「うぎゃー!ぜんぜん勝てないですー!」

あぁ…また叫んでる…いい加減懲りないものか…

私こと室橋裕子は今日も今日とて後輩の夢野マホのお守…げふん。付き添いとして原村先輩、片岡先輩の通う清澄高校におじゃましている。

「わははは!お前はまだまだ初心者丸出しだなー!」

「ちょ…ちょっと優希ちゃんてば…」

「まったく…マホ。ちゃんと理論に基づいて打たないと…人の打ち方の真似ばかりしてるから振り込みが多くなるんですよ?」

「あぅぅ…」

また説教されてる…いけないことなのかもしれないが、ここに来なければならない原因であるマホがしょぼくれてるのはちょっといい気味である。

そんな風に心の中でニヤニヤしていると。

「おーっす。…ってあれ?また来てたのか。ようこそ清澄高校麻雀部へ…なーんてな」

そんな風におどけた様子で入ってきたのはこの部の黒一点、須賀先輩である。

「えーと、たしかマホに…室橋だっけか。よく来たな。歓迎するよ」


そうこちらに笑いかけてくる。名前…覚えてくれてたんだ…あ、私も挨拶しなきゃ。

「あ、はい…こ、こんにちは…須賀先ぱ」「京太郎先輩こんにちはー!」

おいお前。

「てっめ、何勝手に人の名前呼んでやがる!」

「い~た~い~!ぐりぐりしないで下さい~!!」

残当である。というか残念ですらない。もっとやられろ。

「ったく…と、室橋は退屈してないか?今日は部員が三人しかいなくてすまんな」

「あぁ、いえ。いつものことですから」

「そか。…苦労してんなぁ」

「…須賀先輩もそのようで」

苦労人同士のせいか私達は割と話が弾んだ。

そのまま話に夢中になり、はっと気づくとそろそろ戻らなければならない時間になっていた。

「マホ、そろそろ行くよ」

「えー!もうちょっといたいですー!」

「駄々こねないの。ほら、さっさと行くよ?」

「わかりましたよぅ…それでは皆さん!また今度!次は京太郎先輩も一緒にやりましょう!」

「こら!あんたまた名前…」

懲りないマホに注意しようとすると、

「あーいいよいいよ。もうタコスで慣れてるし」

と、当の本人は言うのである。

なぜかあまり納得出来なかった私は「でも…」と食い下がるが…

「何ならお前も呼んでみるか、裕子?」

「なっ!?」

そこに思わぬ攻撃が来た。

下の名前まで覚えててくれたんだとか何で今呼ぶのかとかそういう考えがぐるぐると頭の中を駆けめぐった結果私は。

「…し、知りません!さようなら皆さん!」

さくっと逃げた。逃げるに如かずという奴である。

「あっ待って下さいよ~!」


………
「…あり?失敗しちった?」

「須賀くんは本当に残念ですね…」

「アホ犬ゥ…覚悟できてるかァ…」

「京ちゃん…麻雀、楽しもっか♪」

「ふ、不幸だぁーーーー!!」

ーーーーー

「待って下さ~い!ムロせんぱーい!」

「あぁ…ごめんマホ。ちょっと動揺しちゃって…」

「大丈夫ですよ!マホもたまにうぁーってなりますし!」

「それはそれでどうなんだろう…」

落ち着いた今、ゆっくり考えてみる。

名前呼びかぁ…京太郎先輩…京太郎先輩…

「京太郎…先輩…」

「? どうかしましたか?」

「な、何でもないよ!」

…やっぱり恥ずかしいし、もうちょっと練習しよう。

カンッ