――おまけ――

(白糸台打ち上げ会場)

菫「ん、全員渡ったな。それでは全国大会お疲れ様。乾杯!」

一同「かんぱーい!」

ワイワイガヤガヤ

淡「いやー、あの時うまくいってよかったね!」

照「うん、よかった」

菫「全く……上手くいったからいいものを場合によっては大問題になっていたぞ?」

淡「結果オーライオーライ! 終わりよければすべてよし!」

菫「まぁ、結果としてまとまるところにまとまったから良しとしようか」

誠子「もう段ボールの中に隠れるのは勘弁してほしいですね」

尭深「私も……」

pipipipi...

照「ん、咲からだ」カチカチ

菫「おぉ、ようやく普通に送ってくるようになったのか。よかったな」

淡「携帯持ってない子っているんだねー。いまどき」

照「でも最近は慣れてきたみたいで……」カチカチ

照「……」

照「……!」

照「菫。今、咲から聞いたんだけど」

菫「ん? どうした」

照「これ……」

菫「ん? これってあの例のコミュニティサイト……」

【影の支配者】白糸台を語るスレpart236【暗黒皇帝】

菫「oh...」


──おまけ2──


「一度、男性を踏んでみたいと思ってるんです」


ある日、和は俺にそういった。
今日はテスト前で部活がない日だ。
みんなそれぞれ家に帰って勉強しているだろう。
だが、俺はどこか不思議な確信があって部室に立ち寄った。
そしてそこには思っていた通り、和が居た。


「……今日はそう来たか」


あの全国以来、和は時折こういった欲求を俺に吐露してきた。
そして俺はできる限りでその欲求を叶えてきた。
あの時にした『約束』にそこまでは含まれていないはずなのに。
何故か俺は和に対して体を捧げると言っていいほどの献身を見せている。


「……」


欲求を吐き出した後の和はいつも黙りこくっている。
俺の言葉を待っているのだ。
恭順か拒絶か。
彼女はいつもどの言葉を待っているのだろうか。
結果として俺はいつも彼女に対して恭順の意を示してしまっているが。

ふと思う。
もしかしたら止めてほしいのかもしれない。
どんどん深みに嵌っていくこの感覚はきっと和も味わっていることだろう。
いずれ、取り返しのつかないところまで足を踏み入れてしまうことにわずかな恐れがあるのかもしれない。

よくわかる。
俺も同じ感情を抱いているからだ。
自分がどんどん変わっていくのがわかる。
どんどん『普通』から外れていくのがわかる。

だからこそ、俺は和を拒絶したりはしない。
ここまで来ておいて1人引き返すというのは無しだろう。
和は俺が普通に生きていれば気付かなかったであろう感情に気づかせてしまった。
それだというのにいまさら引き返したいだなんて、許せない。


「……」


だから俺は和の欲求をすべて叶える。
あぁ、もしかしたら俺はもうすでに『取り返しのつかないところ』に来てしまっているのかもしれない。
ならば和も、責任を取ってこっちまで来てほしい。

俺はゆっくりと和の前で跪いた。
額を地面にこすり付け、和の足元に自分の頭を差し出した。


「……これでいいか?」

「んっ……くぅ」


和がどこか息苦しそうな、艶めかしい息を漏らした。
一体どのような顔をしているのだろうか。
背中に目があったらいいのに、と真剣に思った。


「何、考えているんですか」


俺の後頭部に言葉をぶつけている。
字面だけ見れば嫌悪の感情が見て取れるだろう。
だが、彼女の言葉に乗せられた感情にはそんなものは欠片もなかった。


「こんな、私にちょっと言われただけで土下座するなんて」

「プライドがないんですか?」


和が俺をなじってくる。
だがその言葉に対して怒りも感じなければ喜びも感じなかった。
ただ、俺をなじることで自分が正常だということを保とうとしているだけだ。
いつものことだ。
直に、変わる。


「頭がおかしいんじゃないですか?」

「こ、こんな、こんな……」

「自分から踏んでください、って頭を下げるなんて」


……そろそろか。


「ふ、普通は、こ、こんなこと、しません、よ」

「わ、私が、相手じゃなかったら、警察呼ばれても、文句言え、言えませんよ?」

「本当に、ほ、本当に」

「ん、くぅ……はぁ……はぁ……」


「本当に、最ッ低……!」


……スイッチが、入ったな。
その確信と共に後頭部に加わる重み。
和が足を乗せてきたのだろう。
後頭部はデリケートな部位だ。
ボクシングでもここを殴るのは許されていないぐらい、危険なところだ。
だが、そこを和に晒すことは何の抵抗もなかった。


「どうですか。踏んでみましたよ?」

「苦しくないんですか? 悔しくないんですか?」

「こんな、こんなことが嬉しいんですか?」


あぁ、今の和はどれほどとろけきっているのだろう。
その表情を見たい欲求に駆られるがそれは許されない。
今、俺が彼女に対してできることはただ望む物を差し出すだけだ。


「何とか言ったらどうなんですか?」

「ねぇ、須賀君! ねぇ!」


語気を荒げるとともに踵をこすり付けてくる。
後頭部に走る痛みとともに俺は下半身の熱を感じた。

和は気づいているだろうか。
自分がどれほど熱い息を漏らしているのか。
どれほどその言葉の節々に喜びの感情が溢れているか。
お互いが同じ感情を共有していると確認できるこの感覚は不思議と麻薬めいた快楽を俺と、恐らく和にもたらしていた。





あぁ、もう




戻れない