京太郎「え、今日駄目になっちゃったんですか?」

『ごめん。スケジュールにミスがあったみたいで』

京太郎「あ、いえ、気にしないでくださいよ」

ホントにごめんね、と慌ただしく切られた電話に一抹の寂しさを感じつつ、彼はスマホをコートにしまう。
そしてふぅ、と息を吐く。
辺りを見渡せば、回り一面はカップルの巣窟。今がこの世のはるだと言わんばかりのうかれっぷりだ。いや、冬だけど。

京太郎「(結局この半年、ほとんど会えなかったなぁ)」

夏祭りに紅葉狩り。秋の豊穣祭…は秋の選抜があったからこれはノーカン、そして今夜、カップル達の祭典。雪降る聖夜。クリスマスだというのに。
あれか、非リア充は苦しみますかか?消えろよもう。

仕方がない、とは割りきってる、はず。彼は学生で、彼女は社会人。しかも人気の麻雀プロだ。こちらが怒るなんて、と思う。まぁ、せっかく恋人になって初めてのクリスマスだが、ここは寂しく独り身を過ごすとする。

京太郎「(無駄になっちまった、な)」

そう考えながら弄るのは、小さな箱。綺麗にラッピングされたこの箱は、あの人へのプレゼントが入っている。先輩の雀荘やハギヨシの元でバイトして買ったものだ。まぁ、意味無くなってしまったが。

愛があれば歳の差なんて、なんていうがそれは嘘だ。現にこんなにも遠い。こんなにも、苦しい。


京太郎「(あ、また電話)」

家への帰路へと着きつつ、電話の応答のために画面を操作した。相手は、俺のおもいびと。


京太郎「...もしもし」

『ええ、すいません。…落ち込んでますか』

京太郎「そりゃまぁ、人並みには」

そうですか。と、相も変わらず抑揚のない声で彼女は告げる。…その声だけで幸せを感じてるあたり、単純だなーと思う。

京太郎「どうしたんですか、お仕事、急いでたんでしょう?」

『ええ、てんやわんやですね。ところで京太郎』

京太郎「はい?」

『あなたはいまどこに?』

京太郎「どこって、家に帰るとこですけど」

『そうですか。貴方の家にプレゼントを送りましたから、受け取っておいてください』

京太郎「はい。ええ、それじゃ」


…少し早く帰ろう。そう即決した冬の夜。

◆◆◆◆

「メリークリスマスです。京太郎」

京太郎「…へ?」

ガチャリと自宅の玄関扉を開くと同時に響くパァッンという炸裂音。そして舞い散る色とりどりの紙とリボン。
それがクラッカーによるものと気づいたのは、停止した頭を働かせて少しした後だった。


京太郎「良子、さん?」

良子「イエス。あなたの恋人、戒能 良子だよ」

京太郎「…え?」

俺のことを出迎えてくれたのは、サンタの衣装に身を包んだ大人の女の人。というか、俺の交際相手。ら、え?

京太郎「お仕事は」

良子「お仕事だよ」

京太郎「はい?」

わけがわからないよ。


瞬間、俺はぎゅっと良子さんに抱き締められていた。
寒い夜空のなかで冷えた体には染み込むような温もりが、俺の心を満たしていく。



良子「大事な恋人の帰りを迎える。それ以上に大事な仕事はないよ」


なんか、こう、ずるいなーって思う。
なんで嘘ついたんですかって少しぐらい責めてもよかったじゃないかって思ったのに、怒りがどっかいってしまった。


良子「京太郎。嘘をついたことは謝ります、ごめんなさい」

京太郎「いや、そこはいいんですけど。でもなんで」

良子「こう、あなたがいないうちに覚悟を決めたかったといいますか。なんというか」

京太郎「?」


良子さんは俺の耳元に口を近づけ、恥ずかしそうに告げた。

"私、あなたが大好きだから、私の「はじめて」をプレゼントしたいの"


京太郎「お、おう……?…っ!」


ーー分かった。理解した。俺は今日、この人とーーー