「和の浴衣姿…楽しみだな。ムフフ」
「あ、京ちゃーん。お待たせー」
「おう。早いな、さ…き」
「京ちゃん?」

京太郎は咲の浴衣姿に思わず見とれた。

な、何を考えてるんだ、俺は。相手は咲だぞ?和じゃない、咲だぞ?

高鳴り続ける胸の鼓動から逃げる様に京太郎は話を逸らした。

「の、和とタコスはまだ来てないんだな?」
「うん、二人とも少し遅れるみたい」
「そ、そか」
「どうしたの?京ちゃん。さっきから凄い汗だよ」

ハンカチで拭こうとした咲の指先を京太郎は咄嗟に避けた。

「あ…ごめん」
「あ…ちが」

少し悲しげに俯く咲に京太郎の思考は混乱していく。

違うんだ避けたのは浴衣姿の咲が可愛過ぎたからであって嫌いな訳じゃなく良い匂いがしてむしろ…って何を考えてんだ!?俺!

「そ、そうだ、京ちゃん。喉渇かない?私なにか買って…」
「さ、咲っ」
「は、はいっ?」

思わず屋台に向かおうとした咲の手を握りしめる。

「あ、その、…なんだ…」
「京ちゃん?」

ヤバい。何も出てこない。早く何か言わねーと。何か、何か、何か。

「…っ…」
「…き、京ちゃ」
「好きだ」
「……ふぇっ!?」

お、俺はいきなり何を言ってんだ?!

足元がグラついて頭が真っ白になる。

「あ、や、その…ちが…その…なんだ…」
「ち…違うの?」
「ち、違わない。俺は咲が…す、すき…だ」
「……」

潤んだ咲の瞳、握りしめた細くて柔らかい手首。

祭囃子が妙に五月蝿く耳に響いた。

「さ、咲?」
「…えへ…えへへ。わ、私…告白されたの初めてだ」
「お、俺だって告白したの初めてだ」

真っ赤になって俯く咲と京太郎。次の言葉が出てこない。

「き、京ちゃん…ちょっと痛い」
「あ、わ、悪い」

握りしめたままだった咲の手首を京太郎は慌てて離した。

「えいっ」
「あ」

その指先を咲は絡める様に握り直した。

ニギニギ…ニギニギ…

ただお互いの手を握り合っているだけなのに妙に扇情的で京太郎は再び話を逸らした。

「さ、咲はどうなんだ?」
「んー?何が~?」

嬉しそうに笑う咲は手をニギニギするのをやめてくれない。

「だ、だから俺のこと…どう思って…」
「あ、原村さんたちだ。こっちこっちー。原村さーん、優希ちゃーん」
「お、おい!ちょっ…まっ」

不意に手を離されて和と優希に駆けていく咲を京太郎は慌てて追いかけた。

「どうした?京太郎。私の浴衣姿にメロメロか?」
「大丈夫ですか?須賀くん」
「京ちゃん、お祭りで浮かれてるの?子供みたい」

屈託なくとぼける咲に京太郎は何も言えなくなる。

咲…恐ろしい子。

「京太郎、お子さまだじぇ」
「う、うるせーな!行くぞ!」
「あ、フライングはダメだじょ。京太郎!」

自棄になって階段を全力で登っていく京太郎、あっ
さり追い抜いていく優希。

いつもの様に取り残される咲と和。

「もう…優希ったら浴衣なのにあんなに走って…」
「あは…あははっ」
「宮永さん?」
「お祭りって楽しいね、原村さん」
「え、ええ」

小さくなる京太郎の背中を見送りながら、咲はいたずらっぽく笑った。

「私も大好きだよ」


おしまい

名前:
コメント: