宮永咲。

いつからだったか、俺が面倒を見ていた女の子だ。

あいつは一人になるのが好きだった。

そんな奴が時々俺の側にいたのは、孤独になりたくなかったか。

あるいは他に何か理由があったのか。

いずれにせよ…今となってはもう何も分かりはしない。

咲はもう、俺の側にはいないのだから。

…そうして俺は世界での居場所を失い、今は一面真っ白な空間を漂っている。

須賀京太郎であった頃のカタチを徐々に失いながら。



「君…死ぬのは、怖い?」



不意に、おかっぱ頭の女の子がそう俺に尋ねてきた。

この子は一体何者なのだろうか?

何の為にこんな所まで?

そもそもどこからどうやって現れたのか?

疑問が尽きる事はない。

でも結局、俺がそれらの疑問を口にすることはなかった。

「そりゃまあ、怖いに決まってますよ」

「でしょうね」

「どうして俺がこんな目に…とか色々思う所はあります」

「……」

「でも何よりカピと…それに咲の奴に会えなくなっちまうのが、一番辛いです」

「どうして?」

「そりゃまあ、俺が気に掛けていたのはその一匹と一人ですから」

「…咲のことは、本当にそれだけなの?」

「ええと…どうなんでしょう?」

「私に訊かないで」

「思い返せば、俺があいつをどう思ってるかなんてロクに考えてませんでしたから…ただ」

「ただ?」

「強く依存していたのは、咲じゃなくて俺の方だったんだなって…今はそう思えるんです」





「…もしもの話になるけれど」

「?」

「私が君をそういう立場にしなければ、そんな風にはならなかったのかしら?」

「少なくとも、俺には何も分かりません」

「…ごめんね」

「え?」

「君がそうなってしまったのは、多分…私のせいでもあるだろうから」

「何だかよく分かりませんが、気にしないでくださいよ」

「でも…」

「何となくですけど、こんな風になる予感はしてました」

「だからって…君は本当にそれでいいの?」

「咲は、もう一人じゃないから」

「!」



「俺とあいつは二度と会うことはない…触れ合うこともない…それでいいんだ……」



ある少女の面倒を見ていた少年は、もうどこにもいない。

誰も彼を覚えていない。

無かったことにされたのだから。



「……」

「咲さん…どうかしましたか?」

「え?」

「だって咲さん、泣いてるじゃないですか…どうしてですか?」



彼女が涙したその理由を、誰も知らない。