I need you


「今年も積もったな…」

京太郎が隣でつぶやいた

「まったく朝から冷え込んで嫌になるぜ」

「うー…まったくだじぇ」

口先だけで同意した
空気の冷えは理解していても、それが肌に食い込んできたりはしない
こいつと一緒にいるだけで私は体の中心から暖かいからだ

「優希見てみろよ」

隣にいたはずの男の声が後ろから聞こえた
振り返ると京太郎は手に雪を乗せて遊んでいる

「こんなにさらっさらだぞ
 砂糖みたいだ

 昨夜の雪がまだ結晶の形をしてるってことは
 今日は本当に冷え込んでるんだな」

自分の口で言って改めて寒さを実感したのか、
冷たいと言って手の平の雪を落とすと両手をさすり出した

赤くなった指たちが痛々しい

「全く大馬鹿な犬だじぇ

 本当の犬も気温0度くらいがちょうどいいというぐらい寒いのが好きだけど
 京太郎もいよいよ犬化が進んできたな」

雪ではしゃぐ京太郎が愛おしい
でも、そう想う気持ちも口を通すと、からかいの言葉でしか出てこない
私の体はどうしてこんなに不器用なんだろう

「うっせ、犬犬言うんじゃねぇよ

 ひぃー、ちべってぇ…」

目の前で指先に奪われた熱を取り戻そうと、擦ったり、息を吐いたりする京太郎
こんな時、部のみんなならどうするだろう…

咲ちゃんなら、きっと自分の両手で暖めようとするだろう
何の違和感も与えず

でも、私は…

「どうした京太郎ー?んー?

 今ならこの優希ちゃんがその手を握って暖めてやってもいいんだぞ?

 ただし、私に永遠の愛と服従を誓うのならな!」

大げさに威張ってみせる
本当は京太郎の手を握ってあげたくって堪らない
こちらからお願いしたいほどに

「ああ、分かった分かった!愛してますから!

 ほれ、頼む」

時間が止まった気がした

どうしてこの男はこんなに私の心をいじめるのだろう

ただの言葉として放った「愛している」だとわかっているのに

私の冗談に乗っかっただけで、そこに何もないとわかっているのに

きっと今の私の顔は京太郎の両手より赤い


高貴ささえ感じる白い雪は日光の反射で更に底のないほど真っ白に見える

眩しさに目を細めていたら笑っている顔か、悲しそうな顔かも分からない

「そうか、そうか
 そんなに私のことが好きか」

「ああ、ああ、大好きですよ優希さま!」

その意味する「好き」と、私が欲しい「好き」はきっと違う

でも私は勘違いしたい
その「好き」を、いつか聞かせてほしい「好き」だって思い込みたい

寒い日ならどっちも同じ白い息になって空に上がっていく

神様がそれを受け取ったら私の恋を成就してくれるかもしれない

でも、叶えてくれなかったら問い詰めてやりたい


 「どうしてこの男を好きになる運命を私にくれたんだ

  私はもう京太郎のいない人生なんて考えたくないほどゾッコンなのに

  いつまでたっても辛い片思い

  こんなんじゃ京太郎に会いたくなかった!」


頭のなかで考えても決してそれらは飲み込んで、また胸の内にためるしかない

どこまでも、私は不器用だ


「仕方ない奴だじぇ!

 ほれ、これでだいぶマシにはなっただろ」

「ああ、わりぃな優希」


そうして、ただ京太郎のいち友人を演じようと、
何も考えていないフリをしながら両手を強く握るだけだった


ねえ、京太郎
京太郎が欲しいものってなに?
ずっとあってほしいものってなに?


私はこの恋心かも

カンッ