いちご(誕生日……か)

いちご(とは言え、特別なことは何もないんじゃが)

いちご(友達遊びに誘っても、都合がつかんみたいだしの……)

いちご(……京ちゃんは長野じゃし)

いちご(まあ、家族と過ごす誕生日もありじゃろ)

いちご「おかあさーん、朝ごはーん」トタトタ

京太郎「ちょうど出来たところだよ、降りといでー」

いちご「はーい」トントン

いちご「って、ぃい゛!? 京ちゃん!」

京太郎「はい、あなたの京ちゃんですよ」

いちご「何でここに!?」

京太郎「いいから、早く顔洗っといで」

いちご「そんなこと……! か、顔洗ってくるけえ」

京太郎「うん」

バシャバシャ

いちご「京ちゃん、だから何でここに……」ダダダ

京太郎「じゃーん、和朝食セット! ほら、冷めちゃうから早く席着いて」

いちご「えっ、う、うん」

京いちご「いただきます」

いちご「ズズー、うん、美味しい!」

京太郎「やっぱり朝はご飯と味噌汁だよなー」

いちご「……じゃのうて、何で京ちゃんが広島におるんじゃ!」

京太郎「うん、よくぞ聞いてくれました」

いちご「さっきから三回は聞いとるんじゃが」

京太郎「ちゃちゃ姉にご飯を作るためだ」

いちご「ご飯?」

京太郎「そう、ご飯」

いちご「それだけの為に来たんか!?」

京太郎「ちゃちゃ姉、今日が何の日か忘れたのか?」

いちご「……これ、誕生日プレゼント?」

京太郎「うん」

いちご「……お父さんとお母さんは?」

京太郎「用事あるみたいだよ。だからこそってのもあるけど」

いちご「……事前に言ってくれりゃあええのに」

京太郎「その方が面白いだろ? どう? 俺の誕生日プレゼント」

いちご「どうって……京ちゃんと会えただけで嬉しいんじゃけど」

ガタン

いちご「ど、どうしたんじゃ京ちゃん?」

京太郎「ちゃ、ちゃちゃ姉ってたまに率直、っていうか素直すぎっていうか……」

いちご「ほうか?」

いちご「……でも、プレゼントは料理だけなんか? あっ、いや、料理がダメって訳じゃないんじゃが」

京太郎「うーん、そうだな。じゃあ今日一日ちゃちゃ姉の従者になるよ」

いちご「じゅ、従者?」

京太郎「ああ。お姫様、なんなりとご用命をお申し付け下さい」ハギヨシー

いちご「ひ、姫?」

京太郎「ええ、いちご姫です」

いちご「ちゃちゃのんにはそんなの似合わな……」

京太郎「いえ、お似合いです。可愛らしいお顔はあまおう、綺麗な身なりは女峰、純真な心はとちおとめ。まさにいちご姫はそれらいちごの―――」

いちご「わー!! やめやめ、お姫様ごっこはやめじゃ!」

京太郎(日頃雑誌なんかで褒め言葉は慣れてそうなのにな)

いちご「京ちゃんは普通にしとってくれ!」

京太郎「んー、でもなあ」

いちご「ええから。さっき言ったじゃろ、いてくれるだけで嬉しいって」

京太郎「それはありがたいけど……」

いちご「そうだ、ゲームしようかの! 京ちゃんゲーム好きじゃろ? 部屋に確かあったけえ」

京太郎「それじゃ、お言葉に甘えて」

マンマミーヤ!

いちご「また落ちた……」

京太郎「昔から下手だったもんなー、ちゃちゃ姉」

京太郎(ゲーム機も埃被ってたし)

いちご「京ちゃん頑張れ、ちゃちゃのんの仇を討つんじゃ!」ゴソゴソ

京太郎「……うーん、なあちゃちゃ姉、折角だしどっかに遊びに……何やってんの?」

いちご「ん? 充電。ほら、ちゃちゃのんの前に腕回して」

京太郎「充電って何の……?」

いちご「ちゃちゃのんな、本当に京ちゃんといるだけで嬉しいんよ」

いちご「だから、お願い。こうしてぎゅっとしてて?」

京太郎「……ちゃちゃ姉」

いちご「うん、こうしてると安心する」

いちご「……京ちゃん? 手が止まっとるよ」

京太郎「……」ギュッ

いちご「きょ、京ちゃん?」

京太郎「ちゃちゃ姉、こんな状態で集中なんて出来ないよ」

いちご「そ、そうかの?」

京太郎「そうだよ。だってちゃちゃ姉の匂いが……」

いちご「に、匂い!? ちゃ、ちゃちゃのんの匂いなんて嗅いでも面白くないけえ」

京太郎「いちごみたいな匂いがする」

いちご「せんじゃろ! い、いや確かにいちごじゃけど……」

いちご「ちょ、ちょっと京ちゃん一旦腕をほどいて……」

いちご「……京ちゃん? どうしたんじゃ?」

京太郎「もうちょっと、こうしてていい?」

いちご「京ちゃん……しょうがないけえ、ええよ」

京太郎「ごめん」

いちご「なんだか京ちゃん、昔の京ちゃんに戻ったみたいじゃ」

京太郎「昔?」

いちご「昔よく、ちゃちゃのんの後ろついて来とったじゃろ?」

京太郎「そうだったっけ」

いちご「そうじゃよ。それで離れさせようとすると泣いてむずがって。あの頃から、京ちゃんは寂しがりやさんじゃった」

京太郎「……今もだよ。今日だって、本当に嬉しいのは、会いたいと思ってたのは俺なんだ」

いちご「ちゃちゃのんも同じじゃよ。京ちゃんと会えんくて寂しかった。ずっと京ちゃんに会いたかった」

京太郎「いや、俺の方がずっとちゃちゃ姉に会いたかったから」

いちご「いやいや、ちゃちゃのんの方がもっともーっと」

京太郎「ははっ」

いちご「ふふっ。どうじゃ? ちゃちゃのん分は補給できたかの?」

京太郎「補給してたの俺だったか……」

いちご「ちゃちゃのんも補給したよ?」

京太郎「どっちも補給だなんて、エコだな」

いちご「でも時間がかかるみたいじゃね」

京太郎「次会える時まで保たせるには、どれくらいかかる?」

いちご「そうじゃの……一日くらい?」

………

いちご「……いつの間にか横になって眠ってたみたいじゃな」

いちご「……抱きつかれたまま」

いちご「……何とか方向転換できないかの?」ググッ

京太郎「……」スースー

いちご「ふふ、可愛い寝顔じゃの」

いちご「で、でもこの距離はちょっと近すぎるかの?」

いちご「京ちゃんの顔……綺麗じゃな」

いちご「……」ドキドキ

いちご「……」チュッ

いちご「わ、わあー……」

いちご「ちゃ、ちゃちゃのんったら何ちゅうことしてもうたんじゃ」

いちご「う、うう、顔が熱い……手が震える」

いちご「きょ、京ちゃん起きてないじゃろか?」

京太郎「……」スースー

いちご「……そ、それはそれでなんか癪じゃの」

いちご「……も、もういっぺん」



カンッ(チュッチュッチュッチュッ


いちご「も、もういっぺん……」

京太郎「ちゃ、ちゃちゃ姉……やりすぎ……」パチッ

いちご「うわああああああああ」


もいっこカンッ