「なんだ、咲か……って、なにやってんだ、咲!?」

驚きのあまり一瞬で眠気が吹っ飛び、京太郎は布団から飛び起きた。

「おはよう、京ちゃん」

と、咲はなにごともなかったかのように身体を起こし、目覚まし時計をとめる。

「ああ、おはよう……じゃなくて、なんで咲が俺の布団に入ってるんだよ?」

京太郎の問いに、咲はいたずらっ子のような笑みを浮かべると、

「だってぇ、京ちゃんを起こしに来たら、すごく気持ちよさそうに寝てたから、ちょっと添い寝したくなっちゃって……京ちゃんの寝顔、とっても可愛かったよ」

こう言われると、さすがに京太郎も「う~む……」と唸って沈黙するしかない。

「そ、そういえば、なんで咲が起こしに来たんだ? いつもなら寝ているのにさ」
「あれ、京ちゃん? 私が起こしに来たらダメなの?」

と、咲が少し不満げな顔を見せる。
頬を染めた咲が京太郎から視線をそらした。

「もうそんなこと気にしなくていいんだもの。だって、私と京ちゃんは……ねぇ? ふふっ」
照れくさそうに笑いながら、咲が上目遣いに再び京太郎を見つめる。
今度は、京太郎のほうが恥ずかしくなって視線をそらす番だった。

(そうなんだよな。俺、咲とエッチしたんだよな……)

咲は額を赤に染めながら、エプロンを棚から取り出していた。
パジャマの上からピンク色の花柄をしたエプロンを着ける。
そしてはにかみながら京太郎の前に立つ。

「どお京ちゃん?似合う、かな…?」

上目遣いの目線で感想を求めてきた。
起きたばかりの頭のせいか手頃な称賛を即座に思いつかなかったので、京太郎は咲をギュッと抱きしめた。
それだけで、感想の肩代わりには十分だった。

「京ちゃん、大好き!」

身体を離すと、咲は頬を紅潮させ、見ているだけで恥ずかしくなるような、魅力の塊の笑顔を京太郎に向ける。

「ねえ、京ちゃん…式はいつにしよっか?」
「待て、咲…いきなり何を言っている?」

咲は笑顔のまま京太郎の手を握る。
いきなり婚姻関係が成立してしまった。

「最初は京ちゃんみたいな可愛い男の子がいいなー」

いつの間にか子供の話になっている。何を考えているんだ咲は。
そんな風に考える京太郎をよそに、咲は鼻歌を歌いながら、フライパンを持って料理を始める。

「今日もまた、目玉焼きにソーセージかな」

小さく呟きながら、京太郎は静かに微笑む。

「えーと、コショウコショウっと…」

咲は慌てた様子でキッチンを駆け回る、転んでしまわないか心配だ。

「きゃっ…」

案の定、咲はコショウを手にしながらイスにつまずいた。

「危ねえっ」

京太郎は即座に駆け寄ると、咲の身体を強く抱き締めた。

「大丈夫か咲?全く、お前は危なっかしいよ…」
「ごめんごめん、京ちゃん。私って本当にドジばっかりだね」

咲はニコリと微笑むと京太郎の唇に軽くキスをする。
突然の出来事に京太郎は思わず顔を赤らめてしまう。

「さ…咲…お前なぁ!」
「ふふっ、助けてくれたお礼だよ、京ちゃん」

悪びれる事もなく咲は京太郎の唇を右手でなぞった後、ドタドタとキッチンの方に戻っていく。

「全く、昨日から咲に振り回されっぱなしだな、俺」

頭をポリポリとかきながら、京太郎はフウッと溜め息を吐いた。

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