知っている。

京太郎君とお姉ちゃんが肉体関係を持っていることを。

私は、知っている。

彼が私とお姉ちゃんのどちらも愛するようになってしまったことを。

…けれど、私はそれでもいいの。

あの人が幸せなら、私はどうなったって構わないの。

たとえこの先、私がボロ雑巾のように捨てられてしまったとしても。



けれど、彼が不幸になってしまうことは肯定出来ない。

私は不幸になってもいいけど、彼が不幸になるのは嫌なの。

私の不幸は彼にとっての不幸じゃないけど、彼の不幸は私にとって間違いなく不幸だから。

彼が不幸になってしまったら、私は単なる道化になってしまう。

それだけは、嫌なの。

不幸になるのは…私独りで十分。

だから、余計な手出しは誰にもさせない。


俺は何でこんな事をしてるんだろう。

多分だけど、玄さんは俺と宥さんの関係に気がついている。

確かめてみたいという気持ちがある。

何もかも、ぶちまけてしまいたいという気持ちがある。

しかし、それは決して許されないのだ。

彼女は…そんな俺達の行いを許しているから。

俺達に懺悔をする機会は、もうない。



玄さんは俺達のことを許しているし、許していない。

だから、俺達の関係が終わるのを何も言わず待つことにした。

そういうことかもしれない。

そう俺が思いたいだけなのかもしれない。

…もしかしなくても、俺は二人の前から消えてしまった方がいいんだろう。

でも怖くて出来ない。

今にも消えてしまいそうなあの人のことを、俺はどうしても放っておけないから。


あんな風に突然倒れたのは、あの時が初めてだった。

あんなことにならないように、私も家族も旅館の皆も気をつけていたから。

でも、やっぱりお母さんのようになるのは避けられなかった。

身体は指一本動かせなかったし、意識も朦朧としていた。

何より、冬でもないのに凍えるような寒さを感じた。

だからだろうか、そんな私の身体を強く抱きしめてくれた彼のことが愛おしく思えてしまったのだ。

それでなくても彼はいい人だった。

彼は私の体質を憐れまなかった。

彼の気遣いは、決してこちらの重荷になるものではなかった。

それだけで、私はとても気が楽になった。

体中が、とてもあたたかくなるのを感じた。

その時私は既に、彼に関係を迫ってしまっていたのだ。

幾重にも着込んでいる服を、ゆっくりと脱ぎ捨てながら。





この爛れた関係を、私は終わらせる事が出来ない。

京太郎君が、あるいは玄ちゃんが終わらせてくれるのを待つだけだ。

その時きっと、私の身体は冷たくなってしまうだろう。

けど私はそれでもいいの。

二人の間に日だまりが戻るのなら、それで。