ベッドの上で向かい合って正座する二人。見つめ合う二人の頬は赤く染まっている――
と言うと、まるで今から恋人同士の営みが始まるようであるが。
俺たちの間に漂う空気は甘々ものではなく、むしろ気まずいものだった。


京太郎「……」

豊音「……」モジモジ


理由は、俺と豊音さんの間に並ぶアダルトな本の数々。
ご丁寧にジャンル分けまでされて、几帳面に並べられている。
真っ赤になって固まる俺。
真っ赤になって目が泳ぎまくりの豊音さん。
視線が俺を向いたり本に向いたり自分の胸元に向いたりで忙しい。


京太郎「ええと、ですね……これは、なんといいますか、その……」

豊音「う、うん……」ゴクリ


……こんな状況になったのには、勿論理由がある。

誰が言ったか、『トップの人が最下位の人になんでも命令できるとか、どうだろう』という言葉。
参加するまでもなく結果は目に見えているので断ろうとしたが、
『いいよ……何でも、好きにして』というシロさんのセリフに釣られ、ホイホイ爆死。
何故だか今までの中で最も壮絶な争いとなった対局をくぐり抜け、トップになった豊音さん。
一体、どんな無茶ぶりが下されるのか、と戦々恐々としていたら、


豊音『その、行ってみたいかなーって……京太郎くんの、部屋』


照れながらそんな命令を下す豊音さん。
それぐらいならお安いご用であるというわけで我が家まで案内したものの、
玄関で自分の部屋がロクに片付いていないことを思い出し。
申し訳ないが居間で少し待ってもらおうとした時に登場した我が母親の『おかえり、アンタの部屋片付けておいたからー』という言葉。

そして玄関で対面する我が母と豊音さん。
はじめは驚いて俺と豊音さんの顔を交互に見比べていた母だが、何を勘違いしたのがすぐに意地の悪いニヤニヤ笑いを浮かべた。


『あら……ああ、あんたもそんな年頃になったのねぇ』

『あ、あのあの、お義母さんですか!? お邪魔します!! あああ、姉帯豊音っていいますー!!?』


からかう母。何故かガッチガチに緊張している豊音さん。


『ごめんねえ、ウチの息子がいつもお世話になってます』

『ああいえ! むしろこっちの方がいつもお世話になっているっていうか私なんかがお邪魔しちゃって迷惑じゃかなーって!?』

『ほら。豊音さん困ってるだろ。あんまからかうんじゃねーよ』


このまま玄関に留まっていると、面倒なことになりそうなので豊音さんの手をひいてさっさと俺の部屋に向かうことにした。
だがしかし、俺は失念していたのだ。母親が息子の部屋の掃除をするという意味を。
普段、散らかっているベッドの下まで整理の手が届いているという意味を――

そして、場面は冒頭に戻る。


京太郎「えーっと……そ、その……」


さっきから口を開いても上手い言い訳が全く思いつかない。
弁解の言葉は情けない音になって消える。


豊音「あ、あの……」

京太郎「これはですね――あ、はい?」

豊音さんが、泳がせていた視線を俺に定めて口を開いた。

豊音「き、京太郎くんは、こういうのが好きなのかなー……って」

京太郎「え?」

豊音「だ、だから……たとえば……たとえば、私がこういう格好してたら……って」

京太郎「それは――」


――どういうことですか、と思わず腰を浮かせて、


優希「おいーっす! この私が来てやったじぇーーーーーーーーーーーーっ!!」


思わぬ、乱入者が現れた。


京太郎「うぁっ!?」


もともと正座を続けていたせいで足が痺れかけていたところにバカデカい大声。
腰を浮かせかけたタイミングでそんなヤツがやってきたのだから、俺がバランスを崩してしまうのは当然のことで。
そして、目の前には突然のことで俺と同じ様に固まっている豊音さんがいるわけで――


優希「ありがたく思……ぇ?」


――俺が豊音さんを押し倒してしまうような体勢になるのも、当然のことなのである。


豊音「あ、あわわわわわわぁぁぁ……」

京太郎「す、すいませ……!?」

優希「ん? お? おお?」


散乱する数々のエロ本。
真っ赤っかな豊音さんと覆い被さる俺。
そんな様子を眺めていた優希は――


優希「……お楽しみだったか?」

京太郎「うるせぇ帰れ!?」

豊音「わわわわああああぁぁぁ……」プシューッ


この後、目を回して気絶した豊音さんを介抱していたら大分夜遅くなってしまい、豊音さんを我が家に泊めることにしたのだが。
翌日に二人で一緒に玄関から出るところを他の生徒に目撃されてしまい、散々ネタにされた……。
今では、妻と一緒に同窓会に参加する時の定番のネタとまでなってしまっている。


カンッ