それにああいった番組の知識を取り入れておくと、衣様やそのお友達たちとの会話にも混ざりやすいですからね」

京太郎(そ、そこまで考えてたのか……)

京太郎「はぁ……ハギヨシさんはすごいっすよね」

ハギヨシ「どうしたんですか急に」

京太郎「執事って大変なことばかりじゃないですか……それでも雇い主のこととかいろいろ考えて」

ハギヨシ「私は好きでこの仕事をしてるんですよ」

ハギヨシ「辛いこともありますが、それ以上に楽しいことの方が勝る……だから続けていられるんです、きっと」

京太郎「俺にはそんなポジティブな考え方できませんよ……」

ハギヨシ「……」

ハギヨシ「……須賀君、そんなに重く考えることなんてありませんよ」

京太郎「え?」

ハギヨシ「あなたは執事ではないんです。もっと自分に正直に生きてみたらどうですか?」

京太郎「自分に正直に……」

ハギヨシ「笑いたいときには笑って、怒りたいときには怒る……単純なことです」

京太郎「でも、そんなことばっかしてたら人間関係をめちゃくちゃになりますよ」

ハギヨシ「そうかもしれませんね」

京太郎「俺にはそんな勇気……ありません」

ハギヨシ「……」

ハギヨシ「大人になれば、イヤというほど責任という言葉が付きまとう……自分を殺してまで生きなければならない時があります」

ハギヨシ「ですがあなたはまだ学生です。些細なしがらみなど、後からどうとでもなる」

京太郎「そう……でしょうか」

ハギヨシ「今のあなたは自分で自分の感情を押し留めて、苦しんでいるように思えます」

京太郎「……」

ハギヨシ「もっと楽になっていい、もっと吐き出せばいい……愚痴なら私でよければいくらでも聞きますよ」

京太郎「ハギヨシさん……」

ハギヨシ「……こんな程度のアドバイスしかできずに申し訳ありません」

京太郎「いえ、かなり気が楽になりました……ありがとうございます」

ハギヨシ「そうですか、それはよかった」ニコッ



ハギヨシ「部室までご一緒しますよ」

京太郎「いや、さすがにそこまではいいですよ。すぐそこなんで」

ハギヨシ「そうですか?」

京太郎「はい。今日はほんとありがとうございました」

ハギヨシ「なにかあればいつでも連絡してください」

京太郎「……はい!」


プップー

京太郎「……やっぱすげーやあの人は」

京太郎「自分に正直に生きろ……か」

京太郎「俺、知らず知らずのうちに我慢してばっかだったのかもなぁ……」

京太郎「……」

京太郎「って言っても部長に逆らうなんてやっぱできねーよな、はは」

京太郎「……さて、部室戻りますか」

ピピッ

京太郎「お、メールだ……部長から?」



『ごっめ~ん! 悪いけどハンドソープも買ってきて(はぁと』

京太郎「……」イラッ


ガチャ

久「あら、意外と早かったわねぇ」

京太郎「……」

咲「おかえり京ちゃん、大丈夫だった?」

京太郎「おう」

優希「すごい荷物だじぇ。よく一人で持ってこれたな」

京太郎「まぁな。ハギヨシさんに車で送ってもらったんだ」

まこ「ハギヨシさんって……ああ、あの龍門渕の執事さんかの」

京太郎「はい、スーパーで偶然お会いして……」

久「おお、あったあったバウムクーヘン」ガサゴソ

和「ちょっと、意地汚いですよ部長」

久「みんなで食べましょ! ……あ、須賀君。悪いけど紅茶汲んでもらえる?」

京太郎「……」

久「あそこのバウムは絶品なのよね~♪」ビリリ

和「紅茶なら私が注ぎますよ」

久「ええ~! 私、須賀君が注いだ紅茶が飲みたいわぁ~」

和「……」

まこ「部長、ええかげんに……」

京太郎「染谷先輩、いいですよ」

まこ「……ほ、ほうか? 悪いのう」

京太郎「いえ……和、俺が汲むよ」

和「す、すみません」

京太郎「いや、お前は悪くないしな。そっち座ってろよ」

和「はい……」

優希「私も手伝うじぇ!」

京太郎「お、悪いな優希」

久「ふぅん……」

久(……あ、そうだ)ニヤッ

久「あ、みんな。食べる前に手洗わないとダメよ?」

和「そうですね」

久「……あら、ハンドソープ切れてるみたい!」

京太郎「……」

久「そういえば須賀君にさっき頼んだはずなんだけど……」チラッ

京太郎「……すみません、確認し忘れました」

久「ええ~、なにしてんの須賀君! マネージャーがそんなんじゃダメじゃない!」

まこ「だから京太郎は部員じゃと……」

久「どうでもいいわよそんなこと。それより手が洗えないとバウムクーヘン食べれないじゃ~ん」

咲「他の水場に行けばいいんじゃないですか……?」

久「めんどくさいわよそんなの~」

京太郎「……」

久「どうしよっかなぁ……ねぇ、須賀君? どうしようか?」

京太郎「……部長が最初のときに言ってくれてれば買ってこれたんですけどね」

久「んん!? 須賀君もしかして怒ってる?」

京太郎「……怒ってないですよ」

久「ほんとに?」

京太郎「……」

久「ふぅん……」ニヤニヤ

京太郎「……」イラッ

京太郎「……咲、洗面台の下の戸棚開けてくれるか?」

咲「え、うん……」

久「?? さっき見たけどそこにはなかったわよ?」

京太郎「部長はテキトーですからね。手前しか見なかったんじゃないですか」

久「……」ムカッ

咲「あ、あったよ! 詰め替え用」

京太郎「それそれ。悪いんだけど替えてくれるか?」

咲「うん」

久「あ、あら……あったんだ~。へぇ~」

京太郎「……部長、そこどいてもらえますか?」

久「あ、ええ……」

京太郎「どうぞ、染谷先輩」

まこ「おう」

京太郎「和も」

和「ありがとうございます」

久「……」

久(むむ……須賀君のくせにナマイキね~)

和「いい香りですね」

咲「京ちゃんは紅茶入れるの上手だよね」

京太郎「前に旨い入れ方をハギヨシさんに教えてもらったんだ」

優希「あのスーパー執事さんの業を盗むとはやるな!」

京太郎「あの人の域に達するにはまだまだだけどな」

久「……」ズズ

まこ「どうじゃ、部長。うまいか?」

久「ま、まぁいいんじゃない?」

まこ(素直じゃないのう……)ククッ

久「な、なによ!」

咲「まだ時間ありますし、もう一局打ちますか?」

まこ「ほうじゃね」

京太郎「今度は俺も入っていいですか?」

まこ「ええよ」

和「私は見てますね」

久「わ、私も入るわ!」

―――――――――――――――――――

久(……うーん、この待ちなら須賀君あたりが振り込んでくれそうね)コト

京太郎「あ、それロンです」

久「えっ……」

京太郎「タンピン三色ドラドラで……えーっと……」

咲「跳満だね。12000」

優希「跳満返しだじょ!」

京太郎「おお! ってことは逆転?」

和「部長から直撃って相当ですよ、おめでとうございます」

まこ「ま、今のは部長がザルじゃったな」

久「むっ……まだ試合が終わったわけじゃないわよ!」



10分後

京太郎「ああ~、負けちまったか」

久「ふふん……やっぱまだまだね」

和「途中まではよかったんですけど……」

咲「跳満当てたおかげで守りがおろそかになっちゃったね」

京太郎「くっそ~……いけそうだったのになぁ」

久「あ、あの跳満も私がちょっと気抜いただけだしね」

まこ「素直に褒めてやらんかい」

優希「まだまだ修行が足らんぞ犬!」

京太郎「お前最下位じゃねえか!」

優希「わ、私もタコス力が切れただけだじょ……」グゥ

和「ふふ、そろそろお開きでしょうか」

優希「部長はまた居残りか?」

久「まぁね~。文化祭の書類まとめしなくちゃだし」

まこ「悪いが今日は手伝えんけぇ。バイトがあるからの」

久「いいわよ別に~」

咲「じゃ、お先に失礼します」

和「お疲れ様です」

久「あ、須賀君は残って!」

京太郎「え……なんでですか?」

久「さっき買ってきたものそのまんまじゃない。整理してから帰ってよ~」

京太郎「はぁ……わかりました」

久「なんか不満そうね~、んん?」

京太郎「いえ、別に」

優希「私も手伝ってやろう!」

京太郎「いいよ、すぐ終わるし」

和「じゃあ下で待ってましょうか?」

京太郎「いいっていいって。もう遅いしさ」

久「須賀君もこう言ってるし、帰っちゃいなさい」

咲「じ、じゃあまた明日ね、京ちゃん」

京太郎「おう」

バタン

久「さってと、お互い早く終わらせちゃいましょ?」

京太郎「……そうですね」

久「……」カキカキ

京太郎「……」ガサガサ



5分後

久「はぁ~……疲れた」

京太郎「……もう終わったんすか?」

久「まだよまだ。終わりそうになくて途方に暮れてんの」

京太郎「だったら部活に参加しなけりゃよかったじゃないですか」

久「なによ~。別にいいじゃない息抜きくらい」

京太郎「……いや、俺は構いませんけどね」

久「……」

京太郎「……」

久「なんかおもしろい話してよ須賀君」

京太郎「……なんすか、唐突に」

久「だって静かすぎてやりにくいんだも~ん」

京太郎「いやですよ……俺だって早く帰りたいんですから」

久「早く帰りたいなんてウソ言っちゃってこのこの~」

京太郎「……」

久「ほんとは女子と二人っきりでドキドキしてるんじゃない~? んん?」

京太郎「……してませんよ」

久「ほんと~? じゃあそのズボンに張ったテントはなによ~」ニヤニヤ

京太郎「えっ!?」

京太郎「……」

久「あはは! 冗談よ冗談!!」バシッ

京太郎「……いて」

久「須賀君初々しくていいわね~。悪く言うなら童貞臭いっていうの? あはは!」

京太郎「……」

久「そんな怒んないでよ~、ほれほれ~」ツンツン

京太郎「……」イライラ

京太郎「……あの、邪魔なんすけど」パシッ

久「あ、ごめんごめん」

京太郎「……」

久(ちょっと怒らせすぎたかな~?)ニヤッ

京太郎「……」

久「あ~、ほんとかったるいわぁ。須賀君それ終わったら肩でも揉んでくんない?」

京太郎「……」

久「いやさ~、最近仕事多くって凝りがひどいのよ~」

京太郎「……」スクッ

久「ああ~、専属のマッサージ師でもほしいわ~」

京太郎「あの……」

久「あ、須賀君やる? 時給なら出すわよ。なーんて、あはは!」

京太郎「俺帰りますんで。じゃ……」スタスタ

久「えっ……」

久「ちょっとちょっと」グイッ

京太郎「……なんすか」

久「ひどくない? 私まだ終わってないんだけど」

京太郎「……知りませんよ。それ、部長の仕事でしょ」

久「いやいや、手伝ってくれてもいいじゃん~。なんなら肩揉みでもいいけど」

京太郎「すみませんけど、やることあるんで……」

久「なに言っちゃってんのよ~! ほんとは家帰ってもすることなんてないくせに~」

久「あ、男の子はオナニーとかすんだっけ……ね、今日のシチュエーションとか妄想してやるの? ねえ?」

京太郎「……」

京太郎「俺にもいろいろあるんすよ……明日の宿題とか、麻雀の勉強とか」

久「麻雀の勉強なんて意味ない意味ない! 須賀君はマネージャーだけやってれば十分……」

京太郎「……」ピキッ


ドンッ

久「いた……」

京太郎「……いい加減にしてくださいよ」

久「あはは……え、なに?」

京太郎「さっきから言いたい放題……俺はこの部に飼われてる奴隷じゃない!」

久「いやいや奴隷なんて言ってないでしょ……ま、マネージャーだって……」

京太郎「同じことだろうが!」

久「ひっ……」

京太郎「あんたのワガママに振り回されて……嫌味を言われ続けて……」

京太郎「もううんざりなんですよ!!」

久「い、嫌味とか……そんなつもり……」

京太郎「いちいちうるせえよ!!」ドンッ

久「ひぃっ……! ご、ごめん……」

京太郎「なんなんすか? 俺のこと嫌いならそう言えばいいじゃないですか」

久「き、きらいとかそういうんじゃ……」

京太郎「今だから言わせてもらいますけどね……俺はあんたのこと、大っ嫌いなんだよ!!」

久「そ、そんなに……」

京太郎「ああ!?」

久「ひっ……っ、そ、そんなに……思いつめてるとは……し、しらなくて……」

京太郎「……」

久「ご、ごめ……っ、……」ポロポロ

京太郎「なぁ……」

久「え……?」

京太郎「泣けば許されると思ってるのかよ……おい!」ドンッ

久「ひぃっ……!」

久「……ご、ごめんなさい……ごめ……」

京太郎「……はは、ずいぶんしおらしくなりましたね。部長」

久「……っ」カタカタ

京太郎「いつも俺に指図してきたあんたの姿とはえらい違いですよ……はは」

京太郎「さぁ、部長……やるべきことがあるんじゃないですか?」

久「え……」

京太郎「謝ってくださいよ、俺に……今までしてきたこと全部」

久「……す、すみません……許してくだs」

京太郎「そういうことじゃねえだろ!!」

久「ひっ……!」

京太郎「あんたが今日まで……俺に、何を、どうしてきたのか……!」

京太郎「自分の口でちゃんと言葉にして、それを謝るんだよ!」

久「……っ」

京太郎「じゃあいきましょうか……まずは当然買い出しですよね」

京太郎「俺をマネージャ―だとかなんとか言って散々こき下ろして……備品を買いに行かせてましたよね?」

久「……は、はい……」

京太郎「それを今すぐ謝ってくださいよ……土下座して……地べたに顔を押し付けて!!」

久「……」ググ

京太郎「そうそう……お似合いですよ、部長」

久「うぅ……っ」ポロポロ

京太郎「ほら、なんでしたっけ……?」

久「っ、わ、私は……」

京太郎「ええ……」

久「わ、私は……す、須賀君をマネージャー呼ばわりして……」

京太郎「“部員である須賀君を”……だろ? 言い直せ」

久「……は、はい……すみません……っ」

京太郎「いいからさっさとしてくださいよ。ノロマですね、ほんと」

久「……っ」

久「ぶ、部員である須賀君を……っ、マネージャー呼ばわりして……」

久「買い出しに行かせていました……ごめんなさい……っ」

京太郎「よく言えました……」

京太郎「次は日頃の言動ですね……さっきもそうでしたけど、人のこと小ばかにしたような態度ばかり取っていますよね」

京太郎「それを謝ってください……さぁ」

久「……わ、私は……す、すがくんに……」

久「日頃から……っ、た、大変失礼な言動をとっていました……」

京太郎「声が小さくてよく聞こえませんね」

久「……っ、わ、私は……」

京太郎「顔あげんじゃねえよ」

久「……っ」

京太郎「土下座って言ったの忘れたんですか? そのままの姿勢で声張ってくださいよ」

久「も、申し訳ありません……」

久「わ、私は……」

京太郎「……」


その後も俺は数々の行いを部長に謝罪させた。気が済むまで、何度も……。
俺の一挙手一投足にビクビクしながら謝り続ける部長の様は、見ていて心地のいいものだった。

キーンコーンカーンコーン


京太郎「もう下校の時刻ですね……」

久「……っ、うぅ……ひく……」

京太郎「俺は先に帰りますよ。部長と一緒だと他の人に不審がられますしね」

久「……っ」コクッ

京太郎「いいですか。明日以降も今まで通りに俺に接してくださいよ」

京太郎「あなたが俺に対して急にヘコヘコし出したら怪しすぎますからね」

久「……わ、わかりま……わかった」

京太郎「俺はなんだかんだで麻雀部が好きなんです。咲や和、優希や染谷先輩のいるこの麻雀部が」

久「……っ」

京太郎「その平穏を崩したくない……それは俺自身のためでもあり、そして皆のためでもある」

京太郎「わかりましたね?」

久「う、うん……っ」

京太郎「じゃ、失礼します」

バタンッ


翌日

京太郎「ふぁぁ……」

京太郎(昨日……俺はどうかしてたのかもしれない)

京太郎(部長にあんなことをさせて……だが、不思議と後悔はない)

京太郎(その証拠に……今まで少なからず感じていたわだかまりがきれいさっぱり消えている)

京太郎(もしかしたらあんな大それた事ができたのは、ハギヨシさんの助言のおかげかもな……)

咲「京ちゃん、おはよ」

京太郎「おう、おはよう咲」

咲「昨日は大丈夫だった?」

京太郎「ん、なにが?」

咲「いや、また部長に振り回されたりしたんじゃないかと思って」

京太郎「あー……まぁな。いつものことだしもう慣れたわ」

咲「そっか」

京太郎「それより咲、今日は何の日か知ってるか?」

咲「え……っと、もしかして京ちゃん誕生日?」

京太郎「ちげーよっ! てか誕生日覚えられてねえのかよ……」

咲「い、いや覚えてるよ……3月だったよね」

京太郎「……2月です」

咲「あ、はは……ごめん」

京太郎「いや、いいけどよ……今日はなぁ、レディースランチがハンバーグの日なんだ」

咲「へえ……ってそんなの知らないよ!」

京太郎「だから、昼になったら頼むな」

咲「まったくもう……あ、部長」

京太郎「……っ!」ビクッ

咲「部長~、おはようございます!」

久「え、あ……お、おはよう」

咲「なんか珍しいですね、朝こうして部長と会うなんて」

久「そ、そうね」

京太郎「……」

咲「?」

京太郎「……部長、あの後学生議会の仕事は終わったんですか?」

久「え、ええ……まぁなんとかね。家で済ませたわ」

京太郎「そうですか……がんばってくださいね」

久「う、うん……」

咲「……?」

咲「部長、今日は具合でも悪いんですか?」

久「え……ど、どうして?」

咲「いえ、なんか元気なさそうですし……」

久「そ、そんなことないわよ! あはは……は、は……」

咲(やっぱりおかしいような……)

久「……あ、わ、私こっちだから」

京太郎「はい、それじゃあまた放課後に」

久「う、うん……」

京太郎「俺らも行こうぜ」

咲「あ、うん……」

スタスタ

咲「……京ちゃん、なんか部長の様子おかしくなかった?」

京太郎「そうか?」

咲「私の気のせいかなぁ……なんか何かに怯えてるようなそんな感じに見えたんだけど」

京太郎「……気のせいだろ、きっと」

京太郎「……」


授業中

京太郎「……」ポケー

京太郎(咲のやつ、確信とまではいかないけどかなり怪しんでたな)

京太郎(いつもは鈍臭いくせに、こういうところだけ感がいいんだよな……女ってわかんねえわホント)

京太郎「……」

京太郎(ま、露骨にあんな態度とられりゃそうなるか……)

京太郎(このままじゃダメだ……何より俺がやりにくい)

京太郎「……」

京太郎(昼休み、部長を呼び出すか……)

コツンッ

京太郎「いてっ!」

教師「おい須賀。マジメに授業聞く気あるのか?」

京太郎「あ、すんません……」

アハハハ



昼休み

京太郎(部長には昼休み部室に来るようメールで伝えた)

京太郎(そろそろ行くか……)ガタッ

咲「京ちゃん」

京太郎「おう、咲か。どうした?」

咲「どうしたって……朝言ったこともう忘れたの?」

京太郎「なんだっけ?」

咲「もう……レディースランチ! 食べたいんでしょ?」

京太郎「あ……」

京太郎(そうだった……完全に忘れてたぜ)

咲「ほんとに忘れてたんだ……しっかりしてよ、もう」

京太郎「うわ、咲に言われちまったよ」

咲「なにそれどういうこと?」ジトッ

京太郎「なんでもないでーす……悪いけど今日はやっぱいいわ。用事思い出しちまって」

咲「ええ~、せっかく教室まで来てあげたのに」

京太郎「今度なんかおごってやるから、そんじゃな」ダッ

咲「もう!」

咲「……」

咲(あんなに急いでどこ行くんだろ……?)

―――――――――――――――――――

ガチャ

京太郎「あ、来てたんですね」

久「……え、ええ」

京太郎「なんすか、その怯えた態度……」

久「……お、怯えてなんて……ないわよ」

京太郎「……」

京太郎「部長……言いましたよね」

久「……っ」ビクッ

京太郎「今まで通り接してくださいって。なんですか今朝の」

久「いや、あれは……」

京太郎「あの咲でさえ訝しんでましたよ……やる気あるんですか?」

久「だ、だって……それは……」

京太郎「……」

久「……っ、うぅ……」ポロポロ

京太郎「はぁ……またそうやって泣くんですか」

久「ご、ごめ……っ、えっく……」

京太郎「……」

京太郎(あー……めんどくせえ……)

久「……っ、えっ……く……」

京太郎「……」

ドンッ

久「ひっ……」

京太郎「……俺の言ったこと守れないんだったら辞めてくださいよ。麻雀部」

久「そ、そんな……」

京太郎「当然でしょう。この状況を作った原因は、部長……あなたなんですから」

久「……っ、……」

京太郎「どうすんですか? やるのか、やらないのか」

久「や、やります……っ、ふ、普段通りにします……!」

京太郎「はぁ……だからそのオドオドした喋り方をやめてくださいって言ってんですよ」

久「……っ、ひ……だ、だって……」

京太郎「……なんですか?」

久「す、須賀君が……こ、こわく、て……っ」ポロポロ

京太郎「……」

京太郎(これはもうどうしようもないな……昨日やりすぎちまったか)

京太郎(なら……)

京太郎「……もういいです」

久「えっ……」

京太郎「俺に極力話しかけるのやめてください。ボロが出ますから」

京太郎「それと部室に顔を出す頻度も控えるように」

京太郎(……部長は本来ならすでに引退している身だ。徐々にフェードアウトしてもらって消えるのを待つ方が得策)

久「……っ」

京太郎「それじゃ俺戻りますんで。時間差できてくださいね」

バタンッ

久「……」


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放課後・部室

京太郎「おいっす」

優希「お、きたか!」

和「こんにちは」

京太郎「ありゃ、まだ俺たちだけか?」

和「はい、咲さんと染谷先輩は用事があるとかで少し遅れると言ってました」

京太郎「……部長は?」

優希「わかんないじょ。また学生議会の仕事じゃないか?」

京太郎「そっか」

和「三麻でもやりますか?」

優希「望むところだじぇ!」

京太郎「おっし、いっちょやったるか」

優希「ツモ! リーチメンタンピン一発ドラ1、跳満だじぇ!」

京太郎「くっそー! またかよ!」

優希「点棒ガッポガポだじぇ!」ジャラ

ガチャ

咲「お、遅れてごめんね~」

和「あ、咲さん。こんにちは」

京太郎「おう、ずいぶん遅かったな」

咲「う、うん……ちょっとね」

優希「咲ちゃんも入るか?」

咲「そうだね。それ終わってから入ろっかな」

優希「じゃさっさと犬を飛ばして終わりにするじょ!」

京太郎「なに!? そうはさせるかぁ!」

ガヤガヤ

咲「……」

和(……咲さん?)


2時間後

優希「う~……打ち疲れたじょ」

和「ほんとに集中力ないですね、優希は」

優希「……のどちゃんのを少しわけてほしいくらいだじぇ」モミッ

和「って、なにしてるんですか」パシッ

優希「いや、そこに集中力入ってるのかなと思って……」

和「アホですか」

京太郎「……先輩たち来ないし、そろそろ帰るか?」

咲「そうだね」

―――――――――――――――――――

和「じゃ私たちはここで」

優希「また明日な!」

京太郎「おーう」

咲「じゃあね~」

京太郎「いや~、やっぱ昨日みたいにはいかねえな。咲や和にやられっぱなし」

咲「そんないきなし強くなるわけないよ」

京太郎「そりゃそうか、はは」

咲「……ね、京ちゃん」

京太郎「ん?」

咲「部長、今日はどうしてこなかったと思う?」

京太郎「……うーん、学生議会の仕事でもあったんじゃないか?」

咲「そっか……そうかもね」

京太郎「……」

京太郎「どうしたんだ? そんなこと聞いて」

咲「ううん、なんでもない」

京太郎「ふーん……」

咲「じゃ、また明日ね」

京太郎「おう」

スタスタ

京太郎「……」

京太郎(まさかバレてるわけない……よな)

―――――――――――――――――――
まこ宅

久「……」

まこ「お茶汲んでくるけぇ。ちょっと待っちょれ」

久「うん……」

久(話があるって言ってたけど……一体なんだろ)

久(もしかして、須賀君がまこに昨日のことを……)

久(いやいやないでしょ……須賀君は部のみんなには知られたくないって言ってたし)

久「……」

まこ「……お待たせぇ~」

久「……まこ、話ってなに?」

まこ「……」ズズ

まこ「ふぅ……やっぱ緑茶が一番じゃの。身体に染み渡るわ」

久「まこ」

まこ「なんじゃ、せっかちじゃのう」

久「あなたが呼び出したんじゃない」

まこ「……うむ。たしかに」

まこ「それはそうと、お前さんはわしに言いたいことはないんか?」

久「な、ないわよ……なに言って……」

まこ「……京太郎とケンカでもしたんか?」

久「っ!」ギクッ

久「ど、どうしてよ……」

まこ「なんじゃ、図星か」

久「どうしてって聞いてるの!」

まこ「……」ズズ

久「まこ!」

まこ「……咲から聞いた。今日の昼休み、部室で京太郎とお前さんが話してたっちゅうことをな」

久「さ、咲はなんて……」

まこ「……京太郎がお前さんに部室に来るなとかなんとか言ってたと」

久「……」

まこ「本当なんか?」

久「……っ」グスッ

まこ「……」

まこ「わしになんでも話してみんさい」

久「……っ、ぇぐ……うぅ……」ポロポロ

まこ「よしよし、泣けばええ……」ダキッ

久「……っく……ぅ」

まこ「……」

久「……っ……わ、私が……私が須賀君を怒らせちゃって……」

まこ「うん……」

久「傷つけてたこと……っ、き、気づかなくって……」

まこ「うん……」

久「……っ、わ、私……どうしたら……っ」

まこ「あんたはどうしたいんじゃ」

久「……っ、ぇく……」

久「……す、須賀君に……ゆ、許してもらいたい……っ」

まこ「ほうか……」

まこ「あいつも悪いやつじゃないけぇ……きっと許してくれるはずじゃ」

久「う、ううん……絶対許してくれない……っ、許してくれるわけない……」

まこ「……」

久「うぅ……っ……」

まこ(これは思った以上に難しい問題じゃの……)

まこ(明日、京太郎にも話を聞いてみるしかなさそうじゃ……)

―――――――――――――――――――

一方

咲「……」

咲(結局京ちゃんに聞けなかった……昼間のこと)

咲(部長と京ちゃんの二人になにがあったんだろう……)

咲(私になにができるだろう……)


プップー

咲「うわっと……す、すみません」

??「おや、驚かせてしまったようですね。宮永さん」

咲「え……もしかして、ハギヨシさん?」

ハギヨシ「どうも、お久しぶりです」

咲「どうしたんですか、こんなところで」

ハギヨシ「いえ、須賀君にちょっとした用事がありまして……その様子だともう帰宅してしまったようですね」

咲「まだ帰ってる途中かもしれませんけど……どうしたんですか?」

ハギヨシ「それがですね……昨日彼を学校まで送った際に、彼が車の中に忘れ物をしていきまして」

咲「あ、それ昨日の買い出しの……」

ハギヨシ「ええ、おそらく」

咲「じゃ、私が明日渡しておきますよ」

ハギヨシ「本当ですか? 助かります」

咲「じゃお預かりしますね」

ハギヨシ「お願いします……お礼といってはなんですが、家まで送っていきましょうか?」

咲「え、悪いですよ……」

ハギヨシ「遠慮なさらずともけっこうですよ」

咲「えっと……じ、じゃあお言葉に甘えて」

ハギヨシ「はい」ニコッ

咲「……し、失礼します」ドキドキ

咲(こんな高そうな車乗るの初めてだよ……)

ハギヨシ「珍しいですか?」

咲「あ、はい……すごく」

ハギヨシ「須賀君も最初乗ったときは物珍しそうな反応をしていましたよ、フフ」

咲「……ハギヨシさん、京ちゃんのお友達なんですよね」

ハギヨシ「ええ……どうかされたんですか?」

咲「実は……」


一瞬のためらいはあったが、いったん口をついて出た言葉は止まらなかった。
京ちゃんと部長の一件……それを染谷先輩に相談したこと……。
京ちゃんを問い詰めることができなかった自分……そして、どうすればいいのかわからない自分……。
ハギヨシさんは黙って私の話を聞いてくれた。


ハギヨシ「……普段の須賀君と竹井さんの御関係はどういったものなんですか?」

咲「えっと……普通の先輩・後輩の関係だと思います。たぶん」

ハギヨシ「……」

咲「あ、でも……ちょっと最近部長が京ちゃんをからかいすぎているって感じたことはあります」

ハギヨシ「具体的には?」

咲「無理な買い出しを頼んだり……とか、いろいろです」

咲「部長も悪気があったわけじゃないとは思うんですけど、京ちゃんもそれにストレスを感じていたのかも……」

ハギヨシ「ふむ……」

ハギヨシ「……そうかもしれませんね」

咲「……やっぱりそうですか?」

ハギヨシ「昨日、彼が愚痴のようなものをこぼしていたんです。自らの部での立場について悩んでいるようでした」

咲「京ちゃん……そんな思いつめてたなんて」

ハギヨシ「それに対して、私はこうアドバイスしたんです。自分に正直に生きてはどうか、と」

咲「もしかして……」

ハギヨシ「ええ、彼は竹井さんに自分の感情をぶつけたのかもしれませんね。今まで感じていた不満やいらだちといった感情を」

咲「京ちゃん……私、京ちゃんの気持ちに気づけなかった……」

ハギヨシ「彼は優しい人間ですからね……きっと周りの人に悟らせないよう努力していたんでしょう」

咲「でも……さっきも言ったように、部長も悪気があったわけじゃないと思うんです」

ハギヨシ「おそらくはそうでしょう……ですが、結局のところ彼女を許すか許さないかは須賀君しだいです」


翌日

京太郎(学校かったるいな……)

咲「京ちゃん、おはよ」

京太郎「お、咲か。おはよう」

咲「なんか気分悪そうだけど……大丈夫?」

京太郎「まぁな……昨日あんまし眠れなくてさ」

咲「そっか……」

京太郎「どした?」

咲「……えっと、その……ね」

咲「私、京ちゃんに謝りたいと思って……」

京太郎「……は? どうしたんだよ急に」

咲「昨日……ハギヨシさんに会ったんだ」

京太郎「へえ」

咲「それで、ちょっと話をしてね……京ちゃんがその……いろいろ悩んでたってことを聞いたの」

京太郎「な、なんのことだよ。俺はなんも……」

咲「ごめん、京ちゃん……私気づけなくて」

京太郎「……」

咲「京ちゃん、辛かったよね……買い出しとか雑用とか……いっつもごめんね」

京太郎「……それは、咲が悪いわけじゃねえよ」

咲「……でも、部長を引き止めなかった私にも責任はあるよ……」

京太郎「……」

咲「……それでね、昨日実は聞いてたんだ」

京太郎「……」

咲「昼休み、部室で部長と京ちゃんが話してるの……」

京太郎「はっ、やっぱりか……」

京太郎「なんだ、あんとき俺の後つけてきたのか?」

咲「う、うん……ごめん」

京太郎「……」

咲「京ちゃん……部長となにがあったの?」

京太郎「……それは咲には関係ない」

咲「関係あるよ!」

京太郎「……」

咲「友達だもん……」

京太郎「……」

京太郎「俺は……」

咲「うん……」

京太郎「俺は、嫌いだった。部長のこと」

咲「……」

京太郎「理由は察しのとおりだよ」

京太郎「一昨日、咲たちが帰った後、俺は耐えきれなくなってキレた……許せなかった、あいつのことが」

咲「……うん」

京太郎「それで謝らせた。すべて。今まで俺にやってきたことすべてな」

咲「……それで、京ちゃんは許してあげたの?」

京太郎「あ?」

咲「……っ」

京太郎「許せるわけねえだろ!」

咲「き、京ちゃ……」

京太郎「なんだ、俺に許せって言うのか? 何も知らないくせに」

咲「そ、そうじゃないよ……」

京太郎「じゃあなんなんだよ! はっきり言えよ!」

咲「……」

京太郎「咲、お前にわかってもらおうとは思わねえよ」

京太郎「ただ、これだけは言っておいてやる……俺が部長を許すことは絶対にない……絶対にな!」

咲「京……ちゃん……」


放課後

京太郎「……」

京太郎(咲は悪くない……それはわかってたはずなのに)

京太郎(虫唾が走るぜ……)ギリッ

ガチャ

京太郎「ん、今日は俺一人か……」

まこ「……よっ」

京太郎「って、染谷先輩……いたんですか」

まこ「なんじゃ、暗い顔じゃの」

京太郎「別に……なんでもないですよ」

まこ「……ほうか」

京太郎「……っ」

まこ「……京太郎」

京太郎「なんすか」

まこ「……許せんか、部長のこと」

京太郎「……はぁ、咲から聞いたんですか?」

まこ「咲からもそうじゃが、久の口からも直接……な」

京太郎「あいつ……染谷先輩に泣きついたんですか」

まこ「いんや、わしが口を割らせたような感じじゃな」

京太郎「どっちも同じことですよ。結局一人じゃ何にもできない弱虫じゃないっすか」

まこ「……京太郎、お前さんもだいぶ本音を吐き出すようになってきたの」

京太郎「もう我慢して生きていくのやめましたから」

まこ「そうじゃな……その方がええ」

京太郎「染谷先輩も……咲と同じこと言うんすか?」

まこ「?」

京太郎「部長を許せって……言うんですか?」

まこ「……悪いが、そこまで図々しくはなれんのう」

京太郎「……へえ、意外にドライっすね。部長のことになれば必死になるもんだと思ってましたけど」

まこ「ま、今回の件に限ってはな。部長にも非があるのは事実じゃし」

京太郎「……」

まこ「ただの。もう一度だけ久のやつにあってほしいんじゃ」

京太郎「もう一度だけ……?」

まこ「それで許してもらえなかったら、もう部に顔を出すのをやめるそうじゃ」

京太郎「……」

京太郎「ま、好きにしたらどうですか? 俺の気持ちは変わんないですけど」

まこ「すまんね」

京太郎「いえ、染谷先輩は悪くないっすよ」

まこ「じゃ、わしはもう帰るけぇ。あと少ししたら久がくるはずじゃからの」

京太郎「……」

まこ「これが最後じゃ。頼むぞ」

バタン

京太郎「……ふぅ」

京太郎「染谷先輩も大変だよな……あんなワガママ部長のお守りさせられて……」

京太郎「もしかしたら、この部で唯一俺の気持ちをわかってくれる人なのかもしれないな……」

京太郎「……」

コンコン

京太郎(きたか……)

京太郎「便所じゃないんすから空いてますよ。どうぞ」

ガチャ

久「……」

京太郎「どうも」

久「……あ、あの須賀君……」

京太郎「俺もヒマじゃないんで、手短にお願いしますね」

久「……っ、す、須賀君……あ、あの……」

京太郎「……」

久「ご、ごめんなさい……」

京太郎「……もう謝罪は聞き飽きましたよ」

久「そ、そうじゃなくて……今日は、その……いままでのこと、許してもらいたくて……っ」

京太郎「……」

久「私……ほんとは……須賀君のこと、好きで……っ」

京太郎「え……」

久「それで……か、っ、構ってほしくて……あんなバカなことしてた……」

京太郎「……」

久「……私……ほんとに悪かったって思ってる……」

久「須賀君の気持ちを踏みにじって……自分勝手だってわかってる……っ」

京太郎「……」

久「それでも……許して……ください……っ」

久「お願い……します……」

京太郎「……」

京太郎「……部長、俺のこと好きって本当ですか……?」

久「うん……っ、ずっと好きで……」

京太郎「……」

久「あの、須賀君……」

京太郎「……」









京太郎「……」ギリッ

ドスッ

久「う…、ぐっ……かは……っ」

京太郎「……ほんと、浅ましい女っすね。幻滅しました」

久「……す、すがく……っ」

京太郎「……許してほしい、だけならまだわかりますよ。それでも許しませんけどね」

久「……っ」

京太郎「それを好きでした……だ?」

久「ひっ……」

京太郎「人の気持ちをもてあそぶのも大概にしろよクソアマァアア!!」ドスッ

久「が……ぁ……っ」ポロポロ

京太郎「はぁ……はぁ……」

久「ぅ……っ、す……がくん……」

京太郎「くそっ……くそぉおおおっ!!」

バキッ

久「や、やめ……っ」




あー……もう……

どうとでもなれ……!!

数分後

京太郎「……っ、はぁ……おえぇ……」

久「……ぅ……っ……」

京太郎「……はぁ……っ」

京太郎(はは……もうめちゃくちゃだなこりゃ……)

京太郎(もう後戻りできないとこまできちまった……務所送り確定だろこれ……はは……)

久「す、がく……」

京太郎「……へへ、なんすか?」

久「ゆ、るし……て……くだ……さ」

京太郎「……まだ言ってるぜ……はは……」

京太郎(……もう、俺に人を許す資格なんてないっすよ部長……)

京太郎「おらぁあっ!!」



どすっ

(ア)カン





                    /\-――‐- 、
              , --=7   丶      `ヽ
         /,             ヽ  ヽ
        ∠/       /      、 、  丶  i
        /       i     ! l.  l i.  i |
       /  ,/  ! !  l||   ! |、 ll !  |  ヽ、
      /_ -7 , | l ト、| |ヽ!  N , 斗 r  ,'_  ト--`   ほんとはラブチュチュハッピーエンドにするつもりだったんだぜ!
     ̄  //!  ! Nヽ!\|,//l/ l/! N ,ハ !|
       ´ / ,i丶 {=== l/ == =l/ ' ノ リ       けど予想以上に部長をクズに描きすぎたんで、
        // l i `i           _/,、/
        ´   {ハ!ヽ{    ′      /!}/ ′       こりゃいくら俺でも許さねえだろ……
              丶  ー ―‐ '  / |′
               \    /  |           って結論に達した結果、こうなっちまったんだぜ!
                __ i ー '     ! __
          , ィ'´:.:/-‐ ´}     /  `Y´:.:.\ 即興SSって怖いね!!
      , -‐'' ´:.:./:.:.:./― - 、   ,/__ /:.:.:.:.:.:/`丶、
      ハ:.:.:.i:.,:.:,′:.:i     `    ̄    /:.:.:.:.:../:.:.:.:.:.:.:.丶、
    /:.:.:.i:.:.:|,':.:i:.:.:.:.:!   ヽ  /   /:.:.:.:.:.:/:.:.,:.:.:.:.:.:.:.:.:,.ヽ
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      ___, -‐::´| /ヘ ゙、,|≡≡ Y ≡NV ___ ゙、
     /:::::::::::::::::и{        丶  | ハ|   ̄   すまんがリロードはなしで
    // ̄ ̄\::::::::::゙、ィ-ャ  r ----┐ ,ノ
   //|::::::/::::::::::||::::::::::/\\_`ー-‐',...イ     こんなバッドの後でハッピー描いたとしてもなんか嘘くさいしな
  |/:::|::::/::::::::/::|| /「:ト、:::》   T ≫:::::::|
  /:::::::::::::::::::::::::/ ゙̄、::| `ー-,ァ ケ/「|`ーi、      支援・保守・ふんふむどうも!
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./:::::/ー-、:::/:::|    ||;;|   V   |;;|.  |       俺は今から別SSの書き溜めに入るぜ
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カン