「いらっしゃいませー!」と元気な声が聞こえる。

ここは最近発見したラーメン屋。

ラーメン屋にしては少し高めの値段設定だが、今時珍しい澄んだスープで味も薄くないため隠れた名店となっている。

元気な声を発するのは赤い髪をポニーテールで束ねた女の子。

名札には「愛宕」という漢字の下に平仮名で「あたご」と読みやすく書かれてた。

関西訛りが元気の良さに拍車をかけ、とても魅力的に見える。

1~2歳ほど年上に見えるが普段の不敵な顔とのギャップかは知らないが、

笑顔がとても可愛くて、その娘目当てに通ってしまうほどだった。

「おにーさんいつものでええんか?」と聞いてくる。顔も覚えられているみたいだ。

冷静な態度を装って、お願いします。と答えるだけで注文が終わった。

注文が入ってからラーメンが来るまで時間がかかる。それまで麻雀のゲームでもやってようか。



結構集中してたらしい。後ろに来られるまで気付かなかった。

「おにーさん注文のブツや」なんて言われて現実に引き戻された。

ついでに「そこ3筒切ってリーチすれば待ちも多いし、上家がオリなければ数順以内に上がり牌出るやろからオススメや」

なんてアドバイスまでもらった。

言う通りにしたら一発で出た。リーチ一発タンピン三色、跳満直撃で最下位から1位に浮上することができた。

「麻雀得意なんですか?」と聞いたら「中学から今まで全国大会逃した年はあらへんで」と自慢げに答えてくれた。

凄いですねと答えてラーメンを見たら予想してた形と少し違った。

不思議に思っていると、「いつもうち来てくれてるからな、このチャーシュー2枚はオマケや!」と嬉しそうな声が。

そういって出した笑顔はやっぱり魅力的だった。

そんな笑顔に魅了されていたら店長の「コラァひろえ!何してんだ!客来てんぞ!」という声が店内に響いた。

彼女は「すんません今行きます!」と返事をし、彼女は新しく来た客の注文を取りに行った。


その次の週、またいつものラーメン屋の前に来ていた。

といっても今日はラーメンを食べるために来たわけじゃない。

今できる最高の服装、髪型その他を考えられる限り完璧に整えてきた。

いつもこの時間、彼女はバイト終了の時間だということは分かっている。

少し遅い時間に食べに来た時にその場面に何度も遭遇していたから覚えてしまった。

暫く待っていたら予想通り、彼女が出てきた。

緊張で口の中が渇くが、勇気を出して声をかける。

その声に対して赤いポニーテールを翻しながら振り返る。

彼女は「おにーさん!今日も食べに来たんか?」と返事をしてくれた。

「今日は違います」と、応える。「今日は愛宕さんに用があってきました」

「ん?なんや?」本当に緊張してきた。告白なんて何年ぶりだろうか。

高校の時だったから……2年くらいか。あの時は見事にふられたが。



「愛宕さん……貴女が好きです」



「え……?うちが……?」どうやら告白されるとは全く思ってなかったらしい。

「はい。」もう引き下がれない。目をまっすぐ見て短い言葉を簡潔に放つ。

少し考えた後、愛宕さんが口にしたのは「ごめんなさい」という言葉。

「まだあんたの事よく知らんからな。まずはお友達ってことでたのむわ」

そう言って携帯の番号とアドレスを交換してくれた。

それと、もうひとつ。同じ学校だということも教えてくれた。

「時々学校内で見かけとったんよ」と。「麻雀部におるから入ってくれるとええな」とも言ってくれた。



悪くは思われて無いということと接点がここだけじゃなく学校にも出来たことを考えると、ふられはしたけど一歩前進と言っていいのかな。と、家へと帰る道でそんな事を考える。

昔流行った歌を思い出し、歌いながら自転車をこいでいく。

「向こう横町のラーメン屋、赤いあの娘のチャイナ服、そっと目くばせチャーシューをいつもおまけに2~3枚~♪」

気持ち良く歌ってるうちにふと気付く。あ、これ失恋の歌だ。






カンッ!