http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1367145111/



 

「はい、これ御札と取替え用の包帯ね。」


「ありがとうございます、巴さん。」


「気を付けて行って来てね。」


「ん。」


巴さんから必要な物を受け取って言葉を交わすが……

俺の横でポリポリと音を立てている春が何故か応えた。

今は空港まで向かうタクシーに揺られながら春と会話をしている。
 


京太郎「なぁ春、良子さん何か言ってなかったか?」

春「何も。」

京太郎「そうか……春、お前俺に付いてきて良かったのか?」

春「ん、京太郎一人だと何かと不便だと思うから……」

京太郎「それにしても良子さんに何やらさられるか分かんないのに剣がないのは心許無いな。」

春「京太郎が折ったのが悪い……」

春「剣を打って貰うのにもお金と時間は掛かる……」

京太郎「んなこた解ってるよ。」


剣という単語を発して一人ゴチる。

大蛇から出た剣、そしてそれを神懸りして出した剣。

熟(つくづ)く縁があると思う。
 


春「? どうしたの。」

京太郎「いや、大蛇に止めを刺した剣と縁があるなって思ってさ。」

春「? 本物じゃないんじゃ?」

京太郎「霊格だけは本物だよ。」
 

京太郎「それと九面神全部言ってみてくれ。」

春「? 良いけど……」

春「邇邇藝命、天児屋命、布刀玉命、天宇受売命、伊斯許理度売命、玉祖命……」

春「それと思金神、手力男神、天石門別神……」

京太郎「そ、天孫降臨の九柱だ。」

京太郎「で、邇邇藝命(ニニギニノミコト)が三種の神器を受け取ったわけだが……」

京太郎「八尺瓊勾玉、八咫鏡、天叢雲剣の中の天叢雲剣は別名草薙の剣。」

京太郎「ウチの主祭神が八岐大蛇を退治した時に尾から
出てきた剣なんだがそれを姉である天照大神に献上した後は孫に渡った訳だ。」

京太郎「何か縁を感じてなーって。」

京太郎「そう思っただけだ。」

春「ウチ(霧島神宮)と京太郎のおじさん側の実家の縁……」

春「ニニギの父神である天忍穂耳命は天照大神と須佐之男命の誓約の際……」

春「須佐之男命が天照大神から受け取った玉を噛み砕き、吹き出した息の霧から生まれた……」

春「確かに縁が無くもない……」
 


そんな話をしながら空港から空の便に乗って大阪まで向かった。

着いた先では記憶の中より大人っぽくなった良子さんとニコニコした女の人が車で迎えに来ていてくれた。


良子「ロングタイムノーシー、ハル、京太郎。」

春「ん。」

京太郎「お久しぶりです。」

京太郎「ところで良子さん、そちらの人は?」

郁乃「私は姫松高校麻雀部で監督代行やっとる赤阪郁乃です~、よろしくな~。」


実はこのとき若干警戒していた。

身内の出迎えに赤の他人が入るということは依頼人か若しくはその関係者だと睨んでいたからだ。
 


京太郎「良子さん、赤阪さんってもしかして依頼人とかですか?」

良子「ノーウェイ、彼女は私の知り合い。」

郁乃「も~そんなに警戒せんとってぇな~。」

京太郎「でも俺たちに関係ない赤阪さんがいるってことは何か頼む気でしょう?」

良子「……あ~……イグザクトリー……」

良子「でも大したプロブレムでもない……かなー?」

春「気になる……」

良子「大丈夫、ハルはノータッチな話だから。」

京太郎「ということは俺か……俺、腕骨折してるんですけど……」

良子「片手動けば十分、のはず。」

郁乃「ささ、はよ車に乗って~。」


赤阪さんが運転する車に乗ってとある場所に向かった。

 


――その頃鹿児島――


パタパタと足音を立てて歩きながら人を捜す少女が一人。

うろうろとうろつき、きょろきょろと見回す。


小蒔「京太郎く~ん。」


部屋の戸を開けて声掛けしてはまたパタパタと歩き回る。


小蒔「京太郎くーん。」


しかし捜せど捜せどお目当ての人物は見当たらない。

やがてそんな声を聞きつけたのか彼女の父親がやってきた。

 


神代父「どうしたんだ。」

小蒔「あ、お父様……京太郎君を見ませんでしたか?」

神代父「なんだ、知らなかったのか。」

小蒔「?」

神代父「京太郎君なら今朝方、大阪に旅に出たぞ。」

小蒔「………………」

小蒔「どういうことですか!?」

神代父「どういうことも何も彼が急に大阪に行くと言ってだな……」

小蒔「私そんな事聞いてません!」


ぷんすかと音を立てて怒る彼女の声が境内中に響き渡ったそうな。


――――――――――


車が止まり、赤阪さんが目的地に着いたことを告げてきた。

姫松高校。

確か咲達と当たった高校。

インハイ二回戦では小蒔ちゃん達とも当たった高校。

俺たちはその校舎の一角にある部屋へと案内された。


郁乃「ただいま戻ったで~。」

「お~お帰りなさ……代行、その人たちは……?」

郁乃「なんや~末原ちゃん、知っとるやろ~?」

「いやまぁ、確かに知っとるといえば知ってますけど……」

「何でここに?」


そんなもの正直俺が聞きたい。

末原さんという人が戸惑っていると後から赤毛の女子が割って入ってきた。
 

「お~なんやなんや~?」
 

京太郎「えっと確か、春や竹井先輩と当たった……」

洋榎「大阪で一番イケてる女子高生こと愛宕洋榎とはウチのことやでー!」

洋榎「それにしてもなんや? ウチのファンか、かー! モテる女は辛いわー。」

京太郎「一言もそんな事は言ってないです。」

洋榎「なんやノリ悪い兄ちゃんやなー。」

京太郎「ノリとか知らないですし。」

春「祝詞は知ってるのに……」

洋榎「なんやダジャレかい!」

洋榎「ってあんた鹿児島の……」

春「滝見春、久しぶり。」

洋榎「久しぶりやな、この兄ちゃんってもしかしてあんたの彼氏?」

京太郎「ただの親戚です。」

恭子「あの、主将?」

恭子「この金髪の人は……?」

洋榎「知らん!」
 

なんじゃそりゃ、そう思いもしたが俺が名乗ってないことを思い出した。

気を改めてきちんと自己紹介することにした。


京太郎「自己紹介が遅れました、元清澄高校麻雀部の須賀京太郎です。」

恭子「きよ……すみ?」

洋榎「なんやにーちゃん清澄やったんか。」

京太郎「ええ、元ですが。」

恭子「アカン……」

京太郎「あの、この人どうしたんですか?」

洋榎「あー……恭子ちょっと清澄がアカンねん。」

 


――――――――――

咲「ここどこぉ……」

咲「霧島神宮ってどこ……」

「あら? あれは確か……」

咲「京ちゃんはどこ……グスッ……」

「もしかして宮永さんですか?」

咲「ふぇ? あ、はい……」

「いきなり失礼しました、私、花田煌と申します。」

咲「あ、優希ちゃんや和ちゃんの先輩の……」

煌「はい、何かお困りのようでしたから。」

咲「すみません、その……道が分からなくて……」

煌「それは大変でしたね、どちらまでですか?」
 


咲「霧島神宮へ……」

煌「……はい?」

咲「多分近くまで来てるはずなんですが……」

煌「ここ、福岡ですよ……」

咲「お、同じ九州だから近い……ですよね……?」

煌「道……教えますから……」

咲「ご迷惑おかけします……」


――――――――――


洋榎「それよりガースーは麻雀部なんやろ? こっちでウチと打とうや。」

京太郎「俺、麻雀めちゃくちゃ弱いですよ。」

洋榎「またまた~、清澄やったら打てるやろ。」

春「実力で言えばうちの姫様(素の状態)レベル……」

洋榎「姫様? 誰なん?」

良子「鹿児島の神代小蒔のことですねー。」

洋榎「神代(インハイ)レベルか! めっちゃ燃えてきた!」

春「うん、姫様(素の状態)レベル。」

京太郎「露骨な情報の齟齬が見える!」

洋榎「早速打つで!」

京太郎「ちょっとまって!?」


俺は引きずられて強引に卓に着かされた。

上家に愛宕さん、対面に眼鏡のおもち美少女、下家に先ほどの末原さんが座ってた。

春は俺の後ろでポリポリと咀嚼音を立てている。
 

洋榎「そういえばガースーや滝見て踊ったりできるん?」

京太郎「踊る?」

洋榎「ほら、神社とかで巫女さんとかが踊る奴あるやん。」

京太郎「神楽ですか?」

洋榎「そやそや、それや。」

春「私はたまに奉納舞を手伝う……」

京太郎「俺は一般的な奴じゃないですけど親父から叩き込まれました。」

洋榎「はぇ~すごいなー、今度見せてぇな。」

京太郎「怪我してるので。」

春「私は一人じゃ出来ない……」

恭子「何で怪我したん?」

京太郎「ちょっとした事故に巻き込まれまして。」

京太郎「そんなわけで今は舞えません。」

洋榎「そんなけち臭い事言わんといてぇな……」

「お姉ちゃん……いきなり失礼やで……」

恭子「そうですよ。」

洋榎「んなこと言われても見たいもんは見たいやん……あ、それロン、5200な~。」

京太郎「やべ……」


そのあとズタボロにされてラスになった。
 

洋榎「なんやガースーよわよわやんけ。」

京太郎「だから言ったでしょう。」

洋榎「誰や! 神代小蒔レベル言うたんは!」

春「嘘は言ってない。」

京太郎「でも意図的に隠したよな?」

春「なんのことやら……」

絹恵「ところでその人誰なん?」

京太郎「あ、須賀京太郎です、何故ここにいるのかも不明な元清澄の麻雀部員です。」

絹恵「ウチの自己紹介まだやったね。」

洋榎「ガースー麻雀部員ってほんまなん? 明らかに初心者の域やで?」

絹恵「ちょっとお姉ちゃん!? 人が自己紹介してる時に話に割って入らんといてや!」

恭子「あはは……相変わらずですね……主将は……」
 


洋榎「ええやんええやん、で……どうなん?」

京太郎「ああ、清澄ではずっと雑用やってました。」

洋榎「……マネージャーなん?」

京太郎「あはは……違いますよ、一応。」


そうやって自虐めいて言う。

『元』という言葉を強調するのも、もう関係ない人間だと周りに言う為、自分に言い聞かせる為。
 

郁乃「絹恵ちゃん、洋榎ちゃんお迎えやで~。」

洋榎「なんやなんや~? またウチのファンかいなー?」

雅枝「何言うとんの。」

洋榎「げ!? オカン!? なんでここに!?」

雅枝「『げ』ってなんや、『げ』って。」

雅枝「折角あんたらどんな具合か見に来てやった言うんに。」

雅枝「今晩ひろだけ唐揚げ抜きやな。」

洋榎「そ、それはなんというか言葉の綾やねんて!」

絹恵「お姉ちゃん……唐揚げ一つにどんだけ執着持ってんの……」

雅枝「ところで、ひろにきぬ、あんたらあの子と打ったんやろ、どやった?」

絹恵「いきなりなんなん? お母さん。」

雅枝「なんか感じるもんなかったん? 特に金髪の子の方。」

洋榎「滝見の方はまぁ中々の打ち手やけどガースーはズブのド素人中のド素人やで?」
 

雅枝「ふむ……なるほどなぁ……まぁええわ。」

洋榎「いきなりなんやねん?」

雅枝「気にせんといてええ、こっちの話やから。」


何か愛宕さんたち三人がこそこそ話が終わったかと思ったら妙な提案をしてきた。

雅枝「あ~……赤阪さん、千里山で打ってくれる子を一人か二人ほどに連れて行きたいんやけど。」

郁乃「あら~そんなん急に言われてもな~うちの子たちを流石に貸す訳には~……」

郁乃「あ、居たやないの、うちの部の子じゃない麻雀部が~。」

京太郎「赤阪さん白々しいです。」
 

洋榎「なんや! ガースー出陣か!?」

京太郎「そうみたいですね。」

洋榎「せやったらうちも付いてったってもええで!?」

雅枝「あんたはいらん。」

洋榎「なんでや! たまにはうちも別の人と打ちたい~!」

雅枝「あかんもんはあかん。」

洋榎「なんやこのケチクソババァ!」

雅枝「ああん?」

洋榎「あ!? 今のはうそうそ! うちのオカンは美人で優しい世界一のオカンや!」

雅枝「……はぁ、まぁええわ。」

雅枝「須賀君やったっけ、うちに……千里山に力を貸してくれへん?」

京太郎「…………」
 

俺は少し逡巡した後、良子さんに目線を送る。

俺の目線を受けた良子さんは俺に向かって小さく頷く。

恐らくゴーサインってことだろう。

多分こちらが本題だ。


京太郎「わかりました。」

良子「私もトゥギャザーします。」

雅枝「決まりやな、ほな行くで。」

洋榎「なんや~ガースーあんまりおられんかったな~。」

雅枝「あ、せや……ひろ、あんた今日はおかず抜きやからな。」

洋榎「オカン……それだけは勘弁してぇな……」

春「黒糖……食べる?」

洋榎「……あんがと。」

春「……折角だから麻雀打つ?」

洋榎「あんた、ええやつやな……」
 


今度は愛宕さんが運転する車に揺られて千里山まで出向く。

途中車内で良子さんと会話をしていた。


良子「京太郎、ハイスクールはどうしてる?」

京太郎「もう清澄からは退学してますからね……」

京太郎「そのあと鹿児島に来てまもなくこの有様ですし。」


俺はそう言いながら折れた腕を見せた。

正直鹿児島に着いた後のことなんか考えてなかった。

周りとは今生の別れのつもりで身の回りの整理をしたわけだし。

もしかしたらお袋か小蒔ちゃんのお父さんが手続きしてくれているかもしれないがそれも未確認のままだ。

それを察したのか察してないのかは知らないが良子さんが続ける。
 


良子「進路はどうするつもり?」

京太郎「……余り考えてなかったんですけど……高校に転入させてもらうか
大検受けるかして私立の大学に行こうかと思ってます。」

良子「どこのか聞いて良い?」

京太郎「渋谷か、もしくは伊勢ですね。」

良子「国学院か皇学館……」

良子「……京太郎はおじさんの跡を継ぐつもり?」

京太郎「出来れば……まだ15歳なんでどうなるかなんてわかりませんけど。」

 


――その頃鹿児島――


自室で奮起するお姫様が一人。

旅に行く為の鞄に色々詰め込んで準備をする。


「よし! これで準備は出来ました!」

「後は霞ちゃんたちにバレ無いように抜け出せば……」

「?」


だが表に何やら不穏な空気が流れている。

少女が来訪者に気付いて身を潜めた。

来訪者はどこかで見たことのある少女だ。
 


「ここが、京ちゃんのハウスだね。」


「あら、貴女は……」


「宮永咲です、石戸さん、今日は京ちゃんを取り返しに来ました。」


「あらあら……京太郎君は今居ないわよ?」


「そんなこと言って本当は隠してるんでしょう!?」


「本当よ、今彼は大阪に居るの。」


「京ちゃんを返して、あとおトイレ貸してください……」


「……京太郎君は置いてといて……お手洗いはそこの廊下の突き当たった所を右よ。」


用を足した彼女が御手洗いから出た時、傍らから出てきた少女が声を掛ける。

それは自身の目的の為だが箱入り娘だったためか一人では心細かったようだ。
 


「ふぅ……」


「あ、あの……」


「え、えっと貴女は……神代さん……でしたっけ?」


「はい、えっと……京太郎君に会いに来たんですよね?」

「よかったら一緒に会いに行きませんか?」


「あ、はい!」



また宮永咲も心細かった。

見知らぬ土地で一人歩く事が如何に大変か思い知ったのだ。


だが二人は知らない。

お互いが危なっかしい人物である事に。

方向音痴と天然箱入り娘が交差する時、騒動は始まる。
 



――大阪――


車が止まった。

どうやら良子さんと話している間に千里山に着いたようだ。

車を降り、愛宕さんに付いて行く。

案内された場所はやはりと言うか麻雀部だった。


愛宕さんが部室に入って号令を掛ける。

どうやら俺たちを紹介するみたいだ。


「集合。」

「今日はあんたらと打ってくれる人が来たで。」


部室に居た全員が集まり、五人の女子にどよめきが立つ、少なくとも動揺している。


「はい、静かに。」

「自己紹介お願いしてもええ?」


「はい……戒能良子、一応プロフェッショナルです。」


良子さんが喋ると「やっぱり」だの「本物のプロや!」だの色めき立った声が上がる。

しかしそうなると隣に居る俺はなんなのかと疑問に思っているだろう。


「須賀京太郎です、よろしくおねがいします。」


俺は短く挨拶をした。

というよりも気の効いた挨拶をする頭の余裕がなかった。

すると愛宕さんが俺の短い挨拶を補完する様に話し出す。


「あー……須賀君はやな、元は長野の清澄麻雀部の一年で戒能プロと親戚でな、鹿児島の永水とも関わりがある子や。」

「皆仲良くするんやで。」


「「「「「はい」」」」」


部員達が揃って返事をする。

愛宕さんが少し離れたところに移り部員達が寄ってくる。

俺と良子さんに自己紹介をする為だ。

初めはノースリーブの制服を着た女子の挨拶。


「ウチは二条泉、須賀君は同い年やろ? 同じ歳同士仲良くしてな。」


「こちらこそよろしく。」


続いて眼鏡を掛けた女子の挨拶だ。


「ウチは船久保浩子、二年です、よろしゅう。」


「こちらこそよろしくお願いします。」


「須賀君清澄なんやってな、期待し取るで。」


「あんまり期待しないで下さい。」
 

素人同然の俺に何を期待しているのやら。

そんな事を思いつつ次の紹介を受ける。

学ランを羽織ったやたらボーイッシュな人だ。


「俺は江口セーラや! 今日はよろしく頼むで!」


「はい、こちらこそよろしくお願いします。」


「なんや硬いなぁ! もっと気楽でええねんて!」


「あはは……」


最後の二人がおよそ問題を抱えてる人だろう。

俺の見立てではそう感じる。

片やにこやかな笑みを浮かべて挨拶をする女子と……

片や顔色が悪く、怪訝な表情で俺を見る女子……
 


「ウチは部長の清水谷竜華や。」


「……うちは園城寺怜。」


「園城寺さんに清水谷さんですね……"今日はよろしくおねがいします"。」


二人には何かある、と言うより何か見えた。

清水谷さんの横には小さい何かが。

園城寺さんの背後にはそれより大きい何かが。
 


雅枝「自己紹介終わったんなら卓に着き。」

雅枝「戒能プロ、早速で悪いんやけど入ってもらえます?」

良子「オーケーです。」

雅枝「竜華、怜、あんたらも入り。」

竜華・怜「「はい。」」

雅枝「……須賀君はどうする?」

京太郎「俺はこの腕なんで。」

雅枝「……せやな……セーラ入れるか?」

セーラ「よっしゃ! バリバリ打つで!」

雅枝「よし、全員良く聞いてほしいんやけど。」

雅枝「本気出して打て。」

雅枝「特に怜と竜華。」

雅枝「あんたらはきっちりな。」

竜華「はい。」

怜「……はい。」


卓打ちが始まる。

その間俺は二人の見立てを付ける。

対局中、何度か園城寺さんから気配が漏れでていた。

リーチをかけてからの一発……恐らく千里眼(透視)や未来予知の類だろう。

清水谷さんは何度かぶつぶつ呟いていた。

こっちは多分小さい何かと関係あるはずだ。

園城寺さんに憑いたものに対して見当はついたが腑に落ちないことがある。

『何故俺に来させたのか』だ。

『麻雀の腕を期待して』、なんてのは娘さん方から聞いてただろうから論外。

憑いてるものから別段悪い気配もしないし、例え祓うにしても神社に行けば済む話だ。

これには何か理由があるのだと窺い知れる。
 


やがて対局が終わる。

園城寺さんはぐったりと卓に突っ伏していた。

それを気遣って園城寺さんを休ませる清水谷さん。

席を立った良子さんがこちらにやってきた。

なるべく周りに聞かれない様に小声で話す。


良子「どう? 京太郎。」

京太郎「見当は付きましたよ、多分狐です。」

良子「うん、私の見立てと同じだ。」

京太郎「でもなんで俺に?」

良子「それはまぁ……監督さんに聞いた方が良いかな。」


良子さんが目配せをすると愛宕さんが気付きこちらへやってきた。
 


雅枝「なんか分かりました?」

京太郎「ええ、まぁ。」

京太郎「ただ、一つ聞いても良いですか?」

雅枝「なんや?」

京太郎「俺たちを呼んだのって恐らく園城寺さんに憑いてるものに関してですよね。」

京太郎「でも俺たちの見立てでは単純に祓いたいなら神社に行けば良い話です。」

京太郎「それをしないのはどういう理由があるんですか?」


愛宕さんが少し顔を顰めて黙った。

言い辛い何かがあるのだろう。

少し間が空いて愛宕さんが自ら沈黙を破る。
 

雅枝「……怜の奴が行きたがらないんや。」

雅枝「あの子は体弱いくせに頑固でな、オカルトが無くなるのが嫌やったんやろ。」

雅枝「前までは三軍やった。」

雅枝「オカルトが手に入ってからは一軍になったんやけどそのせいで体長崩し気味でな。」

雅枝「インターハイでもそうや、病弱やのに無茶するから倒れてもうて……」

雅枝「病弱なのを知っていてインターハイのオーダー考えたのは私や……だから怜が倒れたのは私の責任でもある……」

雅枝「怜の事……何とかして貰えんやろか?」

京太郎「……俺は別に構いませんよ。」

雅枝「ほんまか?」

京太郎「ええ、ただ園城寺さんに了承してもらえないと俺は出来ませんよ。」

雅枝「……わかった、私らから話は付ける。」


話を聞いた愛宕さんは席を立って清水谷さんたちと話をし始めた。

隣に座っている良子さんが眉一つ動かさずに俺に聞いてくる。
 


良子「どう? 出来そう?」

京太郎「……何で俺なんですか? 良子さんでも出来るでしょう?」

良子「買被り過ぎだ、私は神職じゃない……それに万が一の事を考えて京太郎に頼んだ。」

京太郎「は?」

良子「……フォックスと言えば?」

京太郎「稲荷ですね。」

良子「稲荷と言えば?」

京太郎「伏見の稲荷神社とか……」

良子「ではそこが祀っているのは?」

京太郎「えーっと……宇迦之御魂神……」

京太郎「……あっ。」


そこまで言って気付いた。

何故一緒に来た春ではなく俺を連れて来たのか。
 


良子「最後に宇迦之御魂神のファザーは?」

京太郎「……家の主祭神ですね。」

良子「そういうこと。」

京太郎「……いつからです?」

良子「何が?」

京太郎「狐だって事前に分かってないとわざわざ俺を呼ばないでしょうよ……」

京太郎「つまり、以前に園城寺さんを見たことがあるってことですよね。」

良子「……インターハイ。」

良子「そのときに倒れた彼女を見て気付いた。」

良子「憑いてた狐が弱った身体で彼女の周りをうろうろとしてたからね。」

京太郎「はぁ……なるほどね……」


俺は溜め息を吐きながらぼやく。

何でこう俺は扱き使われるのだろうか。
 

九州は狐に関しての話が結構多い。

特に鹿児島なんかは野狐憑きの家筋が今でもいくつかある。


昔話を思い出していると園城寺さんたちがこちらにやってきた。

話が纏まったかと思えばどうやらそうでもないらしい。

 

怜「ちょっとええ?」

京太郎「いいですよ。」

怜「ウチに憑いてるのを何とかしたらどうなんねや?」

怜「病弱なん治るん?」

京太郎「率直に言うと病弱なのは治らないと思います。」

京太郎「園城寺さんの体の弱さは生来のものです。」

京太郎「一応祓えばオカルト使わない分は体力は減らないんでその分安全ですよ。」

怜「……ということは祓ったらオカルト使えんのに病弱なのは治らんのやな。」

京太郎「悪く言えばですけどね。」

京太郎「オカルトを使えば体力を消耗します。」

京太郎「無理をすれば命を落とす可能性もある。」

京太郎「例え命を落とさなくても寿命を縮めるのは間違いないですね。」

怜「やったら使わなければええねん。」

京太郎「でも園城寺さんはあればオカルト使っちゃうでしょう?」

怜「…………」


京太郎「千里眼や透視の類か、それとも未来予知かは知りませんけど。」

京太郎「人間使えるものがあると使ってしまうもんです。」

怜「……ウチに憑いてるもんて何?」

京太郎「狐ですね。」

京太郎「多分、ですけど園城寺さんが大怪我か何かで死に掛けた時に憑いたんでしょう。」

怜「そうなんか……」

京太郎「あと、清水谷さん。」

竜華「へ? ウチ?」

京太郎「ええ、清水谷さんに憑いてる小さいの……」

竜華「怜ちゃんが見えるん!?」

京太郎「……怜ちゃん?」

竜華「怜ちゃんは、ちっこい怜やから怜ちゃんや。」

京太郎「良く分かりませんけどとりあえず小さいのが一緒に居るのはわかります。」
 


怜「ウチ、実は今まで竜華の頭おかしくなったと思ってたんやけど……」

セーラ「俺もや……ちっこい怜とかなんやとか思たわ……」

竜華「ほらみい! ウチの頭は別におかしくなかったんやで!」

セーラ「すごい勝ち誇った顔やなぁ……」

京太郎「えっと、話進めても……?」

竜華「あ、ごめんな……」

京太郎「ええっと、結論から言っちゃうとその怜ちゃんとやらは園城寺さんに憑いてる狐の分霊みたいなものです。」

竜華「……分霊ってなに?」

京太郎「分霊っていうのは増えて分かれた霊のことです。」

京太郎「神社で言うなら分社とか分祀とか言いますけどね。」

京太郎「本来の分霊とかならそういうことは無いんですけど……。」

京太郎「園城寺さんのを親機、清水谷さんの方を子機って言った方が分かりやすいかな。」

竜華「ほ~……」
 


怜「竜華、あんまりわかってないやろ?」

竜華「なんとなしにはわかるんやけどな。」

怜「須賀君が言いたいのはウチのお狐さん祓ったら竜華に憑いてる怜ちゃんも居なくなる言う事やろ?」

京太郎「はい。」

竜華「でもなんで怜に憑いてたのがウチにも憑いてたん?」

京太郎「まぁ恐らくですけど……魂って人間のどこにあると思います?」

セーラ「胸ん中とかやろ?」

京太郎「実は頭なんです。」

怜「そうなん?」

京太郎「ええ、頭は考えるところでもあるから昔から魂は頭に宿ると言われてます。」

京太郎「贈り物で櫛を贈るのは『魂の宿る頭に飾るものだから自らの分身として贈る』からなんです。」

京太郎「そして神様や霊も頭に宿るんです。」

京太郎「だから頭に良く触れてる部分から清水谷さんに分霊として移ったんでしょう。」

竜華「そんなんやったのか……」
 


そこまで言い終わると傍らから溜め息交じりに声を発した人が居た。

どうやら俺の言っていることは飲み込めないという感じだった。


「はぁ~うさんくさ。」

竜華「ちょっと! 何言うてんの!? 失礼やでセーラ!」

セーラ「んなこと言うても胡散臭いやんか。」

セーラ「この兄ちゃん、金髪に私服のどこにでも居るようなやつやで?」

セーラ「しかもどう見ても俺等より年下やし……」

竜華「ちょっとセーラ! ええ加減に……!」

京太郎「別に構わないですよ、俺は正式な神職でもないし、未熟なのも否定出来ませんから。」

京太郎「疑われるのはごもっともだと思います。」

京太郎「別に祓わなくても良いと言うならそれはそれで構いませんし。」


敢えて突放す様な態度を取る。

本当に聞かないといけないことがあるからだ。
 


竜華「なんやそれ……」

竜華「怜に何か憑いとるんやろ?」

京太郎「まぁ……憑いてるといえば憑いてますが……」

竜華「やったら、はよ取ってぇな!」

京太郎「……園城寺さんに聞きたいんですけど、貴女は良いんですか?」


こういうのは本人の意思が重要だ。

本人が納得していないなら例え祓ったとしても力を欲したら再度憑いたりする。

元の木阿弥になってしまったら何回祓っても意味がない。

だから園城寺さんに聞かなければいけない。


園城寺さんは俯いたまま応える。

自分の意思で、どうしたいのかを。
 


「……いやや。」


「怜?」


「そんなん嫌や!」

「それしたら一巡先見えんようになるんやろ!?」

「そんなんなったら、以前の……三軍の時と変わらんようになってまうやんか!」


「怜……」


「ウチは竜華のように麻雀上手くない!」

「セーラのように火力も無い!」

「フナQみたいに分析や対策も出来ひん!」

「泉のように伸び代もない!」

「この力は死にそうになってまで手に入れたんよ……」

「ウチから……ウチから一巡先取ったらなんも残らんもん……」
 


俺には園城寺さんの気持ちがわかる。

力に縋る気持ち……もっと力があったら親父は死なずに済んだんじゃないかと。

過去の事に、しかも俺が餓鬼の頃に何を思っても意味は無いけど思わずに居られなかった。

だから力に縋る園城寺さんの気持ちがわかる。

それと同時に清水谷さんの言う事もわかる。

俺が無茶したせいで小蒔ちゃんやお袋に心配掛けて胸が苦しくなった記憶がある。

自分の事を心配してる時の大切な人の顔って堪えるんだよな。

特に小蒔ちゃんの泣きそうな顔とかのばつの悪さったらない。

だから両方の気持ちがわかる。

だがそれでも清水谷さんの考えは収まらない。
 

「そんなん言ったって……怜、無理するやん……」

「何言ったって怜は無茶するなら……いっそ使えなくなってまえば良い……」

「須賀君……」

「怜を……怜を助けてぇな!」

「お金が必要なら用意する!」

「それでも足りないならウチが身体で払う!」

「やから……」


「何言うてんの竜華!」


「怜は黙っててぇや!」

「須賀君……お願いや……」


「……清水谷さん、俺からの結論を言いますね。」

「答えはノーです。」
 


「なん、で……」

「なんでなん!?」

「なんで怜を助けてくれへんの!?」


「理由を言うとですね……」

「一つ、俺は清水谷さんと園城寺さんがどういう関係なのかは知らないけど、
貴女は園城寺さんに負い目を背負わせる気ですか?」

「身体で払うっていって自分の価値を安くするような行為も俺は好きじゃない。」

「一つ、これが一番重要ですが……園城寺さん本人の意思が無い。」


清水谷さんが苦虫を噛み潰したかのような顔をする。
 


「そんなん言われても怜はうんとは言わへん……」

「やったら無理矢理にでも祓ってもらうしか……」


「そこんところの説得は俺に任せてもらえませんか。」

「その後の交渉は清水谷さんに任せますんで。」


「…………わかった。」


渋々と言う感じが否応無しに伝わる。

俺は園城寺さんに向き直って交渉をする。
 


「園城寺さん。」


「なんや、祓うんやったら嫌やで。」


「まぁ話を聞いてください。」

「俺もはっきり言って麻雀弱いですからオカルトとかに憧れますよ。」

「それに麻雀とは別のところで力を求めた事はありますし。」


「せやったらウチの気持ちわかるやろ?」


「ええ、そしてその結果無茶して倒れた事も死に掛けた事もありますよ。」


「…………」
 


「……園城寺さん、貴女は母親や大切な人が自分のことで泣いている所見たことありますか?」


「…………ある。」


「だったらわかるでしょう……あんなにバツの悪いものは中々無いですよ。」


「せやけど……ウチは……」


「まぁ別に俺はオカルト全部無くせって言ってる訳じゃないですし。」


「へ?」


「単純に制限を掛けるんです、憑いてる側の方で。」

「そしたら否応無しに使う頻度が限られて体の負担も減ります。」


「そんなん出来るん?」
 

清水谷さんが話に乗ってきた。

多分この人が一番ここからの交渉に向いているだろう。


「出来ます、けど事前に交渉しとかないといけないんです。」


「なんの交渉や?」


「えっとつまりオカルトを使うのを半荘中何回までにしますか?ってことです。」

「園城寺さん、何回に絞ります?」


とりあえず聞いてみたが園城寺さんが恐る恐る述べる。


「……一巡先20のダブル2回。」


園城寺さんの発言にぴくりと反応した清水谷さんが物申してきた。

そしてそれに対して園城寺さんが反論、もうこうなってしまったら二人の交渉問題だ。
 


「怜、多い、半荘一巡一回のみや。」


「少なすぎや、一巡15のダブル1。」


「一巡2回。」


「全然増えてへんやん! 一巡12のダブル1回!」


「怜こそなんでそんなに使うねん!? 一巡3回だけや! ダブルは絶対アカン!」


「ダブルはどうしても使わなアカンときがあるねんて!」


完全に蚊帳の外になってしまったので二人の交渉を見ながら江口さんに聞いてみる。


「……こういう場合大体どうなるんですかね?」


「こういう場合は最終的に怜が折れるんがいつも通りやな。」
 

慣れた光景だと言わんばかり落ち着き払った江口さんを尻目に二人のやり取りを見ていた。

ギャーギャー喚いていた二人がやがて落ち着き、交渉は終わる。


「終わりましたか?」


「一巡先は半荘4回まで、ダブルは一日1回になった。」


「園城寺さん、見事なフェイスインザドアですね。」


「なんのことやらわからんな~。」


「? 須賀君どういうことや?」


「園城寺さんは交渉で有利になる為に最初に吹っ掛けたってことですよ。」


「んな!? 怜!」


「もう決まったことやからええやんか。」

 


一度決まったことは決まった事と園城寺さんは断じて話を進める。

清水谷さんは納得行ってない顔だったが構わず進める。

ただ、一つだけ園城寺さんに聞くのを忘れていたことがあった。


「園城寺さん、結構重要なことを聞き忘れていたんですけど……真面目に答えてくれますか?」


「……ええよ。」



「園城寺さん、貴女は神様を信じますか?」



「……今更やわ……信じとるよ。」

「だってうちを助けてくれたのってお狐さんやろ?」

「やったら信じない理由はあらへん。」
 


「そうですね、わかりました。」

「それじゃあ、今からやりますね。」

「……そうだ、清水谷さん。」


園城寺さんにしてやられた事に気付いた清水谷さんがむすっとした顔をしている。


「……なんや。」


「さっき言った理由の一つを言い忘れてたんですけど……」


「…………理由、まだあるん?」


「最後の一つ、俺は正式な神職でも専門職じゃない。」

「だからお金なんて要りません。」


「…………」

 


さてここからは俺の出番だ。

開いているところを借りて鞄から白衣を取り出し着替え始める。

今回は大蛇と戦った時みたいに朱色の手袋とかを着けなくても良いから気が楽だ。

浄衣に着替え終わると手と口を濯ぎ部屋へ向かう。

園城寺さんを椅子に座らせ、その前に台を置き、その上に小さな鏡を園城寺さんに向けて置く。

俺はその向かいに立ち、準備を終わらせる。


「園城寺さん、これから始めます。」


園城寺さんはこくりと頷いたのを見て、俺は二拝し懐から紙を出し、それを読み上げる。


『祓ひ給へ 清め給へ』

『守り給へ 幸へ給へ』


これを三回読み上げた。

読み終わると頭の中に声が響き渡る。
 

《大体話はわかっておるが童から直接用件を聞いておこう。》


(はい、これから宇迦之御魂神の御使いと交渉しようと思います。)

(その際ですが交渉のお手引きをお願いしたく……)


《そのくらいなら構わん。》


二拝二拍一拝を行い終わらせる。

神様と交信(神)して神懸かった状態になった。

がたりと物音が鳴る。

多分分かる人には分かるのだろう。

周りの状態など構わず俺は手に持ってた紙を仕舞い、もう一度二拝して新たな紙を懐から出して読み上げる。

 


「掛巻も恐き稲荷大神の大前に」

「恐み恐みも白く」

「朝に夕に勤み務る家の産業を」

「緩事無く怠事無く 彌奨め奨め賜ひ」

「彌助に助賜ひて 家門高く令吹興賜ひ」

「堅磐に常磐に命長く 子孫の八十連屬に至まで」

「茂し八桑枝の如く 令立槃賜ひ」

「家にも身にも枉神の枉事不令有」

「過犯す事の有むをば」

「神直日大直日に見直聞直座て」

「夜の守日の守に守幸へ賜へと」

「恐み恐みも白す」


奏上が終わると園城寺さんの背後からひょっこりと白い狐が姿を現した。

そこから主祭神と狐の交信が始まる。


《一つ先を巡るは四度まで、二つ先を巡るは日に一度まで。》

《それでよいな。》


(はい。)


狐もこくりと頷いた。

なんとも呆気なく終った。


《俺はこれで帰るぞ。》


(ありがとうございました。)


気配が消える。

狐は首を振って挨拶をした後、園城寺さんの中に消えて行った。

俺は二拝二拍一拝をして終らせた。

 


「お疲れ様でした。」


「終ったん?」


「ええ、これで終わりですよ。」


「なんか今後うちがすることってある?」


「出来れば家の神棚でいいので毎日お供えと御参りして下さい。」


「そんなんでええの?」


「それをするだけで園城寺さんに憑いている狐も喜びますよ。」


「そっか……これからはお供え物は油揚げやな。」


「それがいいですね。」

「あ、良子さん、俺の用事ってこれで終わりですよね?」
 


「イエス、この後は特に無いよ。」


「じゃあ先に着替えて帰りますね。」


「なんやもう帰るんか?」


「今、凄くつかれてるんで。」


「京太郎、少しウェイトしてて、私も一緒に戻るから。」


「はい。」


「須賀。」


「はい?」


良子さんが色々としている内に江口さんがやってきた。

何とも言えないが心なしか申し訳なさそうな表情だ。
 

「さっきはすまんかったな、胡散臭いなんて言うて。」

「怜になんか変な事されるんちゃうかと思ったら頭が熱くなってやな……」


「別に気にしてませんよ。」


「今度お詫びにどっか連れてったるから許してくれや。」


「期待しておきます。」


「ほなな。」


「なぁなぁ須賀君。」


江口さんとのやり取りが終わった後、清水谷さんが話しかけてきた。

何か思うことがあるのか悩んだ顔をしている。
 

「結局断られたけどさっき須賀君に身体で支払うって言ったやんか?」


「はぁ……」


「男の子ってその……大きい胸とか好きって言うやん?」


「一般的に言えばそうですね。」


「でもあっさり須賀君に断られたやん……もしかしてうちって魅力無いんかなって……」


「そんな事はないですよ、ただ俺は周りの環境が特別ですから耐性があるんです。」


「なんや……そうなんか。」


「それに俺には好きな人がいるんで。」


「へ~そんな人がおるんや……どんな人なん?」


「頑張り屋さんのおっちょこちょいな女の人ですよ。」

「俺はその人を一生護りたいと思っています。」


「その人は須賀君にそこまで思われる人なんや……」

「ええなぁ……そういう人がおるやなんて。」

「その人のためにもちゃんと守ってあげるんやで?」


「当たり前ですよ、なんたって俺は。」

「神代小蒔の守人ですから。」



【京太郎「神代の守人~霊浄め編(大阪)~」】


カン


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--
-



「さて、これからどこに行くんですか?」


「奈良で温泉に浸かろう。」


「なんでまた……奈良の温泉に……」


「リフレッシュの為だよー。」


(胡散臭い……)

「あれ、春はどうするんですか?」


「後で合流。」

「それより京太郎、良く誘惑に勝ったね。」


「ああそれですか。」

「清水谷さんにはまだ果実が青いって言っておきました。」

(清水谷さんには霞さんとか小蒔ちゃんとか春や良子さんのを見てたから耐性がついてたって言っちゃったけど……)

(一部例外はいるんだよな。)


――――――――


「ひくちっ!」


「あら、もしかして風邪かしら?」


「きっと誰かが私の悪口を言ってるですよー。」






-おまけ-



嘘予告


「駆逐してやる!! 悪鬼をこの世から……一匹……残らず!!」


――――――


「やかましいぞ貴様等!」


「優希ちゃんが放屁した音です。」


「じぇ!?」


唐突の濡れ衣!


「また貴様か……」


「!!」


予想外の納得?


「少しは慎みを覚えろ。」


特に理由の無い中傷が優希を襲う!
 

「京ちゃん、私アイドルやるね。」

名前:さきりん
身長:ちょっと小さい
リーチ:王牌まで
体重:ヒミツ☆
趣味:京ちゃん 特技:戦意を削ぐ事
長所:やると決めたらまっすぐ☆
短所:嫌いな人をすぐカンしちゃうところなど、
   意外とおっちょこちょい☆
所属:清澄麻雀兵団アイドル部隊


血飛沫舞い踊る圧巻のパフォーマンス!!

すべての巨乳を魅了せよ!!


かくして人類の命運は最強の麻雀エンターテイナーに託された。