髪が長い女の子がスキ。家庭的な女の子がスキ。
少し大人っぽい女の子がスキ。胸が大きい女の子がスキ。
全部、あいつの好み。



登校中に茶色いポニーテールが後ろから元気よく追いついてきた。
後ろから走ってくる足音で気付いていたので振り返らずおはようシズ、と声をかける。
おはようと返してきたシズが私を見て前髪切った?と聞いてきた。
最近切ってなかったからねと前髪を触りながら答えると、似合ってる、可愛いと褒めてくれた後に一呼吸置いて、少し宥さんの髪型に似てるねなんてふざけたことを言い始めた。
別に宥姉の真似してるわけじゃなくて、長い髪だから似たように見えるだけだしサイドテールがあるから全然違うって説明してるのに「誰に見せるためだろうね」と私は知ってますよ的な顔で言ってきたから少し怒鳴ったら走って逃げた。
まあ、急に変な事言われて驚いて上手く口が回らなかったのを勘違いしただけ。
そんなことよりも早く追いかけて訂正させないと。
ってうわぁ……あいつまた足早くなってて全然追いつけなくなってる。


どうせ朝練あるんだから部室で捕まえればいいと気付いたのが校門の目の前まで来た時。シズの姿はもう見えない。全力で走ったせいで息も限界だし髪もぼさぼさになってしまったから、今あいつに会いませんようにと祈りながら手櫛で髪を整えつつ歩く。
部室に着いたらハルエと灼と玄も居た。って言うかもう打ち始めてた。
シズを睨みつけたらごめんねーからかい過ぎたよなんて全然反省してない様子。
もう叱る気もなくなってきたので部室を見まわしたが4人しか居ない。そのことを聞くとどうやら宥姉は先に温室の花の世話をしに行ったとのこと。
じゃああいつもそっちにいるね、2人とも迎えに行ってくると言ったら4人共ニヤニヤしてこっちを見てくる。気に食わない。
部室を出る直前にさっすが京太郎の事は何でも把握してるねーとハルエの声が聞こえた。
今日こそ絶対勝ってやると決意し温室へ向かう。


中には入らず入口の辺りを見渡す。いた。京太郎だ。温室の中を覗いてる。
後ろからこっそり近付き覗きは犯罪よと忠告してやる。相当驚いたようで身体を震わせてからゆっくり私の方を見る。
部室に着いたらシズが走ってきたから、もうすぐ憧も来ると思って宥さん呼びに来たんだと言い訳してるけど……入口から少しずれた所から中を覗き込んでいたことの言い訳にはならないわよね。
いや宥さんの邪魔しちゃ悪いと思ったとか苦しい言い訳を重ねてるけどそんな言い訳には耳を貸さないで中に入る。蒸し暑い。
宥姉に声をかけて朝練始まってる事を伝える。
宥姉を連れて温室の外へ出た時に宥姉が私の事じろじろ見てる事に気付いた。
どうしたの?と聞くとなんか雰囲気が違うような……?と不思議がっている。前髪を切ったんだと説明しようと口を開いたら、京太郎が前髪切ったんですよ似合ってて可愛いですよねなんて気障ったらしいことを言ってのける。
気付いてたのかとか、気付いてたなら早く言えとかあんたがそんな気障な事言っても似合わないとか他にも言いたい文句が沢山浮かんできたけど、とりあえず頭を小突いてやった。

っていうか髪を伸ばしてるのも、前髪を揃えたのも別に京太郎に可愛いって言われるためじゃない。
だいたい、別に私は京太郎がスキってわけじゃないし。
でも……こいつが私の事をスキになればいい……とは思う。

カン!