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--2月14日・清澄高校--


京太郎「今日はバレンタインか……」

京太郎「……くくっ」

京太郎「今まではせいぜい咲からの義理チョコしか期待できなかった日だったが、今年は違う!」

京太郎「今年の俺には本命をくれるだろう彼女がいる! そして逆チョコを要求してくる事を考慮して俺も用意してある!」

京太郎「今年のバレンタインデーは楽しくなりそうだぜ、ははははは!」

京太郎「よぉ、みんな元気にしてるかー? 俺は今日も絶好調だぜー」



モブA「よし、ちょっとムカつくから須賀殴ってくる」

モブB「落ち着け、殴ったって片岡にあいつが心配されてまたバカップルフラグが建つだけだ!」

モブC「宮永さんからもらってる時点で勝ち組なのがわかってないとかなんなの? バカなの?」

京太郎「今は何言われても気にならないな! あっはっはっは!」



モブ(リア充爆死しろ……!)

--同時刻--


優希「んー?」

和「どうしました?」

優希「なんか今日は学校中から甘い匂いがしてるじぇ」

咲「今日はバレンタインだからね。 みんなも気合い入ってるんだろうなー……あっ、そうだ」

和「咲さん?」

咲「はい、和ちゃん、優希ちゃん。 友チョコ、一応手作りなんだけど貰ってくれるかな?」

和「ふふっ、ありがとうございます。 それじゃあ私からも……市販のもので申し訳ないのですが」

咲「うわ、すごく美味しそう! ありがとう、和ちゃん!」

和「どういたしまして。 ほら、ゆーきも咲さんにお礼……」

優希「……」ダラダラ

和「ゆーき……?」

咲「ど、どうしたの優希ちゃん?」

優希「ど、どうしよう、のどちゃん、咲ちゃん……」









優希「私、今日バレンタインだってすっかり忘れてたじぇ……」


京太郎「へへっ、楽しみだな」

----


京太郎「~~♪」

咲「あ、あのー、京ちゃんいるー?」

京太郎「おっ、咲か。 ちょうどよかった、これ受け取ってくれよ」

咲「これ……」

京太郎「チョコレート。 まっ、いつももらってばっかだし、たまには俺から渡すのも
ありなんじゃないかと思ってなー。 あっ、和の分もあるから昼にでも渡してくれるか?」

咲「わかった、ありがとう……じゃあ私からもいつものを」

京太郎「サンキュー。 そういえば咲、優希の奴見なかったか?」

10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2013/02/15 17:30:06 ID:Xh7d7lHM0
咲「えっ!? ゆ、優希ちゃんがどうかしたの?」

京太郎「咲……それはもしかしてギャグで言ってるのか?」

咲「な、なんのことかなー?」

京太郎「今日はバレンタインなんだぜ? なのにただでさえ休み時間には
ちょっかい出しに来る優希が今日は全然顔見せねぇし、こっちから行ってもどっか行ってるみたいだしよ……心配にもなるだろ?」

モブA「避けられてるんじゃねーのかー?」

モブB「もしかして嫌われたのかもなー?」

モブC「ざまあ」

京太郎「うっさいわ! こちとら喧嘩らしい喧嘩もなくのんびり過ごしてるっつーの!」

咲「京ちゃん……」

京太郎「あっ、わりいわりい。 それで咲、何か知らないか?」

咲「ご、ごめん、何も知らないよ」

京太郎「そっか……じゃあもし会ったら昼飯一緒に食おうって誘ってたって言っといてくれるか?
ないとは思うけどなんかこのまま会えない気もしないでもないし」

咲「わ、わかった。 それじゃあ私行くね」

京太郎「おー、また部活でなー」

咲「うん」パタパタ

京太郎「優希の奴、どうしちまったのかね……」

モブA「倦怠期」

モブB「愛が冷めた」

モブC「破局」

京太郎「お前らな……」

----


和「どうでした咲さん」

咲「やっぱり京ちゃん、すっごく楽しみにしてるみたい……」

優希「そんな……どうしよう」

和「正直に言うしかないのでは? 須賀君だってこんな事でゆーきを嫌いになったりはしないでしょうし」

咲「嫌いにはならないだろうけど、今年の京ちゃん浮かれてるから落ち込むのは間違いないと思うよ。 はい、和ちゃん」

和「これは?」

咲「京ちゃんからもらったチョコレートの和ちゃん用……私のもだけど間違いなく手作り」

優希「おおう、マジか……」

咲「しかもちょっと見えたんだけどこれが入ってた袋、箱が後3つあって1つはわかりやすいくらい優希ちゃん用だったよ」

和「気合い入ってますね……」

咲「京ちゃんが彼女出来てから初めてのバレンタインだからね。 だから京ちゃんがっかりするんじゃないかなあ……」

優希「ううー……」

咲「……ねぇ、優希ちゃん」

優希「なんだ咲ちゃん……」



咲「----なんとか、したい?」



--昼休み--


京太郎「……」

モブA「昼だなー、須賀」

モブB「もう諦めたらどうだー?」

モブC「お前もリア充じゃなくなったんだなー」

京太郎「ま、まだ部活あるし、あいつの事だから忘れてるだけに決まってる……」


モブA「バレンタイン自体忘れてたりしてな」

京太郎「!?」

京太郎(……ありえる、あいつの事だからバレンタイン自体忘れてるってすっげえありえる)

京太郎「だけどそれならなんでいつもみたいに来ないんだ……バレンタイン自体忘れてるからって会いに来ない理由には……」

京太郎(まさか俺、本当に避けられてるんじゃ……いやいや、そんな事あるか!)

京太郎「……せめて、これは渡したいんだけどな」

--放課後--


京太郎「……終わったな」

モブA「授業がな」

モブB「結局来なかったな」

モブC「破局だな」

京太郎「……部活行くわ」

京太郎(なんかあったわけじゃないのは、一々優希が教室にいたのを教えてくれた奴らがいたからわかってる)

京太郎(もうぶっちゃけバレンタインとかどうでもいい。 毎日会ってた奴と1日会わないだけで俺はこんなに落ち着かなくなってる)

京太郎(優希に、会いたい)

京太郎「……こんにちはっす」ガチャッ

まこ「お、京太郎早いのう」

久「お邪魔してるわね」

京太郎「竹井先輩に染谷部長……2人共、何してるんですか?」

まこ「見てわからんか? 掃除じゃ掃除」

久「もうすぐ私も卒業だからね、まこと思い出を振り返りながらこの部室にお礼してたの」

京太郎「お礼、ですか」

久「そう、3年間ありがとうってね」

まこ「じゃから今日は部活休みじゃぞ?」

京太郎「えっ」

まこ「なんじゃ、優希から聞いとらんかったんか? どうせ一緒だと思ったから優希の方に送っといたんじゃが……」

久「あらら、優希ったら忘れてたのね……」

京太郎「……」

久「須賀君?」

京太郎「あっ……そ、そうみたいですね! 全く優希ったらしょうがない奴ですよ!」

まこ「すまんのう、せっかく来てもらったゆうのに」

京太郎「いえいえ、気にしないでくださいよ! そうだ、お2人にこれ渡しておきますね」

久「あら、チョコレート?」

まこ「そういえば今日はバレンタインじゃったな」

京太郎「えぇ、日頃お世話になってるお礼もかねてますので……」

久「ありがとう須賀君」

まこ「ありがたくもらっておこうかの、ありがとうな京太郎。 悪いけど今は持ち合わせがないんじゃ、
店で配ってるのでよければ明日受け取ってくれ」

京太郎「ありがとうございます……じゃあ俺、帰りますね」

まこ「おう、また明日な」

久「またね須賀君」

京太郎「はい」ガチャッ……

久「……あれは相当重傷ね」

まこ「わかりやすいくらい動揺してたからのう……ありゃ、今日優希に会えてないな」

久「大方優希がバレンタイン忘れてたってところでしょうけど大丈夫かしら。 あっ、美味しいわねこれ」

まこ「今から出来ることはないから任せるしかないじゃろ……ん、うまいな」


----


京太郎「あっ、はい。 そうですか、一回帰ってきてすぐに……わかりました、ありがとうございます。 はい、はい……失礼します」ピッ

京太郎「はあ……携帯も繋がんないしあいつどこ行ってんだよ」

京太郎「学校にはもういないし、どうしたもんか……渡すものあったんだけどなあ」

京太郎「……あー、ヤバい。 予想以上にショック受けてるわ俺」

京太郎「別に忘れてたくらいで怒りゃしねぇから避けるようなまねすんなよ……バカやろ」

京太郎「……あれ?」


優希「……」


京太郎「……優希?」

優希「……よっ」

京太郎「なんで家の前にいるんだよ……って、それ」

優希「チョコレートだじぇ……ポッキーだけど」

京太郎「……」

京太郎(こいつ、よく見たら手が絆創膏だらけじゃねぇか……もしかして、わざわざ手作り用意しようとしてたのか?)

優希「……やっぱりいらないか?」

京太郎「いや、もらうけど……なあ、お前どれくらいここにいたんだよ」

優希「無我夢中だったから覚えてない……」

京太郎「ちょっと手、貸してみろ」

優希「っ」

京太郎「すっかり冷たくなっちまってる……とにかく上がれよ、温かい飲み物出すからさ」

優希「うん……」

----


優希「ふー、生き返るじぇ」

京太郎「で?」

優希「ん?」

京太郎「ん?じゃねーよ、なんで今日学校で俺を避けてたんだ?」

優希「うっ……」

京太郎「心配したんだぞこれでも。 いつもならしょっちゅう俺の教室に乗り込んでくるお前が
まるで全然来ねえし、こっちから行けばすぐいなくなってるしよ」

優希「ご、ごめんだじょ……」

京太郎「いや、別に謝ってほしい訳じゃないんだよ。 ただ理由を知りたいだけで」

優希「……今日、バレンタインだったろ?」

京太郎「そうだな」

優希「私、今朝までその事すっかり忘れてて……」

京太郎「あー……やっぱりか、何となくそんな気はしてた。
別にそれなら学食にあったチョコパンでもくれればそれでよかったんだぞ?」

優希「だって咲ちゃんから京太郎がチョコレート手作りしてたって聞いたから……」

京太郎「そりゃまあそうなんだけどな……じゃああれか?
わざわざ家に帰ってチョコレート作ってから家に来たのか? ん、それならなんでポッキー?」

優希「実はチョコレート自体は昼休みに家庭科室借りて作ってたんだじぇ……」

--昼休み・家庭科室--


和「昼休みだけとはいえ家庭科室を使わせてもらうなんて無理だと思いましたが、案外なんとかなりましたね」

咲「竹井先輩が前会長だったのと、私達が麻雀部だったのが大きかったみたいだね」

優希「……」

咲「じゃあ始めようか?」

和「そうですね。 せっかく借りたんですから、時間は有効に使わないと」

優希「2人共……付き合わせてごめんだじぇ」

咲「そんな気にしないで優希ちゃん。 私も和ちゃんも友達を助けたいだけだから」

和「そうですよゆーき」

優希「ううっ、私は今猛烈に感動してるじぇ」

咲「ふふっ、とにかく始めよう優希ちゃん! 京ちゃんを喜ばせてあげようね!」

優希「おう!」

咲「じゃあまずはチョコを刻んで湯煎しようか」

優希「え、えっと……こうか?」

和「ゆーき、普段の料理みたいに切ろうとするんじゃなくて、包丁の背に当てて体重をかけて刻むんです」

優希「こ、こう?」

咲「うん、上手だよ優希ちゃん。 出来るだけ細かく刻んだ方がいいからね」

優希「う、うん……」

咲「次は湯煎だね、和ちゃんボールを……って優希ちゃん!」

優希「えっ」

咲「だ、だめだよ、お鍋に直接チョコ入れたら! 湯煎はお湯の入ったお鍋の上にチョコを入れたボールを入れてするの!」

和「ああ、チョコレートがお湯の中に……やり直しですね、これは」

優希「ご、ごめん……」

咲「湯煎までは出来たね。 じゃあ次はテンパリングをしようか」

優希「テンパリング?」

和「チョコレートを溶かして固めるときに行う温度調節のことです。 このまま固めても美味しいチョコレートは出来ないんですよ?」

優希「そうなのか……チョコレートって溶かして固めるだけだと思ってたじぇ」

咲「味を気にしないならそれでもいいのかもしれないけどね。
でも優希ちゃんだって京ちゃんに美味しいチョコを食べてほしいでしょ?」

優希「……」コクッ

咲「それなら頑張らないとね。 大丈夫、きっと京ちゃんもビックリするような美味しいチョコを作れるから!」

優希「う、うん! 頑張るじぇ!」

和「あっ、固まり始めてます!」

咲「わわわ、急いで始めなきゃまた固まっちゃう!」


優希「そこまでは色々ミスもあったけど順調だったんだじぇ……でも」

優希「熱うっ!?」ガシャーン

和「ゆーき、大丈夫ですか!?」

優希「だ、大丈夫、ちょっと鍋触っちゃっただけだじぇ……」

咲「そ、それ大丈夫じゃないよ! 急いで冷やさなきゃ!」

優希「だけど時間が……」

和「そういう問題じゃありません! 冷やしてすぐ保健室に行きますよ!」

優希「あっ……!」


キーンコーン、カーンコーン……

----


優希「私がミスしたせいで時間がなくなって、結局チョコレート作れなくて……」

京太郎「だからポッキーなわけか……」

優希「ごめんだじぇ……そんなんじゃ京太郎のチョコレートに釣り合わないのはわかってるのに」

京太郎「……で、火傷は大丈夫なのか?」

優希「えっ、あっ、それは大丈夫……咲ちゃんとのどちゃんのおかげで大したことはないじぇ……」

京太郎「そっか。 ならそれでいい」

優希「いいって……」



京太郎「……俺からしたらな、チョコレート貰えないより、お前が怪我とかした方が嫌なんだよ」

優希「……!」

京太郎「別にいいんだよ、市販のものだろうがなんだろうが。
お前にもらったってその事実が大事なんだからな。 このポッキーは家宝にして取っておく」

優希「いや、食べてほしいじぇ……」

京太郎「冗談だよ」

京太郎(ったく、くだらない事気にしやがって。 つきあう前の優希なら間違いなく要求するだけだっただろうに)

京太郎「とりあえずそういう事だからもう落ち込むなよ。 俺が好きなのはなんだったっけ?」



優希「私の、笑顔?」

京太郎「正解だ」ギュッ

優希「わぷっ……」

京太郎「やっぱりお前抱きしめてると落ち着くわ。 俺、完全に優希中毒だなこりゃ」

優希「……」ギュッ

京太郎「優希?」

優希「じゃあ、私も……京太郎中毒、なのかもな」

京太郎「……そりゃちょっと反則じゃね?」

優希「?」

京太郎「わかってねぇし……」

----


京太郎「さて、優希のくれたポッキーを開けるとするか」

優希「……」

優希(京太郎はあんな事言ってたけどやっぱり気が引けるじぇ……そうだ!)

京太郎「じゃあいただき……」

優希「ちょっと待った!」

京太郎「ん?」

優希「京太郎、ポッキー一本借りるじぇ」

京太郎「別にいいけど、何かするつもりか?」

優希「……」パクッ

京太郎「食うのかよ!」

優希「……///」ドキドキ

京太郎「……なんでくわえたまんまなの、お前」

優希「んっ……」クイッ

京太郎「……」

優希「……」ジー

京太郎「……」パクッ

優希「!」

京太郎「……」サクサク

優希「~~~~!」サクッ

京太郎「……」サクサク……チュッ

優希「あっ」

京太郎「……おい、優希」

優希「ど、どうだ! 美味しかったか!」

京太郎「味なんかわかるか! なんだ、この拷問に等しい行動は!?」

優希「物が市販なら食べ方を工夫するしかないだろう!」

京太郎「だからってポッキーゲームやらかすか普通! 誕生日の時には
タコスで同じ事してきたけど、なにお前これ気に入ったの!?」

優希「……えっ///」

京太郎「否定しろよ、おい!?」

優希「だ、だって嫌じゃないし……京太郎は嫌だった?」モジモジ

京太郎「……お前絶対わざとだろ」

優希「……///」パクッ

京太郎「聞く耳持たずかよ……」

優希「……///」ジー

京太郎「ぐっ……ああ、もうわかったよ、やればいいんだろやれば!」パクッ

優希「……」ニコッ

京太郎「っ!」

----


優希「んっ、ん……」

京太郎「っ、はっ……」

京太郎(……ポッキーはとっくになくなったのになんでまだこんな事してんだ?)

優希「京太郎ぅ……」

京太郎「……!」

京太郎(……しょうがないんだよ。 だってほら、俺達お互いに中毒だし? 禁断症状でお互い求め合うのも仕方ない話……)

優希「京太郎……」スリスリ

京太郎「……」


京太郎(むしろこんな状況でもキス以上はしない俺を褒めて……いや、褒めるような相手はここにはいらないけどさあ)

京太郎「満足、したか?」

優希「ん……」

京太郎(どうやら助かったみたいだな……危ない危ない、これ以上やってたらさすがに理性が焼き切れちまうっつーの)


優希「そういえば京太郎、私の分のチョコは?」

京太郎「ああ、たしかに用意してたな……ちょっと待ってろ」

京太郎(色気から食い気に戻ったみたいだな……ったく、あいつのそういう顔は未だに慣れねえよ)

京太郎「あったあった」

優希「あ」

優希(京太郎の口の端にチョコレートが残ってる……)スッ

京太郎「うわ、だいぶ溶けてきてんな。 悪い優希今から作り直し--」






優希「んっ」ペロッ

京太郎「」プチッ……

優希「チョコレート残ってたじぇ。 全く子供だな京太郎は」

京太郎「……」

優希「京太郎?」

京太郎「!!」グイッ!

優希「えっ……」ドサッ

京太郎「……」

優希「きょ、京太郎? どうしたんだ急に……」

京太郎「優希……」

優希「……!?」

優希(な、なに……京太郎、なんか変……)

京太郎「お前もチョコレート、ついてるぞ」ペロッ

----


優希「ひゃっ!? い、いきなりほっぺた舐められたらくすぐった……」

京太郎「ここにもついてる」

優希「ひうっ!」


いきなり自分を押し倒した挙げ句、頬を舐めてきた京太郎に軽い抗議の声をあげる優希。

だがいつもなら何かしらの答えを返してくれる京太郎がその声を無視して
今度は唇に舌を這わせてきた事で、優希が押し倒された直後に抱いた小さな違和感は瞬く間に大きな物となった。


優希(く、唇舐められ……や、京太郎、やっぱり変……!)

京太郎「ここにも、ここにもついてる……」

優希「ひゃあんっ!? う、嘘つけ、首筋になんかついてるわけ……あっ!」


どう考えてもチョコレートなどつくはずがない場所を舐めてきた京太郎に待ったをかけるように、優希が京太郎の胸に手を当てる。

しかしただでさえ男と女、さらに圧倒的な体格差がある2人の間ではそんなか弱い抵抗など何の意味もありはしない。

京太郎は優希の精一杯の反抗に微笑ましいものすら感じながら……【ソレ】を手に取った。

京太郎「しょうがないだろ、ついてるもんは……」クチャッ

優希「っ!?」

京太郎の指が肌を滑った瞬間、優希は近くに甘い香りを感じ取る。

京太郎の指を見ればそこに付着していたのは自分の肌と同じ甘い香りを放つ茶色いお菓子。

京太郎が優希の為に作ったチョコレートが、1日中放置されたせいで
プレゼントとしては使えなくなっていたソレが、京太郎の手によって優希という皿に盛りつけられているのだ。

優希「ちょっと待つじぇ京太郎、なんでチョコレート塗っ……あうっ!」

優希の言葉は最後まで空気を震わせる事なく、小さな悲鳴へと還元される。

チョコレートを塗った優希の肌に京太郎が再び舌を這わせたためだ。

京太郎「なんのことだ? ここにチョコレートがついてるのはお前がこぼしたからだろ?」カプッ……

優希「あっ、み、耳噛んじゃ、や……」

白々しく優希に責任を押し付けた京太郎は優希の肌にチョコレートを擦り付けながら、耳朶を甘噛みする。

羞恥からか真っ赤に染まった耳朶にそっと歯を当てれば優希はいやいやするように
首を振り、常の彼女からは考えられないような弱々しい声をあげた。

京太郎「まだついてるみたいだな……全くこんなに散らかしてどっちが子供なんだか」グイッ

優希「はうっ!? や、やだ服……」

その声が情欲にさらなる火をつけたのか、今まで顔や首筋など露出している部分にしか
触れてこなかった京太郎が優希の服を胸元近くまでめくりあげる。

露わにされた子供のように瑞々しい肌をした腹部にチョコレートをかけると、
ザラザラした感触を理解させるかのようにじっくりと舌を動かしていった。

京太郎「ここも甘いな……もしかしてお前砂糖で出来てんのか?」

優希「そんな、わけない……はっ、ぁっ、っ……!」

京太郎「どうだか……」

京太郎はめくった服をそのままに今度は優希の指に目を付ける。

絆創膏の貼られた指、京太郎へ贈ろうとしたチョコレートを作るためについたいくつもの傷跡。

京太郎「はむっ……」

優希「ひゃん!」

故に京太郎はその一本一本を、先から付け根まで丁寧に慈しむように愛撫する。

この時にはもう、優希はなすがままに声を出すくらいしか出来ずにいた……

京太郎「ん……」

優希「あっ……」



どれくらい時間が経ったか……指への丁寧な愛撫は他とは比べものにならない時間をかけたため、
どちらも時間感覚が麻痺して思考もあまり出来ない。

優希「終わった、のか……?」

目を潤ませて、息を小さく乱して、真っ直ぐ京太郎を見つめながら優希は問う。

やっと解放されるという安堵が少し、もう終わってしまうのかという未練がほとんどを占めるその問いに……
京太郎はチョコレートを塗りつけた指を差し出す事で答え、

優希「あ……」

差し出された指を眺めていた優希は、一泊遅れて京太郎の意図を察した。

優希「かぷっ……」


それはさっきまでとは逆転した光景、京太郎の指を今度は優希が口に含み舌を這わせる。

ところどころについていたチョコレートの影響か、それとも優希が出来上がっているためかその指は酷く、甘い。

優希「はぷっ、ちゅっ……」

京太郎「っ……」

お返しとばかりに指を弄ぶ優希に京太郎の背筋がゾクッと震える。

目を潤ませ、半分とろけせながら自分の指を一心不乱に舐める優希。

間違いなく今の優希は艶やかで、少女から女の顔を覗かせていて……
そんな彼女を征服しているようで心がざわついてしょうがないのだ。

優希「はっ……」

京太郎「……どうだった?」

優希「……甘すぎるじぇ」

優希が京太郎より長い時間をかけて指を舐め終える。

京太郎の軽い気持ちでの問いかけに眉をひそめて答えると、優希は浮き上がっていた身体を再びカーペットに沈めた。

優希「京太郎、これで終わりか……?」

優希にはまだなんでこんな事になったのかという疑問はある、熱を持った自分自身への戸惑いもある。

だが一見すれば先ほどと同じこの問いには、そんな意味は全くない。

京太郎「まだだな……だって」

京太郎もそんな事わかっていて、それでも茶番のように掛け合いを続ける。

京太郎「口の中に、チョコレート残ってるだろ?」

こんな事でもしなければきっとまともにお互いを見る事すら叶わなかったから。

----


優希「んっ、んうっ……」

京太郎「んんっ……」

お互いの口の中に残ってるチョコレートを舐めとるため、というのはとっさに出た
口実なのか茹で上がった頭で必死に考えた言い訳なのか……

既に熱が入っている2人には関係ない話だったのかもしれない。

優希「ふぁ……んんっ」

京太郎「んむっ……」

舌で相手の歯列をなぞり、時には舌同士を絡め合い、お互いを求め合う。

時折隙間から零れ落ちる唾液はどちらのものか、もう本人達にもわからない。

優希「はっ…ぁ…」

何回も角度を変え余すところなく舌で口内を蹂躙し、漏れ出る甘い吐息は強い熱を帯びて、2人の興奮を高めていく。

優希「ひょうたろー……」

京太郎「優希……」

そして呂律も回らなくなり、舌で感じ取る口内どころか、周りに漂う空気さえも
甘く香るような錯覚を覚え始めた頃……優希の方が限界を迎えた。

優希「んんーーっ!!」ギュウウウ……

京太郎「!?」

強く痛いくらいに京太郎にしがみつきながら、優希は身体を震わせ、時々ビクッと大きく跳ねさせる。

フラッと後ろに倒れそうになる優希を京太郎が支えると同時、2人の間から伸びた銀色の橋がプツンと切れ、空気中に霧散した。

京太郎「はぁっ、はぁっ……」

優希「ぁ……ふっ……」

限界のさらに先まで走り抜けたようなキスを終えて2人は荒く息をつく。

そしてこの時小さな胸を上下させながら、
唾液やら涙やら汗やらその他色々な液体が明かりに照らされてキラキラと
輝いてる優希を見ていた京太郎は幸運なのか不幸なのかはわからないが……

京太郎「……やっち、まった」

熱に浮かされた状態の頭を元に戻す事に成功した。

----


京太郎「すみませんでしたあ!!」ドゲザ

優希「……」

京太郎「いや、ほんと調子に乗ってました。 色々やらかしたけど何卒お許しを!」

優希「……変態」

京太郎「ぐっ!?」

優希「やだって言ったのに色んなところ舐められて、触られて、指舐めさせられて、挙げ句の果てに、あんな……」

京太郎「ごめん、本当にごめんなさい!」

優希「私だって色々してきたけど、それ以上に恥ずかしい目にあわされたじぇ……」

京太郎「ううっ……」

優希「……だけど」

京太郎「?」

優希「……最後の方は、いやじゃなかったじょ」

京太郎「へっ……」

優希「~~~~///」

京太郎「優希……」

優希「な、なんだ!」


京太郎「お前、すっげえかわいいな」


優希「ーーっ! うるちゃいバカ犬!」ポカポカ

京太郎「いや、ほんとかわいいわ。 さっきのエロい表情もいいけど今のお前も最高だ!」

優希「反省してないだろ、京太郎のバカー!///」

--翌日--


優希「京太郎、遊びに来たじぇ!」

京太郎「おぉ、待ってたぜ優希。 ほら座れ座れ」

優希「じゃあ失礼して……やっぱり京太郎の膝はいいイスだな!」


モブA「元に戻ってる……」

モブB「むしろバカップル度が上がってる……」

モブC「なんという事だ……」


咲「あっ、京ちゃん、優希ちゃん」

京太郎「よぉ、咲」

優希「こんにちはだじぇ、咲ちゃん」

咲「その様子だと昨日は上手くいったんだね、優希ちゃん」

優希「えーっと……うん」

咲「あれ? あんまりいい反応じゃないね?」

優希「昨日は咲ちゃん達と別れてから色々あったんだじぇ……」

咲「……京ちゃん、なにしたの?」

京太郎「知らん、俺は何も知らん!」

咲「ふーん……」

優希「あっ、でも……昨日はとっても甘い甘いバレンタインだったじぇ!」

咲「……京ちゃん」

京太郎「そんな生温かい目で俺を見るな!」

咲「……まあ、いいや。 ところで京ちゃん、優希ちゃん」

京太郎・優希「んっ?」

咲「私のチョコどうだったかな? 感想を聞かせてほしいんだけど……」


京太郎・優希「…………あ」

京太郎・優希(すっかり忘れてた……)


カン!

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最終更新:2013年11月24日 18:44