漫「どう?楽しかった?」
京太郎「えぇ。かなり」

そううちが尋ねるのは夜中のバスターミナルやった。
煌めくネオンで照らされるそこは色こそ違えど、昼とそれほど変わらへん明るさや。
しかし、どれだけ明るくても、そろそろ京太郎君が帰らへんかったらあかん時間ってのは変わらへん。
悲しいかな…また今月も別れの時間が来てしまったんや。

漫「(こればっかりは…どうにもならんなぁ…)」

力強く頷いてくれる京太郎君に笑みを返しながら、うちの内心は寂しさに溢れとった。
この前もそうやったけれど…やっぱりこの別れる瞬間はどうにも胸が痛い。
また一ヶ月近く会う事が出来ひんようになるんやから、それも当然やろう。
勿論、その間も密に連絡を取りあっているけれども、だからと言ってこの寂しさは誤魔化せるものやない。
何とかして別れる時間を引き伸ばせへんやろうかって…どうしてもそう思ってしまうんや。

京太郎「お風呂の種類も色々ありましたし」
漫「種類が色々ある言うてもお湯に違いがある訳じゃないみたいやけれどね」
京太郎「その辺を差別化しようとするとコストが跳ね上がるんで仕方ないですよ」

それを胸の奥底に隠しながら、うちは京太郎君にそう言葉を返す。
だって、それを表に出しても、京太郎君が困るだけでどうにもならへんのやから。
どれだけ辛くても、寂しくても、うちらがただの学生でしかない以上、距離の差は埋められへん。
そんな現実に優しい京太郎君が心を痛めていないはずがなく…だからこそ、うちはそれを表へと出てこないように押し込める。

京太郎「後、休日な所為かやっぱり人は多かったですね」
漫「聞いた話によると駐車場も満車やったみたいやからなぁ…」
京太郎「家族連れの人も多かったですし、行くのなら平日にした方がストレスも少ないかもしれません」

だって、その家族連れの人たちの前で、うちは京太郎君に大恥をかかせてしまったんやから。
うちが堪え性がなかった所為で迷惑を被った彼の事をコレ以上、困らせたくはない。
もうちょっとしたらまた会えるのは一ヶ月後になるんやから、また来たいとそう思えるような別れにしたいんや。
いや、せめてそれくらいせえへんかったら…先輩としてあんまりにも格好悪いやろう。

漫「(まぁ、実際は金銭的負担を京太郎君にかけっぱなしな訳やけれど…)」

勿論、うちは名門姫松のレギュラーで、それなりに期待されとる身や。
バイトも禁止されとるし、そもそもそんな時間なんてあらへん。
周囲の期待に対して実力が伴わへんうちは努力せえへんかったらレギュラーであり続ける事は難しいやろう。
けれど、その結果、様々な負担を同じく部活をやっている京太郎君に強いている今の状況は苦しく、思わずため息を吐いてしまうんや。

漫「あーぁ…うちもバイトしよっかなぁ…」
京太郎「漫さん?」

ついポツリと漏らしてしまったうちの言葉に、京太郎君は不思議そうにそう尋ねた。
今までスパワー○ドの話をしてたのに、いきなりバイト云々に話題が吹っ飛んだんやから、それも当然やろう。
いくら察しの良い彼でも、異次元に近い思考の跳躍にはついていけへんのや。

漫「あ…いや…うちもバイトしとったら…月に二回会えるやん?」

勿論、そう単純な話になるとは思えへん。
幾らうちがバイトやろうとしても夜中までぶっ通しで打ち続ける部活の後には出来ひんのやから。
自然、うちが働くのは休日になるやろうけれど、そっちにも部活はちゃんと入っとる。
流石に平日と違って朝から晩までって訳じゃないけど、それでもそう長い間、バイト出来る訳じゃないやろう。
それを思えば月に一回長野に行くお金を捻出するのは中々に無謀であり、難しい話なんやから。

漫「(でも…もし増えるんなら…それに越した事はあらへん)」

例え、月に一回、長野に行くのが難しくても二ヶ月に一回くらいは十分、可能な領域やろう。
単純計算で1.5倍になるそれはうちにとって決して軽視出来るもんやなかった。
それだけ会えるようになったら、きっと今回みたいに暴走する事は少なくなるやろう。
まぁ…なくなると言い切れへん辺り、色々と業が深いんやけれど…その辺は京太郎君が魅力的過ぎるからしゃあない事や。

京太郎「止めた方が良いですよ。名門校のレギュラーがバイトしてるってなったら色々、やっかみも酷いでしょうし」
漫「…そう…かもしれへんけど…」

京太郎君のその言葉はうちの事を心配してくれてのものやろう。
実際、うちがレギュラーにいる事をあんまり快く思ってへん人ってのは少なからずいるんやから。
そんな人たちにとって、うちが隠れてバイトしとるって言うのは格好のネタになるやろう。
主将や末原先輩みたいに「それがどうした?」って跳ね除けられるほど飛び抜けた実力を持ってへんうちにとって、それは割りと重大なスキャンダルになるものや。
流石にその程度でレギュラー降ろされたりせえへんやろうけれど、こんなうちに目をかけてくれとる人らの期待を裏切る事になるやろう。

京太郎「その分、俺が会いに来ますよ」

そう言いながらうちの頭をそっと撫でてくれる京太郎君の言葉に…うちは素直に頷けへんかった。
だって、そうやって京太郎君がうちに会いに来てくれる為にどれだけの無茶をしてくれているのかうちは知っとるんやから。
部活終わった後、そのままバイトに行くのを日常的に行なっている彼にはかなりの負担を強いているやろう。
勿論、京太郎君から聞く分やと姫松と清澄の部活のスタンスは大分、違うし、男女の体力差ってもんもある。
だけど、うちが出来ひん事を彼にしてもらっているのは否定出来ず、うちはその言葉に素直に頷けへんかった。

京太郎「それに…姫松は今度のインターハイで清澄を破るんでしょう?」
漫「勿論や」

そんなうちを挑発するような言葉に、迷いなく頷く。
末原先輩たちの無念を晴らす為にも、うちは頑張らへんかったらあかんのや。
あの宮永咲を打ち破れるくらいに…強くならへんかったらあかん。
その決意は未だ揺るがず、寧ろ、日増しに強くなっとるものやった。
まぁ、その原動力が京太郎君の傍に日頃から居る原村さんや神代さんへの嫉妬に変わりつつあるのがちょっと情けないと自分でも思う。
しかし、それでもうちの目標は決して揺らいではおらず、今も尚、ふつふつと闘志を燃やしとるのは事実やった。

京太郎「清澄は強いですよ。まぁ…この前は龍門渕に負けてしまいましたけど」
漫「…アレは負けと言えるもんか、甚だ疑問やけれどなぁ…」

姫松も一度、敗れた清澄の事はとても意識しとって、その時の牌譜も既に入手しとる。
でも、それを見た時、うちは彼女らがやっているのが本当に麻雀なのか、理解出来ひんくらいやった。
少なくとも…うちの知る麻雀はほぼツモのみで役満を何回も完成させるようなゲームやない。
しかし、あの卓で…誰よりも追い詰められた神代さんはそれをやってのけたんや。
インターハイで戦った時よりも遥かにやばいそれはほぼ間違いなくオカルトによるものやろう。
序盤に追い詰められていなければ…或いは他家の点数がもうちょっとあれば、あの絶望的な状況から逆転してもおかしくなかった異形の打ち筋。
それを見て、清澄が弱くなったなんて言えるような雀士は、きっと三流かモグリやろう。


京太郎「はは。有難うございます。…まぁ、何はともあれ…俺は清澄だけじゃなくて…漫さんも応援してますから」
漫「…うちも?」
京太郎「当たり前じゃないですか。…俺の大事な恋人なんですから」

そう言って京太郎君はうちの頭をそっと撫でてくれる。
その髪の一本一本まで優しく撫でるその手つきに、うちの胸は暖かい感情で満ちてしまうんや。
色々な意味でチョロい自分の姿に、けれど、自嘲も湧き上がる事はあらへん。
それよりも恋人やってまたはっきりと口に出してくれる事の方が嬉しくて…ついつい緩んだ顔を晒してしまうんや。

京太郎「立場上、どっちかに肩入れなんて出来ないですけどね。でも、俺の為にバイト始めて…それで後悔なんてしてほしくないです」

そう言う京太郎君の視線には強い意思が宿っとった。
キッパリと断るその姿はうちが何を言うても意見を翻さない強い覚悟が伝わってくる。
そんな京太郎君の格好良さに単純なうちはついついキュンと胸を疼かせてしまった。
でも、今の状況が続けば、どの道、後悔が残るのは目に見えとるんや。
どうせ後悔するんやったら…京太郎君の為に後悔する方がええような気がする。

京太郎「会う時間が足りないなら俺がバイトの数増やします。だから、漫さんは麻雀に集中してください」
漫「…ええの?」
京太郎「俺を誰だと思ってるんですか。本気で三人娶ろうとしてる馬鹿ですよ」

何処か自嘲気味に笑いながら、でも、その意思は揺るがへん。
京太郎君は本気でうちの為にバイトを増やして、会う数を増やそうとしてくれているんや。
ただでさえ、他にも二人恋人をキープしとって忙しい京太郎君にとって、それはかなり厳しいものやろう。
でも、うちの前で胸を張る彼はうちにまったくそれを見せへんかった。

京太郎「それに…これくらいやりきらなきゃ三人を幸せにするなんて不可能でしょう」
漫「…馬鹿」

笑いながらそう口にする京太郎君の言葉に、うちはそれ以外に返す言葉を持たへんかった。
確かに彼がやろうとしている事を思えば、これくらいはやれて当然なのかもしれへん。
でも、そうやって何もかも自分で背負おうとするんは馬鹿以外の何者でもないやろう。
人は一人の力で幸せになれるほど単純な生き物じゃないんや。
満たし満たされて…それでようやく幸せになれるのが人間なんやから。
少なくともうちは、そうやって一方的に幸せにされるだけの関係なんて不健全やと思うし…何より心苦しくて幸せに浸れへんやろう。
漫「(実際…うちが一番、幸せで堪らへんようになるんは…京君が射精してくれる時やねんから…♥)」

勿論、それはセックスまでの間にうちの身体が否応なく高められ、アヘってるっていうのも大きな理由やろう。
でも、快楽を上回り、溺れそうになるほどの多幸感はどれだけ一人でどれだけイッても味わう事は出来ひん。
それはきっと京太郎君も気持ち良くなってくれているって実感があるからこそ、至れる幸福感の極地やからや。
そうじゃなければきっとあんなに幸せなアクメに突き上げられる事はないやろう。

漫「うちは…幸せにされるだけの女なんて嫌やで。そんなん…ただ京太郎君が自己満足したいだけのお人形やん」
京太郎「それは…」

それを伝えようとするうちの言葉に京太郎君が言葉を詰まらせる。
普段よりも静かな、けれど、強い意思を込めたうちの言葉に、京太郎君も驚いとるんやろう。
意外そうな色すら浮かべるその表情からは、さっきの言葉でうちが感動してなあなあに流せるとでも考えてた事が伝わってくる。
実際、さっきまで胸をときめかせて感動してたんやから何も言えへん。
でも…うちは単純であんまり頭も良くないけれど…やられっぱなしは趣味とちゃうんや。


漫「うちも京太郎君の事、一杯、幸せにしてあげたい。滅茶苦茶な関係かもしれへんけれど…京太郎君も幸せやって思うくらいに満たしてあげたい」

そう言いながら、うちがそっと近づきながら、京太郎君の身体をそっと抱きしめる。
その大きくて逞しい身体は、うちの腕の中にすっぽりとは収まってくれへん。
でも、その奥底にある心が悩んでいるのは今もはっきりと伝わってくるんや。
迷いを振り切り、覚悟を決めたものの…自嘲までは振り払えず、空回り気味になっとる彼の心。
そんな弱い心を抱きしめるように小さく力を、そして大きく愛情を込めながら、うちは京太郎君の背中を撫で続ける。

漫「そういう女は…嫌?」
京太郎「…はは。本当…肝心なところじゃ漫さんには敵わないな…」
漫「当たり前やん。うち先輩やねんから」

ポツリと漏らされた敗北宣言に、うちはニヤリと笑いながらそう返した。
勿論、うちは京太郎君にそう言えるほど年が離れとる訳やない。
人生経験なんて殆ど変わらず、彼の方が優れとるところも一杯あるやろう。
でも…それでもうちは先輩で、京太郎君は後輩なんや。
そうやって先輩に甘えるんもまた後輩の重大な仕事やろう。

漫「それに…多分、そう思っとるんはうちだけやないよ」
京太郎「えっ」

うちの言葉に京太郎君は驚くように返すけれど、それは殆ど確信に近い言葉やった。
勿論、うちは原村さんは雑誌でしか知らへんし、神代さんはそれに一回対局した程度の関係でしかない。
でも、雑誌を見る限り、どちらもうちに負けず劣らず我が強く、そして京太郎君のメールから彼が好きなのが伝わってくるんやから。
そんな彼女らがただ一方的に幸せにされるような関係に甘んじるとは到底、思えず、うちはそうポツリと漏らしてしもうた。

漫「(でも…それを伝えるのは癪やなぁ…)」

勿論、そうやってうちが躊躇するんは、恋敵への助けになりすぎるからや。
うちは三人で京太郎君の事を共有するのを認めたけれど、でも、積極的に二人のフォローするほどの義理はないんやから。
正直、今だってうちが独占出来るならそうしたいとそう思っとるのに、殆ど知らへん二人の世話までしてられへん。
身も蓋も無い言い方をすれば…自分の分の点数は稼いだんやから、二人にはそのままで居て欲しい。
離れとる分、普段の点数稼ぎが出来ひんのやから、これくらいはええやろう。

―― ブロロロロロ

そう思った瞬間、夜のバスターミナルに大型バスが止まった。
既に見慣れた2階建てのそこから運転手さんが降りてきた瞬間、人が続々とそこへと近づいていく。
休日、しかも、月曜日の朝に到着予定のそのバスには地元へと帰ろうとするお客さんが沢山なんや。
そんな中に京君もまた混ざらへんかったらあかんと思うと否応なく、別れの事を意識してしまう。

漫「…」ギュッ

勿論、それは何回も経験したし、覚悟もしとる事やった。
仕方のない事やって理解しとるし、ここで駄々をこねたら彼の迷惑になるだけやって分かっとる。
でも、この腕の中にある温もりが消えてしまうのをそう簡単に認める事なんて出来ひん。
ついつい抱きついた両腕に力を込めて、京太郎君を離すまいとしてしまうんや。

京太郎「…漫…」
漫「え…?んんっ♪」

瞬間、うちを呼んだ京太郎君に顔をあげれば、唇に柔らかなもんが触れた。
ちょっぴり荒れて、でもプルプルしとるそれはうちにとってはとても馴染みの深い…京太郎君の唇や。
つまり…今、うちは衆人環視の状況で京太郎君にキスされとるって事で…うちの中からぶわっと喜悦が湧き上がる。
それと同時に身体からゆっくりと力が抜けていく感覚に、うちはそっと彼に身を寄せ、身体を預けた。

漫「ひゅんっ♪」

けれど、京太郎君はその程度で許してくれへんかった。
その舌はあっという間にうちの唇を割って、その内部へと侵入してくるんや。
ネチャネチャという音と共に入り込むその粘膜をうちの口はすぐさま受け入れの態勢を見せる。
歯の根を開き、その奥から舌を出して、京太郎とエッチなキスを始めるんや。

漫「(あぁ…♥すっごい見られとる…ぅ♪)」

人通りの減らないバスターミナルでいきなり熱烈なキスを始めるカップル。
それは視界に収めまいとしても、ついつい見てしまう光景なんやろう。
それに恥ずかしさは感じるけれど、でも、うちは今更、キスを止めるつもりなんて毛頭なかった。
うちが京太郎君のモノであることを示すようなそのキスを拒めるはずなんてあらへんやろう。

漫「(だから…もっとして…ぇ♪エッチなキス…もっと欲しい…っ♥)」

いきなりうちにキスを始めた京太郎君が何をしたいのかはうちには分からへん。
でも、人前でもこうしてキスをしてくれる事が嬉しくて、そして何よりも気持ちええんや。
胸の奥底からうっとりとした心地が湧き上がるその気持ち良さにうちの舌は京太郎君と激しく絡み合う。
クチュクチュって音が聞こえるくらいのやらしくて…そしてエッチなキスにうちのお腹の奥がジュンって熱くなり、また彼が欲しくなってしまうんや。

漫「(出る前にも…一杯、愛して貰ったのに…っ♥)」

勿論、うちはホテルを出る前にも京太郎君に一杯、エッチしてもらっとる。
それこそ意識飛ばして気絶するくらい激しく犯して貰っとるんや。
しかし、それでもうちの身体は京太郎君から求められるだけですぐさまスイッチを入れてしまうんやろう。
そんな淫らな自分に自嘲とそして誇らしさを感じながら、うちはキスに没頭し、周囲の事を思考から切り離していった。

漫「はむ…ぅ…♪ちゅる…♪」

熱い吐息が京太郎君に降り掛かってしまうのも構わずに繰り返される激しいキス。
でも、うちの身体はもうその程度じゃ満足出来ひんかった。
欲情という火が入り始めた身体は全体で京太郎君の事を求め、そして愛しているんやから。
こうしてキスをしている間にも彼から離れたくないと足を絡め、腕にキュッと力を込めてしまう。

漫「(あぁ…っ♪でも…ダメ…ぇ♥)」

しかし、それも一分ほど経った頃にはおぼつかないものになり始めた。
だって、京太郎君のキスは最初っから本気で…そしてとってもエッチなんやから。
興奮している時にはそれだけでイッちゃうくらいエロエロなベーゼを受けて、うちが平気でいられるはずがない。
絡みつかせた四肢まで行き渡った心地よさが筋肉を弛緩させ、脱力感が急速に強くなっていった。

漫「(勿論…京太郎君はうちの事を受け止めてくれるやろうけれど…ぉ♥)」

そもそも、今のうちは既に京太郎君に寄りかかるような姿勢になっとるんや。
そんなうちを京太郎君は決して手放さず、寧ろ、背中に回したその両手でゆっくりと撫でてくれとる。
彼の愛しさを伝えるようなその仕草に、身体が安堵して…ついつい甘えてしまう。
でも、そうやって甘えれば甘えるほどに彼の負担が大きくなり…そしてうちが抵抗出来ひんようになるんや。

漫「(そんなん…嫌なのに…でも…うち…♥)」

そう思いながらも京太郎君の手で開発されたエロい身体は従ってくれへん。
まるでこの人に従っておけば大丈夫だと言わんばかりにドンドン彼に依存していく。
そんな状況に脳が警鐘を鳴らすけれど、明後日に吹っ飛んでいったうちの力は帰ってこうへん。
結果、うちの身体は京太郎君に支えて貰わへんかったらあかんくらいにトロトロになって…オマンコもまた濡れまくってしまった。

京太郎「ふぅ」
漫「あぅ…ぅ…♥」

そんなうちからふっと口を離しながら、京太郎君は一息ついた。
その瞬間、お互いの口からふっと唾液のアーチがこぼれ落ちるけれど、うちはそれを避ける余裕すらあらへん。
その足元が覚束なるほどの激しいキスを受けたうちは身体の殆どを彼に委ねとるんやから。
お気に入りの服に二人の唾液の混合液がこぼれ落ちるのを避けられるはずがなく…また避けたいとも思わへんかった。

京太郎「よいしょっと…」
漫「は…ぁ…♪」

それは京太郎君も同じやったんやろう。
うちを抱きかかえたままの姿勢で、彼はそっと移動し、バスターミナルに備え付けられたベンチへと移動した。
そこにうちを座らせながら、京太郎君は頭をそっと撫でてくれるんや。
まるで小さな子どもをあやすようなそれに…うちはさっきのキスがうちを慰めるものであったと確信を得る。
アレはこの期に及んで離れたくないって身体で駄々をこねとったうちを引き離す為の…優しくてエッチなキスやったんや。

漫「京太郎君…♥」
京太郎「次もまた…すぐ会えるようにするからさ。だから…今日は離してくれないか?」

甘えるように口にするうちの言葉に京太郎君はそっと別れの言葉を口にする。
それに胸がズキリと痛むけれど…でも、このまま駄々をこねても彼を困らせるだけや。
そもうちにはもう京太郎君を引き止める力なんてさっきのキスで根こそぎ奪われて残っとらへん。
だから、今のうちに出来るのは…そっとベンチから立ち上がる京太郎君を見送る事だけやった。

京太郎「毎日…メールするし、電話もする。だから…」
漫「…うん…」

そのままうちの顔を覗き込む京太郎君にうちは小さく頷く。
勿論、胸の痛みは欠片も収まってへんけれど、それでも…見送る決意だけは出来たんや。
そんな自分を心の中で少しだけ褒めた瞬間、呆れた顔の運転手さんに京太郎君がそっと近づいていく。
そのままチケットの確認と荷物の収納を済ませた彼は、うちへとそっと振り返って… ――

京太郎「漫!愛してるからな!!」
漫「ば…っ!!」

そう大声で叫ぶ彼にうちの顔が一気に真っ赤へと染まった。
それが一体、羞恥心によるものなのか、或いは興奮や嬉しさによるものなのかは自分でも分からへん。
ただただ、顔が熱く、そして動悸が激しくなって堪らへん。
ドクドクって胸の奥が疼くようなその熱にうちが思わず声をあげた瞬間、彼は逃げるようにバスの中へと入っていき…うちの視界から消えた。

漫「もう…アホな子やねんから…♥」

結局、最後の最後までうちの事を引っ掻き回していった憎たらしい恋人。
けれど、その憎たらしさがうちにはとても嬉しく…そして愛おしく思えるんや。
勿論、一人残されたうちにだけ周囲からニヤついた視線が向けられるのは腹立たしいし、拗ねたくなる。
しかし、それは京太郎君なりにうちを励まそうとした結果なんや。
それを思えばどうにも頬がにやけ、目尻も垂れ下がってしまう。


漫「(でも…うちはこのままじゃ終わらへんよ)」

そうやって蕩けた表情を見せる自分の頬を両手で抑えれば、微かに熱が伝わってくる。
もう冬に片足突っ込んだ今の時期でもはっきりと感じられるその熱に、うちは一つ覚悟を固めた。
何だかんだでうちは結構、負けず嫌いな方なんや。
宮永咲を中核とする清澄へのリベンジを心に強く誓うくらいのその気性は、今回の屈辱をそのままにしておけへんってそう告げとる。

漫「(次は…うちが絶対、長野に行くからね)」

勿論、京太郎君にあそこまで言わせといて、バイトするほどうちは強情な女やない。
でも、これまでコソコソと貯めこんどった貯金を切り崩せば、一回くらいは不可能やないやろう。
その為には親に頭を下げて色々とやらへんったらあかんけど…まぁ、それは正直、今も変わらへん。
今だってデート費用を特別会計に含んでもらえるように、うちは親 ―― 特におかんには絶対服従の立場やねんから。

漫「(それで…今度は…うちが愛してるって言うんやから…っ♥)」

それで…うちと同じ屈辱と…そして嬉しさを京太郎君に与える。
そんな未来予想図にうちはさらに緩んだ頬から手を離し、ぐっと握り拳を作った。
瞬間、うちの前でゆっくりとバスが発進を始め、緩やかにバスターミナルから出て行く。
それをじっと見送りながらも、さっきほどの寂しさは感じひん。
それはきっと今、うちの中ではっきりとした次の目標が定まったからやろう。

漫「(そ、それに…まぁ…ご、ご両親にも挨拶くらいしとかへんかったらあかんし…)」

勿論、うちだって京太郎君が、神代さんを婚約者やって紹介しとる事くらい知っとる。
その上でうちを紹介なんかしたら、即家族会議もんやろう。
けれど、何れはいろいろな意味でお世話になる人なんやから、早い内に顔見せくらいはしときたい。
うちの事情を説明する訳にはいかんけど…まぁ、先輩として紹介して貰うくらいやったらええやろう。

漫「(あはは…今更やけど…うち…凄く重い女になっとるなぁ…)」

まだ何も本決まりになっとらへんのに、ご両親への挨拶まで視野に入れ始めとる自分。
それに自嘲めいた感情と共にため息を吐きながら、うちはそっと握り拳を解いた。
けれど…現実、うちが京太郎君以外と結婚する気がまったくあらへん。
それが若さや恋愛初心者故の盲目さなんかは、うちには判別がつかんかった。
でも、京太郎君から見捨てられた時点で、うちの人生はもう終わったも同然。
そう思う気持ちは弱くなるどころか、こうして彼を見送った今、より強くなっとった。

漫「(代行の言うてた事…笑えへん…けど…)」

まるで自分の全てを恋に注ぎこむような重苦しい女。
恋愛に憧れこそすれ、特定の誰かを好きになった経験のなかった一年前のうちからは、今の姿は信じられへんものやろう。
でも、それを改めるつもりがあるかと言えば、答えは否やった。
だって…一年前のうちは京太郎君に出会った事もないただの小娘なんやから。
京太郎君によって恋の甘さも、そしてセックスの気持ち良さも教えこまれたうちはもうその頃には戻れへん。
京太郎君と出会ってからうちが得たものはどれもこれも宝物で、決して手放したくはないものやねんから。


漫「(まぁ…何はともあれ…)」

そう心の中で一区切りしてから、うちはベンチからゆっくりと立ち上がった。
ネオンで明るく照らされるそこにはもう次のバスを待つ人達が現れ、各々に会話を始めている。
その中にはうちと同じく遠距離恋愛中のカップルもおるんか、とても寂しそうな雰囲気が伝わってきた。
そんな彼、或いは彼女らに共感をしながらも、うちはその場からそっと歩き出す。
京太郎君がおらへんようになった今、そこはうちのいる場所やないんや。

漫「(とりあえず…京太郎君にメール出しながら…)」

家に帰ってオナニーして…キスの後、放置されて疼く身体を慰めよう。
そう考えながら歩く足取りは軽く、また気分も高揚しとった。
勿論、また京太郎君と会えへん日々が続くのは寂しいけれど、でも、それ以上にうちは次が楽しみなんやろう。
京太郎君の驚く顔や拗ねる顔を想像するだけで胸の中がウキウキで満たされるくらいに。

漫「(本当…罪作りな子やね…京太郎君…♥)」

寂しさも、ウキウキも、愛しさも、小憎たらしさも。
うちの中の感情全部を奪っていくような愛しい人にうちは一つ心の中で言葉を浮かべる。
けれど、それも何処か艶っぽいものになってしまったんは、その中で一番、強いのは愛情やからやろう。
始まりこそ異常やったけれど…今はもううちは本気で京太郎君の事を愛してる。
その実感にうちは頬を再び緩めながら、長野襲撃の計画をゆっくりと練り始めるんやった。





【System】
上重漫の屈服刻印がLv4になりました。
上重漫は完全に虜になっているようです。
上重漫の長野襲撃まで後 ――