ちょっとした成り行きから、俺こと須賀京太郎は大星淡と深い間柄になった。

とはいっても、いわゆる男女の間柄とかではない。

なんと言うか…その、兄妹のような関係だ。

知り合い連中からは、大体そう言われている。

…去年の春まで、俺の傍らにはアイツがいたのだけれど。

そしてアイツと俺の関係は、今の俺と淡のそれによく似ていた。

嫁田の奴は、アイツのことを嫁さんなんて言ってたっけ。

正直懐かしい。

あの頃のような日々は決して送れないと知っているから、尚更。



もう、俺の傍にアイツは…咲はいない。

咲の隣には和がいて、俺に寄り添う必要はなくなったんだ。

咲がそういう相手を見つけられたことは、とても喜ばしい事だと思う。

その反面寂しくもあるのだが。

俺は和に片思いをしていたものだから、余計にいたたまれなくなってしまう。

…だからだろうか。

俺はきっと、淡を咲の代わりにしようとしている。

咲がもう自分の傍にいない現実から…俺は逃げ出したいんだ。


淡「キョータロー?」

京太郎「ん?」

淡「『ん?』じゃないよ、もー!折角キレイな夜空を見に来たんだから、下を向いちゃ勿体無いよ!」

京太郎「あ、ああ…すまん」

淡「…ひょっとしてまた、サキの事を考えてたの?」

京太郎「…うん」

淡「あー…そこは嘘でもいいから違うって言って欲しかったなー」

京太郎「…すまん」

淡「…キョータロー、さっきから謝ってばっかりだね。どうして?」

京太郎「……」

淡「だんまり…か。でもまあ、その気になったらいつでも言ってね」

京太郎(…言える訳ないだろう)

淡「私はこの夜空に広がる闇のように、全てを受け入れてみせるから」

京太郎(お前を咲の代わりにしているだなんて、そんなことは)



淡「キョータローはさ…昔の事をどう思ってるの?」

京太郎「…楽しかったよ」

淡「ならどうして、そんな暗い顔をしているの?」

京太郎「…もう、あの頃には戻れないからさ」

淡「そっかー…でもさ、楽しいことを思い返すならもっと明るくしていた方がいいんじゃない?」

京太郎「…そうかな?」

淡「それに、過去にあったものが無くなってしまっても…その輝きまでは失われないと私は思う」

淡「この夜空で輝く光も、その元となった星は既に無くなっているかもしれない。所詮は、過去が遺したものかもしれない」

京太郎「……」

淡「それでも、星々からの光は今日もこの夜空を照らし続けているの」

淡「消えちゃったはずの星が出した光は、見る者の心を感動で満たしてくれるの」

淡「…楽しかった思い出だって、キョータローの心の中を明るくする光になる」

淡「私は…そう思うし、そうなって欲しいかな」


京太郎「…淡」

淡「?」

京太郎「なんつーか、言い方がクサいっつーか分かり辛い」

淡「ぶー!私はそっちを元気付けようとしたのに、その言い草は何なのさ!」

京太郎「それと…その、ありがとな」

淡「!?」

京太郎「…何となくだけど、お前のおかげで上を向いてられそうな気がした」

淡「…そ、そう。ならいいの」

京太郎「あとさ、聞いてもいいかな?」

淡「何?」

京太郎「俺は星のこととかさっぱりだからさ、その説明をして欲しいんだよ」

淡「もちろん!えっとね、あれはデネブ・アルタイル・ベガ…」






自惚れるようでアレだが、かつて俺は咲の行く道を照らす光だった。

アイツは道に迷ってばっかりな奴だったから。

そんな俺が、今度は迷ってばかりの奴になって…そして淡の奴が、俺の進む道を照らしてくれる。

…これからも。