咲「ねえ、京ちゃん……ブランコ乗らない?」

    京太郎「ブランコォ?」

    いつもの帰り道。
    公園の前を過ぎようとしたところで咲がそんなことを言い出した。

    京太郎「どうしたんだよ、突然」

    咲「えっと……なんとなく目に入って、懐かしいなあって……」

    高校生になってから毎日一緒に帰ったわけではないが、
    2人で帰るのは当然初めてというわけでもない。

    咲「ダメ……かな?」

    京太郎「ダメじゃねえけど……」

    咲「……」ジッ

    京太郎「うっ……」

    咲と知り合ってからというもの、俺はこの目に弱い。
    こいつは小動物みたいな見た目と雰囲気を持っているくせに、
    あまり人に何かをねだるということをしない。
    滅多にしないから、叶えたくなってしまうのだ。

    京太郎「はぁ、わかったよ」

    咲「ほんと!? やった!」ピョンッ

    嬉しさからか、咲が小さく跳ねた。
    まあ、この年になって乗るのが恥ずかしかっただけで、断る気はなかったが……
    それにしても……

    京太郎(今のピョンッって……可愛かったな)

    これを見れただけでも咲のお願いを聞いてよかったと思う。
    胸がないだけで見た目はかわいいからな、こいつ。

    京太郎「おお! ブランコってこんなに小さかったっけ!?」

    京太郎「ははは! いつ以来だ、ブランコに乗ったの!?」ギィコ

    京太郎「俺はブランコを舐めていたようだ! よーし、今なら一回転できそうな気がするぜ!」グワン グワン

    京太郎「いって!? ズッた!! 足ズッた!!」ガッ

    ブランコに座った瞬間、記憶とのギャップに思わずはしゃぐ。
    楽しいじゃないか、ブランコ。

    京太郎「気をつけろ、咲! 思ってる以上に足を上げないとひっかk……どうした、咲?」

    一旦、ブランコを止めて話しかける。
    咲は自分から誘ったくせにブランコの前に黙って立ったままだ。
    何だろう、この空気。
    今度はテンションのギャップに思わずうめき声を上げてしまいそうだ。
    しばらく咲はこちらをチラチラ見ていたが、やがて何かを決心したような顔をすると……

    京太郎「お、おい! 咲、なんでこっちに来るんd……」

    咲「京ちゃんはじっとしてて……」

    ギシ

    京太郎「……」

    咲「……」

    京太郎「あのぉ……咲さん?」

    咲「な、なにかな……京ちゃん?」

    京太郎「なんで隣のブランコに乗らずに、俺の上に座っているんでしょうか?」

    咲「ふ、二人乗りしたかった……から」

    京太郎「そ、そうか……」

    咲「……」

    京太郎「なあ、咲。二人乗りはいいんだけど、立ったほうがよくないか?」

    咲「た、立ったらスカートの中が見えちゃうでしょ!?」

    咲「そんなに女の子パンツが見たいなんて、京ちゃんは変態さんなんだから!」

    京太郎「バ、バカなことをいうんじゃねえ! そんな気全然ないわ!」

    咲「だったらこのままでもいいでしょっ!?」

    京太郎「いや、でも……」

    咲「いいから早く漕ぐ!」

    京太郎「はい!」

    ギィコ ギィコ ギィコ

    咲「……」

    京太郎「……」

    京太郎(なんだこれ!? すげえ恥ずかしい!!)

    しばらく漕いでいたが、二人とも無言のままだ。
    何か話さないと、咲の感触に集中してしまう。
    しかも女の子のいい匂いが至近距離からするし、ブランコの風にも乗ってくるし……
    これはまずい。
    何か話さないと……

    京太郎「そ、そういえばさぁ~……えぇと……」

    咲「京ちゃん」

    京太郎「お? おう、なんだ!?」

    必死に話題を探していると、咲が話し始めた。

    咲「京ちゃん、ありがとね」

    京太郎「え? ああ、いいってこんなお願いならいつでも……」

    咲「そうじゃなくて」

    京太郎「ん?」

    咲「あの日京ちゃんに麻雀に誘われたから、いろんな人と仲良くなれたし」

    咲「お姉ちゃんとのことも前向きになれた」

    京太郎「いや、それはお前の……」

    咲「それだけじゃない……」

    咲「高校生になる前から、人と話すのが得意じゃない私にいつも話しかけてくれた」

    咲「きっと京ちゃんがいなかったら、ただ本を読んで過ごす高校生活になってたと思う」

    咲「今がこんなに楽しいのは京ちゃんのおかげ……」

    咲「だから……ありがとう、京ちゃん」

    京太郎「えっ? おい、近っ……」

    チュッ

    京太郎「……」

    咲「……」

    京太郎「あの……」

    スタッ

    咲「わ、私、先に帰るね! 今日はありがとう///」

    顔を真っ赤にした咲はそう言って、早足で歩いていってしまった。
    きっと俺の顔も間違いなく赤くなっているだろう。
    まさか咲相手にこんな気持ちになるとは思わなかった。
    まったく、あいつは……

    京太郎「お~~い、咲ぃ!! カバン、忘れてるぞー!」

    咲「あわわわわっ///」



    カンッ