~京太郎~


―― 特訓そのものはわりかし順調だった。

小蒔の参入というのは思いの外、良い影響をあったようだ。
そう思うのは、特訓に参加している全員がグングンと良い方向へと変化していっているからだろう。
元々、それなりに経験を重ねていた小蒔は見間違えるほどミスが減り、ちゃんとしたデジタル打ちが出来るようになった。
俺自身も二人の協力のお陰で、集中力が向上し、擬似的ではあるものの『ゾーン』に入れる時間が長くなっている。

京太郎「(そして…和は…)」
和「ロン。タンヤオのみ」
小蒔「ひゃうっ」

特訓終わり際の三人麻雀。
その中でトップを取るのは大抵、和だった。
元々、自力という意味では俺たちの中で頭一つ分飛び抜けているので当然なのだろう。
実際、今だって最後の親を見事な速攻で流し、トップのまま終えている。
正直、これで幾らか弱体化しているとは思えないくらいだ。

京太郎「(しかも…これデジタルに頼りきりじゃないんだよなぁ…)」

その上…これが新しい打ち方を模索している真っ最中なのだから恐ろしい。
普通ならば、崩れてボロボロになってもおかしくないのに、和は決して崩れないのだ。
勿論、無理し過ぎない程度にデジタル打ちと感覚打ちを切り替えているというのもあるのだろう。
実際、牌譜にして確認してみると普段の和の打ち筋と違う闘牌をしているから良く分かる。



小蒔「…どうでした…?」
和「…手応えのようなものはまったくない訳じゃないんですけど…」

そう答える和はそっと自分の指先を見つめた。
細い人形のようなそこに一体、どんな感覚があるのか、他人である俺には分からない。
だが、そこに尋常ならざるものが残りつつあるのは確かなのだろう。
それは何とも言えない表情を見せる和の顔からなんとなく伝わってきた。

和「形になるのはまだ先みたいです…」
小蒔「ふふ…♪そんなものですよ」

そう会話する二人の表情にはぎこちなさはない。
勿論、特訓を開始した当初はぎこちなく、会話もろくになかったが、勇気を持った小蒔から歩み寄っていったのだ。
そして、これまでの事を詫びながら、教えを乞う小蒔を袖にするほど和は薄情な奴ではない。
結果、二人は急速に打ち解けて、こうして友人同士のように会話を交わすようになった。

小蒔「こんな短期間でこうして手応えを感じ始めているだけでも原村さんは優秀なんだと思います」
和「そんな…私なんて…」

そう謙遜するものの、小蒔という切磋琢磨するパートナーを得てからの和の成長具合は著しい。
何せ、特訓開始からそれほど期間があった訳ではないのに、もう手応えを感じ始めているのだから。
幾ら能力の使い手として大先輩である小蒔からアドバイスを受けていると言っても、その速度は本人の資質によるものだろう。
そんな素質を俺一人では開花させてやれなかったと思うと申し訳なく思うが、今はともかく和の成長を喜ぶべきだ。


小蒔「それじゃ…今日は私がラスですから片付けしますね」

最後の麻雀でラスを引いた人が卓の片付けをする。
それが俺たちの特訓の中で暗黙のうちに決められたルールだった。
とは言え、基本的には特訓は和の部屋でやっているんで、目立って片付ける必要があるものはない。
精々が牌を自動卓に片付け、空いたお菓子や使用済みグラスの後処理をするくらいなものだろう。

和「…では、今日も遅くなってしまいましたし、お夕飯どうですか?」
京太郎「いや、俺としては嬉しいけれど…」

そう和が俺に尋ねるのは、どっち道、小蒔が俺に意見を求めると分かっているからなのだろう。
部長との一件以来、べったりというほどではなくなったが、それでも小蒔は俺の事を尊重しすぎるくらい尊重してくれる。
そんな小蒔がこうして選択肢を提示されて、俺に尋ねないはずがない。
それをこれまでのやりとりから悟った和は、最初から俺に聞いてくるのだ。

京太郎「でも、最近、お世話になりっぱなしだからなぁ…」

新人戦を後数日という所にまで控えた今、俺達は特訓という形で、ほぼ毎日、和の家へと入り浸っていた。
部活が終わってからさらに自発的に練習しようとするそれは必然的に夜も更けてしまう。
今だってもう20時を超えているし、女の子一人の家にお邪魔しているには遅い時間帯だ。
正直、腹も減っているし、夕食を用意してくれるのは嬉しい訳だが、流石にこう毎日となると大丈夫なのかと思ってしまう。


和「良いんですよ。三人分も五人分もそれほど大差ある訳じゃありませんし」
京太郎「いや、あると思うぞ」

これが一人前から二人前くらいなら俺だって同意出来ただろう。
だが、三人分から五人分までの間には割りと深い溝があるのだ。
基本的にレシピというのが二人か三人分で書かれている所為だろうか。
口で説明するのは何とも難しい感覚的なものだが、ともあれ俺の中でその差は結構、大きいのである。

和「じゃあ、私の夕食の準備を手伝って下さい。一人だと今から三人分用意するのは手間ですから」
京太郎「あー…もう…そう言われると断れないじゃないか」
小蒔「あ、私もお手伝い…」
和「そうですね。では、小蒔さんも終わったら手伝ってくれますか?」
小蒔「はいっ♪」

屈託のない笑顔で頷く小蒔はいそいそと片付けに戻る。
こうして誰かと一緒に何かの作業をするのが小蒔は基本的に好きだ。
鹿児島でもそうだったので、恐らく生来の気質からそうなのだろう。
一歩間違えれば寂しがり屋に繋がりかねないそれに俺は和と共に笑みを浮かべながら、そっと立ち上がった。

和「それではよろしくお願いします」
小蒔「分かりました!」

そのまま二人で部屋から出て行く俺たちを握り拳と共に小蒔が見送った。
そんな小蒔の前で扉を締めてから、俺達は廊下を渡り、階段をゆっくりと下っていく。
かつて逃げるように去っていったそこを和と一緒に緩やかに下る感覚は未だに慣れない。
特に後ろ暗い事はないはずなのに、妙に悪いことをした気になって落ち着かなくなってしまうのだ。


和「…須賀君は特訓の成果はどんな感じですか?」
京太郎「どう…だろうなぁ…」

だからこそ、和の声に応える言葉は少しだけ遅れてしまう。
そんな自分に一つ苦笑めいたものを向けながら、俺はそっと肩を落とした。
微かに疲労感を感じる肩の感覚は決して嫌なものではない。
それは少しずつでも、自分が成長している実感があるからなのだろう。

京太郎「欲目込みだけれど、成長はしてると思うよ」

勿論、それは和や小蒔のそれほど著しい訳じゃない。
小蒔に比べれば俺は麻雀歴も短いし、成長の土台となる地力だってある訳じゃないのだから。
しかし、それでも集中の仕方さえ分からなかった初期から比べれば、別物と言っても良いくらいになっている。
それは俺の特訓に付き合ってくれた二人のお陰だと胸を張って言えるくらいだ。

京太郎「だけど…新人戦に勝てるかは分からないな…」

そう。
俺が言っているのはあくまで『能力制御』に関する事ばかりだ。
それ以外の、いわゆるノウハウの部分に関してはかなり曖昧なまま来ている。
勿論、それは俺自身が希望した事であり、和が悪い訳じゃない。
だが、やっぱり目前に迫った新人戦を考えると不安になるのは事実だった。

京太郎「俺のは勝つための能力じゃないしな」

これが特定の牌だけが集まるという能力であれば、俺にも光明を見出す事が出来ただろう。
だが、俺にあるのは人をおかしくする為の力であり、その制御に時間というリソースを割いて来た。
勿論、俺が少しずつ会得しつつある力は、地力をあげる事が出来るが、それだって一時的なブーストでしかない。
和のように対局中ずっとそれを維持する事など到底出来ない俺にとって、それは切り札ではあれど、安心できる材料ではなかった。

和「…須賀君ならきっと何とかなりますよ」
京太郎「そう…かな…」

一階へと降り立ちながらの和の言葉を俺も信じたい。
だけど、俺は県大会の一回戦で見事にボコられたのである。
そのトラウマはどうしても払拭出来ず、俺の中から不安が消える事はない。
流石に以前とまったく同じつもりはないが、今の俺がちゃんと通用するのか。
ふとした時にそんな事を思っては、落ち着かなくなってしまう。

和「それに…私は須賀君の能力がアレだけとは思っていませんから」
京太郎「えっ…」

和の言葉を俺は最初、信じる事が出来なかった。
何せ、それは頑なにオカルトを信じていなかった和の口から飛び出たものなのだから。
それが虚勢であった事を知っても、オカルトを肯定する和というのは違和感がある。
ましてやそれが俺にもう一つ能力があるというような言葉だと思うと信じがたい気持ちの方が強かった。


和「後で復習して分かったんですけど…須賀君は集中していない時の方が配牌が良いです」
京太郎「そう…なのか?」

今まで自覚はなかったけれど、言われてみればそんな気がしなくはない。
そう思うのは『ゾーン』が切れた後には大抵、好配牌から開始出来るからだ。
疲労感で集中どころではない俺はただの偶然だと思っていたが、言われてみればそれもおかしい。

京太郎「(それに思い返せば…合宿の時もそうだったしな)」

能力や和の事が気になってろくに集中できていなかった合宿一日目。
当時を思い返すのは胃が痛いが、確かにあの日は異様なほどツイていた。
一度も和了らなかったのに最終成績二位という時点で、その異常さが分かるだろう。
そして二日目も漫さんが手を貸してくれるまで好配牌が続きまくっていた。
その後はもうボコられまくりでろくな結果を残せなかったのも集中していたからだと思えば辻褄は合う。

和「それが能力だとしたら、須賀君にも光明が見いだせるでしょう?」
京太郎「でも、どうやって使いこなせるんだそんなもの…」

集中力が切れた後に頼れるものがあるのは嬉しい。
自分の長所というものを見いだせない俺にとって、それは朗報と言っても良いものだった。
だが、能動的に扱う事が出来ないそれを一体、どうやって活かせば良いのか。
そうやって集中出来ていなければ、ミスも増えるし無意味なだけだろう。
そう思った俺が和と共にリビングへと踏み入れた瞬間、彼女はそっと振り向いた。


和「簡単です。麻雀に集中出来ていて、出来ていない状態を作れば良いんですよ」
京太郎「そんなの…出来るのか?」

ある意味、矛盾にも近いその状態を維持出来るならば、そのジンクスめいた何かも武器になるかもしれない。
だが、ある種の達人ならばともかく、初心者の俺がそんな境地に達する事が出来るとは到底、思えないのだ。
一応、人並み以上にメンタルトレーニングに力を入れてきたが、だからこそ、それが容易い事ではない事が分かる。

和「…あの…き、聞きたいですか?」

瞬間、和は耐え切れないと言わんばかりのその頬を赤く染めた。
ポッと紅潮を混じらせるその表情は惚れた弱みを抜いたとしても可憐で、庇護欲が擽られる。
普段、気丈な所為か、ギャップさえも感じさせるその表情に思わず抱きしめたくなった。
だが、もう少ししたら小蒔も降りてくる状況で、そんな事をしてしまったら構築され始めた二人の関係が粉々になりかねない。
そう自分に言い聞かせながら何とかその衝動を堪えた俺はそっと口を開いた。

京太郎「まぁ…今は藁でも掴みたい気分だしな」

その言葉は決して嘘じゃなかった。
新人戦が近づけば近づくほど不安になっていく自分を鎮める為ならば、藁でもなんでも良い。
特に今回は俺にとって前回のリベンジというだけではなく、二人との特訓の成果を示す機会でもあるのだから。
そこで結果を残す為ならば、俺は藁にでも何でも、一も二もなく飛びつくだろう。


和「では…あの…し、新人戦で良い結果を残せたら…私が…ご褒美をあげますから…」
京太郎「えっ…?」

そんな俺の耳に届いた言葉に、ついついそう聞き返してしまう。
勿論、一言一句聞き逃さないように耳を傾けていたし、それを聞き逃したという訳でもない。
頭が理解を拒否するような内容でもなく、それがどういうものを意味しているのかも分かっているのだ。
しかし、だからこそ、俺はそれを信じる事が出来ず、呆然としながら、和を見つめてしまう。

京太郎「…和が…ご褒美?俺に…?」
和「ぅ…」コクン

確認するように聞き返す俺に和は真っ赤になりながら小さく頷いた。
その姿も可愛らしくて抱きしめたくなるのだが…まぁ、それはさておき。
今の和の反応を見る限り、俺の耳や頭がおかしくなったって事はないらしい。
そう理解した瞬間、顎の下辺りが熱くなり、キュっとそこが疼いた。

和「勿論…その…須賀君が好きそうな…え、エッチな奴で…えと…それなら…エッチな須賀君なら集中も…」
京太郎「和ぁ!」
和「きゃんっ♪」

そんな俺の前でポツリポツリと恥ずかしそうに補足する姿を見て、俺は我慢できなくなってしまった。
和の身体をぎゅっと抱きしめ、未だに制服に包まれたその身体の柔らかさを堪能してしまう。
それに和が悲鳴めいた声をあげるが、俺の腕は解けない。
寧ろ、そんな和を逃したくないとばかりにぎゅっと力を込めるのだ。

和「ご、ご褒美はまだ先ですよ…っ」
京太郎「…悪い」

そんな俺を咎めるように言いながら、和はそっと俺の背中を撫でてくれた。
まるで衝動に身を任せた俺を受け入れるようなその仕草に、少しだけ頭が冷静になる。
しかし、衝動の代わりに頭の中に浮かんできた和への愛しさがあまりのも強すぎて、身体が離れようとしない。
俺の胸の中にすっぽりと収まる身体を抱きしめたまま、和に謝罪の言葉を返した。

京太郎「(まぁ…それだけじゃすまない訳で)」
和「んぅ…♪」

これまで新人戦が間近という事もあって、あんまり二人に構ってやる事は出来なかったのだ。
自然、最近の俺もまた禁欲中であり…もっと直接的な事を言えば溜まっている。
そんな状態で和の魅力的な身体を抱きしめたらどうなるのかなんて分かりきっている話だろう。
実際、俺の一部分はムクムクと大きくなり、和の下腹部辺りをぐっと押し始めていた。

京太郎「最近、構ってやれなくてごめんな」
和「べ、別に…ぜ、全然、寂しくなんてなかったですから」

俺の謝罪の言葉に返す和の言葉は間違いなく強がりだろう。
勿論、和と約束した事はこれまでもちゃんと守っているとは言え、それで能力の依存性がなくなる訳ではないのだから。
元々、和はとても理性的でそう云うのをあまり言い出さない性質だし、きっと我慢していただけで寂しがらせていたのだろう。


和「さ、さっきの提案だって須賀君がいい結果を残せるようにって思っただけなんですからね」
京太郎「…うん。分かってる」

勿論、それがまったく無関係だとは俺も思わない。
きっと和は和なりに思い悩む俺を励まそうと餌を用意してくれたのだろう。
しかし、決してそれだけではないのは…俺を見上げる和の目を見れば分かった。
まるで媚びるような甘えるようなそれは俺に何かを求めているのを感じさせる。

京太郎「じゃあ、前払いで…キスだけ貰えないか?」
和「き…キス…ですか…?」

瞬間、和の目に走った嬉しそうな色を俺は見逃さなかった。
どうやら和が求めていたのを俺は見事言い当てる事が出来たらしい。
それに胸中でガッツポーズを取りながらも、俺は平静を装った。
そのままじっと真正面から和の顔を見つめる俺に和は顔を赤くしながら、小さく俯く。

和「本当に…その…私とキスしたいんですか?」
京太郎「あぁ。それがあれば俺はきっと頑張れる」
和「途中で挫けたり…しません…か?」
京太郎「和のキスがあればそんなもの絶対にあり得ないって」

そのままポツリポツリと呟く和の顔は正直、堪らなく可愛い。
時間さえあればそのまま押し倒して、事に及んでしまいたくなるくらいだ。
しかし、小蒔がもうすぐ降りてくるって状況ではそんな事は出来ない。
そもそも、こうしてキスをしようとしている時点で、かなりのリスクを背負っているのだから。
それ以上のことなど言うまでもない。


和「そこまで言うなら…し、仕方ないですね」

そう言いながら、和はゆっくりとその顔をあげる。
俯き加減になっていたその顔はさっきよりもさらに赤く染まっていた。
羞恥だけではなく興奮混じりのそれに俺の興奮も高まる。
本格的に勃起し始めたムスコがズボンの中で窮屈になるのを感じるほどのそれに俺の腕はゆっくりと和の背中を上がっていく。

和「でも…あ、あくまで仕方なく…仕方なくなんですからね…?」
京太郎「分かってる。和は優しいからな」
和「ぁ…♥」

そう言いながら俺の手が到達したのは和の顎だった。
形の良い細い曲線を描くそこをゆっくりと上へと向けさせる。
それに和は小さく声をあげながらも、その瞳を閉じていった。
まるで何もかもを俺に委ねようとするその可愛らしい仕草に俺の顔はゆっくりと近づいていき… ――

小蒔「お待たせしましたー」
和「!?」
京太郎「ぬぁ!?」

瞬間、パタンという音と共に開いたリビングの扉に俺達は弾かれたように離れた。
殆ど反射的なものだったのでお互いに変なポーズになってしまった俺たちを小蒔は不思議そうに見つめる。
その手に持つお盆に空になったグラスやお菓子を載せている辺り、もう部屋の片付けは終わったのだろう。
思った以上に早いその手際に俺たちが思わず頬を引き攣らせた瞬間、小蒔はそっと小首を傾げた。

小蒔「あれ?どうかしたんですか?」
京太郎「い、いや、何でもないぞ!?」
和「え、えぇ!まったく何もしてませんから!」
小蒔「??」

俺達は申し合わせたようにそう答えるものの、流石に小蒔を誤魔化す事は出来ないのだろう。
幾ら小蒔が鈍感とは言え、俺達の焦りっぷりや変なポーズを見て、不思議がらないがずがない。
それを怪しいと思わないのが小蒔の魅力の一つではあるが、とは言え、このままでは何時か不審がられてしまうだろう。

京太郎「あ、いや…その…ずっと座ってばっかりで身体が固まってたからストレッチしようとしていてだな…」

そう思った俺の口から出たデタラメは、それほど悪いものじゃないように思えた。
完全にパニクっていたにしては、変なポーズを取っていた事に対する説明がそれなり出来ているのだから。
勿論、普通はそんなもの通用する訳がないのだが、小蒔相手であれば大丈夫。
そんな俺の心情を裏打ちするかのように、納得したような顔を見せる小蒔に俺はそっと胸を撫で下ろし… ――

和「そ、そうです。抱き合ってキスしようとしていただなんてそ、そんなオカルトあり得ません!」
京太郎「(の、和ああああああああ!?)」

瞬間、俺以上にテンパっていたらしい和の口から飛び出た言葉に俺の表情は引きつった。
誰も聞いていないような事まで言ってしまったら、怪しんでくれと言っているのも同じだろう。
特に今回はやけに具体的な行為まで表現しているし、そっちの方が正解なのだと言わんばかりだ。
正直、そうやってテンパる和は可愛くて仕方がないが、それ以上にさっきまでの冷静な打ち筋は何処に行ったのかと思ってしまう。


小蒔「なるほど…。じゃあ、私も混ぜてもらって良いですか?実は私も結構、肩が凝っちゃって…」

けれど、小蒔は俺が思っていたよりも純粋だったらしい。
明らかに怪しい俺達の様子を怪しむことなく、納得の言葉を返した。
ニコニコと嬉しそうなそれは、俺が嘘を吐いているだなんて欠片も思っていないのだろう。
そう思うとこちらの胸が痛くなるが、かと言って、何もかも言う訳にはいかない。
そんな事をすれば、小蒔が暴走しかねないと石戸さんに何度も釘を刺されているのだから。

小蒔「あ、でも、お料理もしないといけませんし…どうしましょう?」
京太郎「さ、先に料理作ってしまおう。んで、小蒔は後で俺からマッサージするから」
小蒔「えへへ…嬉しいです!」

そんな後ろ暗さの所為だろうか。
迷う小蒔に俺はついついそう言ってしまった。
勿論、マッサージなどした事もないが、そうやって素直に喜んでくれるのを見るのは俺も嬉しい。
身体の強張りも少しずつ収まり、俺の顔にも笑みが浮かんだ。

和「むっ…」
京太郎「(ゴメン…)」

だが、それをストレートに感じていられないのは俺の真横に面白くなさそうにする和がいるからだ。
誰だってついさっきまでいい雰囲気だった相手が別の誰かに甘く接しているのを見て面白くはならないだろう。
それに胸中で謝罪を紡ぎながらも、俺はそれを声にする事も、小蒔に訂正する事も出来なかった。
自業自得とは言え、板挟みになった自分の状況に胸の痛みを感じながら、俺は逃げるようにキッチンへと向かう。


京太郎「それじゃ…とっとと準備しようぜ。あんまりのんびりしてると和の親父さんが帰ってくるかもしれないしな」

勿論、こうして和の家を特訓に使っている以上、和の両親の許可は取っている。
だが、俺を明らかに警戒している親父さんには、『麻雀部の仲間』としか伝えていないのだ。
若々しいお袋さんにはちゃんと面通しして許可も貰っているが、それでも親父さんに見つかると危ないのは変わりない。
最近は大きな仕事を幾つか抱えて忙しいというのもあって、家に帰ってくるはほぼ深夜になっているらしいが、それでも警戒するのに越した事はないだろう。

和「…そうですね。では、神代さんも…」
小蒔「はい。まずは洗い物から始めますね」

そんな俺に頷きながら、他の二人もキッチンへと入ってくる。
その手際は普段から家事をこなしているだけあって、俺よりも数段、上だ。
適当に会話して意見のすり合わせをしながら、あっという間に一品二品と作っていく。
勿論、俺もそれなりにそういうのをやるようにしているとは言え、この二人には到底、及ばない。

和「…後で埋め合わせはして貰いますから」ポソッ
京太郎「ぅ…」

そんな二人の手伝いをしている最中、俺の横を通りがかった和がポソリと囁いた。
それはきっと俺の後ろでアスパラの胡麻和えを作っている小蒔には聞こえなかったのだろう。
ふと後ろを振り返れば、機嫌よく鼻歌を歌いながら菜箸を動かしている小蒔の姿が見えた。
それに一つ安堵しながらも、俺は頬が引きつるのを感じる。


京太郎「(一時間くらいは覚悟しといた方が良いかな…)」

和は基本的に金銭的な埋め合わせなんて求めない。
その代わり、本気で拗ねた和はかなりの甘えん坊だ。
普段の冷静な姿がまるで嘘のように、俺の事を離さない。
それこそ一時間でも二時間でも俺に触れ続け、まるで子どもになったかのように甘えるのだ。
いっそギャップすら感じるその姿は普段から俺に対してデレデレな小蒔を局地的に凌駕するほどである。

京太郎「(ま…そんな姿も可愛くて良いんだけどさ)」

幼い頃から両親の仕事が忙しく、転校を続けた和は人に甘えるという事を苦手としていたのだろう。
セックスの時もまるで子どもに返ったかのように俺に対して甘えてくるのだから。
そんな和の心の支えになれているかは分からないが、少なくとも悪い気はしない。
寧ろ、男としての自尊心が満たされ、もっと頼ってほしいと思わされてしまう。

小蒔「もう…♪京太郎様…またエッチな顔してますよ」
京太郎「あ…いや…」
小蒔「ふふ…♪私は何時でも…大丈夫ですですからね…♥」

そんな俺のニヤけっぷりを誤解したのだろう。
小蒔は俺へとそっと寄り添いながら、小さく囁いてきた。
けれど、それは俺の真横に居た和にもしっかり聞こえたのだろう。
トントンと手際よく食材を切っていく手が一瞬、止まったのが俺の目には見えた。


京太郎「(…二時間はみとこうか…)」

その後の和は特に何か怒ったり拗ねたりしている様子は見せなかった。
だが、こういう時の和の方が色々と溜め込んでいるのを俺は経験的に知っているのである。
あの日、和とラブホに駆けた時も、彼女はギリギリまで平静を装っていた事を思えば、まったく安心出来ない。
いや、それどころか、にこやかな和の姿に冷や汗さえ浮かぶくらいだった。

京太郎「(自業自得だよな…)」

結果、俺は二人の美少女が用意してくれた夕食の味が殆ど分からなかった。
それこそ人生の大事なイベントを一回分丸々損しているような感覚にそっと肩を落とすが、これが自分の選んだ道である。
それに後悔したりするよりも先に、自分が次に選ぶべき最善を考えるべきだろう。
そう思考を切り替えた俺は頭の中で和の埋め合わせに使う時間をどうやって捻出するかを考えながら、原村家で食べる何度目かの夕食を完食したのだった。



………



……








【新人戦当日】

咲「き、ききき…京ちゃん、頑張って」

優希「だ、だだだ…大丈夫だじょ。今の京太郎なら勝てない訳じゃないし…」

京太郎「何でお前らが俺より緊張してるんだよ」

咲「だ、だって…京ちゃんの晴れ舞台なんだよ!」

優希「お、落ち着け、京太郎。ま、まずは深呼吸だ、ほら、ひっひっふー」

京太郎「まずはお前らが落ち着けっての…まったく」

京太郎「と言うか、自分たちの時よりも緊張してるってどうなんだ」

優希「別に緊張なんてしてないじぇ!」

咲「って言うか、何で京ちゃんは堂々としてるの?」

京太郎「まぁ…一応、ここまで来るのに色々と頑張ったからな」

京太郎「(まぁ…勿論、それだけじゃないけど)」チラッ

小蒔「?」

京太郎「(俺には二人も女神が着いてくれているんだからな)」

京太郎「(最後まで俺の特訓に付き合ってくれた二人の前で無様な姿は見せたくはない)」

京太郎「(正直、不安がない訳じゃないけど…例え負けるにせよ、堂々と負けたいからな)」



まこ「まぁ、所詮、清澄の男子なんてのは無名もええとこじゃし、気軽に打って来い」ポン

京太郎「うす。まぁ、一回勝てたら御の字くらいのつもりで行きますよ」

まこ「はは。そりゃあ流石に低く見積もりすぎじゃ」

まこ「今の京太郎ならそこそこええところまでいけるはずじゃ」

京太郎「励ましたいのかプレッシャー掛けたいのかどっちなんですか」

まこ「それだけ期待しとるって事で」ニコッ

まこ「わしら相手に揉まれてきた京太郎は確かに強くなっとるからの」

まこ「県大会ならともかく、同じ高1相手の新人戦でそう遅れはとらん」

まこ「少なくともわしはそう信じとる。だから…気軽に打って実力出しきって来い」

まこ「そうすれば結果は自ずと着いて来るはずじゃ」

京太郎「部長…」

まこ「それに京太郎が結果残してくれれば、来年度の予算も増えるしの」ニヤリ

京太郎「くそっ!ちょっと感動して損した!!」





小蒔「京太郎様…」

京太郎「小蒔…そんな心配そうな顔で見るなって」ポン

京太郎「小蒔が手伝ってくれた分、俺も強くなれているんだからさ」

小蒔「それは…原村さんと京太郎様の力です…」

小蒔「私は…原村さんと違ってろくにお手伝い出来ていなくて…」シュン

京太郎「そんな事ねぇよ。小蒔が居なかったら俺は和の手を煩わせっぱなしだったしな」

京太郎「それに誰よりも俺の傍で励ましてくれたのは小蒔だっただろ?」ナデ

京太郎「その御蔭で、俺はここまで頑張れたんだ。だから…そんな風にしょげてないで胸を張ってくれ」

小蒔「…ん…♪」

京太郎「俺は勝ってくるよ。小蒔の為にも…絶対に」

小蒔「…はい!私も…応援していますから…」グッ

京太郎「おう。惚れ直すくらい格好いいところを見せてやるよ」




京太郎「そう言えば…和は?」

京太郎「さっきから姿が見えないみたいだけど…もう和の試合だったっけ?」キョロキョロ

咲「えっと、そのお花摘みに…」

優希「デリカシーない男だじぇ…」

京太郎「し、仕方ないだろ。知らなかったんだから…」

京太郎「(まぁ、咲じゃないんだから、迷子とか心配する事はなかったか)」

咲「む…今何か失礼な事考えたでしょ?」

京太郎「はは。誤解だって」

京太郎「俺が考えたのはあくまでも事実に即したって…痛っ」ツネッ

咲「ふーんだ」ツーン

優希「今のは京太郎が悪いな」

まこ「折角、迷子になる恐怖と闘いながら男子ブロックまで応援しに来た咲にする仕打ちじゃないの」

京太郎「だからって抓られるほどの事だったのかアレ…」

―― 男子ブロック一回戦が始まります。GからFの組の方は会場に向かって下さい。

京太郎「そろそろ時間だな。それじゃ行ってくるわ」

咲「…頑張ってね」

優希「無様に負けたら今日のタコスは京太郎の奢りだからな!」

まこ「まぁ、焦らずにの」

小蒔「…京太郎様ならきっと大丈夫です」

京太郎「おう!」


京太郎「(…とは言ったものの…一人になるとやっぱり心細いな)」ハハッ

京太郎「(強がる相手がいなくなった所為か急激に不安になってきたぜ…)」

京太郎「(こんな事なら…小蒔に対戦部屋まで着いてきてもらった方が良かったかも…)」

京太郎「(いや…あんだけ大口叩いてそんな事言えないよなぁ…)」

京太郎「…ってアレ?」

和「…」キョロキョロ

京太郎「和、何をやってるんだ?」

和「あ…き、京太郎君…」

京太郎「道が分からなくなったのか?それなら皆はあっちに…」

和「い、いえ…その…ち、違うんです」カァ

和「あ、あの…出場前の激励に…と思いまして…ここで待っていたんです…」

和「その…お、お時間は取らせませんから…こちらに来てもらえますか?」

京太郎「いや…まだ時間に余裕もあるし構わないけど…」スタスタ





京太郎「でも…無理しなくて良いんだぞ?」

京太郎「それにもう少ししたら女子の方も始まるし、そっちの準備した方が…」

和「ら、らいじょぶです!」

京太郎「(噛んだ)」

和「大丈夫です!」カァァ

京太郎「(い、言い直した…)」

和「で、ですから、あの…もう少しこっちに…」

京太郎「いや…これでも結構、近いんだけ…んぐっ」

和「はむ…ぅ♪」チュッ

京太郎「(…っていきなりキスされてるんだけどおおおおお!?)」

京太郎「(え…ちょ…ま、周りに人はいなかったけど…でも、大胆すぎやしないか!?)」

京太郎「(普段の和だったらこんな事やらないのに…何で!?)」

和「れろぉ…♪」

京太郎「(しかも、舌入れて来るなんて聞いてないぞおい!!)」

京太郎「(くっそ…!仕返ししたい!でも、流石にこの状況じゃ出来ない!!)」

京太郎「(そんな事したら逆に興奮して、色々とそれどころじゃなくなる…!)」

京太郎「(俺も和も対戦が近いのにこんな事やってる場合じゃないんだ…!!)」






和「はぷ…♪ちゅ…っ♥」

京太郎「(あぁ…でも…幸せそうにキスしてくれるなぁ…)」

京太郎「(一生懸命背伸びして…俺に抱きつきながら…そんな顔見せるなって…)」

京太郎「(和とキスしてるってだけでも興奮するのに…そんな健気な顔見せられたらスイッチ入るだろうが…)」

和「じゅ…はふゅ…♪」

京太郎「(可愛いなぁ…ホント、可愛いなぁ和…)」

京太郎「(引き離さなきゃいけないのに…引き離せなくなるくらい…)」

京太郎「(寧ろ、このままぎゅっと抱きしめて…ホテルまで連れ去りたいくらいだ)」

京太郎「(でも…そうじゃないんだよな…)」

京太郎「(俺がやるべき事はそれじゃなくって…和を引き離す事だ)」

京太郎「(俺はともかく…和は今年も注目の選手で…こんなところでキスしてると何を言われるか分からないんだから)」

京太郎「(幸い、今は周りに人が居ないけれど…何時までもそのままかは分からない)」

京太郎「(だから…ここは心を鬼にして…和を……っ!)」グイッ

和「はぅ…ん♪」




和「ちゅ…ぅ♪ふ…あぁ…♪」ウットリ

京太郎「あの…和?」

和「ん…ふぅ…♪…ハッ」

京太郎「…いきなりどうしたんだ?」

和「あ…いや…その…」モジモジ

和「き、キスしたら…勝てるって須賀君が言ったじゃないですか…」

京太郎「…まさか、その為にこうして待っててくれたのか?」

和「し、仕方ないじゃないですか!もし、私がキスしなかった所為で負けちゃったら…嫌ですし…」カァ

和「だ、だから…私…ずっと機会を伺ってて…でも、人前でなんて出来ませんし…こうして待つしか…」オズオズ

京太郎「…あぁ、なるほど。大体、分かった」ナデ

和「あ…♪」

京太郎「(俺としては軽い冗談のつもりだったんだけど…和にとってはとても大事だったんだろう)」

京太郎「(考えても見れば…人並み以上に責任感の強い和がそれを気に病むのは当然の事だったんだ)」

京太郎「(こうして嘘を吐いてまで…待ってくれてたのは少し驚いたけど…でも…)」

京太郎「ありがとう。すげぇ嬉しいし…力が湧いてきたよ」

京太郎「だから…待っててくれ。ここまでしてくれたお礼は…結果で返すから」ギュッ

京太郎「必ず和先生に良い結果を持ち帰って…ご褒美貰うからな」ナデナデ

和「ん…はい…っ♪楽しみに…待ってます…♥」




京太郎「(さて…そろそろ会場前…携帯の電源も切っとかないとな…)」

京太郎「(って…アレ…いつの間にかメールが来てる)」

京太郎「(マナーモードにしてた所為で気づかなかったんだろうな)」

京太郎「(…後でっていうのも気になるし、今、見ておくか)」ピッ



From:上重漫
subject:先輩からのアドバイスや♥

や。そろそろそっちでも新人戦始まるかなって思ってメールしてみたんやけど、そっちはどうや?
こっちは一年の子たちはガチガチに緊張しとって、ある意味、微笑ましいわ。
うちも一年前はこんな感じやったんやなぁって思うと懐かしくもあるんやけれどね。
もし、京太郎君がうちの一年みたいにガチガチになっとるんやったら…一つアドバイスをあげるで!

麻雀なんてのは所詮、運ゲーや。
どんな熟練者でもバカツキしまくった初心者に負ける事はある。
でも、同時にそんなゲームやからこそ…面白いし、楽しい。
だから、思いっきり楽しんどいで。
学校の名前とかそういうの関係なく、打って遊んで…勝って負けておいで。

まぁ…これうちの言葉やなくて末原先輩が去年言ってたもんやねんけどね。
でも、うちは末原先輩のこの言葉で去年、緊張が抜けたのを覚えとる。
だから…うちとはまた別の意味で学校の名前って奴にプレッシャーを感じ取るかもしれへん京太郎君にも効果あるかなって。
お節介でごめんね。
じゃあ、また結果出たら教えてや。
うちは大阪から離れられへんけど…でも、こっちで京太郎君が結果残せるように祈ってるから。



追伸:一回勝つ毎にエロ写メあげるから、何かリクエスト考えといてや♥



京太郎「…ははっ、ったく…漫さんったら…」

京太郎「(…ありがとう、漫さん。俺…頑張るよ)」









モブ1「なぁ、知ってるか?」

モブ2「なんだよ?」

モブ1「まだ来てない最後の一人…清澄の男子らしいぜ」

モブ3「マジか…あの清澄の…」

モブ2「でも、ソイツ、県大会一回戦負けだろ?」

モブ1「あぁ、初心者丸出しでボッコボコにされてやがったぜ」

モブ3「…止めようぜ、そういう事言うの」

モブ1「いや、でも、笑えるだろ?女子が全国制覇してて男子だけ一回戦負けだぞ?」

モブ1「良く新人戦までやってけるよな、俺だったら恥ずかしくて心折れるわ」

モブ2「寧ろ、心折られてるんじゃないのか?」

モブ2「雑用転落になって犬のように女子に遣われてるって聞いたしな」

モブ1「あぁ、それは俺も聞いたわ。コメツキバッタみたいにへぇこらしてるってな」

京太郎「悪いけど、それ、全部ウソだぜ」スッ

モブ3「……」

モブ1「お、ようやく来たか負け犬」

モブ2「早く席につけよ、それとも逃げ帰るか?」





京太郎「…なんだ。安心したぜ」

モブ1「あ?」

京太郎「思ったより一回戦のレベルが低くてよ」

モブ2「…喧嘩売ってるのか?」

京太郎「先にトラッシュトーク仕掛けてきたのはそっちだろ?」

京太郎「初めての大会で緊張してるのかもしれないけど、もうちょっと落ち着けよ」

京太郎「じゃないと…間抜けに見えるぜ?」

モブ1「…テメェ」

京太郎「折角、目の前に麻雀卓があるんだ。グダグダ言わずに決着は麻雀でつけようじゃねぇか」

京太郎「まぁ…正直、不安をトラッシュトークで誤魔化すような連中に負けるなんて思わないけどな」

モブ3「…ほら、とにかく席につけよ」

京太郎「あぁ。待たせて悪いな」

モブ3「気にすんな、あいつらも気が荒ぶってるだけだからな」






【一回戦】

モブ1「(くそ…!舐めやがって…!目にもの見せてやる…!)」

モブ2「(絶対にコイツをたたき落としてやる…!)」

京太郎「(分かりやすいくらいに意識してくれてるな…)」

京太郎「(やっぱ言い過ぎたか…?でも…あんな風に言われるのを聞くとなぁ…)」

京太郎「(俺の事はまだ良いけど…あいつらを馬鹿にするなんてのはどうしても許せなかった…)」

京太郎「(勿論、俺だってそれが偏見や嫉妬混じりのものだってのは分かってる)」

京太郎「(でも、俺の為にわざわざ違うブロックまでやってきて応援してくれる皆の事をあんな風には言われたくない)」

京太郎「(少なくとも…そんなの聞いてヘラヘラしてられるような情けない男になりたかった訳じゃないんだ…!)」

京太郎「(だから…俺は…!ここで…勝ちたい…!)」

京太郎「(元々…そう思ってたけど…今はより一層…そう思える…!)」

京太郎「(何より…こんな奴らの所為で…和のご褒美が遠ざかってたまるか…!!!)」メラメラ



京太郎「ロン。2900」


京太郎「ツモ。3900オール」


京太郎「ロン。6400」


京太郎「ロン。7700」


京太郎「ロン。5200だ」



京太郎「…ふぅ。ありがとうございました」

モブ3「ありがとうございました」

モブ2「…ありがとうございました」

モブ1「ケッ…ありがとよ」

京太郎「ふぅ…」

京太郎「(何とか一位通過出来たな…)」

京太郎「(アレだけ大口叩いて負けなくて本当に良かった…)」

京太郎「(正直、ドッキドキだったけど…でも、まぁ…思ったより大した事なかったな)」

京太郎「(口からでまかせだったけど、もしかしたら本気であの二人、不安をトラッシュトークで誤魔化してたのかもしれない)」

京太郎「(まぁ…それはいっか。今は何より…公式戦初勝利を喜ぼう…)」グッ

モブ3「よ。お疲れ」

京太郎「あ…お疲れ様」

モブ3「いやぁ、強かったな。正直、驚いたよ」

京太郎「何度かそっちが援護してくれたからな」

モブ3「はは、まぁ、新人戦は地方予選終了まで2位抜け出来るルールだしな」

モブ3「アイツらと手を組むよりは、お前に着いた方が上がりやすいかなって思っただけだ」

京太郎「打算的だなぁ…」

モブ3「世渡り上手って言ってくれよ」

京太郎「でも、助かったのは本当だ。ありがとうな」

モブ3「気にすんなって。俺もアイツらにはムカついてたし」

モブ3「とは言え、協力しすぎるのを禁止する為か、次からは別の試合だ」

モブ3「それでも勝ち上がったらまた協力する事もあるだろ。だから…負けんなよ」

モブ3「折角、手ぇ貸した奴が負けるの見るのも寂しいしな」

京太郎「おう。そっちもな」

京太郎「(…まぁ、そんな感じで…決して一人で勝てた訳じゃないんだけどな)」

京太郎「(小蒔に惚れ直すくらい格好いい所見せるって言ってたけど…ちょっと言い過ぎだったか…)」

京太郎「(いや…まだ始まったばっかりなんだ。上に上がっていけば活躍するチャンスもある)」

京太郎「(それに…モブ3のお陰で『ゾーン』を温存出来たのはでかい)」

京太郎「(お陰で二回戦でも使えそうだし…もうちょっと上を目指せるかも…)」

京太郎「(もしかしたら決勝…なんてのはちょっと夢見すぎな話だろうけどさ)」

京太郎「(でも…決勝まで行ければ…他の連中もあんな下らない事は言われないはずだ)」

京太郎「(その為にも…油断せず、一つずつ勝っていかないとな)」

京太郎「(俺は間違いなく弱いんだから、気を抜いてる暇はないんだ…!)」



【二回戦】

モブA「モブ1と2がやられたようだな…」

モブB「ふふふ…奴はモブ四天王の中でも最弱…」

モブC「一回戦負けの清澄に負けるとはモブの面汚しよ…」

京太郎「ツモ。4000オール」

モブ「「「ぐわー」」」




【三回戦】

モブa「モブABCが(ry」

モブβ「ふふふ(ry」

モブγ「一回戦(ry」

京太郎「ツモ(ry」

モブ「「「ぬわー」」」








京太郎「(…おかしい)」

京太郎「(二回戦三回戦と戦ってきたけど…幾ら何でもおかしい)」

京太郎「(なんで俺がここまで順調に勝ち上がれてるんだ…?)」

京太郎「(正直、俺は身内の対戦じゃ、殆ど一位になれないほど弱いんだぞ?)」

京太郎「(そんな俺がどうしてここまで一位続きなんだ…?)」

京太郎「(幾ら俺と同じ高1相手だって言っても…順調過ぎるだろ…)」

京太郎「(確かに…今日の俺は和のキスやご褒美のお陰か、比較的ツイてる…ってのも、多分、あるんだろう)」

京太郎「(だけど、これまで一度も『ゾーン』を使う場面がないってのは流石に異常じゃないか?)」

京太郎「(いや…使った後はかなり疲れるんだからないにこした事はないんだけど…)」

京太郎「(もしかして…俺って結構強い…のか?)」

京太郎「(これまで打ってた相手が殆ど全国区ばかりだったからこそ誤解してただけで…そこそこやれるのか?)」



【四回戦】

京太郎「(…ここを超えれば準決勝…その先は勿論、決勝だ)」

京太郎「(後三回…後三回勝てれば、俺も全国大会にいける…)」グッ

京太郎「(しかも、今日はこれで終わりだし…ここで『ゾーン』を使いきってしまっても良いんだ)」

京太郎「(そう思うと…決勝までいける気がしてきたぞ…)」

京太郎「(勿論、相手次第だから何とも言えないけど…今まで通りなら…勝ち抜けも難しく…)」

京太郎「!?」ゾッ

「どうしたんだ?」

京太郎「あ…いや…何でもない」

京太郎「(なんだ…ここ…空気が違う…)」

京太郎「(淀んで…歪んで…息苦しいくらいだ…)」

京太郎「(何でコイツら…こんなところで平然としてられるんだ…?)」

京太郎「(もしかして…これを感じてるのは…俺だけなのか…?)」



―― 時間です。四回戦初めて下さい。

京太郎「(とりあえず…まずは様子見だ)」

京太郎「(この重苦しさの中で平静を保つ為にも…一局目は降りる…!)」

京太郎「(明らかに…今までとは格が違う相手なんだ。慎重に行き過ぎるって事は…)」

「クク…悪くない戦術だ」

京太郎「え…?」

「勝手に飲み込まれて自滅する連中よりは見込みがあるようだな」

「だけど…そこまで分かりやすいと狙い撃ちだ…」

「ロン。8000」

京太郎「…は…はい…」グニャアァ

京太郎「(ベタ降り中の俺を狙い撃ち…?)」

京太郎「(一局目で…まだ点数に差は無いってのに…なんでそんな真似を…!?)」

京太郎「(他の二人はツッパ気味だったってのに…どうして…?)」

「クク…さぁ、次だ。次にいこうぜ…」




京太郎「(そうだ…気を取り直せ…)」

京太郎「(今のは運が良かったのをトラッシュトークで誤魔化しただけだ…!)」

京太郎「(普通ならそんな真似は出来ないし…出来たとしてもわざわざやる労力なんてないんだからな)」

京太郎「(だから…気にせず、いつも通りの打ち方を心がけるんだ…!)」

京太郎「(今の俺は二盃口タンヤオまで一向聴…)」

京太郎「(これにピンフつけて上がれれば、さっきの分は帳消しになる…!)」トン

「ポン」

京太郎「(え…!?今、牌が光ったような…)」

「チー。さらにポン」

京太郎「(嘘…だろ…?何で…俺の捨てた牌を尽く持っていけるんだ…?)」

京太郎「(まるで…俺の手を読んでるような…)」

京太郎「(い、いや…偶然だ。たった3巡目でそんな事出来るはずが…ない…!)」トン

「…ロン。8000」

京太郎「…は…はい…」

京太郎「(…この速度で満貫…しかも…直撃…だなんて…)」



京太郎「(一気にトップ二人に引き離された…)」

京太郎「(でも…まだ…負けた訳じゃない…!)」

京太郎「(集中しろ…全力で卓に意識を傾けるんだ…!)」

京太郎「(『ゾーン』にさえ入れば…俺だって全国区の相手とも互角にやれる事を思い出せ)」

京太郎「(引き離されただけで…まだ終わった訳じゃない…!だから…最後まで諦めずに…)」

「…」ニヤリ

京太郎「…」トン

「御無礼。ロン、12000です」

京太郎「…はい」

京太郎「(跳満直撃…いや…意識は乱すな…)」

京太郎「(新人戦は特別ルールで持ち点50000…)」

京太郎「(その半分を直撃で削られたけど…それでもまだ三局目が終わったばかりなんだ…)」

京太郎「(トップは無理でも配牌次第じゃ二位に食い込む事だって難しくない…!)」

京太郎「(だから…『ゾーン』だけは切らずに…最後まで……)」




………



……




京太郎「(一つだけ…分かった事がある)」

京太郎「(コイツら三人とも…俺とは次元が違う…)」

京太郎「(俺からすれば…あり得ない打ち筋…あり得ない和了を繰り返すんだから)」

京太郎「(こうして俺が未だ生きてられるのは…三人が三人とも俺の事なんて眼中にないからだ…)」

京太郎「(無視されているって訳じゃなく…死なない程度に手加減されている)」

京太郎「(いや、それどころかわざと差し込みされてる気配さえ感じるくらいだ)」

京太郎「(恐らく…コイツら全員…化け物揃いのこの卓が楽しくて仕方がないんだろう)」

京太郎「(だからこそ、それが途中で終わったりしないように俺を適度に生かしている…)」

京太郎「(…正直…それが腹の奥が熱くなるくらいに悔しい…!)」

京太郎「(でも…俺がコイツら相手に勝てるビジョンって奴がどうしても浮かばないんだ…)」

京太郎「(せめて一矢報いてやりたい…けれど…『ゾーン』に入っても…翻弄されるだけなんだ…)」

京太郎「(今の俺じゃ…銀行どころか三人にとって邪魔ものでしかない…それに心が…もう…)」グッ













和「本当に…その…私とキスしたいんですか?」

京太郎「あぁ。それがあれば俺はきっと頑張れる」

和「途中で挫けたり…しません…か?」

京太郎「和のキスがあればそんなもの絶対にあり得ないって」



















和「き、キスしたら…勝てるって須賀君が言ったじゃないですか…」

和「し、仕方ないじゃないですか!もし、私がキスしなかった所為で負けちゃったら…嫌ですし…」



















京太郎「俺は勝ってくるよ。小蒔の為にも…絶対に」

小蒔「…はい!私も…応援していますから…」グッ

京太郎「おう。惚れ直すくらい格好いい俺を見せてやるよ」














麻雀なんてのは所詮、運ゲーや。

どんな熟練者でもバカツキしまくった初心者に負ける事はある。

でも、同時にゲームやからこそ…面白いし、楽しい。

だから、思いっきり楽しんどいで。

学校の名前とかそういうの関係なく、打って遊んで…勝って負けておいで。



うちとはまた別の意味で学校の名前って奴にプレッシャーを感じ取るかもしれへん京太郎君にも効果あるかなって。

お節介でごめんね。

じゃあ、また結果出たら教えてや。

うちは大阪から離れられへんけど…でも、こっちで京太郎君が結果残せるように祈ってるから。













京太郎「っ…!うおぉぉぉ」スパーン

「…どうした?」

京太郎「いや…悪いな。ちょっと気合い入れ直した」

京太郎「(…何をへこたれてるんだよ俺は…!)」

京太郎「(例え勝てないにせよ…項垂れたままなんて格好悪過ぎるだろうが…!)」

京太郎「(胸を晴れ…!顔を上げろ…!!)」

京太郎「(俺が教えてもらった麻雀は…そうやって打つもんじゃないだろう!)」

京太郎「(俺がやりたかった麻雀は…もっと楽しんで打つもんだ…!!)」

京太郎「…驚かせちまって悪いな。それじゃ…もう一勝負行こうじゃないか」

京太郎「だけど…さっきまでと同じだと思うなよ」

京太郎「何せ、俺には…勝利の女神が三人もついてくれているんだからな…!」グッ

「へぇ…面白いじゃねぇか」

「…勝つために信じられるのは己だけ。だが、今のあンたは悪くない…」

「……ふっ」






………



……





「ありがとうございました」

「ありがとうな」

「…ありがとう」

京太郎「…ありがとうございました」

京太郎「(結局…ボロ負けはボロ負けなままだった)」

京太郎「(幾ら気合を入れなおしたところで実力差や感性の差が埋まる訳じゃないんだから当然だ)」

京太郎「(…でも…俺の胸にさっきのような激しい悔しさはない)」

京太郎「(全力以上の全力…それでぶつかって…木っ端微塵にされたんだから)」パカッ

京太郎「(残り点数は…たった1000…完膚なきまでの敗北だな)」

京太郎「(及ぶ及ばないとか…そんな事さえ考えられないような化け物たちだった)」

京太郎「(でも…俺は…)」



京太郎「…来年の県大会予選を覚えてろよ」

京太郎「その時こそ…お前ら全員に本気を出させてやるからな」

「楽しみにしていますよ」

「クク…今度は潰れないようにしろよ」

「…どうやらあンたはまだ負け犬じゃないようだな。…楽しみにしてる」

京太郎「(…楽しかった。そう思えた)」

京太郎「(これだけ化け物揃いでも…俺のやりたい麻雀が…楽しい麻雀が出来た)」

京太郎「(結果だけ見れば…目も当てられない様な惨敗だけど…)」

京太郎「(でも…心まで負けた訳じゃない。それは…大きな手応えだと思うから…)」スッ

京太郎「(それを台無しにしないように、もっと頑張らないとな)」

京太郎「(来年も同じままじゃ、あいつらに失望されちまう)」

京太郎「(それに何より…)」スタスタ

和「須賀君…」

京太郎「あれ…?和?」

京太郎「どうしたんだ?こんなところまで来て…」



和「あの…須賀君は…凄かったです…」

京太郎「あー…見てたのか」ポリポリ

京太郎「ごめんな。折角、和が色々と教えてくれたのに…太刀打ち出来なかった…」

京太郎「格好悪いところばっかりだっただろ?」

和「そんな事ありません…!」ギュッ

和「モニター越しでも分かるくらい…あの三人は異常でした…」

和「彼らの途中の試合も見ていましたが…殆ど虐殺と言っても良いほど圧倒的です…」

和「そんな相手に最後まで諦めずに麻雀を続けられただけでも…須賀君は凄いんです…っ」ギュッ

京太郎「…ありがとうな、和」

京太郎「そう言ってくれると…すげぇ嬉しい」

京太郎「でも…俺は途中、完全に自暴自棄になってたんだ」

京太郎「正直、自分でもヘタレてたと思うし、そんな風に持ちあげなくても…」






和「わ、私にとっては…!何時だって須賀君は格好良いんです!」キッ

和「例え、一時、少し挫けそうになっていたとしても…須賀君は暖かくて努力家で…優しい素敵な人です!」

和「だから…そんな風に卑下しないで下さい!」

京太郎「…和」

和「あ…その…」カァァ

和「い、今のは言葉の綾であって…べ、別に何時も須賀君の事を見てるとかそう言うんじゃないですから!」

和「全部、嘘…じゃないですけど…でも、脚色とか偏見とか一杯入ってるんですからね!」

和「これはあくまで励まそうとして…私が考えたもので決して事実に即しているとは言えないもので…っ」マッカ

京太郎「うん。分かってる。和が俺の事とても買ってくれてるってのは伝わってきたからな」クスッ

和「う……で、ですから…それは…」

京太郎「ん?」

和「も、もう良いです…っ」マッカッカ



京太郎「まぁ…それは脇に置いても…何でいきなりここに?和は俺より出番が後だったからまだ四回戦も終わってないだろ?」

和「そ、それは…その…た、たまたま!たまたま…休憩時間に閲覧室に言ってみたんですが…」

和「ふと、画面を見ると…須賀君が居てですね…」

和「特に理由はなく…なんとなく須賀君を見ていたら、こちらの方が辛くなるような闘いがずっと続いていたので…」

和「もし…須賀君が麻雀嫌いになってしまったらどうしようと思うと…居ても立っても居られなく…」

京太郎「だから…わざわざ入り口で待っててくれてたのか?」

和「ま、まぁ…そう言えなくもないような気がしなくもない感じです…」カァァ

京太郎「はは…和は可愛いな」ナデナデ

和「ん…ぅ…♪」

和「って…ち、違いますよ!」

京太郎「あ、流石に頭を撫でるのは嫌だったか?」

和「あ、いえ、それはとっても気持ち良いんでもっとやって欲し…あ」カァ

和「もうっ!す、須賀君分かってて聞いてるでしょう!」スネー

京太郎「何のことかさっぱり分からないな」キリッ




和「それより…大丈夫なんですか?」

京太郎「…あぁ。大丈夫だよ。俺は麻雀の事嫌いにも怖くもなっちゃいない」

京太郎「確かに信じられないほどボコられちゃったけどさ。でも、圧倒的過ぎて全然、嫌な感じじゃなかった」

京太郎「俺の今の実力以上を出しきって…それでも負けた所為か、寧ろ、すっきりして楽しかったからな」

和「…やっぱり須賀君は凄いです」

和「私があんな卓で打ったら…怖くて牌に触れなくなるかもしれません…」

京太郎「凄くなんかないって」

京太郎「実際、見てたんなら分かるだろうけど…俺は途中、完全にメゲてたしな」

京太郎「それでも何とか堪えられたのは…和のお陰だよ」

和「私の…?」

京太郎「あぁ。和がキスしてくれたお陰で…最後まで勝負し続ける事が出来た」

京太郎「だから…俺が凄かったんだとしたら、それは和のお陰なんだ」

京太郎「ありがとうな」ナデ

和「ぁ…♪」





小蒔「京太郎様~!」

京太郎「はは…団体さんが来ちまったな」

和「あの…須賀君…」

京太郎「ん?」

和「あの…明後日…うちに寄れませんか?」

京太郎「まぁ…部活も休みにするって話だし、バイトもないけど…」

和「ぜ、絶対に来て下さい」

和「あ、神代さんには悟られないよう…一人で」カァ

京太郎「それって…もしかして…」

和「わ、分かってるなら言わなくて良いんですっ」カァァ

和「じゃ、じゃあ、私…もうすぐ四回戦が始まるので…」

京太郎「あ、そっか。悪いな、引き止めて」

和「いえ…こっちに来たのは私の我儘でしたし…それでは…」タッタッタッタ




咲「京ちゃん、大丈夫!?」

京太郎「はは、何、心配してんだよ」

まこ「…なんじゃ。思ったより凹んでおらんの」

京太郎「そりゃそうですよ。そもそも四回戦まで行けただけでも快挙なんですし」

小蒔「あの…京太郎様…?」

京太郎「…心配か?」

小蒔「それは…その…はい…」シュン

京太郎「いや、何も悪いなんて事はないからそうやって落ち込まなくても良いって」

京太郎「それより心配してくれてありがとうな。でも、俺は大丈夫だから」

京太郎「それにあんな風にボコられるのは別に今回が初めてじゃないし」ジィ

京太郎「うちの麻雀部には初心者相手に容赦無い連中が沢山いるからな」ジトー

咲「…な、何の事かな?」メソラシ

まこ「て、手加減しとる時はしとったじゃろ」アセアセ

優希「き、京太郎が弱いのがいけないんだじぇ」オロオロ

小蒔「ふふ…♪」

京太郎「あぁ、ようやく笑ってくれたな」

京太郎「落ち込んでるよりやっぱり小蒔はそういう顔の方が良いって」

京太郎「それでも俺のことが心配なんだったら…褒めて欲しいかな」

京太郎「四回戦までいけて凄いって言ってくれた方が俺も嬉しい」

小蒔「…はいっ。京太郎様は…最高に格好良かったです…っ♥」

京太郎「おう。ありがとうな」ニコッ


京太郎「そういやそっちの方はどうだ?」

咲「私はその…一回戦負けで…」

京太郎「相変わらず咲は個人戦弱いなぁ…」

咲「個人戦だと何か自分の中で勝たなきゃいけないって気持ちがどうしても弱くなっちゃうんだよね…」

京太郎「プラマイ0は本当、根が深いな…で、優希は?」

優希「私とのどちゃんは勝ち抜けてて、もうすぐ四回戦だじぇ」

京太郎「持ち点50000スタートだから持ち味の速攻活かせないか心配だったけど、その辺は大丈夫だったか」

優希「まぁ、私も昔のままじゃないって事だじぇ」ドヤァ

京太郎「ドヤ顔すんのは良いけど…お前、時間危なくねぇのか?」

京太郎「ここ男子のフロアだから、女子の放送まで入らないぞ」

優希「え…?」チラッ

優希「あ…」サァァ

京太郎「馬鹿!こんなところに来てる場合じゃないだろ!」

優希「だ、だって、京太郎励ましたかったし…」

京太郎「良いから走れ!」

優希「う…うぅ…あんま神代さんといちゃつくなよ京太郎!!」タッ




小蒔「…ふふ…騒がしいですね」

まこ「本当じゃな」

咲「まぁ…いつも通りの優希ちゃんなんだけどね」クスッ

京太郎「清澄らしさって奴ですかね、これも」

京太郎「それより…打ち上げとかどうします?」

まこ「そうじゃな…和たちの結果にもよるけど…明日終わった後、適当なファミレスにでも寄るか」

まこ「それとも疲れとるじゃろうし、明後日の方がええか?」

京太郎「あー…いや、明日の方が個人的には都合が良い感じです」

まこ「さよか。まぁ、どうせ明日も皆で観戦する事になるじゃろうし、その方がええじゃろ」

まこ「折角の部活休みなのに全員で集まるのもアレじゃしな」

まこ「まぁ、京太郎は綺麗どころが一杯で集まる方が嬉しいかもしれんけどな」ニヤッ

京太郎「綺麗…」ジィ

まこ「…」

京太郎「どころ…?」チラッ

咲「…」

まこ「よし。その喧嘩買うたぞ」グッ

咲「ふふ…京ちゃん?」グッ

京太郎「すみません冗談のつもりだったんです俺が悪かったですから女の子がやっちゃいけない拳の作り方するのは止めて下さい」フルフル


京太郎「そ、それよりもほら!閲覧室で和と優希の応援しましょうよ!」

まこ「ぬぐぐ…まぁ…確かにそろそろ始まる時刻じゃしな」

咲「むぅ…でも…これで追求の手を緩めるつもりはないんだからね」

まこ「とりあえず…打ち上げでミックスドリンクバーは確定な」

京太郎「お、お手柔らかにお願いしますね」

咲「私、熱々の鉄板に挑戦する京ちゃんがみたいなぁ」ニコニコ

京太郎「俺が猫舌だと知っていてそれをさせるって言うのか、咲…!」

咲「…女の子を傷つけた報いですー」プクー

京太郎「ぬぐぐ…くそぅ…」

小蒔「えとえと…じゃあ、私は久しぶりにあーんさせてくれる京太郎様が見たいです!」

咲「だ、ダメだよ!神代さんは例外!」

小蒔「そんなのズルいです!私だって京太郎様にお願いしたい事一杯あるんですから!」

京太郎「…何か趣旨が変わってません?」

まこ「まぁ、それだけ色々と我慢させとったって事じゃろ」クスッ

まこ「もうちょっと婚約者を構ってあげる事じゃな、色男」

京太郎「頑張ります…」



京太郎「(いつも通りに振舞おうとしてやりすぎたか…)」

京太郎「(まぁ…でも、お陰で暗い雰囲気は払拭されて…俺達らしい俺達に戻れた)」

京太郎「(少しふざけ過ぎたのは確かだけど…今はそれを喜びたいな)」

京太郎「(にしても…明後日…和の家…か)」

京太郎「(ご褒美って…一体、何をしてくれるんだろうか)」

京太郎「(和はエロい事込み…みたいな事言ってたし…正直…かなり期待してる)」

京太郎「(最近、禁欲続きだったのもあって…こうして皆と馬鹿な会話をしながらもムラムラが収まらない)」

京太郎「(流石に勃起するほどじゃないけど、期待だけでかなり興奮してるのは事実なんだろう)」

京太郎「(そして…それは俺だけじゃなく…和も同じだ)」

京太郎「(さっき去っていく時の和の顔は…何時、スイッチが入ってもおかしくないくらい興奮してた)」

京太郎「(自分から言い出したって事を加味しても…キスをしてきた時に劣らないくらいだったんだ)」

京太郎「(色々あってここ最近、構ってやれなかったから、やっぱり寂しがっているんだろうな…)」

京太郎「(秋季大会終わるまで落ち着く訳じゃないけど…それでも余暇が出来た訳だし…)」

京太郎「(明後日は久しぶりに思いっきり可愛がってやらないとな…)」



………



……












  • 咲さん個人戦弱くないでしょ エロSSに設定なんて求めるのもなんだけどさ -- 名無しさん (2015-09-20 11:25:22)
  • 照いないし和もこんな調子だから発破してくるわけでもなし、負けて悲しむ対戦相手を見てたらついプラマイ0にでもしちゃったんだろ。咲が弱くないことくらい原作読んでりゃわかるわ -- 名無しさん (2015-09-28 10:25:33)
名前:
コメント: