私が先鋒か。団体行動はあまり好きではないのだがな。

監督も監督だ。私以外にも先鋒に足る人がいただろうに。

「あぁ、やっぱりここでしたか。」

数多いる1年の内、聞き慣れた男子の声が聞こえる。

「監督が呼んでます。予選に向けて団体戦面子でのミーティングだそうです。」

「今行く。しかし、団体行動は苦手なんだよ。」

「またまた。そうは言っても週末の麻雀教室にはキチンと顔をだしてるじゃないですか。
それに、辻垣内先輩の教え方は上手ですから。分かりやすいですし。」

言いつつも、男子――須賀――は私の後についてくる。

「教室の子どもたちからは『おじょー』やら、『師匠』などと呼ばれるようになったがな。」

「今となっては地域の人たちにも言われてますしね。」

須賀はアハハと笑いながら言う。翌週からは教室全員から。その翌週からは地域の人たちから呼ばれるようになった私の気も知らず。

声援を送ってくれるお婆さんや小中高生たちに返答しながら歩く。

「教室に顔をだすようになったきっかけは、須賀。お前だよ。」

「あぁ、そうでしたね。他の人達の仕事もやって、人居なくってから自主練してる所見られたのが始まりですね。」

懐かしむように言う。

「それで、それを偶々見かけた私が、練習を見てやったが。何も考えずに打ってたな。最初の須賀は。」

「アハハ。懐かしいですね。先輩にいきなり、『明日時間はあるか?』なんて言われたときは吃驚しましたよ。沈められるかと戦々恐々しながら当日向かったら、連れてかれたのは麻雀教室でしたし。」

乾いた笑いを浮かべながら須賀は言うが、私の家系はその筋ではないのだが。

メグたち4人にも聞いてみたら『なんか、雰囲気がそれっぽい』と口を揃えていわれた。
言うほど雰囲気あるか?

「まぁ、初期のお前と比べたら随分と須賀は成長したよ。」

「先輩にそう言われると嬉しいですね。」

前を見ているので顔は見えないが、きっと本当に嬉しくて笑顔を浮かべているのだろう。


まもなくインハイ予選が始まる。
あぁ、そういえば……

「どうかしましたか?辻垣内先輩。」

不意に立ち止まった私を懸念に思ったのか、走り寄ってくる須賀。

「最初で最後の夏だな、と思ってな。高校で京太郎と過ごすのは。」

「……。その最後の夏は、長く続くんですよね?智葉さん。」

「当たり前だろう。京太郎にも頂からの景色を見せてやる。」

「なら、頂に登りきるまで支えますよ。部員としては臨海を。
俺、須賀京太郎、個人としては智葉さんを。」

全くもって良いやつだよお前は。

眼鏡を掛け、髪を一つに纏める。

「行くぞ、須賀。」
「了解です。辻垣内先輩。」


カンッ







「今回の解説には、先日入籍を果し、現在は須賀の名に変わった。辻垣内プロ、改め須賀プロにお越ししてもらっています。」

「本日はよろしくお願いします。」


もいっこカン