洋榎「アカン。道に迷うてもうた……」キョロキョロ

京太郎「えーと部長に頼まれたバナナは買ったし、タコスの材料もあるよな……ん、アレは?」

洋榎「このままじゃ主将としての威厳が」

京太郎「あの~、どうかしたんですか?」

洋榎「ん?誰や。ナンパならお断りやで、今そんな場合とちゃうねん」

京太郎「いや、俺は清す」

洋榎「あ~、わかったわかった。じぶんアレやろ?ウチのファンやろ」

洋榎「いや~有名人は辛いわ。ま、あと引っ掛けの洋榎ゆうたらちょっとしたもんやからな」

京太郎「偶然って言ってましたよね?」

洋榎「おぉ!?なんや試合見てたんかいなぁ」

京太郎「いや、見てたというか対戦相手の清す」

洋榎「それにしても珍しいこともあるもんやな。どいつもこいつ絹、絹いいよるからな」

京太郎「たしかに妹さんも美人ですけどお姉さんも愛嬌があっていいと思いますよ」

洋榎「せやろ~?東京もんのくせに見る目あるやないか」

京太郎「東京というか長野……」

洋榎「長野!?」 

洋榎「長野ゆうたら清澄やんけ!」

京太郎「だからさっきからなんども言ってるじゃないですか」

洋榎「なんや、じぶん清澄の関係者かいな!アカンでウチから姫松の弱点聞き出そうとしても」

京太郎「別にそんなつもりじゃないですが」

洋榎「ほんまか?」

京太郎「ええ。ところで俺から見ると姫松に弱点なんてないように見えるんですが本当に弱点なんかあるんですか」

洋榎「そらいろいろあるんやで。例えば漫の不発ばっかりやったり……って、なに言わすんや!」

京太郎「すみません、つい」

洋榎「ほんま、東京もんは油断ならんわ」

京太郎「だから長野から」

洋榎「長野ゆうたら清澄やんけ!」

京太郎「ちょっとパターンはいりかけてますよ」

洋榎「繰り返しはギャグの基本やで!」ニッコリ

京太郎「はあ……」

洋榎「それでなんのようや?そもそも清澄に男子部員なんておったんか?」

京太郎「これでも一巻の頃は出番も多かったんですよ」

洋榎「じぶんも大変なんやなぁ。せやけどウチかてコンシンのギャグかましたっても『うるさい』だの言われてんねんで」

洋榎「あ、今のは渾身と懇親のダブルミーミングやで!」ドヤッ

京太郎「ウザ」ボソッ

洋榎「ひどい」

京太郎「そんなことよりキョロキョロしてましたけど道にでも迷ったんですか?」

洋榎「なっ!そないなわけあるかいな。ウチは後引っかけの愛宕洋榎やで!」

京太郎「それが今なにか関係あるんですか?そもそも呼ばれてませんよね」

洋榎「うっ……。そないなことより自分こそなにしてんねん?」

京太郎「俺は買い出しですよ。所詮付き添いの身分ですからこれくらいはしないと、ね」

洋榎「付き添いてじぶんも出場者じゃないんか?」

京太郎「いや、俺は麻雀下手なんで予選負けです」

洋榎「そうやったんか」

京太郎「ほんとなにやってんだろ、俺。何の取り柄もないと思ってた咲とはずいぶん差をつけられちゃったし」

京太郎「あんな強かったら男のファンも……」ボソッ

洋榎「?なんかゆうたか?」

京太郎「あ、いや、なんでもないです。それより迷子なんだったら送りましょうか?」

洋榎「だれが迷子やねん。ま、まあどうしても言うなら送られてやらんこともないで」

京太郎「じゃあ『どうしても』です」ニッコリ



――姫松宿舎前

洋榎「……世話になってもうたな」

京太郎「気にしないでください。姫松の主将がいなくて不戦勝じゃ部長も残念がるだろうし。今度はぶっちぎるって言ってましたよ」

洋榎「ははん!そないなもん返り討ちや、言うといてや」

京太郎「わかりました。それじゃあ」ペッコリン&スタスタ

洋榎「……ちょっと待ちぃ!えーと、名前も知らんおにいやん」

京太郎「須賀京太郎ですよ」

洋榎「さよか。ほんなら京太郎!貸しをつくったまんまや愛宕家末代までの恥や」

洋榎「せやからウチが麻雀の指導してやったってもええで!なんや知らんが弱いの気にしてたみたいやからな」

京太郎「でも大会中でしょう?他校の、それも次の相手校の生徒と。まずいんじゃないですか」

洋榎「なにいうてんねん。相手校いうたかて京太郎がでるわけやなし。大会本部かてそないケツの穴の小さいこと言わんて」

京太郎「そうですか」

京太郎(愛宕さんってあの姫松の主将で全国でも上位の力を持ってるって話だよな)

京太郎(この人に教われば咲に追いつけるとは言わないけど少しくらい近づくことができるんじゃないか……)

洋榎「黙りこくってどないしたんや。強くなりたいかどうか、簡単なことやろ!」

京太郎「……お願いします。強くなりたいんです」

洋榎「ほんまか」ニパァ

京太郎「はい」

洋榎「……ハッ!先に言うとくけどウチの特訓は鳴尾浜での練習なんかより何倍も過酷やで!」

京太郎(鳴尾浜?)

洋榎「返事は!?」

京太郎「はい!よろしくお願いします」



――清澄宿舎

久「ずいぶん遅かったわね、須賀くん」

優希「どうせそのへんでサボってたんだじぇ」

咲「そんなことないよね、京ちゃん」

京太郎「え?ああ、うん」



――姫松宿舎

絹恵「お姉ちゃん、どうしたんやろ。散歩行くって言ったまま帰ってこおへん……まさかなにかあったんとちゃうか」


ドアガチャー

洋榎「いやあ、東京はやっぱり魔境やなあ。迷子になってもうたわ」ホクホク

末原「そのわりには妙に嬉しそうというか楽しそうというか」

絹恵「ほんまや。なにかあったんか?お姉ちゃん」

洋榎「なぁ!?な、な、な、なにもないわ。散歩行ったくらいでなにがあるっちゅうねん」

絹恵「逆に怪しいで」

洋榎「お姉ちゃんがウソ言うてるいうんか?」ジトッ

絹恵「せやで。どない言うたかてお姉ちゃんのことは私が一番知ってるんやもん。嘘かどうかくらいわかるわ」

洋榎「なんと言われたってなんもなかったんや!清澄の部員とも会うてへんし、また会う約束なんか勿論してへん!」

末原「主将?」ゴゴゴゴ

洋榎「な、なに怖い顔してんねん。ちょ、来るな。寄らんといて!」


―――


末原「つまり、その須賀とかいう人に麻雀のレクチャーをするという話なんですね」

洋榎「うう……。もうお嫁に行けへん」

末原「主将!」

洋榎「あ、はい。そうです」

絹恵「せやけど、須賀川紅葉なんて部員が清澄におったんやなあ」

洋榎「須賀京太郎や!」

絹恵「どっちでもええやん」

洋榎「よくない」

絹恵「なんやムキになって。まさかお姉ちゃん、杉下右京とかいうのに惚れたんとちゃうか?」

洋榎「せやから須賀京太郎て言うとるやろ!」

絹恵「どうなん?」

洋榎「はぁ……、アホかいな。ちょろっと道教えて貰ったくらいで惚れるわけないやないか。」

絹恵「ほんならええけど」

洋榎「ただの恩返しや。恩返し」

洋榎「鶴かて受けた恩を返すんやから、ウチが恩返しせんかったら愛宕家の品格が疑われるっちゅうもんやで」





洋榎「京太郎?」

洋榎「……絹となにしてん?」

洋榎「そりゃ、見りゃわかるけど……なんで……?」

洋榎「ウチの事好きやったんちゃうんか……?」

洋榎「確かにウチは絹ほど可愛くもないし、おっぱいも大きゅうない」

洋榎「ぎゃあぎゃあ喧しい女でお淑やかさなんてひとっつも無い」

洋榎「けど……それでも京太郎は……好きって言ったやん……」

洋榎「……嘘?」

洋榎「あの言葉は……嘘やったんか?」

洋榎「そうじゃない? なら今スグ絹から離れろ」

洋榎「好きやろ? ウチのこと好きやろ? な? な?」

洋榎「ちょこっと魔が差しただけやろ? ウチがお預けし過ぎたから絹にちょっかい出しちゃったんやろ?」

洋榎「ごめんなぁ。 悪かったなぁ。 我慢させちゃったなぁ」

洋榎「お詫びにホラ、ウチの事スキにしてええから」


洋榎「絹恵から…………離れろ」