http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1355052532/


キーンコーンカーンコーン

京太郎「……むにゃ……んん……」

京太郎(あれ……俺いつの間に寝て……)

京太郎「……ふわぁあ……」

京太郎(うわ、肩いてー)コキコキ

「ねえ、部活決めたー?」「ううん、まだー」

京太郎(は……? 部活?)

「俺はやっぱり麻雀部かなぁ」「なんだよ、お前も福路先輩目当てかよーw」

京太郎(なんなんだ……この高校入りたての懐かしい感じは……)

京太郎(つか、あれ……? なんか教室の雰囲気がいつもと違うぞ……?)

京太郎(クラスの連中も見たことない奴ばかりだし……)

京太郎「うーむ……」

京太郎(いったいどうなってるんだ……?)

京太郎(ちょっと外の様子見てくるか……)ガタッ

京太郎「……」スタスタ

ワイワイ...ガヤガヤ...

京太郎(ふむ……明らかにここ清澄じゃねえな)

京太郎(俺はいつの間に別の学校に紛れ込んだんだ……?)

京太郎「……」

京太郎(仕方ない。誰かに聞いてみるか……)

??「……」スタスタ

京太郎「あの……すみません」

??「えっ、私ですか……?」

京太郎「ええ、ちょっとお聞きしたいんですが……ここって何高校でしたっけ?」

??「へ……?」

京太郎「あっ……いや、そのですね……」

京太郎(お、俺はいったい何してんだ……自分の今いる場所の名前を聞くとか明らかに不審だろ……)

京太郎「え、えーっと……」

??「ここは風越高校ですが……」

京太郎「え……か、風越?」

??「はい。もしかして学外の方でしょうか? あ、でも制服……」

京太郎「ん……おわっ!」

京太郎(俺の制服が学ランからブレザーになってる……!? な、なんで……)

京太郎(つか、今この人風越とか言わなかったか……? 風越っつったら、地区予選で咲たちと戦った長野の名門校……)

??「えっと……どなたか先生をお呼びしましょうか?」

京太郎「ああ、いや結構です! 変なこと聞いてすみませんでした!」

??「は、はぁ……」

京太郎「そ、それじゃ……!」

スタスタ...

京太郎(くっ……ますますわけがわかんねえ……)

京太郎(ていうか今の人……どっかで……)

京太郎「……ああああああああああああっ!!」

ダダダッ

京太郎「あの~! すみませ~ん!!」

??「え……きゃあっ!!」

京太郎「っと……!! はぁ、はぁ……す、すみません」

??「い、いえ……平気です」

京太郎「えっと、あの……あなたは福路美穂子さん……ですよね?」

美穂子「そ、そうですが……」

京太郎「やっぱり! なんで忘れてたんだ、俺!」

美穂子「え、えっと……」

京太郎「あ、すみません。つい興奮しちゃって……」

京太郎「実はですね……俺、なんでか知らないけど、気づいたらこの学校にいまして……」

美穂子「は、はぁ……」

京太郎「一体どういうことなんですかね……?」

美穂子「え……えっと……」

美穂子「―――つまり……居眠りから覚めたら全く別の高校にいた、ということですか?」

京太郎「はい。ちなみに今って何日ですか?」

美穂子「4月の7日ですけど……」

京太郎「ほ、ほんとですか!?」

美穂子「え、ええ……はっ、まさか……」

京太郎「はい、時間も遡ってますね……俺が元いた時間は6月の15日、長野地区予選が明けてすぐの頃です」

美穂子「と、とても信じられませんね……」

京太郎「俺自身、実感わかないっすよ……ていうかなんでこんな目に……」ガクッ

美穂子「き、気を落とさないでください……えっと……」

京太郎「あ……俺、須賀京太郎って言います!」

美穂子「須賀君……ですか。私は風越高校3年の福路美穂子です……って、これはさっきも言いましたよね?」

京太郎「福路先輩のことは俺も知ってますよ! なんったってあの名門風越麻雀部のキャプテンっすから!」

美穂子「そ、そんな大した身分ではありませんが……///」

美穂子「須賀君がいた高校はどこなんですか?」

京太郎「清澄っていうんですけど……たぶん知りませんよね?」

美穂子「ええ、ごめんなさい……」

京太郎「いやいや、別にいいですって! なにせ、今年が団体戦に出るの初なんすから!」

美穂子「まだ無名の高校、というわけですね」

京太郎「そうっすね。でもまぁ地区大会では……」

京太郎「っ!」ハッ

美穂子「? どうかしましたか?」

京太郎「い、いえ……なんでもないっす」

京太郎(今は地区予選も始まってない時期なんだよな……ってことは、予選通過したのがうちだってばらすのはさすがにまずいよな……?)

京太郎「そ、そういえば! 風越って女子高じゃありませんでしたっけ?」

美穂子「女子高、ですか? うちは創立以来ずっと共学制をとっていたと思いますが……」

京太郎「へえ……」

京太郎(ま、そうなるよな……じゃなきゃ俺はとっくに変質者扱いだろうし)

美穂子「あの……立ち話でもなんですし、よかったらうちの部室へ行きませんか?」

京太郎「部室って……もしかして麻雀部のっすか!?」

美穂子「ふふ……他にどこがあるっていうんですか?」

京太郎「そ、そうっすよね! すんません」

美穂子「いいえ。それじゃ行きましょうか?」

京太郎「は、はい!」

―――――――――――――――――――

スタスタ...

京太郎「……」チラッ

美穂子「……」

京太郎(しっかし……めっちゃかわいいなぁ、福路さん……)

京太郎(こんな美人さんと普通に会話できるなんて、夢にも思ってなかったぜ……
      これだけでもこの変な現象に巻き込まれたかいがあったってもんだ)

京太郎(とりあえず今は情報収集だ……決してやましい気持ちなんてないからな?)

美穂子「須賀君、つきましたよ」

京太郎「! こ、これが風越麻雀部の部室……」

コンコン...ガチャ

美穂子「すみません、遅れました」

「「「「お疲れ様です、キャプテン!!」」」」

美穂子「ええ、みんなお疲れ様」ニコッ

京太郎「ぉお……」

京太郎(部室ひれー……ってか、部員の数すげー……うちとは雲泥の差だなこりゃ)

京太郎(しっかし今のハモり具合……福路さんの人望っぷりも並じゃねえな……)

??「こらぁっ!! 福路ッ!!」

京太郎「っ!」ビクッ

美穂子「は、はい……!」

??「てめえ、私より遅れて部室にくるたぁいい度胸してんなぁ」

美穂子「す、すみません……」

??「キャプテンって立場をもう少し自覚しろ!! てめえがそんなんだと、後輩に示しがつかねえだろうが!!」

美穂子「も、申し訳ありません……久保コーチ」

京太郎「こ、こ……」

京太郎(こ、こええええ~っ……こんな人がいんのかよ……)

京太郎「ふ、福路さん……大丈夫っすか?」

美穂子「え、ええ……ごめんなさいね」

久保「んあ? 誰だぁ、そいつは……」

美穂子「あ、この方は……その……」

京太郎「え、えっと! 麻雀部の見学にきました、1年の須賀京太郎っす! よろしくお願いします!」

久保「なんだ、見学かよ……んじゃ―――」

久保「池田ァ!!」

??「にゃ!!?」

久保「お前、どうせヒマだろ? そいつの面倒見てやれ。福路はこっちへこい、少し話がある」

美穂子「は、はい」

京太郎「え……ちょ」

美穂子「ごめんなさい、須賀君。話が終わったらまた来るから」

美穂子「……華菜、須賀君のこと頼んだわよ?」

池田「ん……まぁ、キャプテンの頼みなら仕方ないし」

池田「……お前、名前はなんていうんだ?」

京太郎「あ、須賀京太郎っす」

京太郎(いやさっき言ったじゃねえか……)

池田「ふーん……」

京太郎「……」

池田「……わかった、ちょっと来いし」

京太郎(?? なにがわかったんだ? ……まぁいいか)

京太郎「……」スタスタ

池田「……みはるん、ドムっち、文堂! 新入りだし!」

京太郎「い、いや俺……まだ入部したとは……」

未春「あ、どうもこんにちはー」

京太郎「あ、どもっす」

純代「……」

京太郎(い、威圧感のある人だな……)ペコリ

文堂「1年の文堂星夏です。よろしくお願いします」

京太郎「あ、こちらこそ……」

京太郎(この人は同学年か)

池田「んで、私が風越のナンバー2……池田華菜だし!」

未春「もう、華菜ちゃんったら……こういう子なの、気にしないであげてね?」

京太郎「は、はい……」

池田「ふふ……さあ、打ってみろだし!」

京太郎「あれ、池田……先輩はいいんですか?」

池田「ん? お前じゃ私の相手にならないから、この三人で十分だし!」

京太郎「あ、そうっすよね……はは……」

京太郎(こ、こいつうぜえ……)

―――――――――――――――――――

京太郎「うーん……」カチッ

池田「はぁ!?」

京太郎「っ!」ビクッ

京太郎「あ、あれ……違いました?」

池田「違うとか以前にありえないし! なんで8索の方を捨てないし!」

京太郎(い、いや……手牌ばらすなよ!)

京太郎「す、すんません……」

池田「もういいし! ちょっとそこ変われし!」

京太郎「え、ええっ!?」

京太郎(な、なんなんだよちくしょう……)

未春「ちょ、ちょっと華菜ちゃん。それはあまりにもひどいよ……」

京太郎(こ、この人は天使だ……!)

池田「ひどいのはこいつの打ち方だし! 華菜ちゃんが手本を見せてやるんだし! ありがたく思え!」

京太郎(そ、それに比べてこいつは……)ピキピキ

―――――――――――――――――――

純代「……」スッ

池田「それロンだし! タンヤオ平和一盃口ドラドラの満貫だし! 」

純代「はい」

未春「あーもう。華菜ちゃんは相変わらず強いなぁ」

華菜「へっへーん、どんなもんだし! 見たか、新入り! これが王者の打ち筋ってやつだし!」

京太郎「さ、さすがっすね……」

京太郎(く、悔しいけどすげえ……風越ナンバー2の名は伊達じゃないってことか)

華菜「この華菜様がお前のことをこれからみっちり特訓してやるし!」

京太郎「い、いやだから俺……」

美穂子「……お待たせ、須賀君。どう? 部の雰囲気には慣れたかしら?」

池田「キャプテン!」京太郎「福路さん!」

池田「むっ……お前、キャプテンのことを軽々しくさん付けで呼ぶなし!」

京太郎「あ、すんません」

美穂子「いいのよ。むしろ親しみが籠ってるようで嬉しいわ」ニコッ

京太郎「っ!」ドキッ

京太郎(この人はなんてお優しい方なんだろう……! 女神だ……女神がご光臨召されたぞ……!!)

池田「ダメだし! ちゃんとキャプテンって呼ぶし!」

京太郎(ぐ……うっせーなこいつは……)

美穂子「それじゃ、間をとって『福路先輩』でどうかしら?」

京太郎「あ、じゃあそう呼ばせてもらいます!」

池田「なっ、それ全然間とってないし!」

美穂子「いいじゃない。華菜もそう呼んでいいから……ね?」ナデナデ

池田「う……わ、わかったし」

京太郎(こいつ、福路先輩には頭が上がんないのか……ぷふっ)

美穂子「あら、麻雀打ってたのね? どうだった?」

京太郎「あ、いや……俺は途中までしか打ってないんですけど」

池田「後半は私が代わって手本を見せてやってたんです!」

美穂子「あら、そうなの。でも、みんな強かったでしょう?」

京太郎「はい! やっぱ風越ってすごいなって思いました!」

美穂子「ふふ」ニコッ

池田「だろ? もっと褒めろし!」

京太郎(く、くそ……こいつ調子づきやがって)

京太郎「……俺ももっと強くなりたいっす」

池田「まぁムリだな」

京太郎「な、なんだとぉ!?」

池田「おっ、やるかだし?」

美穂子「や、やめなさい二人とも!」

京太郎「す、すみません……」

京太郎(やべ……ついカッとなっちまった)

美穂子「ほら、華菜も」

池田「ふ、ふん……私は本当のことを言ったまでだし」

京太郎(こ、こいつ……!)

池田「―――けどまぁ……私が鍛えてやるから、そしたらほんの少しはマシになるかもしれないし」

京太郎「え……」

美穂子「あら、じゃあ須賀君も入部してくれるのね?」パァア

京太郎「あ、いや、その……」

美穂子「?」ニコニコ

京太郎「うっ……」

京太郎(このまぶしいほどの笑顔……断れねえ!)

京太郎「はい……ぜひ入部させてください!」

池田「よし、許可するし!」

京太郎「なんでお前がいうんだよ!」

ハハハッ

美穂子「じゃあ決まりね。須賀君、入部届取りに行きましょうか?」

京太郎「あ、はい!」

池田「須賀、キャプテンに失礼のないようにしろし!」

京太郎「しねえよ!」

バタン

京太郎「ふぅ……」

美穂子「ごめんなさいね。でも、華菜も悪い子じゃないのよ?」

京太郎「え、ああ……はい」

京太郎(悪い子じゃない、ねえ……どうなんだか)

美穂子「あと須賀君、例のことだけど……」

京太郎「あ、はい」

京太郎(そういやすっかり忘れてたな……)

美穂子「須賀君はもちろん、元いた世界……といっていいのかしら?――に戻りたいわよね?」

京太郎「え、ええまぁ……」

京太郎(正直、こっちも悪くないんじゃないかと思えてきたけど……あの猫女以外は)

美穂子「でも今は戻り方がわからない……」

京太郎「そうっすね……」

美穂子「……正直私にもどうしたらいいのかわからないわ」

美穂子「けど、きっと戻る方法は見つかると思うの! だからその……あまり気を落とさないで?」

京太郎「は、はぁ」

京太郎(ま、あんま気落としてないんだけどな)

美穂子「私もできる限りの手助けはするから……ね?」

京太郎「あ、ありがとうございます」

京太郎(この人はほんと……誰に対してもこんな優しいんだろうな)

美穂子「いいのよ、だって……」クルッ

美穂子「須賀君はもう、私の大事な後輩なんだから」ニコッ

京太郎「っ!」バッ

京太郎(やばい……やばいだろ今のは……っ!!)

京太郎(お、おおおお落ち着け俺……動揺するな……)ドキドキ

美穂子「す、須賀君……?」

京太郎「い、いやなんでもないっすよ!! あはは……」

美穂子「そう? それじゃ、行きましょうか?」ニコッ

京太郎「は、はい!」

―――――――――――――――――――

こうして、俺の風越麻雀部での高校生活がスタートした―――

ダダダッ

京太郎「す、すんません! 遅れました!」

久保「須賀ァ!! てめえ、なにしてやがんだ!!」

久保「外回り10週走ってこいッ!!」

京太郎「ま、マジっすか……」

久保「あぁ? なんか文句あんのか?」

京太郎「あ、いえ……ないっす」

久保「んじゃとっとと行けッ!」ゲシッ

京太郎「は、はいぃ!」

―――――――――――――――――――

京太郎「はっ、はっ……」

京太郎「くっそ……あの先公マジで女かよ……っ」

京太郎「つか、文化部なのに……外周って……っ」

??「おっ……お前は須賀!」

京太郎「その声は……池田ァ!」

池田「いい加減さん付けしろし!」

京太郎「うっせーな……って、お前も外周かよ」

池田「うっさいし! ほんの2,3分遅刻しただけだし!」

京太郎「へ、ざまあねえな!」

池田「お前に言われたくないし!」ボカボカッ

京太郎「いてえよ!」

池田「それよりお前、もう見たのか?」

京太郎「なにをだよ」

池田「なにって部内ランキングだし!」

京太郎「部内ランキング……?」

池田「ここ一か月間の校内試合の結果を集計した、部内での実力順位だし!」

京太郎「いや見てないな……ってかそんなのあるのか」

池田「お前ほんとに麻雀部の一員かだし!」

京太郎「うっせ……でもそのランキングって何の意味があるんだ?」

池田「お前ほんとに無知無学だし……」

池田「いいかよく聞けし! そのランキングの上位5位までが今度のインハイ団体戦に出場できるんだし!」

京太郎「なっ……そういうことか!」

池田「私は絶対上位に入ってるから問題ないけど、お前はどうなんだし!」

京太郎「お、俺は……」

京太郎(風越麻雀部は女子の比率が圧倒的に多い……だが、少なからず男子部員もいる)

京太郎(全学年合わせて12人だったか……?)

京太郎(正直、俺はその中でも強い方とは言えない……同学年の奴にすら負け越す始末だ)

京太郎「俺は……きついかもしれない」

池田「なんだし、情けない奴だな! あれだけ私が鍛えてやったのに!」

京太郎「う、うっせえな! 俺だって努力はしてんだよ!」

池田「努力したなんて誰にでも言えることだし! 大事なのは結果だし!」

京太郎「池田のくせに偉そうなことを……!」

池田「お前、それ先輩に言う台詞かし!」

京太郎「うっせチビ!」

池田「なんだと、このでくの坊!」

京太郎「猫女!」

池田「金髪!」

京太郎「バカ!」

池田「無能!」

京太郎「……」ズーン

池田「そ、そんなに落ち込むなし……」

―――――――――――――――――――

京太郎「ただ今戻りましたー」

池田「戻ったし」

美穂子「おかえりなさい二人とも、冷たい紅茶があるけど飲む?」

池田「わーい! ……って久保コーチは!?」キョロキョロ

美穂子「職員会議で今はいないから大丈夫よ」ニコッ

池田「よっし! それじゃいただきますし!」ゴキュゴキュ

池田「ぷはーっ! 生き返るし!」

美穂子「須賀君もどうぞ」コトッ

京太郎「あ、ありがとうございます!」

京太郎「……」ゴクゴク

京太郎「お、おいしい……!」

美穂子「そう、それはよかったわ」ニコッ

京太郎「っ!」ドキッ

京太郎(いつまでたってもこの人の笑顔には慣れないぜ……)ズズッ

ワーワーガヤガヤ...

池田「あれは……男子の校内ランキングだし?」

美穂子「そうみたいね、須賀君はもう見た?」

京太郎「い、いいえ……まだです」

京太郎(……)

池田「見に行ってこないのか?」

京太郎「俺はいいよ……どうせランク外だ」

美穂子「……」

池田「お、お前なぁ……」

美穂子「須賀君」

京太郎「……? は、はい?」

美穂子「どうしてそんなことを言うの?」

京太郎「ふ、福路先輩……?」

美穂子「ランク外かどうかなんて見なければわからないでしょう? どうしてそれを確認もせずに諦めたりするの?」

京太郎「そ、それは……」

美穂子「……見てきましょう? 私も一緒に行ってあげるから」

京太郎「は、はい……」

池田「……」

スタスタ...

美穂子「須賀君、見える?」

京太郎「……んと……ぁ」

京太郎(なんだよ……やっぱランク外じゃん)

京太郎「……ランク外でした。やっぱり……」

美穂子「……そう」

京太郎「だから言ったじゃないですか。俺なんかどうせ……」

美穂子「須賀君!」

京太郎「っ!?」ビクッ

美穂子「結果はどうあれ、それを認めるのと認めないのとでは、とても大きな違いよ」

京太郎「福路……先輩……」

美穂子「結果を認めるということは、自分を見つめること。過ちを正すこと。次へ活かすことなのよ?」

美穂子「それをしないということは、自分自身から逃げているのと同じだと、私は思うわ」

美穂子「須賀君はそんな弱い人なんかじゃないでしょう?」

京太郎「……」

京太郎(そうだよ……なにやってんだ俺。福路先輩の言うとおり、俺はただ逃げてるだけじゃないか……!)

京太郎「先輩……すみませんでした、俺……」

美穂子「……」ニコッ

美穂子「須賀君、今の『ごめんなさい』は、あなたが、あなた自身の力で自分の間違いを認めたということ。それはとても素晴らしいことよ?」

京太郎「……はい」

美穂子「大丈夫、ちゃんと間違いを認めて謝ることのできるあなたなら、きっと頑張れるわ」ニコッ

京太郎「はい……福路先輩、俺がんばります!」

美穂子「ふふ」ニコッ

京太郎「……池田! 今から一局打とうぜ!」

池田「え……あ、ああ! 望むところだし!」

美穂子「……」ニコッ

京太郎「……」カチッ

未春「……これ、かな」カチッ

京太郎「吉留先輩、それロンっす!」バララッ

未春「あちゃー、そこで待ってたんだ」ガクッ

京太郎「へへ、すんません」

池田「……」

池田(……須賀の雰囲気がいつもと違うし。やっぱりキャプテンにお説教を受けたからかな……)

池田「……しかし、キャプテンがあんな風に怒るところは初めて見たし」

未春「え、キャプテンに怒られたの? 華菜ちゃん」

池田「私じゃないし! 須賀だし!」

未春「へえ……それは確かに意外だね」

純代「……ん」

京太郎「そうなんすか? たしかにイメージないっすけど」

未春「ほら、ここ風越麻雀部には久保コーチがいるでしょ?」

京太郎「はい……それがどうしたんすか?」

未春「久保コーチ……あまり大きい声では言えないけど、とても厳しいじゃない?」

池田「あ、みはるんそれコーチに言っちゃうし」

未春「ちょ、華菜ちゃん! やめてよ!」

池田「じ、冗談だし……そんなメガネ鈍く光らせて顔近づけないでほしいし」

未春「んもう!」

純代「……と、こんな具合に部員から恐れられている」

池田「ドムっちうまくまとめたし」

京太郎「まぁ、たしかに怖いっすもんね」

未春「うん……でもその代り、キャプテンは私たち部員にすごく優しく接してくれるでしょ?」

未春「コーチもたぶん私たちのためを思って叱ってくれる……でもそれだけじゃメゲちゃう子もいると思う」

未春「だからこそ、コーチがくれない『暖かさ』をキャプテンが与えてくれてるんだと思うの」

京太郎「なるほど……アメと鞭ってやつですか」

未春「なんかイヤな言い方だけど、つまりはそういうことだね」

池田「キャプテンはそういうこともちゃんと考えてるんだし」

京太郎「そっか……すごいんすね、福路先輩は」

池田「だろ?」

未春「華菜ちゃんが威張ることじゃないでしょ」

京太郎「でもそれじゃ、なんで俺を叱ってくれたんすかね?」

池田「悔しいけど……たぶん、それだけキャプテンが須賀のことを考えてくれてるってことなんだと思うし」

京太郎「俺のことを……?」

池田「勘違いするなし! あくまで『先輩として』だし!」

未春「キャプテンは優しいのは、ときに叱ることの大事さを知っているから」

未春「だからこそ、キャプテンは部員に優しくできるし、必要なときは叱ることもできる」

京太郎「その必要なときが、さっきだった……ってことっすね」

未春「うん」

京太郎「……そっか、俺もっと先輩に感謝しないといけないな」

池田「ああ、一日一回土下座してもいいくらいだし」

京太郎「マジでそうかもな……」

未春「大丈夫だよ。キャプテンだって須賀君が感謝してることくらいわかってるから」

京太郎「そ、そっすね」

純代「ん」

京太郎「しかし……」

未春「うん?」

京太郎「みんな、福路先輩のこと、本当に大好きなんすね」

未春「えっ///」

純代「……///」

池田「な、何を突然言い出すんだし!」

京太郎「いや、キャプテンもすごいけど、そのキャプテンを理解してる先輩らもすごいなぁって……」

京太郎「やっぱそれだけキャプテンのこと好きで、信頼してるってことじゃないっすか」

未春「……まぁそうなるかな」

池田「当たり前だし!」

純代「ん」

京太郎「俺も早く、それくらいキャプテンと信頼し合えるような仲になりたいっす」

池田「そうなるには、須賀はあとレベル50くらい上げないとだめだし!」

京太郎「わかんねえよ!」

ハハハッ

―――――――――――――――――――

ガチャ

池田「あ、久保コーチが帰ってきたし!」

久保「ここに男子の部内ランキングを掲示してある! 全員確認したな?」

「「「「はい!!」」」」

久保「今日はもう解散とするが、代表に選ばれた者は、あとで話があるから残るように!」

「「「「はい!!」」」」

久保「それでは、今から女子のランキングを掲示する!」

ザワザワ...

未春「わ、私……大丈夫かなぁ」

池田「き、緊張なんてしてないし……!」

純代「……」ブルッ

京太郎「みなさん、自分を信じましょう!」

久保「女子の上位5名は私が直に読み上げる! 呼ばれたら返事をしろ!」

久保「まず1位……福路!」

美穂子「はい」

久保「2位……池田ァ!!」

池田「はいだし!」

久保「3位……吉留!」

未春「は、はいっ!」

久保「4位……深堀!」

純代「んっ!」

久保「そして5位……文堂!」

文堂「え……」

未春「あ、文堂さん……ランクインできたんだ!」

文堂「き、キャプテン……わ、私……!」ブルブル

美穂子「やったわね、文堂さん!」ダキッ

文堂「あ、ありがとうございます……! うぅ……っ」ボロボロ

池田「文堂がんばってたもんな……よかったし」

未春「そりゃもちろん、部員全員が一生懸命だったとは思うけど……」

純代「……文堂は常にひたむきで、真っ直ぐ前を向いていた」

京太郎「……」

京太郎(すげえな、文堂さん……俺と同じ1年なのに)

京太郎(俺も……負けてらんねえな)グッ

池田「須賀も文堂見習ってがんばれし」

京太郎「言われなくてもそうするよ!」

未春「その意気だよ、須賀君!」

純代「ん」

久保「以上の5名は先ほど言った通り、練習後も部室に残るように! それでは、解散!」

ガヤガヤ...

京太郎「じゃ、俺先に帰ってますんで。がんばってください!」

池田「おう」

未春「また明日ね、須賀君」

純代「ん」

ガヤガヤ...

京太郎「……うっし、帰るか」スタスタ

久保「おい、須賀ァ!!」

京太郎「っ!」ビクッ

京太郎「な、なんすか……?」

久保「お前ちょっとこっちこい!」

京太郎「え、ええー……」

京太郎(俺……なんかしたかな……)

京太郎「……な、なんでしょうか?」ビクビク

久保「あぁ、そこ座れ」

京太郎「は、はい……」

久保「……今度、部で合宿を行うことは知ってるな?」

京太郎「え、ええ」

久保「実は、代表選手は、その後も合宿地に残って追加の強化合宿を行う」

京太郎「そ、それが……?」

久保「……お前も出ろ」

京太郎「は、はぁ……って、ええええっ!!?」

京太郎「な、なんでっすか!? 俺、代表じゃないのに!」

久保「うぬぼれんな……別に私にはお前を鍛えようとか、ましてや代表入りさせようなんて気はない」

京太郎「はぁ……」

久保「お前には、マネージャーとして合宿で働いてもらう」

京太郎「ま、マネっすか……?」

京太郎(前の俺と同じじゃねえか……)

久保「あぁ……買い出し・掃除・洗濯・料理……」

久保「選手たちのために、合宿中、必要となるであろう些事を休む暇もなくやってもらう」

京太郎「うっ……」

久保「なんだ、不服か?」

京太郎「……」

京太郎(以前の俺なら、ここで首を横に振るんだろうな……)

京太郎(そんでいいようにこき使われて、んで終わるんだ……)

京太郎(そりゃ、マネージャーってのが大事な仕事なのはわかるし、それが選手たちを支える重要な役回りだってことも理解してる)

京太郎「……っ」

京太郎(でも……今の俺は……)

京太郎(もっと強くなりたい……!! そう思ってる……!!)

京太郎(もっと麻雀打って、いろんな人の打ち筋見て勉強して、んで……!!)

京太郎(来年こそはここ・風越の代表選手になってやりてえ……!)

京太郎「……久保コーチ……俺」

久保「ん? なんだ、辞退するか?」

久保「それならそれで一向にかまわない。お前の他にも頼める奴はいくらでもいるからな」

京太郎「いや……俺、引き受けます!!」

久保「……ほう、そうか。わかった」

京太郎「ただ、その代りに条件があります……!」

久保「あ……? 条件?」

京太郎「俺にも練習、参加させてください……!!」

久保「……」

京太郎「俺、ランキングでは下から2番目でした。だからもちろん代表にはなれない……わかってます」

京太郎「……けど! 俺、悔しいんす! もっと強くなりたいんす!」

京太郎「ワガママだってのはわかってます! 代表の選手たちに迷惑をかけるってことも!」

京太郎「でも、せっかく同じ合宿地に行くなら俺……強い人たちととことん打ち合いたい!!」

京太郎「だ、ダメ……ですか……?」

久保「……」

美穂子「久保コーチ……私からもお願いします」

京太郎「ふ、福路先輩……!?」

久保「……」

美穂子「須賀君の意志は確かなものだと思います……私は彼の気持ちを尊重してあげたいです」

池田「私も協力するし!」

未春「私も!」

文堂「わ、私も……!」

純代「……ん」

京太郎「み、みんな……」

美穂子「先ほど男子の代表選手の方たちからも聞いてきましたが、みなさん歓迎するそうです」

京太郎「せ、先輩たちが……?」

美穂子「ええ」ニコッ

京太郎(みんな……俺なんかのために……)グッ

久保「……お前ら、大事な大事な地区予選前、最後の合宿だぞ?」

久保「こいつの相手をしてる時間……もっと他の有意義なことに使うべきじゃねえのか?」

美穂子「……」

久保「……須賀、お前だってそうだ。さっき言ったマネの仕事と練習……本当に両立できんのか?」

京太郎「……」

久保「どっちかがおろそかになっただけで、選手全員に迷惑が掛かんだ……それわかってんのか!?」

京太郎「わかってます! 絶対に逃げ出したり、弱音はいたりしません!」

京太郎「だからお願いします!!」

久保「……」

美穂子「コーチ……須賀君の腕はまだまだ未熟ですが、彼との対局を有意義な時間にするかしないか……
      それは私たち選手しだいだと思います」

美穂子「どんな対局にも意味はあります。学ぶ姿勢さえ怠らなければ、必ずそれは新しい発見につながると思うんです」

久保「……」

京太郎「……」

美穂子「……」

久保「……わぁったよ。許可する」

美穂子「……ありがとうございます」ニコッ

池田「よかったし、須賀!」バシッ

京太郎「え、ぁ……あ……」

京太郎「ありがとうございますっ、久保コーチ!!」ペコリ

久保「……ん。まぁ、がんばれよ」

未春「ふふ……」ニコニコ

文堂「やったね、須賀君!」

京太郎「ありがとう! 先輩たちも、ありがとうございます!」

純代「……礼などいらない。ともに高め合うのみ」

京太郎「はい……!!」

池田「そうと決まったら、さっそく強化合宿のスケジュールを組むし!!」

「「「「「おうー!!」」」」」

―――――――――――――――――――

そして強化合宿―――俺、いや俺たちは朝から晩までひたすら打ち込み、ときには温泉で一時の安らぎを得たりした

俺はやはり代表の選手たちにはそうそう適わず、見事なまでにフルボッコにされたが

それでも、その中で得たものは大きかったし、最終日の対局では後半、文堂さんと激しく打ち合うなどの飛躍ぶりも見せた






そして、ついに地区予選―――

―――――――――――――――――――

『―――圧勝ッ!! 風越高校――――ッ!!』

ガチャ

池田「楽勝!」

「おつかれっす!」「お疲れ様です!」

美穂子「お疲れ様、華菜」スッ

池田「ありがとうございます」

京太郎「よくやったな、池田!」

池田「もっと言えもっと!」

京太郎「よくやったなよくやったなよくやったな池田ァ!!」

池田「うるさいし! 黙れし!」ボカッ

京太郎「いてっ!」

久保「……福路」

美穂子「は、はい?」

久保「……」

美穂子「……久保コーチ?」

久保「……明日もこの調子でみんなを率いてやれ」

美穂子「……! はい!」

久保「……それと―――池田ァ!!」

池田「にゃあっ!?」

久保「なにがにゃぁだこの……」グリグリ

池田「にゃぁああああ……!!」

久保「へっ……よくやったな、次もこの調子で行けよ」

池田「へ……?」

久保「お前ら先戻ってろ」スタスタ

バタン

京太郎「あの久保コーチが……」

池田「ほ、褒めた……?」

未春「やったね、華菜ちゃん!」

文堂「久保コーチ、すごくうれしそうでしたね」

美穂子「華菜の頑張りが認められたってことよ、よかったわね」ニコッ

池田「な、なんか逆に気持ち悪いし……」

京太郎「お前聞かれたら殺されっぞ」

―――――――――――――――――――

京太郎「んじゃ、そろそろホテル戻りますか」

池田「今日は疲れたし! 早くお風呂浸かりたいし!」

文堂「このホテル、シャワーのみってなってますけど」

池田「え、なにそれ!? ふざけんなし!」

美穂子「まぁ明日一日くらい我慢しましょう……ね?」

池田「うぅ……ホテルマンに苦情申し立ててやるし……」

京太郎(ったく……男子の俺がいる前で風呂の話とかよく平気で……)

ガヤガヤ...

??「……」スタスタ

京太郎「え……」

京太郎「っ!!」クルッ

京太郎「……ま、まさか……」

京太郎(そうだ……なんで今の今まで忘れてたんだ、俺……)

京太郎「さ、き……」

咲「……えっ?」クルッ

咲「今、私の名前……」

京太郎「……」

京太郎(なんでだ……言葉が出てこねえ……)

和「どうしました? 咲さん」

優希「ん、どうしたんだじぇ?」

京太郎「み、みんな……」

咲「あ、あの……私の名前、呼びましたか?」

京太郎「っ!!」

京太郎(そっか……そうだよな……)

京太郎(薄々は気づいてたさ……俺だって)

咲「……?」

京太郎(心のどこかで恐れてた……だから思い出さないようにしてたんだ……)

京太郎(今まで通りに事が進んでいくなら、いつかは知らなきゃいけないことだったはずなのに……)

和「咲さん……誰ですか? この人」ジロッ

咲「知らないけど……私の名前呼んできて……」

優希「こっちじっと見て、気持ちわるいじぇ……」

久「どうしたのー? 行くわよー?」

咲「あ、はーい!」

京太郎(……みんな……完全に俺のこと忘れちまってるんだな……)

京太郎(いや、忘れたんじゃない……俺なんて“いなかった”んだ……)

京太郎(だって、俺は……)

池田「どうかしたか、須賀?」

60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/10 02:44:17 ID:WSJ5mdE10
京太郎「あっ、いや……なんでもない」

京太郎(そう……だって今の俺は……)

京太郎(……風越の一員だ……!!)

美穂子「そう、ならよかったわ」ニコッ

池田「早く行くし!」

京太郎「お、おう!」

京太郎(でも……これだけ、これだけは言わせてくれ……)

京太郎「咲……!!」

咲「え……な、なに?」

京太郎「……」

京太郎「がんばれよ、決勝!!」グッ

咲「……」ポカーン

京太郎「よし、行こうぜ」スタスタ

池田「ん? あぁ……」

京太郎(これでいい……これで……)

―――――――――――――――――――

その夜・ホテル

京太郎「明日はついに決勝か……」

京太郎(……戦うのは俺じゃねえけど)

京太郎「……」

京太郎「俺が風越にきてから、もう2か月か……随分いろいろとあったな」

京太郎「……」

京太郎(俺は……このままでいいのか……?)

コンコン

京太郎「はーい、開いてます」

「須賀君、入るわね?」

京太郎「え……」

ガチャ

美穂子「ごめんなさい、突然お邪魔して」

京太郎「ふ、ふふ福路先輩!? な、なんでここに!?」

美穂子「あ、もしかして本当にお邪魔だったかしら……?」アセアセ

京太郎「め、滅相もございません! ど、どうぞどうぞ!」

美穂子「あ、ありがとう」

京太郎「そ、それで……どうしたんすか?」

美穂子「ええ……ちょっとお話があってきたの」

京太郎「お、お話……?」

京太郎(お、お話ってまさか……)ドキドキ

美穂子「須賀君……さっき会場から出る途中で、ちょっと様子がおかしかったでしょう?」

京太郎「えっ……あ、あぁ……あれっすか」

京太郎(……んなわけねえよな……ええ、わかってましたとも)

美穂子「もしかして……あれが、須賀君の元いた学校のお友達……?」

京太郎「……ええ、そうです。さすが、察しがいいですね先輩は」

美穂子「……」

京太郎「あいつら、みーんなそろって俺のこと忘れちまってて……全く薄情な連中っすよ」

美穂子「……須賀君、やっぱり……」

京太郎「……」

美穂子「ううん……こんなこと聞くのは無粋よね」

京太郎「……」

美穂子「……須賀君」

京太郎「……なんすか、先輩」

美穂子「私ね……明日の決勝が終わったら、その……」

京太郎「……?」

美穂子「す、須賀君がいなくなっちゃうんじゃないかって……そんな気がして……」

京太郎「……俺が前の世界で記憶を失ったのが、その時点だからですか?」

美穂子「……」

京太郎「……ははっ、考えすぎですよ! 先輩は」

京太郎「俺はいなくなったりしません、だって俺は……」

美穂子「うん、わかってるわ……だけど……」

京太郎「……先輩、俺のことそんなに気にしてくれるんすね」

美穂子「だって……だって……」

美穂子「須賀君は……私の大切な後輩ですもの」

京太郎(大切な後輩……か)

京太郎「……先輩は、ほんとお人よしっすね」

美穂子「そんなことないわ……私は須賀君を失いたくないと思ってるもの。自分勝手でしょう?」

京太郎「……」

美穂子「須賀君は、本当は元の世界へ戻りたいと思ってるに決まってるのに……」

京太郎「……」

美穂子「……」

京太郎「……俺、先輩のこと好きっすよ」

美穂子「……えっ?」

京太郎「それに、池田や、吉留先輩や、ドムさん、文堂さん、久保コーチ……」

京太郎「他の部員の仲間も、みんな大好きです……風越さいこー!って感じです」

京太郎「こんなにもいい人たちに恵まれて……俺は幸せ者だと、心からそう思います」

美穂子「す、須賀君……っ」ポロッ

京太郎「……俺、ご覧のとおり麻雀の腕はまだまだ初心者の域を出ない様なレベルです」

京太郎「けど……先輩たちの指導のおかげで、以前に比べたら格段に成長できたなって……今なら自信を持って言えます」

美穂子「……っ……うぅ……」ポロポロ

京太郎「前いたとこではただのマネージャーでしかなかった俺が……今は少しでも頑張ろうって思えてる」

京太郎「これって我ながらすごいことなんじゃないかと思ってます……はは、自画自賛ですかね?」

美穂子「ひっく……そんなことない……そんなことないわ……っ!」ポロポロ

京太郎「そういってもらえると、すげえ嬉しいです」ニコッ

京太郎「俺……なんで自分がこんなことになったんだろうって、ふと考えたんです」

京太郎「たぶん……ただの出来事に意味なんてないんです」

京太郎「けど、先輩が教えてくれました……」

美穂子「……っ……?」

京太郎「意味なんていくらでも見つけ出せる……その人しだいだって」

美穂子「す、須賀君……っ」

京太郎「俺、ちゃんと自分だけの意味……見つけられたような気がします」

美穂子「……っ……うん……」

京太郎「俺……もし帰るか帰らないか選べるとしたら、たぶん帰ると思います……いや、帰らなくちゃいけない……そんな気がします」

京太郎「でも俺……その時が来るまでは、精いっぱい風越の一員をやり通します……!!」

京太郎「だから、どうか心配しないでください……キャプテン」

美穂子「……っ」ゴシゴシ

美穂子「……え、ええ! わかったわ……最後までよろしくね、須賀君」ニコッ

―――――――――――――――――――

そして、決勝―――

『ついに始まりました、県予選決勝戦―――ッ!』

『泣いても笑っても全国に行けるのはこの中の1校のみ―――ッ!』

『今年はどんな戦いを見せてくれるのか―――ッ!』

美穂子「……コーチ、行ってきます」

久保「……あぁ、思う存分やってこい」

美穂子「……はい」

池田「キャプテン、ファイト!!」

未春「キャプテンならいけます!」

文堂「頑張ってください!」

純代「んぁッ!」

京太郎「先輩……」

美穂子「……須賀君、さよならはみんなで優勝した後でよ?」コソッ

京太郎「……! はい、がんばってください……!」

美穂子「……ありがとう。みんなも」ニコッ

美穂子「それじゃ、行ってきます―――ッ!!」ゴッ

『―――先鋒戦、開始!!』

―――――――――――――――――――

美穂子(最後の戦い……いえ、ここからまた一歩踏み出すための戦い……!!)

美穂子(負けるわけには、いかないわね……)ニコッ

―――――――――――――――――――

美穂子『ロン、8600』

京太郎「すげえ、先輩!」

池田「当たり前だし!! だってあのキャプテンなんだし!!」

―――――――――――――――――――

終局―――

美穂子「お疲れ様でした」ペコッ

純「くそったれ……」

睦月「うむ……」

優希「じょ……」

―――――――――――――――――――

池田「お疲れ様です、キャプテン!」

文堂「やりましたね!」

美穂子「ありがとう、みんなのおかげよ」ニコッ

未春「ひっひっふー……よし」パンッ

京太郎「吉留先輩、ファイトです!」

美穂子「吉留さん、大丈夫よ。いつも通り、楽しく行きましょう」

未春「はい……!」

―――――――――――――――――――

未春(と、息巻いたはいいけど……)

佳織「はぅ……みっつずつ、みっつずつ……」

未春(この人……予想以上に手ごわい……!!)

未春(……でも)

―――――――――――――――――――

久「インパチ……!!」

文堂「くっ……」

文堂(またですか……!!?)

久「ふふ……」ニヤッ

文堂「……」

文堂(だけど……!!)

―――――――――――――――――――

純代「ンァァアアアアアッ!!」

和「っ!!」

「……っ!」ビクッ

透華「な、なんなんですの……!?」

純代(ここで、負けるわけにはいかない……!)

―――――――――――――――――――

風越―――暫定2位!

久保「……ここまでいい調子で来てる」

池田「……」

久保「池田……おめえにできる精いっぱいをやってこい!」

池田「はいだし!!」

バタン

美穂子(……華菜)

京太郎(池田……頼んだぞ……!!)

―――――――――――――――――――

池田「――――ッ!!」

池田(ダメだ……全然歯が立たない……!!)

衣「ククク……」

池田(こいつ……私たちの全国への夢を……)

池田(邪魔すんなよ……っ!)ポロッ

―――――――――――――――――――

『大将戦、前半終了―――ッ!』

美穂子「……華菜っ!」ダダッ

京太郎「俺も行きます……!!」

―――――――――――――――――――

池田「……」

スタスタ...

美穂子「華菜……」

池田「キャプ……それに須賀……」

京太郎「池田ァ……」

池田「すまんだし……私、勝てそうにない……」

池田「……この大会……この試合が、須賀との最後の思い出になるかもしれないのに……」

京太郎「なっ……!」

美穂子「華菜……あなた……」

池田「ごめんだし……昨日、須賀の部屋で二人が話してるのを聞いたんだし」

池田「信じられない話だったけど、事実なんだろ……?」

京太郎「……あぁ」

池田「くっ……!」

池田「なのに……私は……!」

京太郎「……! 池田ァ!!」

池田「……っ!?」ビクッ

京太郎「俺のことなんざ気にすんな! 変に気負って調子狂うのがお前の悪いところだぜ!」

京太郎「それに思い出に残そうとか、そんなくせえセリフいらねえっての……!」

京太郎「今日この日、みんなでこの舞台に来れたことこそが、すでに俺にとっちゃかけがえのない思い出だ……!」

京太郎「それに、お前や福路先輩たちとの思い出なんて……もう抱えきれないくらいたくさんあるんだからよ……!」

池田「須賀ァ……うっ……」ポロッ

「華菜ちゃん!」

池田「……み、みはるん……みんな……」

文堂「池田先輩、いつもの元気はどうしたんですか!!」

未春「華菜ちゃんは華菜ちゃんの信じるとおりにやって!!」

純代「ンンンンンンンンンッ!!!」ズドドドッドッ

美穂子「華菜……楽しみましょう、この盛大なお祭りを、みんなで」ニコッ

池田「……っ!」ゴシゴシ

池田「……はい!!」

―――――――――――――――――――

池田「……」チラッ

衣「……ん?」

池田「……」ニヤッ

衣「……???」

池田(……楽しむんだ、麻雀を……!)

シュッ...カッ!

池田「ツモ! 4000オールだし!!」

オオオオオオオオオオオ...!!

―――――――――――――――――――

美穂子「華菜……!!」

京太郎「へ、楽しそうな面しやがって……!!」

―――――――――――――――――――

池田「ん……?」

池田(なんだ……さっきまで調子よかったのに……)

池田「……」チラッ

咲「……」

池田(……清澄?)

シュゥッ...スッ!

池田「はっ……!」

バララッ

咲「ツモ……数え役満です」

池田「……ぁ」

『長野県大会決勝・終了――――――ッ!!』

―――――――――――――――――――

池田「……」トコトコ

美穂子「か、華菜……!?」

京太郎「お前、何してんだ……?」

池田「……うぅ」

久保「てめえ……!」バッ

美穂子「コーチ……!!」

池田「うぅううう……」ボロボロ

久保「……チッ……みっともねえ! 堂々としてろ!」

久保「もしかしてお前は、私との約束……破ったっていうのかよ?」

池田「約束……」

久保『―――池田……おめえにできる精いっぱいをやってこい!』

京太郎「コーチ……」

美穂子「……」

池田「……ないし」

久保「……あぁ?」

池田「悔いはないし!! 楽しかったし!!」ニコッ

久保「へっ……泣きながら笑いやがって、きもちわりぃ!」

久保「ホテルの予約はとっておいた……お前ら行ってとっとと休んでこい!」

美穂子「あ、ありがとうございます……コーチ」

久保「それと、須賀ァ!!」

京太郎「は、はいっ!」

久保「……」

久保「―――お勤め、ご苦労さん」

京太郎「……」

京太郎「あ、ありがとうございました!!」

久保「……ん」ビシッ


京太郎「……ぁ、れ」フラッ

美穂子「す、須賀君……!?」

池田「須賀、どうしたし……! ま、まさか!」

京太郎「ん……あぁ……なんか、もう行かなきゃならねえ見てえだ……」

京太郎「瞼が……どんどん重くなってきやがる……」

未春「須賀君!」

純代「ンアッ!! ンアァッ!!」ユサユサッ

京太郎「ドムさん……痛いっす」

純代「……ごめん」

文堂「す、須賀君……」ポロッ

京太郎「文堂さん……俺、もう一局くらい一緒に打ちたかったっす」

京太郎「これからも、頑張ってくださいね」

文堂「うん……うんっ……!」

池田「ぅううあぁ……須賀ァ……」ボロボロ

京太郎「吉留先輩……このバカのこと、よろしくお願いします」

未春「うん、大丈夫だから……っ……華菜ちゃんのことは任せて!」

京太郎「い、けだァ……もう泣くんじゃねえぞ……」

池田「な、泣いてないし! お前嘘つくなし!」ボロボロ

京太郎「へへ……」

美穂子「……っ……須賀……くん……」ポロポロ

京太郎「先輩……ありがとうございました……」

美穂子「す、須賀君……――――ッ!!!」




プツンッ

ん……あれ……

もう終わりか……あっけなかったな……

ちゃんとお別れ……できなかった……

もっと言いたいことたくさん……あったのに……





みんな……ありがとう……

京太郎「……ん……」

京太郎(……あれ……ゆ、夢……?)

京太郎「ふぁああ……」

京太郎(たしか……俺は……)

京太郎(……っ!!)キョロキョロ

京太郎「も、戻ってきたのか……? い、いや待て……」

「ワハハー、部室行くぞかおりんー」「智美ちゃん待ってー!」





京太郎「……ここ、どこだ?」

カン