玄「ドラー。えへへ、ドラー」

とある週末の昼下がり。今日は部活も休みで、出題された宿題もない。

本当になにも予定がないので家でのんびりしているわけだが。

玄「赤五筒ー赤五萬ー赤五索ー」

誘ってもいないのになぜか家まで来た玄さんはコタツに潜り込んでなぜか常備していた赤ドラを弄り倒している。

京太郎「玄さん。楽しいですか? それ」

玄「え~、うん。楽しいよ~」

楽しいらしい。傍目にはなにか辺境の邪教の儀式にしか見えなくもないのだが。

諦観のため息。

俺は部屋の隅に鎮座した、実家から送られてきた段ボール箱に手を突っ込むとみかんを数個掴んで取り出す。

取り出しだみかんを机に置き、そのうちの一つを選んで外皮を剥いていく。

玄「あ、いいなぁ。おにーさん、私にも一つくださいな」

玄さんの催促にいったん手を止め、新しいみかんを一つ手に取る。

玄さんの前に置こうとして気付く。正面にはドラの牌。

しばし考えてから正面を避け脇に置く。

玄「ありがとー。うふふふ、パーティーへようこそ」

楽しそうに微笑みながら俺に倣って皮を剥き、一房ずつ千切って口へと運んでいく。

見ていても仕方ないので俺も作業を再開する。

しばらくの無言。

みかん一つ如きあっという間に食べ終えてしまう。

俺は机上に置かれた次のみかんに手を伸ばす。

同じ工程を経て再びみかんを口へ運ぶ。

薄皮の張力を噛み千切り、内側の果肉の粒が咥内で潰れる。味蕾を刺激する柑橘系特有の酸味と程よい甘さと、水気が口の中に広がる。

うむ、美味い。

伸ばされていた俺の脚に僅かな感触。コタツ布団の内側で玄さんの爪先が俺の脹脛を突いていた。

視線を水平に動かし玄さんの顔を伺う。

無言で小さく口を開けている玄さんが待っていた。

京太郎「……」


それはまるで餌を待つ雛鳥を連想させる。

ええっと、つまりこれは食べさせてくれってことか?

玄「……」アーン

だが、無視。

俺は三つ目のみかんに手を伸ばす。

再び脹脛を突かれる感触。目を瞑り、可愛らしく口を開けて催促してくる玄さん。

俺の脳裏にイタズラの閃光。こういう悪知恵を病的に瞬時に思い付く自分の人間性もちょっとどうかと思わなくもないけど。

俺は身を一房口に咥えると、身を乗り出し黙って待つ玄さんへ顔を近づける。

僅か数センチの距離で静止し玄さんの唇にみかんの身を触れさせる。

感触から察した玄さんが瞼を開き、口先に添えられたみかんを口に入れようとして……。

間近にあった俺の瞳と視線が激突。見る間に相貌が紅潮する。

俺はあくまでもなんでもない風を装い、元の位置へ座り直す。ついでにその辺に転がっていた雑誌を引き寄せ適当にページを捲る。

横目で盗み見ると、驚きで取り落としかけた果肉をなんとか咥え直し咥内で咀嚼するしている玄さん。

もっともその顔は額を机に押し付けられており、表情までは伺えないが。


しばらく放置していると、なんとか立ち直った玄さんはまだやや赤みが残る両頬を指先で揉みどうにか表情を取り繕う。

なにかを言おうと口を開きかけた玄さんは途中で視線を彷徨わせると、なにを思ったかいきなりコタツの中に潜り始めた。

京太郎「ちょ、玄さん!?」

さすがに止めに入る。が、形の良い尻とそこから伸びる程よい肉付きの艶かしい太ももに双眸が釘付けになる。

俺が高尚な美術品の鑑賞に夢中になっていると、その間に玄さんはコタツに飲み込まれていった。

下半身に荷重が加わる。コタツ布団の紗膜を押し上げながら玄さんの頂頭部が現れそこから連なる上半身が噴出してくる。

玄「お邪魔しま~す」ニコ

いや、そんな可愛らしく微笑まれても。

っていうか仮のも男の下腹部から顔を覗かせているというこの体勢は、なんと言うか本人わかってんのかな?

両手が肩に添えられる。一気に身体を押し上げ、今度は逆に玄さんの顔が迫る。

ほんの一瞬の、湿った感触。

玄「えへへ、さっきのお返し」

はにかんだように笑う玄さん。

京太郎「っ……!?」

反射的に口元を手で覆う。やば、これ、恥ずかし過ぎる。

そのまましなだれながら体重を預けてくる玄さん。

なんだ、誘ってないと思ったらどうやら誘われていたのは俺だったみたいだ。

俺はその心地よい重みと温もりをそっと抱きしめた。


カン!