車に跳ねられて死んだ。

咲達の大会が終わって間もなく、俺こと須賀京太郎は車に跳ねられて死んだ。


何故かスモークをまんべんなく貼られてた怪しさMAXのハイエースに跳ねられ、その後ケイデンスのやたら上がってた自転車に跳ねられ、
花びらを撒き散らしながら空中でぐいんぐいん回転してたバイクに跳ねられ、
横に『転生』と書かれたトラックに跳ねられ、飛び上がった所をオスプレイに跳ねられ、
馬場に落ちた所をハルウララに跳ねられ、海に落ちそうになった所をアギトでアンノウンなあかつき号とかいう船に跳ねられ、
空の上でシルバードと呼ばれてた何かに跳ねられ、
その後も色んな物に跳ねられながら運ばれて最終的に東京タワーに串刺しになって死んだ。



天罰か? 何が悪かったのか?
毎週欠かさず金も払わずジャンプの立ち読み?
麻雀への向上心の無さ? 単純に運が悪かった?

そんな俺の耳元に、やたらと神々しいささやくような声が聞こえた。
聴くだけで盲信してしまいそうな神聖さ、振るえるような人間離れした魅力、しかしその内容は―――



「童貞が悪い」

京太郎「ふざけんな」



その時ようやく、俺はニーチェ大先生のお言葉の意味を知ったのだった。




そして次に目覚めた時、俺は赤ん坊だった。




なんと、俺の生涯は全て赤ん坊だった俺が見ていた夢だったのだ!

フロイト先生解釈はよ! といった冗談は置いといて、俺は死んで生まれ変わったらしい。

東京も死んでないし俺は女神でもないのに転生とかしちゃって良いのかとも思うが運が良かったと思っておく。

しかも生前と同じ境遇でニューゲーム。
最初から短髪のルークみたいなもんだこりゃすげえ!

しかし麻雀は幼少期から始めてみたものの勝てない奴にはこりゃ勝てない。あ、才能無いっすね俺。


早々に諦めてこの後滅茶苦茶スターフォックスした。



そしてキング・クリムゾン。俺の人生も俺の人生なりに色々あったがカット。

あ? 村正の雷蝶先生の戦闘シーン? 知らん。



こうしてまた咲と同じ清澄高校に進学し、同じような道を辿り俺が死んだあの地点から再スタート……と、思っていた。

少なくとも俺は、それを疑っていなかった。

京太郎「ファッ!?」


15歳の誕生日の日、手元にあった本を読みながらペットのカピバラにふざけて「アバダ・ケダブラ」と叫んだ所。


_人人 人人_
突然の死 <
 ̄Y^Y^Y^Y ̄


京太郎「し、死んでる……ざ、ザオリク!」


テンパった末の自動販売機の釣り銭の所でタイムマシンを探すかのような行動、しかし。


カピバラ「I'll Be Back.」

京太郎「良かっ……ん? あれ? え?」

京太郎「まるで意味が分からんぞ!」

その時は意味が分からず、俺はただ右往左往するだけだった。

しかし数ヶ月経って気付いたんだ。


俺は前世で死んだ時、15歳だった。

かつあの時誕生日を迎えて15歳になった。おそらく端数は切り捨て計算なんだろう。



そしてここがもっとも重要な所だが、俺はいまだに―――童貞だ。



ここまで言えば察しの良い奴は気付くだろう。






俺はその瞬間、童貞のままめでたく30歳となり―――『魔法使い』になったのだった。






┌──────────────────────────────────┐
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てって てって てーっ てって てっててーててて(ry  (例のアレ)




大沼「ワシの名は大沼 秋一郎。地球は狙われている」

京太郎「はいはいおじいちゃん、寝言は老人ホームで言いましょうね」

大沼「黙って聞いてろクソ童貞。そして貴様は次に初対面でいきなりなんだうすらハゲと言う」

京太郎「初対面でいきなりなんだうすらハゲ……ハッ!?」

大沼「お前の力が必要だ。今この世界は滅びる危機に晒されている」

京太郎「え、なにそれこわい」


大沼「明後日、お前の学校近くのサイゼリヤに来い……真実を教えてやる」









京太郎「……大沼 秋一郎……一体何パウダーなんだ……?」

京太郎「つか俺今入学式終わったばっかなんだけど」

咲「京ちゃーん、そろそろ帰らなーい?」

京太郎「おう、今行くー!」

京太郎「こんちわー」

大沼「……来たか。もう一人来るが、まあ先に話を始めてもよかろう」

京太郎「話っていうのは、一体……」


ピンポーン


大沼「すみません、ハンバーグとライスを」

京太郎「……」

大沼「どうした、何でも頼んでいいぞ」

京太郎「……じゃあ、ドリンクバーで」


オーダーウケタマワリマシター


京太郎「ええっと、で、話っていうのは」

大沼「そうだな……お前はもう気付いているんだろう? その『力』に」

京太郎「!」

大沼「その力に目覚めたのはお前だけではない……特に、女性はな」

大沼「少しドリンクバー取りに行ってくる」


ハンバーグトライストドリンクバーオマタセイタシマシター


大沼「複数のジュースを混ぜても文句を言われない事がドリンクバーの良いところだ……」

京太郎「女性? 力? 待ってくれ、順繰りに説明を」

大沼「きっかけが誰かは正確には分からん。だがグリセリンの結晶化の都市伝説にあるように、何かがきっかけになったのは確かだ」

大沼「それと同時に、世界中でお前と同じ現象が発生した」


ピンポーン


大沼「すみません、ミラノ風ドリアと薄切りパンチェッタのサラダを」

京太郎「俺と、同じ……? どういうことだ……?」

大沼「『同じ自分の前世=人生一回分以上を思い出した』ということだ」

京太郎「なん……だと……!?」

大沼「(む、ハンバーグは残っているのに気持ちライスが足らんな……)」

大沼「前世とは言っても基本的には同一人物の似たような人生だ」

大沼「皆で人生強くてニューゲームを同時に開始、というのが正しい」

大沼「生まれたその瞬間からそれを自覚していたのはお前だけのようだが……」

大沼「数カ月前のお前の誕生日を皮切りに同類が何人も発見されている」

京太郎「え、ってことは俺のせい?」

大沼「ちょっと待ってろ、ドリンクバーに行ってくる」





大沼「コーラとメロンソーダのミックスの不思議な色合いはたまらんな。ワシはこれが一番だと思う」

京太郎「お、おう」

大沼「お前のせいとは限らんがまあ一因ではあるんじゃないか」

大沼「もしかしたら(社会的に)殺した責任取らないといけなくなるかもしれんな」

京太郎「推定無罪! 推定無罪だ!」


ミラノフウドリアトパンチェッタノサラダオマタセイタシマシター


大沼「奴らは『喪女の呪い』で魂を汚染されている」

京太郎「えっ そりゃソウルジェムも真っ青……いや真っ黒か」

大沼「前世で喪女だった者は、生まれ変わっても喪女力の残滓を魂に残してしまう」

大沼「生まれ変わっても喪女になりやすくなってしまうのだ」

大沼「そうしていく内に何度生まれ変わっても喪女の因果律から抜け出せなくなる悪循環……ミコン・スパイラル」

大沼「それが全人類規模で成されてしまえば、人類の女性は全員結婚できなくなり子も生まれなくなり、人類は滅亡するんだよ!」

京太郎「な、なんだってー!?」

大沼「ちょっとドリンクバー行って来る」


オサラオサゲイタシマスネー


大沼「オレンジジュースとカルピスソーダも中々……で、どこまで話したか」

京太郎「喪女の呪いと人類滅亡まで。つかここまで来て俺の出来る事がまだ見当たらないんだが」

大沼「安心しろ。ここでお前の出番だ、30歳童貞」

京太郎「公衆の面前でそれを口にするな!」


ピンポーン

大沼「すみません、エビと野菜のトマトクリームリゾットと牛挽肉のチーズカツレツとアラビアータを」

大沼「お前のその童貞力と魔法の力を信用して彼女らの一角を任せたい」

京太郎「ファッ!?」

大沼「童貞と処女。ぶつかり合えば神秘と価値の差で処女が勝つは必然」

大沼「しかし、30や40を超えた状態での神秘と価値の差ならば―――童貞と処女、あるいは拮抗するやもしれん」

京太郎「何言ってんだアンタ」


ピンポーン

大沼「すみません、真イカとアンチョビのピザとイカの墨入りスパゲティとライス単品を」

大沼「彼女らには浄化が必要なのだ。来世に持ち越さないための、魂の浄化が」

大沼「こびりついた喪女力を引っぺがすには一度は彼女らを打倒しなければならない」

大沼「それが出来る人間は、本当に数少ないのだ」

京太郎「もし断ったら?」

大沼「人類が滅亡するぞ?」

京太郎「『知ったこっちゃねーよ』とか『他の人にお任せします』とか俺言えるし」

大沼「……そうだな。もしもお前が受けてくれないのなら」


大沼「明日以降、お前のアナルが一つ増えるかもしれん」

京太郎「謹んでお受けいたします」

大沼「よろしく頼む。素直に受けてくれるならワシもお前のアナルには手を出さないと誓おう」

京太郎「この世には神も仏も居ねえのか! 寝てんじゃねえよゲイのサディストのブッダ! あ、そもそも糞野郎だって俺知ってた!」


オサラオサゲイタシマスネー


大沼「結婚できない女性が来世も結婚できなくなる呪いの因果律、ミコンスパイラル」

大沼「頑張れ。お前が倒して魂が浄化できた女性は真っ当な人格に戻るのだ」

京太郎「それこれから先出てくる奴総じて真っ当じゃないってことだよなジジイ」

大沼「あいにくワシは明日から一大勢力との決戦でな。こっちには手を貸せん」

京太郎「ええ? 俺勝手とか何も分からないんだけど」

大沼「お前に任せるのは新興の小規模勢力の一つだから大丈夫……それに、助手も付ける」

大沼「そこそこ有能で、サポートに適していて、前世で喪女じゃない人物だ」

京太郎「(その条件だとホモが一番なんじゃねえの)」



戒能「割と本気で不本意というかノーセンキューな感じですけどね」



大沼「おお、来ていたか」

京太郎「(うわっ、俺でもテレビで見た事ある有名人来ちゃった)」

戒能「と、いうわけでもう帰りたいぐらいですが貴方のサポートです。童貞少年」

京太郎「言いふらしてんじゃねえぞクソジジィッ!」




大沼「ドリンクバーに」

京太郎「話がいちいちぶつ切りになるからそれもやめろ」

大沼「ワシの懸念は、それ以外にもある」

京太郎「?」

戒能「すごく帰りたいです」

大沼「女性の総喪女化による人類の滅亡。しかしそれ以外にも不安要素があるのだ」

大沼「喪女化した女性達による二次災害……特に最近の強力な雀士には女性が多い」

大沼「更に言えば強い女性雀士には将来的な喪女率が高いという統計もある」

京太郎「誰だよその統計とったの」

大沼「中途半端に大きな被害を出してしまえば喪女への大規模なパッシング……つまり、中世ヨーロッパの再現」




大沼「喪女狩りの時代の幕開けだ」




京太郎「やだなぁそんな世界」

大沼「まあ単に世間のオタに対する風当たりの強さが少し形を変えるだけだが……確率は高い」

京太郎「……分かったよ。危険性はよーく分かった」

京太郎「で、俺は何すりゃいいんだ?」

大沼「お前に対処して欲しいのは秘密結社BF(ブタのヒヅメ)団の幹部十傑集とそのボスを処理してもらいたい」

京太郎「なんか多方面に土下座しないといけなさそうな組織だな」



大沼「十傑集とは言っても二人しか居ないがな」


京太郎「オイ おい oi」

大沼「受験で言う定員割れだろう。来年度以降に期待してるんだろうな、はっはっは」

京太郎「笑い話にもならねーよ」

戒能「家に帰りたい」

大沼「幹部のコードネームは『暗黒卿』と『モジョジョ』だ。この二人が幹部で、残りはボスと戦闘員のみ」

京太郎「なんかラクそうに感じてきたな」

大沼「そうでもないぞ、こいつを目に付けてみろ」

京太郎「? モノクル……スカウター?」

大沼「これはワシが岩手のとある高校の更衣室を漁って拝借してきたモノクルを改造したものだが」

京太郎「おまわりさんこっちです」

戒能「ね、ね、少年。帰りましょう。貴方が諦めればおーるおっけーです」

京太郎「すみません、少し大人しくしててくださいね」

大沼「あそこに小鍛治健夜が歩いておるじゃろう?」

京太郎「え、ええ、まあ」

大沼「これを目につけて彼女を見るがいい」

京太郎「ほいほい」

大沼「これは喪女力を測るスカウターで―――」



ボゴン



「ぐああああああああッ!!目がッ!目がァッ!!ガラスの破片が目にィッ!!」
「瞼の裏に小さいのが一杯入ってでっかいのは瞼貫通したり黒目刺さったり白目刺さったり」
「血が流れて視界が真っ赤で痛い痛い痛い痛いアダダダッダダダッ!!!!!」



大沼「―――過剰な喪女力を感知すると爆発する」

大沼「回復魔法が使えるお前なら大事にはならんだろう」

京太郎「それはピンセで破片を一つ一つ取り除いてくれた戒能さんなら言ってもいいけど」

京太郎「間違ってもお前が言っていいセリフじゃない……!」

戒能「これだけ痛々しい応急処置をしたのは生まれて初めてです」

京太郎「その優しさに惚れました。結婚して下さい」

戒能「おとといきやがれです」



大沼「分かるか? あのレベルの喪女にもなるともうお前には任せられない」

大沼「それに油断してどうこうできる相手をあてがった覚えはないぞ」

京太郎「それならそうと口で言えよ、明らかに過剰な教訓だろこれ」

大沼「目から鱗が落ちたじゃないか」

京太郎「俺の目から落ちたのはガラスだ! 文字通り痛い目にあったんだよ俺は!」

大沼「そんなに目の色変えて突っかかるなって」

戒能「目の色が変わってるのは流血のせいというか、彼の目は今口よりも多くの事を語ってますよ」

大沼「はっはっは、目も当てられんな」

京太郎「(コイツ絶対その内目にもの言わせてやる)」

大沼「ほら予備だ。もう一度付けてみろ」

京太郎「天丼とか笑えねえから、二つの意味で。俺の目がフフ怖いか軽巡状態になったらどうすんだ」

大沼「そうそう野生の小鍛治健夜がその辺をうろついてるわけがあるか。これは本来の用途に使う」

京太郎「? 本来の用途って―――」



「……見つけた」



大沼「来たな」

京太郎「誰だ」

「私だ」

大沼「お前だったのか」

京太郎「暇を持て余してんなら他所でやれ」

戒能「帰りたい」

大沼「奴は刺客だ。どうやら嗅ぎつけられたようだな」

大沼「モノクルの横にボタンが有るじゃろ?」

京太郎「ああ、あるけどこれ……」

大沼「そのボタンを↑↑↓↓←→←→BAと入力するとだな」

京太郎「ボタン一個で良いだろ! BAの違い俺からじゃ見えねえし!」

戒能「……私が押しますよ」



ピピピピピピピピピピ



京太郎「で、どうなんの? 女の人の服が透けて見えてメガネ部に入ったりすんのか」

大沼「相手の名前とその『喪女力の根源』が見える……確かみてみろ」

戒能「あ、すみません。顔触っちゃいました」

京太郎「(なんか気恥ずかしい)」



彼女は若い頃から恋に人一倍興味津々であったが、性格の問題か人一倍恋に縁の無い少女であった。
故に他人の色恋に「えー○○さん●●くんの事好きなのー?」「趣味悪ーい」「でも二人仲良いじゃーん」
と仲よさげな男女がいれば片っ端から首を突っ込みかき回し、
その二人の間に広がる空気を微妙なものにして恋まで発展させないという荒業を得意とする女子であった。
影で男子や一部の女子から嫌われてまでいないもののウザいキモいと影で時々言われ、
それでも大抵の人間より多くの友人と広い交友関係を持つような女子であった。
小中学校にはよく居ても高校生になると不思議と全く見なくなる。
帰りの会で「せんせーダンシがー」とかのたまうような女子だったわけである。
高校生になって未だ恋愛経験もない現状に気付いてからようやく彼女は自覚する。
彼女にはコミュ力もある。女子同士となら平気で話せる。しかし絶望的に異性と話す能力と経験が皆無であった。
彼女とて初恋はした。
相手は同じ高校のサッカー部のキャプテンであり、
しかし彼女が好意を抱いた時にはとても可愛らしいマネジャーの彼女とくっついていたという有り様であった。
彼女の恋は浅く始まり浅く終わり、彼女の心に浅く傷を付けただけに終わる。
ここで恋愛感情というものをもっと育んだり少し泣いてしまうぐらいの傷が付けばよかった。
極端な話告白して玉砕するなどの行動が伴っていれば彼女はこの後手遅れにはならなかったのだ。
しかし、そうはならなかった。現実は非情である。
ずぶずぶズブズブと異性との恋愛を経験せずに歳を兼ねて行く日々。
年月は異性と友人止まりの距離感を意識せずとも保つスタンスを彼女の無意識下に確立させてしまっていた。
このままじゃまずい、でもどうしたらいい、どうにもならない、そんな袋小路。
そうやって徐々に行き遅れていく。30を過ぎてまだ独身、そのくせ男の影が全くない女がそこに居た。
「仕事が恋人」なんて言い訳して、男と二人きりの酒の席でも適度にしか飲まず、なのに社内での友人関係が円満。
学歴も経験も能力も人脈もあり余るほどある。しかし異性との付き合いは絶望的に皆無であった。
誰もが欲しがるものを掃き捨てるほど保有しながら誰もが持っている当たり前の恋愛技能を何一つ持たない哀れな女。
彼女の死因は食品会社のミスによる食中毒。
ある日彼女は、そんな自分の前世を思い出す。



そして20代半ばを過ぎても男の気配すらない自分、生まれ変わっても同じ道を進んでいる自身の姿に絶望するのだった……



【NAME:戦闘員:西田 順子】


京太郎「い、痛々しい……! これ毎回見なくちゃいけないのか!?」

大沼「おう」

戒能「イエスかノーか半分かぐらいの選択肢は残してもらいたいものですねぇ」

大沼「おそらくこいつは前世由来の喪女力においてもかの組織の中では最弱……こいつに負けたら魔法使いの面汚しだ」

京太郎「これで最弱とか勘弁して下さい」

大沼「麻雀でオカルトとか使ってる奴は相応の喪女前世がある、強いやつほど悲惨だ」

京太郎「俺も帰りたくなってきた」

戒能「ええ、帰りましょう、一緒に……」

大沼「あちらさんは逃がす気はなさそうだが」




西田「私が結婚できないのであれば……私以外も結婚できなくなる事で相対的に……」




京太郎「やべーこと口走ってんですけど!」

戒能「ちょーっと他人事じゃなくなってきましたね」

大沼「倒せば良い。あっちには武器があってもお前には魔法がある」

戒能「武器? いえいえあれはどう見ても」

京太郎「あ、あれは……! 『境界線上のホライゾンII下巻』!」


京太郎「使いやすく破壊力のある銃や剣は素人から玄人まで幅広く使われている基本武器」

京太「対してホライゾンを始めとするカワカミンブックスは見た目こそ本だが厚さが桁違いでただの鈍器と変わらねえ」

京太郎「あえて切れ味などを度外視し硬度と重量をかなり増加させて斬るより破壊を目的とした玄人好みのあつかいにくすぎる武器」

京太郎「使いこなせねぇとパンジャンドラムより弱いただの紙クズみたいなもんだってのに、いったい何であの女性は?」


戒能「解説乙です」

京太郎「おい麻雀しろよ」

西田「なんでもかんでも麻雀やデュエルやボーグバトルで解決すると思わないで」

京太郎「ぐうの音も出ねえ正論」




大沼「さて、ここからはジャンプの世界だ」

戒能「怪我しない程度に頑張ってください」


京太郎「隠れんの早っ」

西田「―――余所見とは余裕ね」

京太郎「がああああああああああああ」

西田「打撃系など花拳繍腿。関節技こそ王者の技よ」



戒能「あ、アームロック!」

大沼「む、奴は魔法少女タイプの喪女か」

戒能「知っているんですか大沼さん!」

大沼「うむ、あれは数ある喪女タイプの中でも最もポピュラーなもの」

大沼「子供の時からおジャ魔女どれみ等魔法少女モノを見続け今なお卒業できていない喪女達の一角」

大沼「休日に朝早くから起きたくない、でもニチアサ卒業したくもない、なら録画してあとで見よう」

大沼「そんな根本的なダメさと自分の年齢からの現実逃避・ファンタジーへの捨てられない憧れの結晶」

大沼「気を付けろ京太郎! 魔法少女相手に接近戦は不利だ!」



西田「スマプリ嫌いので良かったのよスマプリぐらいで! 大きなお友達に媚びたレズ路線とか要らないの!」

京太郎「何言ってあだだだだだ折れる折れる折れる折れる折れるッ!!」

京太郎「いだだ死ぬかと思った」

西田「む、来るか」




●=西田 順子
■=須賀 京太郎



● ■<殺った!


○ ■ ●<それは残像だ(ドラゴンボールが引き伸ばし回で瞬間移動・背後を取るSE




京太郎「なん……だと……!?」

西田「殺った! 死ねィ!」






京太郎「―――ただし魔法は尻から出る」






   //,  ///    _,    '//〃    '   イ   ,  // /
  //// //   //!"   _  ′ , ┐   ,//,__/! /, '   ´      '/
///   /     /,イヘj   〈/   /ノ/=‐',.-‐-、 '/く,  ..-ァ /    /
/ .         /Y_/´ 、iI ,  .'ニ/,,'.ィ'"   ゚ } , //`´ //    //,
    //    ,イ/′ //   i,,´/,、il|、/, ノノ'/ >  ;‘/    ,
  '/, /  //´  , //  ..''´///ヾ=_ -く,'=-‐、/, ;ゝ-‐ァ /,  ‘//    ←西田
'゙///  .´    //   .イ     /,ィ77tゝu'、   }Y、,r‐ '´ // //
・/ "rク  ,/  / ,  ,∠ キ  ,''  〈゙ーrr、、ヽ,')ミ、_。_ノ/ゝ/ '/,  ./    ,
___ _/ //   {] ∠!  "ヘ      ⌒ヽノ)ミ/ /、,'´/' //_, ∠=-―、-、
/ . .≧ 、//  ∠ キ 〃 ,/, `、    /  !/'/  /.∠、`ヽ \ヽ} ノ
 /  ..-‐ヽ-‐、∠/"'), //,/,  `ー     ノ    >''´ニ、ヽr゙<、ヽ//
 , ・ ´___ '/ /'// '/,  ヾ.≡/  ,ィ// イ/ /'´./`/ニ!`iI、ヾ/. /
ィ=‐  ̄` {  {ヽ、_"'//.///// '/ ,丿 ,/ `"′ [ニ] /" マ/    〝
;/;/;/;/;/;/∧ ヽ._  \  "////, /〃,ィv'゜¨i`',   / rァ       //
;/;/;/;/;/;/;/∧、  `ー- __-― " /,  ノ/}  ! \'_   ` / // //  /
;/;/;/;/;/;/;/;/;/;7;7> _   `「7 - ̄-‐// ノ  i /i /〉' /ノ}//   '
;/;/;/;/;/;/;/;/;///;/;/;/≧、___,,,,,,,,,,,,,,,、 <´,゚  j  _イ/_,_/`´/<>    , /
ニニ二二ヽ__/ /;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/ヽ \--<  ̄ )"/`ヽ._     // /,
イ// 二ヽ. {;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/;/ヽ.\-‐‐っ彡´,,   _}___//  .,/



京太郎「……ふぅ。強敵だった」

戒能「最低な勝ち方しましたね」

大沼「何、高校生の大会に真剣持ち込みが許されてる国だ。問題ない」

大沼「喪女前世を持つ雀士ならば雷を落とす事すら自由自在よ」

京太郎「なにそれこわ……あ、ヤバい知ってる人に数人心当たりがある」



西田「私が散っても、第二第三の喪女が……」

大沼「既に国内女子高生だけでも20人や30人で収まらない人数が確認できている。安心して逝け」

西田「フォカヌポゥ」




大沼「さて、ワシは仕事に戻る。資料(民明書房)は渡しておくから後は二人で頑張ってくれ」

京太郎「いや出来れば終わりまで居て欲しいけど……なに、そっちやばいの?」

大沼「ワシの担当は801板と生き物苦手板でな」

京太郎「うわぁ」

戒能「うわぁ」






この日より後、コテハン『カンちゃん』との決戦に挑んだ大沼秋一郎の姿を見たものは誰も居ない―――






京太郎「麻雀牌の白の正式名称は白板(パイパン)と言う」

京太郎「更にこの名称は『つるぺた』という言葉の語源の一つにもなっている」

京太郎「つまりつるぺたでパイパンだと麻雀が強くなるのはむしろ必然。これってトリビアになりませんか?」



戒能「何独り言で私にセクハラしてんですか、起訴しますよ」

京太郎「ポーカーフェイスでも耳真っ赤ですよ戒能さん」

戒能「ふんっ」

京太郎「がががチョークスリーパーはやめががが苦し苦しあ柔らか苦しギブギブギブ!」





京太郎「すみません現実逃避と調子に乗ってたのとつい出来心で……」

戒能「次やったら工場で加工中の高熱どろどろアスファルトの中に放り込みますからね」

京太郎「コロシの証拠残さないガチな処刑方法をチラつかせるのはやめていただけませんか」

戒能「目を逸らしてないで現実を見ましょう」

京太郎「こんなリアル嫌だ! ときめきメモリアルチュートリアル的リアルぐらいがいい!」

戒能「戦いましょう、現実と」

京太郎「マテリアルパズルが再開したら本気出す」



京太郎「千葉と茨城が腐海に沈んでる……」

京太郎「大木の他はミントにシソにモロヘイヤにセージにサザンカに、庭に蒔いちゃいけないのばっか」


京太郎「なんてことだ……なんてことだ……」

戒能「しかし何故この二県だけ」

京太郎「きっと犯人が『チバラギ』って覚えてたんですよ。県一つどうこうするつもりだったのでは?」

戒能「香川の人間がうどんしか食べてないみたいな偏見まみれの所見が見えますねぇ」





京太郎「明らかに俺達への挑発。第二ステージは”暴走半島チバラギ”のようです」

戒能「千葉県の人と茨城県の人に謝りましょう」

京太郎「資料(民明書房)に添付されてたジジイからの伝言に従って陸路は避けて空路で行きますかね」

京太郎「成田空港まで無免ライダー(意味深)でゴーです」

戒能「こんなの飛行機じゃない、羽のついたカヌーですよ!」

京太郎「だったら漕げばいいだろ!」

戒能「一緒にもう帰りましょう、死ぬほど疲れました」

京太郎「余裕の音だ、馬力が違いますよ」ブルンブルン

戒能「ああもうエンジンかけてるんですね……はいはい、最後までお付き合いしますよ」

京太郎「そんな優しくて面倒見の良い貴女が大好きです、結婚して下さい」

戒能「夢は夜に見なさい」

京太郎「ひでぶっ」

京太郎「行こう、ここもじき腐海に沈む」

戒能「私達その腐海の中心部に向かってるんですけどね」

京太郎「なんかバイオベースとかフロワロさんとか生い茂ってそうな感じになってきてますね」

京太郎「『おどりゃクソ森』的な」

戒能「森だけが一気に生えてきたのに動物が居ないから逆に違和感が……逆どうぶつの森みたいな」

京太郎「森本レオぐらいなら居るんじゃねーですか」

戒能「レオだからって動物扱いはあんまりじゃ」

京太郎「じゃあアニマル浜口は?」

戒能「え? う、うーん……」


京太郎「とりあえずこの腐海の目的は二つ、ハッキリしてます。急ぎましょ」

京太郎「一つは俺達をおびき寄せるため。二つ目はかのリア充の聖域の侵食」





京太郎「―――敵の目的は、【 検閲 】ーマウスで有名な【  ハハッ  】ランド。及びディ【 規制 】シー」

戒能「法務部が怖いです」

京太郎「ジジイの残した資料(民明書房)からるにこの腐海は『モジョジョ』の仕業の可能性が高そうです」

戒能「ほう」

京太郎「喪女神転生の中でも最もポピュラーなカテゴリー……『腐女子』の一角」

戒能「やっぱり今から帰ってもいいですか?」

京太郎「俺を一人にしないで下さい、お願いします」

戒能「……もー」





京太郎「資料(民明書房)によれば前世はその名の通りジョジョ中心の腐向け大手サークルの一人だったとか」

京太郎「この資料(民明書房)には要注意人物の一人として色々書かれてます。名前以外」

京太郎「ペンネームのホモハメド・アブドゥルとか何このセンス」

戒能「本人の趣味嗜好ぐらい好きにさせてあげれば……」

京太郎「備考に人類総腐化とか人類腐完計画とかズラッと書かれてるんですけど」

戒能「ニッチな趣味が認可されるのは他人に迷惑かけていないという前提があってのものだと何度」

京太郎「制服を改造しての涼し気な服装を好み、趣味の布教に熱心で全ての人を同類に引きずり込もうとしている……うわぁ」

戒能「うわぁ」

京太郎「この組織の基本スタンスが『他人を全員自分と同類にする』みたいな感じっぽいですね」

戒能「なんですかその映画のエイリアンみたいな……」

京太郎「ELSなのかバイドなのかゾンビなのかフェストゥムなのか」

京太郎「まあともかくこのモジョジョとかいうのの目的は日本女子総腐化計画『グールジャパン』で間違いなさそうで」

戒能「将来的に世界的に進出する意図見え見えじゃないですかもー」

京太郎「この森の妖精が出そうな森の奥に幹部が一人居るってわけです」

戒能「ボス戦ですね。今度は麻雀するんでしょうか」

京太郎「やってもどうせ超能力マージャヌじゃないっすかね」

戒能「麻雀やるんなら四人必要ですし、意外と幹部二人共来てるかも」

京太郎「まさかそんなーアハハ、3×3中盤や偽典やベルセルクじゃないんですから」

京太郎「最初から幹部総出撃で手加減無しとかそんなまさか」

「…………」

「…………」




京太郎「あったよそんなまさか!」

戒能「フラグ立てるから……」

京太郎「スカウターセット!」

戒能「モノクルじゃなかったですかそれ」

京太郎「喪女力2000……3000……バカな、まだ和了っている!」

戒能「現在進行形で上がってるってそれはそれでひどい」

京太郎「麻雀力・adh(アーデルハイド)も非常に高い……雀士か!」

戒能「お、麻雀のターンですか。というかそんなものも計れるんですねそれ」

京太郎「こいつらがジジイの言っていた『暗黒卿』と『モジョジョ』……」





京太郎「はじけろリアル!弾けろ以下略!」

戒能「はいはいボタン今押しますよ」



彼女は有り体に言えば子供だった。
良くも悪くも子供で、恋や愛がよく分からないからずっと子供の頃の感覚で友情を優先する。
色気より食い気なんて言葉がピッタリのまま、彼女は青春時代を過ごして駆け抜けた。実際彼女は本来喪女になりにくい人種である。
気づけば恋人が居て、気づけば結婚していて、気づけば子供も孫も居る……そんなタイプである。
が、喪女にならない人間など居ない。どんな女性とて喪女になる可能性を秘めている。彼女もしかりだ。
喪女になる事は崖に落ちる事と同義。堕ちるだけなら楽であり、運が悪ければ誰とて喪女となってしまう。
彼女はいわゆる化粧に気を使わず常時ジャージで居ても「美人」と称される、そんな大人になっていた。
が、そういうものは得てして長続きしない。
こういうタイプの女性は職場結婚などで早めに結婚して落ち着くタイプが大半なのだが彼女は運が悪かった。
自然の出会いもなく、彼女の性格上出会いを探しに行く機会も無く、無為に時間が過ぎていく。
肌のケアや身だしなみを整える習慣は加齢と共に劣化する美を長続きさせる。
逆に言えば、身だしなみに全く気を使わないままに歳を重ねていってしまう人間は悲惨の一言に尽きるのである。
女性における『それ』は、男性におけるヘッドバーコードに相当するのだ。
彼女も焦る。「自分は恋愛と縁がない」と笑ってられたのも学生の時代までで、
変わっていく周囲に徐々に取り残されている様な気持ちになった。
実家に帰ったり親と電話をしたりする機会の度に結婚の話題を振られる事が年々増えて行く。
気づけば同級生も先輩も後輩も家庭を持っていて、
けれど中途半端に恋愛や結婚に幻想を持ってしまっているせいでお見合いといったものにも抵抗があり。
募る焦燥感。なまじ『周りに置いて行かれる』『変わる周囲に付いて行けずいつまでも昔のままの自分のまま』
というコンプレックスを抱きがちな彼女だからこそ、その焦りは人一倍大きく彼女の空回りの要因となる。
かつて全国の頂点を争う場所へ至ったほどのモチベーションの源泉となったそれが今では彼女の足を引っ張るという悪性変異。
良く言えば素直で真っ直ぐ。悪く言えば考え無しでガサツ。人間の個性というものは曝け出してしまえば美点と欠点で裏返し。
かくして彼女は「色気の無い女性」のまま異性との関わり合いもなく、
所謂部屋で一人ケツを掻くおばさん臭さというものを加速させつつ十年二十年と独身生活を続けて行く。
歪みに歪んだ感情はどこにも吐き出されることはなく、彼女の中でビンの中の火薬のように炸裂寸前のまま溜り積もっていく。



そんな『運悪く異性と全く縁が無かった前世』を突発的に思い出した彼女は、
鬱屈した数十年分の憤懣を吐き出す先を見つけつつあった。



【NAME:シズノ暗黒卿:高鴨 穏乃】







懸命に打ち込んだ部活の終わり際。受験が終わってから入学式が始まるまで。
この時期は一般人の学生が致命的なオタに最もなりやすい時期である、と言った者が居る。
受験や部活からの開放感が褒められない趣味に過剰にどっぷり浸からせてしまう……というものである。
三年間麻雀に打ち込み、大学も推薦でいち早く決まり、数ヶ月の開放期間があり。
つまり彼女もこのパターンでどっぷりハマってしまっていた。大学入学すぐの時期特有の暇な時間過多もそれに拍車をかける。
彼女はいわゆる後輩にゲームを教えてもらう→他に何か無いかネットで探す→暇な時間全てをそれに注ぎ込んでしまったタイプ。
つまり加減を知らないオタであった。部活の情熱をそのままゲームへののめり込みに転換してしまう、
絶対にゲームを渡すべきではないタイプ。ギャンブルで全財産をスるタイプであった。
ソシャゲのメンテ時間を考慮して食事の時間を決めるなど、大学一年目にしてもう戻れない領域。
大学の空気が固まる前の最重要点・はじめの一ヶ月の友達作りやサークル探し、過去問貰うための先輩とのコネ作りなども完全放棄。
一般人だった頃には近寄るのも気が引けていたKブックスへと頻繁に通い、毎日何があっても三時間以上PCの画面を覗く時間を作った。
そして気づけば彼女は筆を執り、消費者から生産者の側へと踏み込んでいた。
麻雀卓の前でもなく、大学の講義室でもなく、彼女が座る居場所と定めたのは夏冬の東京ビッグサイトの壁際席であったのだ。
既にその瞳に迷いはない。その筆は一種の感謝とともに、アブドゥルとポルナレフの裸体を重ねて描いていく。
共に筋肉質である白色と褐色の絡み合う二色のアートは彼女の原点を思い出させてくれる美のアルカディア。
気が付けば、就職活動にも卒論にも手を付けずジャンプ系┌(┌ ^o^)┐ウ=ス異本の締め切りにのみ注力する日々。
日々の糧を自らの同族から吸い上げその道で食っていくだけの技能を磨きあげた彼女が居た。
真面目で、努力家で、一人で暴走しがちで肩の力を一人で抜けない一般人がオタ文化に触れたらどうなるかという例の一つ。
何もすることがない時期に、その気になれば無限に遊び続けられる界隈に踏み込んでしまったのが彼女の最大の不運であった。
生涯独身、当然男が寄ってくるわけも無し。



そしてその前世を想起などしてしまえば、当然のように一瞬で魂の底まで腐り切る。腐(くさ)回避不可。




【NAME:モジョジョ:二条 泉】





京太郎「……胸が痛い」

戒能「……ああ、二つの条(ジョ)でジョジョですか。服装はクールビズならぬグールビズで」

京太郎「フォースの暗黒面とかゲロ以下の匂いとか言うべきなのかこれ」



穏乃「職場でお局様と腫れ物扱いされる気持ちが経験者以外に分かってたまるもんか……!」

穏乃「なんでよ! 学生の時は色気なくても笑い話になってたじゃん!」

泉「なんもかんもブックオフとかの一般誌と同人誌を置いてある場所が近すぎるのが悪いんや」

泉「何時間も立ち読みして休日の時間を潰してたあの日、ふらっと見つけた花京院攻め承太郎強気受けの本が私のスタートライン……」




京太郎「アカン」

戒能「さっさと浄化してあげて下さい。きっと倒せば記憶が消えて元に戻るとかそういうご都合主義もありますよ」

京太郎「そんなシャーマンキングの主人公の口癖みたいな」

戒能「ケセラ・セラです。出来なきゃなんとかして下さい、魔法使いでしょ」

京太郎「え、MPが足りない」

戒能「イオナズンは要りませんよ」

穏乃「私は『恋人といる時の雪って特別な気分に浸れて私は好きです』とかほざいてる奴らをぶっ殺せればそれでいいんだよ……」

泉「この世界にはレズはともかくホモが足りないんやで」

穏乃「というわけで麻雀で勝負だ! 卓につけ!」

泉「ムネリンはホモ、はっきりわかんだね」



戒能「私は望む所というか得意分野なので負ける要素が無いのですが」

京太郎「まあ普通にコンビ打ちやってたら俺が足手まといですよね。向こうもそっちが狙いでしょうけど」

京太郎「これで麻雀勝負から逃げたらポケモンで目が合った相手から逃げるようなもんですし」



穏乃「卓上でぶっ殺してやるんだよ、おうはやくしろよ」

泉「お前が死ぬんやで」

穏乃「どっちの味方!? ああ最近語調が移ってきたのが苛立たしい!」



京太郎「タイム、時間くれ」

穏乃「40秒で終わらせな」

戒能「どうします? 私がある程度はカバーしますが相手のコンビ相性次第で勝ちの目はなくなりますよ」

戒能「私は『哩&姫子・スカイレズハリケーン』というコンビを見たことがありますがそのレベルだとひじょーに無理ゲーです」

京太郎「まー勝機だけならあります」ゴソゴソ

戒能「? 荷物を漁ってなにを?」

京太郎「漁ってるんじゃなくて、カバンの上から七番目の位置にある財布を選択(セレクト)してただけですよ」

戒能「???」

京太郎「持ってる道具の上から七番目をセレクト、あとは……ちょっとジャンケンしません?」

戒能「え?」

京太郎「じゃーんけーん」

戒能「え、えっ?」

京太郎「ぽん。はい、俺の勝ち」

戒能「……えと、何がしたいのか私にはさっぱり」

京太郎「初代です。レベル100です」

戒能「はい?」

京太郎「んじゃー打ちましょうか」

京太郎「―――カンカンカンカンッ! 175槓子50ヶ国士無双、神満30億点、大明槓責任払いだ」

穏乃「ぐああああああああああああああああああああああああああッ!」

泉「し、シズノダイーン!」

戒能「もう私いらないんじゃないかな」

泉「クッ、組織の幹部黄金のツートップが私一人に……これじゃ黄金のワントップやで」

戒能「あなた一人でも黄金なんですか」

    ビギニングオブザコスモス
京太郎「天 地 創 造」

泉「IPSから、光が逆流する…! ギャァァァァァッ!」




戒能「麻雀は多少運ゲじゃないと楽しくないって証明ですねぇ」

京太郎「お疲れ様です」

戒能「お疲れ様です。麻雀レベル100カンストでしたか」

京太郎「俺も個体値(潜在能力)高めなのでレベル上げればなかなかのなかなかなんですよ」

戒能「種族値(性別)の暴力によくもまあ」

京太郎「俺……この戦いが終わったら結婚するんだ……」

戒能「おめでとうございます。結婚式には呼んでくださいね」

京太郎「徹頭徹尾ノってくれませんね」

戒能「せめて成人してから来ましょうね。まあ早く終わらせて帰りたいってのがあるじゃないですか」

京太郎「一哩ある」

戒能「正気に戻って都合良くキャラ崩壊してた間の記憶が無くなった二人の所持物から得た情報によればボスの居所は長野です」

京太郎「結局地元かぁ……あ、そういえば戒能さんはテレビでよく見るルー語とかどうしたんですか」

戒能「アレはキャラ作りです」

京太郎「えっ  あっ、じゃあ瑞原はやりさんとかも」

戒能「あっちは素です」

京太郎「えっ」

戒能「小倉優子と草なぎ剛の違いみたいなものですね」

京太郎「そこまで!?」

京太郎「長野に帰ってきたが、この気配……レズか」

戒能「なんの気配を感じてるんですかなんの」

京太郎「この資料(民明書房)から分析するに最大多数派喪女カテゴリ『レズ』の可能性大ですね」

戒能「身の危険を感じます」

京太郎「まあ相手がガチホモとか言われたら俺も少し身構えますけど……大丈夫じゃないですかねえ」

京太郎「クレイジーサイコレズ枠でも見境ないって奴は数少ないですし」

戒能「ホラー映画見た後だと風呂場で背後に何か居ないか怖くなるでしょう? それと同じで怖―――」




「動くな。私はレズだ」




戒能「ひゃっ!?」

京太郎「(バカな!? 警戒してた俺達の背後をいとも容易く取って……コイツ、出来る!)」

「いけない子ですねえ、須賀君」

「私の……私達の邪魔をするなんて」

戒能「え、知り合いですか?」

京太郎「まあ……そうですね」

「あの三人を退けてくるとは大したものだと褒めてあげましょう。あの三人は私の昔の知り合いだったんですよ」

京太郎「お前の交友関係を知ってれば感づいてたかもしれんが、あいにく俺はお前の事あんまり知らなくてな」

「私もあなたの事はあんまり知りませんでしたから、甘く見ていたのかもしれませんね」




戒能「この子はどなたさまでしょうか」

京太郎「入学当時、男子学生の間で『バストレイピンクフレーム』『スターバストドラゴン』の二つ名でその凶器を讃えられ」

京太郎「しばらく後にその知性や性格から『アリストテレズ』『エンドレズエイト』とアンタッチャブルとされた少女」

京太郎「原点にして頂点のレズ! 攻めも受けも魅せてこそのプロレズラー!」

京太郎「そして!」ピピピ








生涯、レズビアン。

それは生涯独身に匹敵する誇り―――!









【NAME:ノブレズオブリージュ:原村 和】



京太郎「……俺の同級生で部員仲間です」

戒能「えっ」



和「私は真理に気付きました」


和「私達は難しい事考えないでレズってればいいんです」

和「存在意義(レズンデートル)! レズンデートルです! 我らが守るべき誇りはノブレズオブリージュのみ!」

和「男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士で恋愛すべきだと思います」



戒能「なにこの子怖い」

京太郎「い、いや、こんなに重症じゃなかったはずなんですけど……あれ……?」



和「私は目覚めたんですよ、真実に。真実の愛に」

京太郎「あっ(察し)」

和「ガイウス・百合ウス・カエサルは言いました。『賽は投げられた』と」

京太郎「待てなんかおかしい」

和「ノンケVS百合はこの世界において百合有利。百合有利です!」

和「私は私の、そして私達のレズンデートルに準じてこの世界を薔薇と百合の花園へと染め上げる」

和「一面の花畑が広がってこその楽園、理想郷でしょう?」

京太郎「お花畑はお前の頭ん中だ!」

和「男のノンケネディはレズワルドで抹殺ですよーうふふ」

京太郎「もうこれわっかんねえな」



戒能「私はノーマルなんですが」

和「大丈夫です、最初は皆そう言いますけど身体は正直ですから」

戒能「ひぃっ!? なんかねっとりした舐めまわすような視線!?」

戒能「時々電車の向かい席に座った中年の男の人が向けてくるそれのより気持ち悪い!」

京太郎「ひっでぇ表現……いや普段のコイツはここまでじゃなくてですね、正気に戻れば結構いい子に」

戒能「じゃあさっさとやって下さい!」

和「さしづめあなたは敗北したらエロCG回収でゲームオーバー……といった所ですね」

京太郎「お前の口からそんなセリフ聞きたくなかったわ。前世の初恋だっただけに」

和「あら嬉しい。でもごめんなさい、私男の人と付き合っちゃいけないって両親から言われてるんです」

京太郎「お前の両親がいわれの無いレッテル張られて泣いてるぞ」



京太郎「(しかしどうする……喪女覚醒前ならともかくスカウターでの表示数値からして正面からではリアルファイトでも麻雀でも打倒不可)」

京太郎「(下手に挑めば俺の頭もパーンとなって、金色の髪がパラパラと脳味噌をきんいろモザイクしてくれることうけ合いだ)」

京太郎「(弱点もそうそうない。負けたからパイツァ・バストやり直しというわけにもいかんから一発勝負)」

京太郎「(……仕方無い。使うか、切り札を)」



京太郎「たった一枚でも勝負を賭けられる。だからこその切札(ジョーカー)なのさ」

和「む、来ますか」

京太郎「シビル・ウォー(物理)」サッ

和「? ミュージックプレイヤー……?」

京太郎「喰らえ! 本日オーラスの須賀田天功の大魔術! 詩魔法だ!」

京太郎「ライナーは死ね! クロアは生きろ! アオトはもげろ!」

京太郎「mp3ゴー!」



~♪



和「ぐああああああああああああああああああああああああああ!?」

戒能「ああ、なんだか女の子が出してはいけない声を! 私にも地味にダメージが!」

京太郎「もいちど子供に戻ってみたい(裏声)」

和「ぐああああああああああああああああああああああああああ」

京太郎「奥の手中の奥の手だ……」

京太郎「こと子供の頃の夢見た将来の自分と大人になった頃の自分にギャップがあればあるほど威力は和了る!」

京太郎「弱点四倍+タイプ一致+急所の役満で貴様を上回る1200万アーデルハイドだーーーッ!!」

京太郎「15歳+15歳の俺にだけは誤爆の危険性が無い」

京太郎「つまりこれが、森部のじーさんじゃなかった大沼のジジイが俺を選んだ理由……!」

戒能「(昔買ったピカチュウのぬいぐるみどこにしまってたっけ)」

和「ぐああああああああああああああああああああああっ!」

和「たすきユキノオー吹雪草結やどりぎ守るスカーフガブ逆鱗地震エッジダブルチョップ」

和「メガネサンダー雷熱風めざパ飛ボルチェン鉢巻ハッサムバレパンとんぼばかぢからつじぎり」

和「食べ残しギャラたきのぼり逆鱗挑発竜舞オボンブシンドレパンエッジマッパンビルドアップ」


京太郎「耳を塞いで対抗呪文で悪あがきを……戒能さん! 一緒に斉唱を!」

戒能「えっあのこれ私にも地味にダメージが」

京太郎「早く!」


和「ポケスペヒロイン力イエロー>お嬢>クリス>サファイア>ブルー>ナナミ>カスミ」


戒能「もいちど子供に戻ってみたいー」

京太郎「え、なんで?(裏声)」

戒能「もいちど子供に戻ってみたいのー」

京太郎「大人でいいのに(裏声)」

大沼「ちくわ大明神」


和「ぐああああああああああああああああああああああ」


京太郎「勝てる……勝てるんだ……!」

和「わ、私が散ろうとも……第二第三の喪女レズ達が必ず現れる……!」

和「友情を百合、レズと段階を踏んでこじつける者達が居る限り……!」

和「男の気配を感じて発狂する者達が居る限り……!」

和「平野綾のスキャンダル、高町なのは25歳独身の悲劇は繰り返される……!」

和「男女恋愛など許されないんです……!」



京太郎「それはお前が決めるこっちゃない」

京太郎「誰かを好きになるのも好きにならないのも、結ばれるのも結ばれないのも本人の自由だ」

京太郎「だがまあ、俺は信じてるよ。それでも変わらないものはあるって」

京太郎「たとえ恋愛や結婚という形で結ばれなくても……それでも、その人達の間には『それしかない』なんて事はないんだって」

京太郎「別の人と結婚して、子供が生まれて、それでもまた集まって昔の部活仲間と子供の姿を見せ合うとか」

京太郎「結婚式の時集まって、子供が生まれたら集まって、忙しい時は相手に子供預けて、孫が生まれたらまた集まって……」

京太郎「恋愛という形で結ばれなくても、おばあちゃんになっても続く友情とかを夢見てもいいじゃないか」

京太郎「恋愛が一番価値のある絆なんて事はない。恋人や結婚が一番尊いゴールなんて事もない」


京太郎「全て肯定してこそ、だろ」

和「ふ……この私と言う存在は今消えるが、聞け!」

和「私は! 私が想うがまま、私が望むがまま! レズであったぞ!」



バタン



戒能「終わった……んでしょうか?」

京太郎「ええ」



京太郎「じゃあ、今度こそ帰りましょうか」

京太郎「家(ホーム)に」



竜華「和がやられたようやな」

美穂子「彼女は私達血盟百合団の中でも最弱……」

憧「男にやられるなんてレズの面汚しよ……」



モモ「清澄のおっぱいさんがやられたようっすね」

霞「彼女は私達巨乳四天王の中でも最弱……」

明星「粗チンにやられるなど巨乳の面汚しです」



透華「原村和がやられたようですわね」

末原「なに、やっこさんは我等デジタル三銃士の中でも最弱……麻雀も出来ずに負けるとは良い恥さらしや」



一「和と穏乃がやられたようだね」

灼「彼女達は私達私服ハイセンスゲットーの中でも最弱……」



菫「原村和と高鴨穏乃と二条泉がやられたか……だが奴は水着ハイセンス同盟の(ry
以下略







須賀京太郎の終わり無き戦いはこれからだ!








数年後京太郎と良子は結婚し、その翌日ベンチで冷たくなっている白築慕が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った。



カン