598 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 00:14:35 ID:Mr8Lr/WA
『昨春のこと』
昼休み 校舎近くの木陰で本を読む咲 
京太郎(ん?あれは確か同じクラスの…宮永…だっけ?)
そこを通りかかる京太郎
京(あいつ読書家だなー 友達いないってわけじゃなさそうだけど…あ…あの装丁は…)
咲「…」モクモク
京「おい宮永」
咲「うわあぅ!!」
本を落とす咲
咲「お…おどかさないでくださいよ…」
京「ああ 悪い悪い」
咲「って…えぇとどなたでしたっけ?」
京「(悲しいな…)今年から同じクラスの須賀京太郎だよ」
咲「そ…そうなんですか ごめんなさい私まだクラスの人の名前とか覚えてなくて…」
京「いいよいいよ気にすんな」
咲「で…私に何か用ですか須賀君」
京「用ってわけじゃないんだけど…ほれ本落としたまんまだぞ」
咲「あ…ありがとうございます」
京「そんなかしこまんなよ 同い年なんだからさ」
咲「…うん…ありがと」
京「それでよし ところでその本って…」
咲「これ?うーん知らないと思うけど…シャーロック・ホームズっていう探偵小説」
京「失敬な それぐらい知ってるぜ ミステリ好きなら当然だな」
咲「え 須賀君も本読んだりするの?」
京「宮永…お前俺をなんだと思ってんだ…いま短編を全部読んで次は長編に入ろうかってとこだ」
咲「あ…もしかして…」
京「そうだよ 図書室にあったホームズの長編がごっそりなくなってると思ってたら…お前が借りてたんだな」
咲「ご…ごめん…返却したら教えるよ」
俺「おーい京太郎」
京「あ 知り合いが読んでるわ じゃあな宮永また学校で」
咲「うん」
咲(須賀…京太郎君かぁ…新しい友達ができた…かな)

600 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 00:29:34 ID:Mr8Lr/WA
次の日のホームルーム
担任「じゃあ学級委員は決まったから後は頼んだぞ」
京(あ~早く終われ早く終われ)
委「では続いて図書委員です 立候補はありますか?」
咲 スッ
京(ほんとに本の虫だな…)
委「じゃあ女子の方は宮永さんお願いします 男子立候補は?」
京(付き合ってみるか…)スッ
委「では図書委員は宮永さんと須賀君に決定です 続いて…」

咲「いいの?須賀君」
京「?宮永となら別にいいよ」
咲「何言ってんの…そうじゃなくて図書委員だと昼休みとか拘束される日がけっこうあるよ」
京「あ~そいつは考えてなかった ま、たまには昼下がりの読書ってのもいいだろ」
咲「何考えてたのよ…今日の放課後さぼらないでよ」
京「え なんのこと?」
咲「各自委員会があるって先生言ってたじゃん しっかりしてよ」
京「おお悪い悪い」
咲「も~…(やっぱり変な人…)」
京「じゃああらためてよろしくな宮永」
咲「うん よろしく(悪い人じゃないんだけど…)」

602 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 00:40:41 ID:Mr8Lr/WA
数日後
咲「須賀君ちょっと付き合って」
京「いや俺たちまだ早いと思うんだ」
咲「何言ってますか これ読みたいんでしょ」
京「おお!シャーロック・ホームズ!」
咲「今から返しに行くからその場で借りたら?」
京「いやそのまま貸してくれよ」
咲「図書委員長が又貸ししてどうすんの それに私の返却期限過ぎちゃうでしょ」
京「んじゃあ図書室に行きますか」
咲「うん」

図書室
咲「これ返却お願いします」
京「んで次俺が借ります」
図書委員「はいどうぞ 返却期限は一週間後です


604 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 00:57:48 ID:Mr8Lr/WA
京「ん~?」
咲「どうしたの 貸出カードがそんなに面白い?」
京「いや…これお前だろ?お前下の名前咲っていうんだな 」
咲「……うん」
京「?なに お前自分の名前嫌いなの?」
咲「昔は好きだったんだけどいまは嫌いっていうか…悲しくなるというか…(お姉ちゃん最近冷たいな…)」
京「なんだそりゃ いい名前だと思うぞ 花が咲くって感じでかわいらしいじゃないか」
咲「!……そんな風に言われるの久しぶり…」
京「?ふ~ん………咲」
咲「な、なに?突然」
京「咲 咲」
咲「やめてよ恥ずかしいから」
京「咲 咲」
咲「も~須賀君」
京「咲 咲」
咲「……京ちゃん」
京「!!!」
咲「ほらね嫌でしょ」
京「なんか学校にいるのに家にいる感じだ」
咲「へ~須賀君お母さんに京ちゃんって呼ばれてるの?ちょっと恥ずかしいかも~」
京「くっ墓穴を掘ったぜ」
咲「京ちゃん 京ちゃん」
京「うお~やめてくれ~」

次の朝
京「よぉ咲」
咲「まだひっぱりますかそれ…」
京「昔好きだったんならまた好きになれるって それに咲の方が呼びやすいしな」
咲「そうかなぁ じゃおはよう京ちゃん」
京「う…そうきたか」
咲「お互い様だよ京ちゃん」

605 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 01:10:00 ID:Mr8Lr/WA
ある日曜日の街の駅近く
京「はぁ~学生も楽じゃありませんよっと…(息抜きに本屋でも行ってみるか)」

本屋『開・文堂書店』
京「(ん…あれは)よぉ咲 お出かけですか」
咲「あ 京ちゃん どうしたのこんなとこで」
京「塾帰りにちょっと寄っただけさ」
咲「京ちゃん塾とか行ってるんだ…街まで出てきて」
京「お前は相変わらず毒舌というか何というか…何か探してんのか」
咲「うん シャーロック・ホームズの新訳版が出たみたいだから見てみようかなって」
京「おおマジで!?俺も見たい見たい!」
咲「たぶんこの辺に…」
京「しかし咲…」
咲「ん~?」
京「お前の私服姿初めて見たが…見事に断崖絶壁だな そんなタイトなシャツ着ない方がいいぞ」
咲「む…」
京「ロッククライマーもたじたじだ」
咲「ほんとデリカシーないなぁ京ちゃんは そんなんじゃ彼女できないよ」
京「じゃあお前がかの…」
咲「あ!あったよ京ちゃんこれこれ!」
京「お~これが…」
俺「ん?あれは京太郎と…ハハーン」ピキーン


607 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 01:17:24 ID:Mr8Lr/WA
次の日 校門
京「よぉ咲」
咲「…」
京「?おい咲?」
咲「あ…京ちゃん…おはよう」
京「どした?具合悪いのか?」
咲「いや…そういうわけじゃないんだけど…早く教室行こう」

教室
京「おはよ~っすってうお!なんだこれ」
黒板にはでかでかと次のように書かれていた
『須賀×宮永 結婚おめでとう 本屋デートの果てに』
京「こんなことすんのは…俺!」
俺「はは 悪い悪い 昨日偶然見かけちゃってさ」
咲「~~////」
京「子供っぽいことすんなよな だいたい俺と咲はそんなんじゃ…」
咲 ダッ
京「あ!おい咲」
俺「悪いちょっとやりすぎたか」
京「やっていいことと悪いことがあるっての」

始業前に咲は教室に戻ってきたがその日はもう話す機会がなかった
次の日から二日連続で咲は学校を休んだ

俺「お…俺のせいかな?」
京「そう思うなら一言謝っとけよ」
俺「そう言われても学校来ないことにはなぁ」
京(咲のやつ…そんなに恥ずかしかったのか?見舞いにでも行ってやるか)

609 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 10:23:36 ID:Mr8Lr/WA
放課後 宮永家付近
京(おかしいな…この辺のはずなんだが………あ)
咲が公園のベンチに浅く腰かけ、うなだれていた
京「おい咲何やってんだよ 二日も学校休んで」
咲「あ…京ちゃん」
京「俺のやつも反省してるみたいだから早く学校こいよ」
咲「え?なんのこと?」

京「そっか…お母さんとお姉さんが東京に…」
咲「…うん…それでちょっとごたごたしてたから…」
京「じゃあの黒板が原因じゃなかったんだな」
咲「あんなので休むわけないじゃん そもそも事実じゃないし」
京「そりゃまぁそうだが…お前意外と大人びてんな」
咲「?」
京「しかしそれならそれでなんで相談してくれなかったんだ?」
咲「え…だってこんなこと友達に言えるようなことじゃ…」
京「こんなことってなんだよ お前にとっては重要なことだろう?」
咲「いや だからこそ友達には…」
京「友達友達って…俺はお前のことそんな風に見てないぞ」
咲「え…」
京「親友だろ 咲は俺にとって最も大切な友人の一人だ 親友なんだから悩みでも愚痴でも話していいんだぞ」
咲「親友…」
京「そうだよ 咲はどうなんだ」
咲「…うん…うん…そうだよ…私たち…親友だった…」グス
京「お おい!なぜそこで泣きますか!?」
咲「だって…だって…」グスグス

610 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 10:27:39 ID:Mr8Lr/WA
咲「ほんと言うとね 私親友って呼べる人京ちゃんが初めて」
京「そうなのか でもクラスメイトとは割と仲良くやってるじゃないか」
咲「まぁね 小学生のころは何も考えてなかったから本当に楽しかったけど…中学生になるとみんな自分のことや他人のことを考えて言動が縛られてくるでしょ?
それが窮屈になってきて…一人で本読んでる方が楽だなって思えてきたの…知らないと思うけど私三年間ずっと図書委員やってるんだよ」
京「咲…」
咲「だからさっき京ちゃんが親友って言ってくれて本当に嬉しかった ありがとう京ちゃん」
京「そうだろそうだろ 俺の優しさが身に染みたろ?」
咲「はいはい調子に乗らない お母さんたちのことは私が一人悩んでもしょうがないしさ 気長に待ってみるよ」
京「悪いな 大口叩いといて」
咲「ううん誰かに話せて私もだいぶ楽になったよ 明日は学校行くから」
京「おう ん…?じゃあ咲、あの朝なんで教室から出てったんだ?しかも顔真っ赤にして…」
咲「!あ…あれは…//」
京「なんだよ?もったいぶんなよ」
咲「お…おトイレだよ…登校中ずっと我慢してたんだから…//」
京「はぁ?なんだそりゃ?そんなもん教室入る前に行っときゃいいだろうが」
咲「男の子にそんなこと言えるわけないじゃん…デリカシーないよ京ちゃんは」
京「よくわからんが変に色気づくなよ 親友の前で」
咲「…うん…そうする…親友だもんね」

611 名前:名無しさん@お腹いっぱい。:2009/08/02(日) 10:30:47 ID:Mr8Lr/WA
後日談
咲「あ 京ちゃん」
京「おぉ咲 今帰りか」
咲「うん一緒に帰ろうよ」
京「おう ところで咲は進路もう決めたのか」
咲「うん 清澄高校 家近いしあの落ち着いた雰囲気が好きなの」
京「はぁ…高校も咲と一緒なのか」
咲「え~京ちゃんも清澄なの?」
京「ちょいと気になる部活があってな 廃部寸前なんだが俺の力で立て直してやろうかと」
咲「ふ~ん」
京「ところで咲、その手に持ってる文庫は?」
咲「これ?『ゲーテ格言集』昨日買ったんだ」
京「また小難しそうなのを…ちょっと見せてみろよ」
咲「いいよ はい」
適当に本を開くとしおりが挟まれている個所でページは止まった
そこにはこう書かれていた

『恋愛と情熱は消え去ることがあっても、好意は永久に勝利を告げるだろう』

  おわり

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