初美「ほら、さっさと行くのですよー!」

俺の背中に乗ってぺしぺしと叩いてくる初美。

春「ほら、京太郎困ってるから……食べる?」

初美をなだめつつ黒糖を差し出してくる春さん。

巴「あ、それ虫歯になっちゃうからだめ!」

慌てて止めに入る巴さん。

霞「あらあら、人気ものは辛いわねぇ?」

そんなみんなの様子を見て微笑みながら頭を撫でてくる霞さん。
一人を除き、立派な胸をお持ちの巫女さんたちに囲まれる俺。
ハーレムである。紛う事なき男の夢である。

小蒔「むぅ、私もなでなでしたいです」

……これで俺にかけられた首輪と、そこから伸びるリールを小蒔さんが握っていなければもっと喜べたのだが。


ーーー


4足歩行の大きい体。ふっさふさな体毛。三角形の耳。立派な尻尾。
犬である。紛う事なき犬である。

「……わんっ」

全国大会で初めて東京に来た俺たち清澄高校麻雀部。
慣れない土地で案の定迷子になった咲を探していたら、タコスの匂いに惹かれた優希まで迷子になった。
そうして二人を探しているうちに、俺まで迷子になった。

優希「あ、やっと見つけたじぇ。主人を見失うなんてまったくダメな犬だなー」

京太郎「なんだとテメー」

やっと探し出したと思ったら叩かれる減らず口。
せっかく東京まで来たというのにコイツはと、いつものように絡もうとしたら――

「あぶないっ!!」

京太郎「へ?」

誰かの切羽詰まった叫び声。
気が付いたら目の前に迫る大型トラック。どうやら居眠り運転らしく、止まりそうにない。

京太郎「――っ!」

優希「えっ?」

その瞬間、何もかもがスローモーションに見えて、咄嗟の判断で優希を突き飛ばした。

優希「い……」

優希「いぬううううううううううううううううううううっ!!!」

耳をつんざく悲鳴と、その直後に感じた衝撃。
視界が真っ白になり、俺は意識を手放した……のだが。

「……わん?」

小蒔「あ、お目覚めですかー?」

目が覚めたら、犬になっていた。
どうやら倒れていた俺を見つけて動物病院まで連絡してくれたのが、この巫女さんたちらしかった。

小蒔「決めました……この子、飼います!」

そして小蒔さんが俺をいたく気に入ったらしく、そのまま神代の元でお世話になることに。
インターハイはどうなったのか、優希は無事なのか、非常に気になる。
何度か抜け出して、どうにか清澄へと行く方法を探そうとしたが

初美「ほーれ、とってこいですよー!」フリスビーッ

「ばうっ!!」

本能には、勝てなかった。


ーーーー


春「よしよし。ご褒美あげる」

巴「だから駄目だって」

小蒔「とっても賢くて、いい子です!」

みんな優しいし、構ってくれるし、このまま永水の犬として一生を終えるのも悪くはないかもしれない……。


霞「あ」

……?

霞「そういえば、やっぱり去勢ってした方がいいのかしら?」

――!?


カンッ