久「須賀君…聞いてもいいかしら?」

京太郎「何でしょうか?」

久「…あなたは何故、私の目の前で美穂子と寄り添っているのかしら」

京太郎「野暮な事を聞きますね、そんなの」

美穂子「この人と私がそういう関係だからですよ、上埜さん」

京太郎「まあ、そういうことです」

久「…どうして?」

京太郎「いやまあ、インハイの時に偶然顔を合わせて…それから色々あったんすよ」

久「そういうことじゃなくて!どうしてあなたは!美穂子とそういう仲になっているのよ!」

久「私とあなたは恋人で…キスもしてデートもして…何もかも、初めてのことばかりだったのよ?」

京太郎「…だからどうだって言うんですか」

久「え?」

京太郎「そんなの俺だって同じですよ、部長。初恋ではなかったかもしれないけど、俺だってあなたのことが好きだった」

京太郎「けど…俺が咲を連れてきてから、一緒に過ごす時間は無くなってしまいましたよね?」

久「それは……」


京太郎「俺があなたと出会ったのは、確か去年の夏頃でしたよね」

久「…ええ」

京太郎「俺はその時、清澄高校の説明会に来ていて…ふと目に付いた旧校舎にこっそり立ち入った」

京太郎「そこで染谷先輩に…そして部長、あなたに出会った」

久「…」

京太郎「麻雀を打ったのはアレが初めてでした。染谷先輩も部長も、あの時は懇切丁寧に説明してくれてましたよね」

京太郎「まあ、アレから暫く麻雀は打たなかったから結局忘れちまったんですが」

京太郎「けど、あそこで過ごした時間は忘れられなかったから…もう一度、あそこに行って麻雀を打ってみたいって思った」

京太郎「部長…あなたと一緒に」

京太郎「そう思ってから俺は月に何度か清澄に足を運んだ。あの時は本当に楽しかった」

久「…私もそう思うわ」

京太郎「部室の鍵を開けっ放しにして、一人ベッドに横たわっている時もありましたよね」

久「生徒議会の仕事が忙しかったからね」

京太郎「あの姿を見て、思わず目を惹かれてしまって…それでついイタズラしようとしちゃって」

久「それが、私達二人の『きっかけ』だったのよね。ふと目を覚ましたら、あなたが近くで私の顔を覗き込んでいて…」

京太郎「それからというもの、妙にお互いを意識しだしちゃったんですよね」

久「私達が付き合いだしたのは、それから半月程後だったかしら。休みの日はいつも2人きりだったわよね」

京太郎「…2人きり、かあ。その時間が無くなってしまわなければ、どんなによかったか」


久「…何が言いたいの?」

京太郎「決まってるじゃないですか。俺が咲を連れてきてからの事ですよ」

久「あの後の事は…色々悪かったわ」

京太郎「勘違いしないで下さい。俺は自分の処遇そのものに、何ら不満なんて持ってませんでしたよ」

京太郎「俺みたいな素人一人の為に、あなたの望みが損なわれるだなんて俺自身が一番許せなかったですから」

久「ならどうして……」

京太郎「あなたが俺のことを、都合のいいように動くただの奴隷にしか思っていなかったからですよ」

久「そんな…私はそんなつもりじゃ」

美穂子「…上埜さん」

久「美穂子…急に何よ」

美穂子「今の言い訳、はっきり言って見苦しいですよ」

久「…言い訳?」

美穂子「そう、言い訳です」

久「どうしてあなたに、そんなことが言えるの?」

美穂子「私にはあなたの気持ちも…勿論二人の事情だって分かりません」

久「ならば口を挟まないで…」

美穂子「それは出来ません。憧れだったあなたの惨めな姿を、好き好んでみたくはありませんから」

美穂子「第一、もう何もかもが手遅れなんです。あなたと須賀君は、とっくの昔に終わってしまったんですよ?」

久「…ふざけないで!」

美穂子「ふざけてなんかいません。あなたが彼と分かりあおうとしてさえいれば、こうはならなかった」

美穂子「…上埜さんは、言葉が足りなさ過ぎたんです。合同合宿の時でさえ、ちゃんとした連絡を寄越さなかった」

久「あ…」

美穂子「きっとあなたは…そういうことをすべて『まあいいか』という気持ちで流してしまったのでしょう」

美穂子「彼なら許してくれるだろうと思って。彼なら何でも受け容れてくれるだろうと思って」

久「あ、あ、ああ……」

美穂子「…もう、駄々をこねるのは終わりにしましょう?あなたと彼の間に、もう未来なんてないんです」


カン?