縁側に座る。

よく晴れた気持ちのいい陽気昼下がりだが、冬場はやはり少し肌寒い。

冬特有の澄んだ空気とともに湯呑みをすする。立ち上った湯気が頬をかすめる。

静かな足音と、間を置いて背中に加わる荷重。ポリプロピレンの乾いた音と、なにかを頬張る音。

京太郎「どうした?」

春「別に。京太郎が見えたから」

京太郎「そうか」

背中合わせで凭れ掛かってくる少女との短いやり取り。

彼女、滝見春はどちらかと言えば寡黙な人間でこの娘との会話は大概短い単語の応酬となることが多い。

俺は、自身の腰を下ろす床板の左側を掌で撫でる。

京太郎「隣に座らないのか?」

春「良いの?」

春の問いに、小さく苦笑する。

京太郎「ダメなことがあるのか?」

衣擦れの音を伴って、春の小柄な身体が寄り添うように隣に座る。

春「ん……」

差し出される袋。中身はもちろん春の好きな黒糖だ。

京太郎「お、サンキュ」

二欠片ほど摘み、その内のひとつを口に放り込む。

京太郎「ん、いつ食べても美味いな」

飲み下し、もうひとつを口に運ぼうとしたときにはたと気付く。

春「……」

春が俺を見上げていた。

しばし一考。俺は摘んでいた黒糖を差し出す。

俺の手ずから黒糖を口にする春。僅かに触れた唇の感触がこそばゆい。

春はこちらのことなど気にせず、小さき突き出した舌先で俺の指をチロチロ舐める。

その仕草が仔猫のようだと思った。

人差し指を鉤の形にし、少女の顎先や頬を撫でる。

春は気持ち良さそうに目を細める。

普段、表情の乏しい彼女からするとずいぶんと素直な感情表現だと思った。

腰を滑らせ春がさらに身を寄せてて来る。

両者は密着する。凭れ掛かる頭部が、肩に心地良い重みを与えてくれる。

俺は指先で春の前髪を払い。曇りのない白い額に、小さな口付けを落とす。

春は嬉しそうに頬を摺り寄せてくる。

それがまた愛おしさを胸の内に広げてくる。

小寒から大寒に移り行く頃、寒さの増す冬の午後。

だけど、ここはまるで風光る春のように暖かかった。