成香「須賀くんは気になったりしませんか。こういうの」
京太郎「こういうのって言うと。ああ、相合傘のこと」
成香「…………」
京太郎「気にしませんよ。何も困りませんから」
成香「そう、なんだ」
京太郎「男と二人で帰るの、先輩は抵抗ありますか。やっぱり」
成香「ごめんね、少しだけ」
京太郎「そっか」
成香「えっと、須賀くんのことが嫌いだとかそういうわけじゃなくて。その」
京太郎「分かってますよ。そんなに慌てなくても大丈夫です」
成香「あう」
京太郎「うちが共学になったのは今年からですし、仕方ないですよ」
成香「そうかな。そうかも」
京太郎「そうです。だから先輩が申し訳なく思う必要なんかありませんよ」
成香「あ、ありがとうございます」
京太郎「…………」
成香「えへへ」
京太郎「まあ、俺としては先輩とも仲良くなりたいですけどね。叶うことなら」
成香「へ」
京太郎「どうかしましたか、先輩」
成香「ななななな、なんでもありません! 些事です!」
京太郎「あはは」
成香「もう。誰にでもこうなんですか、須賀くんは」
京太郎「そんなことありませんよ、仲良くしたい人だけです」
成香「それにしては麻雀部の皆にモテてる気がしますけど」
京太郎「へえ、マジでそうだったら嬉しいですけどね。へへ」
成香「揺杏ちゃんなんかメロメロなのに」
京太郎「え、なんですか?」
成香「な、なんでもありません。気にしないで」
京太郎「…………」
成香「…………」
京太郎「雨、強くなってきましたね」
成香「うん」
京太郎「肩口濡らしたりしてませんか。先輩」
成香「す、須賀くんが守ってくれてるから平気。です」
京太郎「そっか」
成香「ごめんなさい。やっぱり少し濡れちゃってるよね、須賀くんは」
京太郎「女の子はそんなこと気にしなくていいんですよ」
成香「…………」
京太郎「…………」
成香「気に、するよ」
京太郎「え?」
成香「私の後輩だもん。大事にするよ」
京太郎「先輩」
成香「だから。だからね」
成香「もうちょっとだけ近付いてもいいかな、なんて」