京太郎「バレンタインだイエイ!」

京太郎「苦節15…いや16年、灰色の青春だったが今年は違うぞ!」

京太郎「なぜなら麻雀部のみんながいるから!灰色どころか牌色だぜ!Vやねん京太郎!」

京太郎「それに今年は―――」

カピー「わん」トコトコ

京太郎「おっカピー!今日も元気そうだな!」

カピー「わん」スリスリ

京太郎「よーしよし……んじゃ、行くか!楽園(がっこう)へ!」

カピー「わん」

――――色々あって――――


和「はい須賀君。チョコです。これからもよろしくお願いしますね」スッ


久「あら須賀君。ちょうどいいわー……はいっチョコあげる!もちろん本命よー?」クスクス


優希「おーい犬!チョコもらったから一緒に食べるじぇー!」ガー


咲「あっ京ちゃん。今年はクッキー作ったんだー。一緒に食べよ?」ニコッ


ハギヨシ「おや京太郎君。屋敷の皆様のバレンタインプレゼントです。ご賞味くださいね」スィー

―――――放課後になった――――

「―――ってなことが」

「ほう」

夕陽を前に、横の後輩が今日の出来事を嬉しそうに語る。いや、彼氏か。まぁ、そんなことはどうでもいい。

「今日は人生で一番楽しかったっす!おそらく今後もトップクラスの日になりますよー今日はー」

本当に嬉しそうに、楽しそうに話してくれる。笑顔だけだが、コロコロ変わるその笑顔を見るのはこっちも楽しい。

だが、彼女である自分の立場からすれば若干―――いや、非常につまらない。
やつは「今日、まこがいなくても充実してた。」と暗に言っているようなものなのだ。違いない。

こちとら徹夜で今日のこと考えとったんじゃ!それこそ一生懸命な!そう、遅刻して放課後に居残り食らうくらいにな!

「早くも来年が待ち遠しいなー」

もう今日は終わった気分かお前。彼女のプレゼント無しで満足しとるのかお前。
何か足りないと思わんのか彼氏じゃろお前。後輩か彼氏はどうでもよくなかった。

なんだかんだで彼女としてのプライドがあった自分に驚き、わしも嫉妬とかするんじゃなぁーっと思った頃に、

「モッ!ッッッテモテじゃのぉ!」

返答した。嫌みったらしく。想像以上に感情的な声が出て驚いたが、

「HAHAHA、それほどでも」

おそらく気付いてない。ある意味ムカムカしてきた。

「ほめとらんぞ……」


ほぼ反射的に、低い声で返してしまった。誰が聞いても不満げで、不機嫌そうな印象を受けるだろう声だ。確かに機嫌は良くない。

それもデリカシーなのか気遣いなのか、足りないこやつが悪いのだ。どうせ―――

「うぇー…マジっすかぁ……」

今の声を聞いても、どうしてほしいか分かってくれないだろう。

「傷つきましたー…このままではー…今日一日が傷ついた一日で終わってしまうー…」

馬鹿で。単純で。性欲に直球で。万年麻雀初心者で。実直で。なんだかんだで誠実で。やっぱり馬鹿で。何も考えてないくせに―――

「こんな時に誰かの愛があればなー……あー……」

望みの核心を的確に突いてくる。もうちょっと回りくどくはできないのか。まるで自分がチョコを渡したがってるみたいじゃないか。

「女々しくてー女々しくて―女々しくて―…つらいよぉおおぉー…」

「…………………………はぁ……京太郎!」

「おっと」

「それやるから機嫌なおしぃ」

「サー!」

なんかやつの予想通りに動いてしまったのは癪に障ったが仕方ない。
後輩は大事にせねば。後輩は大事にせねば。大事な事なので二回。

あーだこーだと必死に頭の中で言い訳していると京太郎が―――

「まこ」

「……なんじゃ」

「ありがとう。やっぱ今日は最高の日だ」

「…………そりゃよかったのぉ……」

夕方でよかった。きっと耳どころか首元まで真っ赤に違いない。暑い。

今日は散々だ。おそらく現時点では人生における最高散々な日ではある。
これから先、京太郎が彼氏の限り今日のような散々な日は、ずっと続いていくのだろう。

「京太郎」

「はい?」

そう―――

「ホワイトデー期待しとるぞ」

「へへっ、おまかせを!」

―――ずっと、続いていくのだろう。

カンっ