憧「残念だったわね。花火大会」
京太郎「仕方ねえよ、穏乃の体調が悪いんだもん。残念だけどさ」
憧「…………」
京太郎「どうかしたか」
憧「いやね、すっかり彼氏さんの顔になったなって思っただけ」
京太郎「彼氏の、顔」
憧「気付いてる? 京太郎、すごく優しい顔してるよ」
京太郎「そうかな」
憧「そうよ」
京太郎「穏乃の彼氏、ちゃんとできてるのかな。俺」
憧「あんたたち二人をくっつけたのはあたしよ。信じなさい」
京太郎「…………」
憧「京太郎?」
京太郎「憧はさ、どうして穏乃と俺の仲を取り持ったんだ」
憧「どうしてって。ああ、京太郎には話してなかったっけ」
京太郎「え?」
憧「シズがあんたのことを気にしてたから」
京太郎「でも、あいつそんな素振り一度も」
憧「気取られるのが恥ずかしかったんでしょ、なんせ初恋だったらしいから」
京太郎「知らなかったよ。そんなの」
憧「黙っててって頼まれたからね。ホント、面倒くさい幼馴染」
京太郎「…………」
憧「シズと何かあった?」
京太郎「どうして」
憧「なんとなくよ、なんとなく」
京太郎「…………」
憧「…………」
京太郎「ねえよ。何も」
憧「嘘」
京太郎「本当のことだよ。なんでもないから、穏乃と俺は」
憧「何それ」
京太郎「俺だって、いつも穏乃のことだけ考えてるわけじゃねえよ」
憧「え?」
京太郎「なんでもない」
憧「…………」
京太郎「…………」
憧「花火」
京太郎「始まったんだ。結構よく見えるんだな、こんな場所でも」
憧「うん」
京太郎「…………」
憧「シズの部屋からでも見えるよね。これなら」
京太郎「そうかもな」
憧「…………」
京太郎「…………」
憧「ねえ、京太郎」
京太郎「…………」
憧「私たちってさ、本当なら。お互いにもっと間がよかったなら」
京太郎「憧」
憧「…………」
京太郎「やめよう。俺たち多分、同じこと考えてる」
憧「…………」
京太郎「やめてくれ」
憧「…………」
京太郎「…………」
憧「ごめん」
京太郎「…………」
憧「花火、つまんないね」
京太郎「そうだな」
京太郎「穏乃がいないからだよ。きっと」