同じベッドで寝る男と女。共に裸で、ついさっきまで睦み合っていた。
 男と女──須賀良太郎と大星淡は俗にいう、恋人という関係であった。
 いつから、こんな仲になっていたと二人が問われれば、いつの間にかとしか答えようがなかった。
 高校を卒業した京太郎は東京に上京、進学した大学でばったりと淡と出会った。
 高校の時に面識こそあり、知らない相手ではないという間柄であった。再会した時も、ああ同じ大学だったんだなという感慨しか彼らは抱かなかった。
 ただ、選択した講義、学食の席、果ては借りているマンションの部屋が隣であったという偶然が重なり続ければ……もう、知っているだけの人ではいられなくなり、話を交わす仲になっていた。
 会話が重なると、お互いの事を良く理解できるようになった。
 馬が合った彼らは、気のいい友人となっていた。
 ……世話好きの京太郎と、甘え上手の淡。二人とも明るく社交的だったのが決定的で、相性が抜群に良かったのだ。
 隣同士だったせいなのか、京太郎が食事を作って彼女と一緒に食べたり、休日に淡が彼を引っ張って街に足を運んだり、プライベートでも共にいることが多くなった。
 最初は「須賀」、「大星」と姓で呼び合っていたのが、いつの間にか「きょーたろー」と「淡」になっていた。
 大学でも、外でも、一緒にいるのが当たり前になっていた。
 彼が、彼女がいない……そんな世界が、考えられなくなっていた。
 そんな世界があると考えただけで、死ぬほど怖くなった。

淡「ねぇ、きょーたろー」
京太郎「んー、どうした」

 逞しい京太郎の胸板に、ぺたりと顔をくっつける淡。素肌に耳を当てているせいか、心臓の鼓動がよく聞こえる。

淡「きょーたろーはさ、テルーやサキーのこと好きじゃなかったの?」
京太郎「なんで咲と照さんなんだ」
淡「だって、ずっと二人のこと目で追ってたじゃん、高校の時」
京太郎「ああしなきゃ勝手にはぐれるんだよ、あのポンコツ二人は」
淡「そうなの?」
京太郎「そうなの」

 心臓の鼓動の間隔は何も変化はない。
 嘘は、ない。
 淡がずっと抱いていた京太郎への疑念。それが簡単に払拭されてしまった。
 口で聞いてみなければわからないことがある。それが、なんとも呆気なさ過ぎた。

京太郎「何でそんなこと、聞くんだ?」
淡「教えない」
京太郎「えー」

 ぷい、と顔を背ける彼女がいじらしく可愛い。
 抱きしめるとこんなにも華奢で、愛らしく自分に甘えてくる彼女が、世界で一番近くにいる。

京太郎「今が永遠に続けばいい、って最近思えるよ」
淡「きょーたろーの癖に随分詩的なことを言うね」
京太郎「これでも教育学部なんでね」

 けれど、それじゃあダメなんだってわかっている。
 止まれ、止まれと念じたって、世界は決して止まったりしない。
 たとえこのまま止まったとしても、それはそれで幸せなんだろうけれど……。
 だからこそ、こうやって何かを変えようと体を重ねたんだ。

淡「きょーたろー、浮気したら怒るよ」
京太郎「浮気~?何だそれ。食い物か?」
淡「まったく、もう」
京太郎「んっ」

 接吻を交わす。何度目になるかわからない。初めてしたのが遠い昔に思えるほど、唇を重ねてきた。
 だけれでも飽きない。ずっと、キスをしていたいと思えるほどに心地よいのだ。

淡「きょーたろー。エッチして、何か変わった?」
京太郎「もっと、淡が欲しくなった」
淡「私も、きょーたろーが欲しくなった」

 同じ気持ちなのが、こんなにも嬉しい。
 幸せで幸せで、二度と手放したくない。

淡「もう一回、しよっか」
京太郎「ああ」

 互いの体を、貪りあう。自分の体を、誰かと共有し合う。
 長いこれからの、刹那の中の幸せ。
 深く、深く、快楽の宇宙へと沈んでいく。

淡「大好き、だよ……きょー、たろー……!」

 カン