揺杏「ゆあーん、ゆよーん、ゆやゆよん」
京太郎「なんですか、いきなり」
揺杏「なんとなく口をついて出たの。なんだっけ、このフレーズ」
京太郎「自信はないですけど、中原中也だったかな。多分」
揺杏「ああ、きっとそれだ。現国の授業でやったんだよね、随分前に」
京太郎「たしか、ブランコの揺れる擬態語なんでしたっけ。ゆあん、ゆよんって」
揺杏「…………」
京太郎「岩館先輩?」
揺杏「そそそ、そうそう! サーカスのブランコがこう、行ったり来たりね!」
京太郎「ああ、空中ブランコ」
揺杏「このブランコだと、ちょっと聞けそうにないかな」
京太郎「ぎいぎい鳴くのが関の山ですかね。こんな風に」
揺杏「おお、速いはやい。もしかしてブランコ漕ぐの上手い? 須賀くん」
京太郎「こういうのも昔取った杵柄って言うのかな? はは」
揺杏「ナイス着地」
京太郎「子どもの頃はこれやると怒られたっけ。懐かしいな」
揺杏「よし、一丁私も童心に帰るか!」
京太郎「大丈夫ですか、立ち漕ぎなんて」
揺杏「心配ご無用! これでも小学生の頃は立ち漕ぎの揺杏ちゃんって呼ばれてたし!」
京太郎「それはかなり元気なお子さまですね」
揺杏「ゆあーん、ゆよーん! ゆやゆよん!」
京太郎「い、岩館先輩。もう少しスピードを落とした方がいいんじゃ」
揺杏「何言ってるの、まだまだこれからでしょ!」
京太郎「見えちゃってます」
揺杏「え?」
京太郎「だから、見えちゃってるんです。パンツ、黒スト越しですけど」
揺杏「」
京太郎「ちょっと先輩、そんなところで手を離したら!」
揺杏「きゃあああああ!?」
-----
揺杏「えっと、災難だったね?」
京太郎「そうですね、岩館先輩には怪我がなくて何よりです」
揺杏「だからごめんってば! 受け止めてくれて助かったよ、ありがと」
京太郎「…………」
揺杏「須賀くん」
京太郎「先輩にそんな顔されたら誰も怒れませんよ。もう気にしないでください」
揺杏「…………」
京太郎「俺も良い物見せてもらいましたし、それでチャラってことで」
揺杏「良い物?」
京太郎「あはは」
揺杏「…………」
京太郎「…………」
揺杏「え、えっち」