「今年の冬」

姉帯さんと一緒に暮らしてからもう3年が過ぎた

今年の冬のために新しく買った電気ストーブのジジジ…といういびきと

最愛の女性の静かな寝息がちょうどよいハーモニーとなって部屋を満たしている

隣で眠る彼女の健やかな寝顔を見ていると、ああ、この人を幸せにできてよかったとつくづく思う

起こさないようにそっとキッチンへ向かい、牛乳を手鍋に入れて温めて飲んだ

ほぅっ、と息が出てくる

この静かで平和な夜を夢の中以外のところで見てみたくて、こうして起きてくる時がある

今年は雪が遅いのか、冷え込んだ夜の間にもまだ振る気配はない

ここ岩手では眠っている間に足が埋まるほど雪が積もるということは当たり前なのだが、

こうして朝の雪かきのことを考えなくて済んでいる理由を無理やり考えて一つ浮かんだ

「雪の神様にも一緒にいて暖かくなれる人が出来たんじゃないかな」

窓の外は静かな夜が広がっているだけだった


そういえば二人暮らしが慣れない頃、姉帯さんは夜中に目が覚めるときがあった

そんなときに窓の外がぼんやり白く光っているのを見つけると

俺を揺り起こしにくるのだった

「京太郎くん!雪! 
 雪振ってるよ!ちょー綺麗だよ!」

姉帯さんはそういう人なのだ

自分が綺麗と思ったものは他の人にも見せてあげたい

だから俺も寝ぼけ眼をこすりながら彼女と窓辺に立つのだ

そうして外に出て間近で見ようとする彼女の手にはまる手袋

それは俺の手作りだ

姉帯さんのサイズにあった女性向けの手袋なんてそうそう見つからない

聞けば今まで大人の男用の手袋をしていたのだという

それを聞いて俺は早速実家から持ってきた着なくなったコートを取り出し、ポケットの部分を切り取った

丁寧に指の形を作り、仕上げに手の甲のところに雪だるまの絵を刺繍していく

こうして出来たオリジナルの手袋を渡したときの彼女の顔は忘れられない

「ありがとう……ありがとう…京太郎くんっ!」

そして飛びついてきたときの柔らかさも…

重さは忘れるようにしたい

「あっ…あれ京太郎くん?わっ、わわわわわ!頭打っちゃったの!?ご、ごめん!ごめんね!」

―――

「もうそろそろ年賀状を書かないと」

「うんっ、年賀状ってちょー楽しいよねー!」

「えぇ……まあ、書くのはすごい疲れますけど」

「こんな風に『あの人にも書こう』『あの人にも出さないと』って考えることなんて

 宮守でみんなと出会う前の私にはなかった楽しみだから…」

「そうですね…」

「その後、京太郎くんと会って、すぐに大好きになって…
 京太郎くんの知り合いの人にも年賀状を書くようになって…

 どんどん知っている人が増えていって、
 その人たちが私たちを包んでくれているって、とっても大きな幸せだよ」

「姉帯さん…」

「あとは、同じ名前で一緒に出せるようになったらもーっと幸せになるんだけどねっ♪」

「はは、それでも俺はきっと姉帯さんって呼んじゃうかも

 仲の良い夫婦でも姓で呼ぶ事はあるみたいですし」

「ふ、夫婦かぁ…」

「夫婦、いつかは俺達も夫婦になるんですよ」

「う、うん…そうだよね

 京太郎くんが私の旦那様になって、私が京太郎くんの奥様になるんだよね……はわわ」

「…怖いですか?」

「ちょ、ちょっと…

 だって……



 そんなの幸せ過ぎて私、どうなっちゃうのか分からないよー…」


照れくさくなって横を向いた先にカレンダーがあった

たいした予定は書き込まれていないけれど、それでもこれから過ごす大事な日々がそこにある

姉帯さんが笑顔を振りまいてくれる大事な日々

今年の冬も俺達、二人の家には愛が積もっていく

それは新品の電気ストーブよりもっとずっと暖かい、愛


カンッ