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清澄高校麻雀部

ガチャッ

京太郎「ふぃー、疲れたぜ―」ドサッ

咲「あっ、京ちゃんおかえり」

まこ「買い出しご苦労さん」

京太郎「いえいえ、これも部のためですから」

優希「それでこそわたしの犬だじぇ」

京太郎「誰が犬だ。それより今卓空いてる?」

和「ごめんなさい。今から私とゆーき、宮永さんと染谷先輩で打つので…」

京太郎「そっか……じゃあ俺はいつも通りネトマでもやるか…」

久「あっ、須賀君今手空いてるなら、 この書類整理手伝ってくれない?」

京太郎「あ、はい…分かりました」

久「あとこれ終わったら、もう一回買い出しに行ってくれない?」

京太郎「ええっ!? 今行ってきたばかりじゃないですか」

久「今週の金曜に、急きょ四校合同合宿をすることが決まってね……
   色々と必要になっちゃったのよ」

まこ「まあこれも麻雀部のためじゃ、頑張りんさい」

京太郎「はぁ…」

そして二時間後、大量の荷物を抱えて京太郎は麻雀部に帰還した。

京太郎「くそー、一日に二回も買い出しなんて…」

ガチャッ

京太郎「ただいまみんな…」

久「―――では、今日の部活はこれまで! 解散よ」

優希「終わったじぇ! 咲ちゃん、のどちゃん、帰りにタコス食べよー?」

和「またですか」

咲「あはは…」

まこ「おっ、京太郎帰っとたんか」

久「お疲れー。今日はもう終わったから、そこに荷物置いて帰っていいわよ」

京太郎「………はい」



そして四校合宿当日

予算の少ない清澄高校は徒歩で会場へと向かっていた。

京太郎「ゼェ…ゼェ…クソ重いぜこの荷物……」ヨロヨロ…

久「須賀くーん、遅れてるわよ―!」

優希「何やってるじぇ犬~! 置いてくじょー?」

京太郎「ハァ…ハァ…今行くよ!!」

京太郎(こんな重い荷物しょってまともに歩けるわけねーだろっ!)

京太郎(とはいえ、今日の合宿は楽しみだ。なんせ俺以外は全員女子だからな……)

京太郎(いつもロクに牌に触らせてもらえず、雑用ばっかりで
パシリ同然の扱いだけど、それに耐えてきた甲斐があったというもの…!)

まこ「お、ここか…」

優希「着いたじぇ~」

京太郎「やっと…やっと辿りついた……」バタンッ

久「さ、みんな入りましょう。 あと須賀君、今日はお疲れ様。
その荷物を私たちの部屋まで運んでくれたら帰っていいわよ」

京太郎「へっ?」

まこ「言ってなかったかのぅ? さすがにこの年頃の女子と男子が
ひとつ屋根の下というのはマズイんじゃ」

和「わたしたちだけならともかく、他の学校の方もいますし…」

久「ごめんね、須賀君にもおみやげ買ってきてあげるから」

優希「じゃあ達者でな、犬!!」

京太郎「………」



先に来ていた風越と龍門渕に続き、鶴賀の面々が遅れて到着し、
四校合わせて二十人全員が、旅館の玄関ホールに集合した。

久「さて、本日はお集まりになっていただきましてまことに…」

透華「堅っ苦しいあいさつは抜きでお願いしますわ!」

久「あらそう? じゃあさっそくみんなで行きましょうか」

ゆみ「行くってどこに?」

久「決まってるじゃない! 温泉よ!」

ワイワイ キャッキャッ

優希「ふぅー、気持ちよかったじぇー」

和「そうですね」

久「ではこれから自由時間にしたいと思いますが…」

一同「異議なーし」




鶴賀の部屋

妹尾「いいお湯でしたねー」

モモ「先輩、これから一緒に露天風呂行きませんか?」

ゆみ「ああ、いいぞ」

蒲原「ワハハ―、仲がよろしいことで。 佳織、ちょっと外に散歩しに行かないかー?」

妹尾「いいよ智美ちゃん」

睦月「あ…じゃあ私はここにいますね」


バタンッ

睦月「みんな出て行ったか…」

睦月(一人売れ残るのはやっぱり寂しいな…)

ゴロッ

睦月は畳に寝転がると、仰向けになって天井を見つめた。

睦月(みんなが戻ってくるまで、天井の染みでも数えようか…)

ドスッ

睦月「!?」

ズブズブズブ…

睦月「なん…だ…これ……」

睦月の首から何かが生えてきた。銀色に光る切っ先、ナイフの先端だ。

睦月「うあ……」

ドピュウウウウウウウウウ

喉仏のあたりから、まるで噴水のようにばしゃばしゃと血がわき出ている。

睦月「か……は……」

ものの一分もしないうちに、津山睦月はこと切れた。


蒲原「ワハハー、風が気持ちいなー」

妹尾「緑がきれいだね、ここ」

蒲原と妹尾の二人は、合宿場から少し離れた森の近くを歩いていた。

蒲原「ふー、ちょっと休憩」ドサッ

そう言って蒲原は近くの木に寄りかかった。

蒲原「いやー、それにしても良かったよ」

妹尾「なにが?」

蒲原「この合宿に呼ばれたことだよ」

蒲原「あの試合が終わって、もう三年はやることがなくなったと思った」

蒲原「でもこの合宿に参加することで、また五人で活動することが出来るからさ」

妹尾「智美ちゃん、私や他のみんなも嬉しいよ」

蒲原「ワハハー、きっと一番喜んでるのはゆみちんだろうなー」

妹尾「きっとそうだね」

蒲原「ワハハー」

ヒュルルルルル……ドスッ!!


どこからか飛んできた大斧が、蒲原の顔面に突き刺さった。

蒲原「ワハ…あばば、ががががががががががっ」ピクッピクッ

まるで不気味なダンスを踊るかのように、蒲原の身体ががくがくと痙攣し始めた。
口からは壊れたスピーカーのように、同じ単語が発せられている。
異様に重くなった頭部バランスに耐え切れず、蒲原の体はその場に倒れ伏した。

妹尾「ひゃぁああああああ…」ヘナヘナ~


ザザッ

妹尾(し、茂みの奥から誰か出てきた……ナイフ持ってる!)

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…

その人物はゆっくりと佳織に接近してきた。

妹尾(あああ…体が動かない……)

スッ

佳織の喉元にナイフが押し当てられた。切っ先の冷たい感触が伝わってくる。

妹尾「た…助け……」

スパッ ブシュウウウウウウウウ……



露天風呂

モモ「先輩、せんぱーい」イチャイチャ

ゆみ「こ…こら、あんまり引っ付くなよ」

モモ「そんなに嫌っすか?」

ゆみ「いや…そういうわけじゃないが…」

モモ「ここなら誰もいませんから、恥ずかしがることないっすよ」


ゆみ「なぁモモ…」

モモ「なんすか先輩?」

ゆみ「今回の合宿の誘い……私はとても嬉しかったんだ。何故だか分かるか?」

モモ「うちみたいな無名校が、また龍門渕みたいな強豪校と
打てる機会を与えられたからっすか?」

ゆみ「それもある。だけど一番の理由は、こうしてまたお前や他の三人と
一緒に行動することができるからだ」

モモ「先輩…」

ゆみ「今回の件で気付いたんだ。私はお前や他の三人ともっと一緒にいたい。
みんなのことが好きなんだ……」

モモ「せ、先輩……私も大好きっすよー!!」ガバッ

ゆみ「うわっ、こんなところで抱きつこうとするな―!!!」

ズブシャァァァァッ!!!

ゆみ「……えっ?」

ゆみには何が起きたか一瞬分からなかった。

ピチャピチャ…

モモの腹から、鋭利な刃物の切っ先が飛び出している。

モモ「せ…せんぱ……」

ゆみ「モ…」

ズバァァァァァァァ! ブシュゥゥゥゥ……

刺さったままの刃物が振り上げられ、モモの身体がぱっかと真っ二つに割れた。

ゆみ「うわぁっ…」

グサッ

叫び声をあげる前に、ゆみの胸にも刃物が突き刺さった。



清澄の部屋

藤田「よう、遊びに来たぞ」

まこ「藤田プロまで来とったんですか?」

藤田「ここに来ればいろんなやつと打てると思ってな。個人的には鶴賀の加治木と打ってみたい」

久「そうね。まこ、悪いけど加治木さん呼んできてくれない?」

まこ「ほいほい」



鶴賀の部屋

トントン

まこ「すいませんー、加治木さんおりますかー?」

まこ「返事がない……入りますよ―?」ガラッ

シーン

まこ「あれ? 誰もおらん…」

まこ(仕方ないのう、書置きでも残していくか)

まこ「えーっとメモ帳は確かここらへんに…」

ブスッ!

まこ「ぎゃあああ!」


ドタッ

まこ「ぐあああああ、足が…」

???「ふふふっ……」スッ

まこ「お、お前は…」

???「ははっ、いい気味だ…俺と同じ空気のくせに、先輩だからって調子乗りやがって」

まこ「お前一体何を…」

???「このアイスピックを口に突っ込んでやるよ」

まこ「や、やめ…」

ドスッ ズブズブズブ……

まこ「あがっ…うがががががっ」

ビチャビチャビチャビチャ…



再び、清澄の部屋

久「まこのやつ遅いわね―」

藤田「まあこっちはこっちで楽しいが…」

池田「ツモ! 裏はめくらないでおいてやる!」

優希「タコスうまいじぇー」パクパク

藤田「ウザいのがたまにキズだな」

池田「あー楽しかったし! それじゃ華菜ちゃんは部屋に戻るし!」タッタッタッ…

優希「また来いよ―、イケダ―」

藤田「さてと、私もそろそろ行くか。次は衣に会いにいこう」

久「子供好きも大概にしなさいよ。それじゃまた明日」

ガラガラ……ピシャ!

優希「みんな出て行っちゃた。退屈だから外行ってくるじぇー」

久「はいはい、わたしもトイレ行ってこよーっと」




風越の部屋

池田「みんなー、ただいま帰ったし!!」ガラッ

池田「ってアレ? もう布団が敷いてあるし」

室内には五人分の布団が敷かれており、そのうち四つには誰かが入っていた。
どうやら池田以外の四人が寝ているようだ。

池田「やだなー、みんなもう寝るのか? いくらなんでも早すぎだし!」

池田は一番近くで寝ていた文堂の体を揺すった。

池田「おいブンドー、起きろし!」ユサユサ

文堂「………」

池田「よーし、起きないなら布団はがしの刑だ!!」ガバッ

ゴロン…

池田「…えっ?」


池田の足元に、文堂の生首が転がってきた。

池田「ひっ…ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

布団はがしの衝撃で、首のない胴体が寝返りを打つ。

池田(文堂が死んでる………アレ? ひょっとしてこれみんな……)

池田は震える手で、文堂の隣に寝ている福路の布団をめくった。

池田「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

福路「………」ダラダラ…

池田(キャプテンが…キャプテンの目が両方とも抉られてる……!)

池田「むごい……むごすぎるし…… 一体だれがこんなことを…」ガクガク…

池田(はっ! 早く警察に電話しないと!!)

バッ

池田「むぐぅ!?」

???「動くな…」

池田「ふがっ、ふいやなせっ」

スチャ

池田の首筋にノコギリが押しつけられた。

ギコギコギコギコギコギコ…

池田「ウガァッ! ムグゥ……!!」ジタバタ

ギコギコギコギコギコギコギコ…

池田「フガーッ! ムググググググググ゛…」ジタバタ

ブシュウウウウ ピチャピチャピチャピチャピチャ

池田「ガッ………」ガクッ




清澄の部屋

久「ふー、すっきりした」

久(さてと、明日のスケジュールは…)

ガタッ

久「えっ?」

久(今…確かに物音がしたわよね…?)

久「誰かいるの?」

シーン

久(……気のせいか)

グサッ!

久「うっ!」

久「痛っ…たっ、手が…」

???「もういっちょ」

ブサッ!

久「きゃぁぁぁ!」

???「両手を杭で刺されて磔け……聖書のキリストみたいですよ、部長」

久「あ…あなたは…」

???「部活じゃまるで神様気取りのあんたに散々こき使われてきた。今度はこっちの番ですよ…」

久「な、何をする気なの……」

???「まだまだ杭はたっぷりありますから……一本ずつ打ちこんでいきましょう」

久「ひっ……い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」




龍門渕の部屋

ガラッ

藤田「おーい、衣はいるかー?」

一「あ、藤田プロだ」

透華「残念でしたわね。今、衣はともきーと純の三人で露天風呂へ行ってますわ」

藤田「そうか、だったら戻ってくるまでここで待たせてくれ」

透華「あなたホントに衣が大好きなんですわね」

一「せっかくだから、ボクらと麻雀でも打ってましょうよ」

藤田「ん、そうしようか」




玄関ホール

咲「ただいまー」

優希「咲ちゃん、それにのどちゃんも! やっと帰ってきたかー」

和「おみやげを選んでたんですが……咲さんが時間がかかって」

咲「えー、和ちゃんの方こそ、選ぶのに時間かかってたじゃない」

優希「おっ、二人ともいつの間にお互いを名前で呼び合うようになったんだじぇ? さては、何かあったなー?」

和「ち、違います! 遅くなったのは、咲さんが途中何度も迷子になりかけたからで……
別に二人で神社とかに行ってたからでは……ゴニョゴニョ」

咲「和ちゃん……は、恥ずかしいから、あんまり言わないでよぅ…」モジモジ

清澄の部屋

ガラッ

優希「部長ー、二人が戻ったじぇー」

シーン

咲「あれっ、誰もいないよ?」

和「もぬけの殻ですね」

優希「おかしいじぇ、さっきまでいたはずなのに」

咲「急用ができて、どこかに行ったんじゃないの?」

優希「それにしても変だじぇ。染谷先輩もまだ戻ってないし…」

咲「染谷先輩も?」

優希「鶴賀の大将さんを探しに行ったきりだじぇ」

和「何かあったんでしょうか?」

優希「分からないじぇ……三人で手分けして探さないか?」

和「わかりました。それじゃ私はこっちを…」

咲「私はあっちを見てくるね」

優希「見つけたら連絡してくれー」


龍門渕の部屋

透華「遅いですわね、衣たち」

一「ちょっと長風呂すぎるよね」

藤田「うーっ、もう我慢出来ん! ちょっと風呂場覗いてくる」

透華「幼女の風呂を覗き見……ド変態ですわね」

一「警察呼びますよ」

藤田「お前に言われたくない」


透華「ふぅー、藤田プロの衣好きも困ったものですわ」

一「そうのち、『嫁にする!』 ……とか言ったりして」

透華「不純ですわっ! その……女同士が結婚など……」

一「えっ…そう、かな…?」ズキッ

透華「はじめ…どうしましたの?」

一「じ、じゃあ……ボクの透華への想いも、不純ってことになるのかな…?」

透華「は、はじめ…あなた何てことを……///」カァァ

一「透華、ボクは……」モジモジ


「うわぁああああああああああああああああ!!!!」


バタバタバタバタバタバタバタッ ドッシャーン!


透華「何ですの? 廊下が騒がしいですわ!!」

一(いいとこだったのに……)

タッタッタッタッタッ…

透華「誰か走ってきますわね…」

ガラガラッ

藤田「ハァ…ハァ…」

透華「藤田プロ! 一体何の騒ぎですの?」

藤田「お前たち、早く逃げろ!! やつがすぐそこまで…」

ドッ!

藤田「き…て……」ドサッ…

透華「きゃああああああああああ!!!」

一「これ、本物の投げナイフだ。一体誰がこんなものを…」

透華「そんなのどーだっていいですわ! 早く逃げないと…」

???「残念ながら逃げ場はねえ」スッ

透華「!!」

???「出口はこうして俺が塞いでいる……さぁ、このナイフで切り刻んでやるよ」スチャ

一「くっ、透華下がって!」バッ

???「くくっ、安心しなよ……お仲間は全員俺が始末した。残ってるのはあんたらだけだ…」

透華「あなた…あなた一体なんですの!?」

???「俺かぁ? 俺は須賀京太郎……清澄麻雀部の犬さ」




和「咲さん!」

咲「和ちゃん! さっきの悲鳴聞こえた?」

和「はい…それと、部長がいるかもと思って、風越の部屋に行ったんですが……
誰もいなかったんです」

咲「私もさっき同じこと考えて、鶴賀の部屋に行ったんだけど……やっぱり誰もいなかったよ」

和「咲さん……私には、何か大変なことが起きている気がしてならないのです」

咲「私もそう思うよ。ところで優希ちゃんはどこに……」

優希「きゃあああああああああ!!!」

和「ゆーきの悲鳴? あっちの方からです!」



龍門渕の部屋

優希「あああああ……」ガタガタ…

咲「どうしたの優希ちゃ……あっ、ああああ…!」

和「いやぁあああああああああ!!!」

部屋の中は一面、血の海だった。
扉付近には、額にナイフが突き刺さった藤田プロの死体。
部屋の奥には、全身メッタ刺しにされた透華と一が横たわっていた。

咲「うおぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

和「ひ…ひどすぎます……誰がこんな…」ガタガタ…

優希「と、ともかく…警察を呼ぶじぇ」

咲「う、うん……早く呼んでよ」

優希「あれ? 私の携帯がない!?」

和「ええっ、こんなときにですか?」

咲「わたしはケータイもってないし……和ちゃんのは?」

和「はい、ここに……ってあれ? 私のもない!?」

優希「へ、部屋に戻ればあるかもしれないじぇ!!」

清澄高校の部屋

咲「ダメだ…一個も残ってないよ」

優希「こうなったら他の部屋から借りるしかないじぇ」

和「でも、他の部屋には誰もいなかったんですよ?…… も、もしかしたら……」

咲「まさか…」

優希「生き残ってるのはこの三人だけかもしれないじぇ」

ブツッ

和「きゃ!」

咲「停電……」

優希「これは……犯人がまだここにいるってことだじぇ!」

和「でも一体だれがこんなことを……何故私たちを狙うんでしょう……」ガタガタ…

優希「それは分からないじぇ…」

咲「わたし……犯人に心当たりあるかも」

優希「えっ?」

和「一体誰なんですか?」

咲「……京ちゃん」

優希「ま、まさか……きょうたろーにそんなことが出来るわけないじぇ」

和「そうですよ咲さん……だいたい須賀君がみんなを殺す理由がありません」

咲「……二人とも気付かなかったの?」

和「何にですか?」

咲「部活の時、京ちゃんいっつも哀しそうな目をしていたよ。
みんなと打たせてもらえなくて、かなり苛立ってたみたいだし……」

優希「確かに……部長は京太郎をパシリとして使いすぎだったじぇ」

咲「京ちゃん、今回の合宿にも行きたがってたみたいだし……きっと、行けなかったのが悔しくて私たちを……」

和「でもっ、だからってみんなを殺すのはやりすぎです!!」

ドンドンドンドン!!

和「ひっ!?」

ドンドンドンドン!!

京太郎「咲…いるんだろ……? 俺だ、京太郎だ!」

咲「きょ…京ちゃん……」

京太郎「いないのかー? 和、優希、誰でもいい……ここを開けてくれ!」

ドンドンドンドン!!

和「ひぅ……」

優希「ど、どうするじぇ!?」

咲「和ちゃん優希ちゃん、あの窓から外へ逃げよう!!」

ガラガラッ

咲「さ、早く外へ!!」

優希「目の前に森があるじょ! あそこに逃げるじぇ!!」

ザッザッザッザッ…

優希「この中へ逃げ込めば、やつもこっちを見失うかも…」

和「きゃ…須賀君が追って来ます!!」

京太郎「待て―!! 逃げるな―!!」ダッダッダッ

咲「走って! もっと速く!!」

三人は森のさらに奥深くへと逃げて行った。

タッタッタッタッタッ…

グギッ

和「痛っ…」ドサッ

咲「和ちゃん!」

和「足を…挫いたみたいです…」ズキズキ

咲「早く立って! 追い付かれるよ!!」

和「ダメです…もう走れません……」

優希「あっ、あそこに小屋があるじぇ!!」

咲「よかった! あそこへ逃げ込もうよ!!」

優希「のどちゃん、立てるか?」

和「ええ、なんとか……」ヨタヨタ

咲「肩を貸すよ」

二人がかりで和を支えながら、咲たちは小屋に辿り着いた。

ギィ バタン!

咲「ハァ…ハァ…」

優希「何とか…辿りつけたじぇ」

和「ここは……どうやら物置のようですね」

木でできたその小屋の壁には、森林伐採用のチェーンソーやマチェットに
ナタや斧、各種ナイフ類まで、大小様々な刃物が掛けてあった。

優希「そ…それで、京太郎のやつはどうしたんだじぇ?」

咲「私たちを見失ったのかな?」

和「だといいのですけど…」

優希「外の様子を窺いたいのは山々だけど……この小屋には、窓がついてないじぇ」

和「もしかしたら小屋の外で待ち伏せてるのかも。 油断はできませんよ」

二十分後

咲「ねえ…もう大丈夫かなぁ…」

和「分かりません…さっきから不気味なくらい静かです」

優希「きょうたろーのやつ、もういなくなったのか?」

咲「わたし、ちょっとだけ外を見てくるよ」

和「ダメです咲さん! ここにいないと」

咲「ごめん和ちゃん……でも、私耐えられない。ここにずっと閉じこもってると、気が狂いそうになるんだよ」

咲「もし外に京ちゃんがいなかったら、一気に森を出て街にでようよ。そして警察に駆け込むの」

優希「わかったじぇ咲ちゃん。それならこの私も着いてくじぇ。いざとなったら、私が咲ちゃんを守る!」

咲「ありがとう、頼りにしてるよ優希ちゃん」

和「そんな、置いてかないでください!」

咲「ちょっと周囲を見て、安全を確認するだけだよ。逃げる時は和ちゃんも一緒だから…」

和「……分かりました。それなら用心のためにこれを」スッ

咲「ナイフを?」

和「ゆーきもです。須賀君は恐らく凶器を持っているでしょうから、これくらいの備えがなければ」

優希「分かったじぇ」スチャ

和「気をつけてください二人とも…幸運を」

咲「うん、ありがとう」

ギィ バタン…

和(はぁ……二人とも出て行ってしまいました。少しの間だけとはいえ、こうなるととても不安です…)

そう思って、和は室内をぐるっと見渡した。

和(もし万が一、このスキに須賀君が襲ってきたとしたら……私もなにか武器を持たなければ……)

痛む足を引きずりながら、和は壁に立てかけてあったマチェットを手に取った。

和(重い……でもこれなら、軽く当たっただけでも威力が凄そうですね)

ドンドンドンドン!

和「……」ビクッ

ドンドンドンドン!

京太郎「おい、誰かいるんだろ!?」

和「須賀く…」

京太郎「開けろー! 開けてくれ―!!」ドンドン!

和「いやぁあああ!!」

バターン!

和は勢いよく小屋の扉を開け放った。

京太郎「うわっ!」ドシーン

和「来ないでええええ!!」

京太郎「和!」

ブンッ

和は思いっきり振りかぶった山刀を振り下ろした。

ブシュ!

京太郎「ぐあっ!」

肩を狙ったつもりが、ほとんど空振りに近い状態でかろうじて足に当たった。
一応ダメージは与えられたものの、傷は浅いようだ。

和「いやああああああああああ!!」

和は悲鳴をあげながら、京太郎に背を向け走り出した。

タッタッタッタッ…

和「ハッ…ハッ……」

和は足が痛いのも忘れて、必死に走り続けた。

和(あれは……?)

前方に、誰かが倒れている。

和(あの顔……見覚えが…)

天江衣の死体だった。

和(うっ……!)

どうやら溺死させられたらしく、腹はパンパンに膨れ上がり、肌は青白く変色していた。

和(そんな………他にも?)

よく見れば死体はそれだけでなかった。

衣の傍には、口内にアイスピックを突き立てられた染谷まこの死体が。
その真横にある木には、まるでキリストのように、竹井久が磔にされていた。
こちらは全身に何十本もの杭を打ちこまれている。

和「いやっ! いやぁあああああああああ!!!」

和は再び、無我夢中で走りだした。
走りながらも彼女の視界には、惨殺された死体の数々が飛び込んできた。

首をねじ切られた沢村智紀が。
裸で木に吊るされている加治木ゆみが。
お魚くわえた池田の生首が。

姿を消していた彼女の知り合いたちが、死体となって次々と出てくる。
まるで、映画「13日の金曜日」のクライマックスのように。

和「誰か…誰か助けてっ……」

和は祈るように呟いた。
すると前方に、誰かがしゃがみこんでいるのが見えた。

和(また死体?)

いや、その誰かは動いている。どうやら死体ではないようだ。
そしてあの後ろ姿は――

和「咲さん!」

和(よかった…こんな所にいたんですね……)

和(って、安心している場合じゃありませんでした。須賀君はすぐそこまで来ているのに…)

和「咲さん! 早く逃げ…」

ドシュドシュ ビチャビチャ…

和「えっ?」

ザクッザクッザクッザクッ…

優希「あっ……あっ……」ピクッピクッ

咲「えへへへへへ……」ザシュッザシュッ

和「咲さん…一体なにを……」

咲「あ、原村さん! ちょうどよかった、次は原村さんの番だからちょっと待っててね」

和「あなたが…あなたが犯人だったんですか……?」

ザクッ バキン!

優希「………」ピクピク

咲「あーあ、ナイフの柄が折れちゃった。 まあ予備持ってるからいいけどね」

そう言って咲はスカートの中からサバイバルナイフを取り出した。

咲「さ、今度は原村さんだよ」

和「なんで…なんでなんですか咲さん! どうしてこんなことを……」

咲「京ちゃんのためだよ」

和「須賀君の…?」

咲「そうだよ。いっつも部活ではパシリ扱いで、一人だけ男だからって冷遇されてる。
私はそんな京ちゃんが可哀そうで見てられなかった……」

咲「今回だってそうだよ、合宿に一人だけ誘われなかった。
みんなが楽しんでるのに、京ちゃんは一人ぼっち。だからみんな殺すの。これは京ちゃんの望みなんだよ」

和「そんな……いくらなんでも須賀君が殺しを望むわけがありません!!」

咲「望んでるよ。だって私には、京ちゃんの声が聞こえるんだもん」

和「はっ!?」

咲「そうだ咲、あいつを殺せ……あいつを殺せ……」ブツブツ…

咲「だってさ原村さん。覚悟してね」

和「さ、咲さん……一体何を言ってるんですか?」

咲「だからー、私には京ちゃんが何を考えてるかわかるんだってばー」

咲「そうだ。 俺が……俺たちが須賀京太郎だ」

和(この人……狂ってるっ!)

咲「安心してよ。原村さんは、なるべく痛くないように殺すからさ」

和「や…やめて……」

咲「俺も残念だぜ和……俺はお前のこと好きだったのに……」

咲「そうだよ。京ちゃんは原村さんのこと好きだったのに、
いつも原村さんは冷たい目で見てたよね……私はそれが許せない」

和「あ…ああっ……」ガタガタガタ…

咲「じゃあね、原村さん」ヒュッ

京太郎「危ねえ!!」ドカッ

和「きゃっ…」

スカッ

咲「京ちゃん…?」

京太郎「咲! お前なにやってんだよ!!」

咲「なにって……これは京ちゃんが望んだことでしょ?」

咲「そうだ、これは俺が望んだことだ」ブツブツ…

京太郎「お、お前は一体何を言ってるんだ…?」

和「須賀君! 彼女は頭がどうかしているんです!!」

京太郎「くそっ、どうしちまったってんだよ咲!!」

咲「あははっ! 京ちゃんどいて、そいつ殺せない!」

ビュッ!

京太郎「うわっ…本気かよ……」

咲「そりゃそうだよ、これは京ちゃんが命じたことなんだから…
京ちゃんが本気なら、わたしも本気に決まってるじゃない」

咲「そうだ。俺が本気で、咲が本気で、お前も本気で…お前は俺で……」ブツブツ…

京太郎(ダメだ、完全に頭がイカレちまってる…)

咲「誰にも邪魔はさせないよ…たとえ京ちゃん自身であっても!!」

ブスッ!

京太郎「ぐわあああっ! 痛ってえ、足が……」ドサッ

咲「京ちゃんは殺さないよ。そこで大人しくしててね」

京太郎「ま、待て…行くな……」

咲「さあ、原村さん…」

和「くっ……」

和(逃げなければ……)

しかし、忘れていた痛みを思い出したように、挫いた足が動こうとしない。

咲「これで終わりだね、京ちゃん……ああ、そうだな咲!」

和(殺されるっ……!)

和は両手をぎゅっと握りしめ……

そこで自分がまだ、あの山刀を固く握りしめたままだったということに気が付いた。

和(そうだ…! 無我夢中で、すっかり忘れていた……)

咲はもう目の前に来ていた。
彼女は余裕たっぷりの動作で、サバイバルナイフを大きく振り上げた。

咲「さあ、死んで原村さん……死ね、和……」

和(……!!)

和「うわああああああっ!!!」

ズシャァァッ!

まるで映画のように、気持ちいいくらいまでにスッパリと、
咲の首が胴体から切断されて宙を舞った。

咲「あっ……」

咲の口から、空気の漏れるような音がした。
切断からワンテンポ遅れてナイフが振り下ろされ、空を切った。
そして、首を失った胴体は地面に崩れ落ちた。

ドシャッ

和「はぁ…はぁ……」

京太郎「お、終わった…」

こうして、犯人が生存者に返り討ちにされるという
衝撃の結末で、この事件は幕を下ろした。

犯行に使われた凶器はほとんどが現地調達されたもので、
和たちが逃げ込んだ小屋にあったナタなどから、咲の指紋が検出された。

事件の被害者は四校の生徒計十八名の他に、
遊びに来ていた藤田プロや宿の従業員などを合わせて三十人近くにのぼった。


全て、13日の金曜日に起こった事件である。

一ヶ月後

和「みんな、ここに眠っているんですね」

京太郎「ああ。部長や染谷先輩に優希……そして咲も」

京太郎と和は二人で墓地に訪れていた。
ここは惨劇の舞台となった合宿場の近くに造られた墓地で、
今回の事件の被害者たちが埋葬されていた。

京太郎「咲……お前はどうしてあんなことを…」

京太郎が咲の墓の前で泣き崩れるのを、和は静かに見守った。

彼女は京太郎にとても感謝していた。
あの日、彼が律儀にも部室に残されていた忘れ物を届けに
再び宿を訪れなければ、彼女は恐らく咲に殺されていただろう。

和「須賀君…ありがとう」

京太郎「ああ……」

ひとしきり泣き終えた京太郎が立ちあがった。
その表情は真剣そのものだ。

京太郎「生きよう…みんなの分まで」

和「はい。彼らのことを忘れずに…」

様々な想いを胸に、二人は墓地を後にした。

ザッ…ザッ…ザッ…

二人が立ち去った後、咲の墓を訪れる少女がいた。

「咲……」

その少女――宮永照は、愛しむように優しく咲の墓石を撫でた。

照(痛かったんだろう……怖かったんだろう……
私には、恐怖に怯えるお前の声が聞こえてくるみたいだ…)

照は静かに立ち上がる。その目には狂気が宿っていた。

照「待っててね咲、お姉ちゃんが仇をとってあげるから……」

照「……そうだよお姉ちゃん……殺して、みんな殺して!」


咲-Saki- 13日の金曜日  完