憧「はい、コーヒーとココア、どっちがいい?」

京太郎「コーヒー」

憧「知ってる」

京太郎「わぉ、以心伝心」

憧「私達の距離はテレパシーで繋がってたのかしら」

京太郎「幼なじみ間での精神感応能力の発言の可能性が微レ存…」

憧「ココアおいし」

京太郎「聞けよ」

全く、アコチャーったらアコチャーなんだから…と呟きながら、私が持ってきたマグカップの中で湯気を発する苦いコーヒーを彼は石段に座って啜る。私は彼の隣、一緒になってココアを啜る。

新年が明けてもう4日。初詣に来た参拝客の数も落ち着いて、やっと落ち着ける時間が出来た。
神社の娘である私も、アルバイトとして来た京太郎も。うん、疲れた体に鞭打ったお陰か、ココアがとても美味しい。

憧「今年もお疲れ。京太郎。また来年もよろしくね」

京太郎「あぁ、よろしくされてやるよ。参拝に来たカップル殴りたさを抑えながらな」

憧「一杯来てたわよね。デートと参拝、どっちが本命なのかしらね」

憧「ま、お金落としてくれるならどっちでもいいけど」

京太郎「わー。しびあー。兼用してんじゃね?恋人が隣に居ればどこでもデートスポットってこったろ。羨ましいやら腹立たしいやらねぇわ」

憧「へー、あんたも恋人とか欲しいんだ」

京太郎「そりゃな。俺だって花の高校生だ。青春を謳歌するなら、恋人くらい」

それにしては、京太郎が誰かと付き合ってるって話は聞かないのよねー。よく告白されたって話は聞くけど、それでも。誰か本命の人とかいるのかしら?

そういえば、麻雀部の皆の前でこの話をすると、皆呆れたような顔するのよね、なんでかしら?

京太郎「あ、憧はさ」

憧「ん?なに?」

京太郎「憧は、誰かと恋人になりたいとか、ないのか?」

憧「んー、今はいいかな」

特にそこまで、って感じかしら。興味がないっていったら嘘になるけどね。

京太郎「…そっか」

京太郎は、私の隣でコーヒーを啜る。だけど、その口が苦そうに歪んだのは、コーヒーだけのせいなのかな。


◆◆◆◆◆

なんだかなぁ…。こんだけ分かりやすい対応してんだから、そろそろ気づいてくれてもいいんだけど、無理な話か。
意中の相手である彼女が淹れてくれたというオプションのおかげで、当社比60%ほど美味くなったコーヒーの苦味を味わいつつ、横目で憧のことを見る。

彼女のワンサマーよろしくな鈍感っぷりのせいで、未だに彼女いない歴=年齢の俺としては、今すぐにでも抱き締めたいが、ここはやめておこう。5年以上の歳月を我慢してきた俺からすれば、これぐらいなんてことない。

ただ隣にいる。それだけで幸せになれるとこ考えると、俺はどんだけ憧のこと好きなんだろ。
…興奮してきた。顔熱い。やべ、変態っぽい。

京太郎「ままならんよなぁ」

憧「?なにがよ」

京太郎「ひーみーつー」

憧「おーしーえーろー」

京太郎「黙秘バリアー」ビビビビビ!!

憧「小学生みたいよー」

京太郎「いつだって心に童心を忘れない。きりっ」

憧「子供の心持ってるやつは宥姉や玄の胸ばっか見たりしないわよ」

京太郎「やめて」

しょうがない。おもちには抗いがたいチャームがあるんだ。おもちマイスター2号としては愛でずにはいられないんだ。
なお、1号はクロチャーの模様。師匠ですのだ。

憧「…ねぇ」

京太郎「あん?」

憧「アンタってさ、玄か、宥姉のこと好き、なの?」

ブホッ、と口に含んでいたコーヒーを霧吹きのように吹き出した。変なとこ入ったゲホゴホ。

憧「ちょ、ちょっと京太郎大丈夫!?」

京太郎「だ、だいじょばない」

憧「あーもう、ティッシュ使いなさい」

京太郎「サンキュー憧。家宝にするわ。草薙の剣と一緒に飾るわこれ」

憧「いや、捨てなさいよ」

京太郎「冗談じょうだん。でもどうしたよいきなり」

憧「別にー。たださ、宥姉達って、可愛いでしょ?」

京太郎「あぁ、まぁ可愛いな」

憧の方が個人的に8倍ほど可愛いが(断言)

憧「京太郎、松実館でバイトしてるし、そういう下心あるのかなって」

京太郎「お前って時々ナチュラルに外道ひでぇよな」

京太郎「ねぇよ。そういうの。可愛いとは思うし時々ドキッてしたりもするけど、それでも、ねぇよ」

憧「そういうもの?」

京太郎「そういうもの。それに俺、本命いるし」

瞬間、ゴホゲホッとむせっかえるような声が聞こえる。
お、おい、大丈夫か?


憧「ご、ごめん。びっくりしただけ」

京太郎「うわびしょびしょ…あーもう。顔こっちむけろ。口拭くべ」

憧「ん…ありがと」


◆◆◆◆◆

そっか。こいつ、好きな娘いるんだ。うん。いいことだよね。
…でも、知らなかったなぁ。いつも、一緒にいたのに。

憧「じー」

京太郎「…なに?」

憧「んー、男の子だなって」

京太郎「え?いや、そりゃ女の子じゃねぇし」

そう、よね。私の知ってるこいつだけが、須賀 京太郎じゃない。現にこうやって私の知らないところでちゃんと人を好きになってる。

…なんか、やだ。いいことのハズなのに、やだ。おかしいよ、私はこいつの幼なじみで、こいつの幸せを祝って応援するべきなのに、嫌だよ。


ーーーーいっちゃやだよ。京ちゃんーーーー